あらすじ
探偵小説に精神分析を導入する試みの先鞭をつけた作品「疑惑」、ヒロインの訴えるような語り口が印象的で、再三映像化、劇化されている「人でなしの恋」等、大正十四年から十五年にかけて発表された十編を収録。初出時の挿絵全点を付した江戸川乱歩短編集成第三弾。
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江戸川乱歩の短編。『人でなしの恋』
あらすじ
夫の様子がおかしい。ある夜、夫の跡をつけると蔵の2階で女と密会していた。
その女の正体とは…。
全く内容を知らずに読んだので、女の正体に驚いた…。江戸川乱歩ってどうしてこんなに面白いんだろう。
結婚してすぐの一文。
『大げさに申しますれば、浦島太郎が乙姫様の御寵愛を受けたという龍宮世界、あれでございますわ、今から考えますと、その時分の私は、本当に浦島太郎の様に幸福だったのでございますわ。』
こんなに有頂天になって、まるでジェットコースターをカタカタと登ってるような感じからのあのオチ。頂上からの落下が半端ない笑
読んだ後『人でなしの恋』のタイトルの付け方に痺れた。
でもしばらく経って考えると、奥さんが「人でなし」に思えてくるので、本当にこのタイトルは秀逸。
この作品はなぜかAudibleの本気度がすごかった。まさかのピアノの音楽から始まり、蔵までの真っ暗な茂みを通る時は虫の声が入ってる!何この没入感(゚д゚)
そしてナレーターが女優の笛木優子さん。
声が物語とピッタリだし、女優さんなので抜群に上手い。冷静な話し方で怖さ倍増。
Audibleにて。(本棚と表紙が違う)
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はあ、と思わずため息が出るような作品。
門野が妻によって殺された彼女の轢死体を見た時、彼の心情を考えれば心底可哀想で仕方がない。
誠実ではなかった。ただ、誠実であろうとしていた。
門野は妻が彼女を滅茶苦茶にしたことを知ってるんじゃないかと。
彼女の死と、自分の恋がバレたこと、その恥と耐えきれない悲しみに結局自死(というか心中)を選んだのか。
人でなしの恋。
その結末は悲惨だけど、人でなしは一体妻の方だったのではないか?
嫉妬に駆られて、激情のまま人形を殺めたのだから。
愛しいドールと同じ墓に入りたいと思う時点で私も門野と同じ人でなしなんだろう。
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『幽囚された欲望というものが、どんなに恐ろしい力を持っているかに一驚を喫するだろう。』
読みやすいのがすごいです。やっぱり流れていくような感じで。
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・収録作品・
百面相役者
一人二役
疑惑
接吻
踊る一寸法師
覆面の舞踏者
灰神楽
モノグラム
人でなしの恋
木馬は廻る
自註自解
新保博久・解説
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タイトルで惹かれて買ったのですが、
なるほどそういう意味か!と。
乱歩作品は短いけれど言いようのない読後感におそわれます。
きもちわるいけれど少しせつない。
オマージュしたくなるような作品です。
他の収録作品も面白かったです!
「木馬は廻る」がすき。
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JET氏という漫画家が表題作「人でなしの恋」をコミカライズしており、原作が気になって購入したもの。
江戸川氏の長編は何度か読んだものの、あまり好みではなかったため、短編を読むことも無かったのだが、これを読んで再度江戸川氏を読み返すことになった。
読んでみて分かったのだが、私は長編より短編のほうが江戸川氏の作品では好みらしい。
人でないものに恋をしてしまい最後は心中までしてしまう表題作「人でなしの恋」も良かったのだが、どろりとした狂気を感じる「踊る一寸法師」がこの作品集の中ではお気に入りだ。
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江戸川乱歩作品で大好きな短編です。
俗に言うと、扱われているテーマは一種の”狂気”なのに、美しくて、何処か気高い感じもあって。
読んでいると世界に危ないほどにのめりこんじゃう自分がいます。
Posted by ブクログ
・百面相役者
→最後オチがあっても気持ち悪い
人の顔の皮をはぐとか想像するだけでゾワゾワした
・一人二役
→なんとも言えない、女が賢いと夫婦円満なのか
・疑惑
→人間不信になる話笑
なんか少し赤い部屋のこうしたらこうなるみたいな、
悪意のない犯罪にもなる気がする。
・接吻
→乱歩さん、女嫌いなのか、ずる賢いキャラにするの好きね
・踊る一寸法師
→単純に不気味、下衆、気持ち悪い
・覆面の舞踏者
→昔っぽい、結構下らない
・灰神楽
→やっとミステリっぽくて面白かった
・モノグラム
→オチが面白い、巡り巡ってがっかりするのが最高笑
・人でなしの恋
→これが読みたかったの!
うーん、やっぱり好き、こういうの。
ピグマリオンシンドロームみたいな、
この時代の狂気耽美みたいなの好き。
最後の人間の醜さと、相反する美しい儚さが良い。
最高です。
・木馬は廻る
→昔のパパ活話笑
昔の貧富の差や貧困って切ないなと感じる。
自註自解とか解説も丁寧で有り難い。
乱歩作品全て読みたいけど、基本不気味だったり気持ち悪いの多いんだよね…。
現代の気持ち悪さとは違う、たちの悪い気持ち悪さ。
なんか苦手なんだよね…言葉や描写が陰気というか。
明智小五郎シリーズとかのミステリ全フリも読みたいけど、
まあぼちぼち好きなものから読み進める。
Posted by ブクログ
乱歩の大人向け初期作品群は各社よりまとめ方に工夫をしながら多数でていますが、本編も新潮社の2編とかなりかぶっており、自身は再読のものが多い。題名についつい惹かれて手に取ってしまいます。大正時代の作風にしては本当に奇抜ですね。
既読のものでも繰り返して読みたくなる乱歩作品です。
表題作の「人でなしの恋」の意味は読んで納得、これだけでも価値ある作品です。
Posted by ブクログ
江戸川乱歩の奇妙な世界へようこそ
どの短編集も独創的で面白い
卑猥、情熱、嫉妬、奇異、純粋、狂気、愛情、刺激、遊戯、疑惑
と様々な人間の心のスパイスを織り交ぜて、本が出来上がっている
印象深かった順に短編集を並べると
O踊る一寸法師…サーカス?見世物小屋の異様な熱狂と恐怖感との緊張感がゾクリとする
O人でなしの恋…愛と嫉妬とそして、狂気なほどの一途さ
O覆面のぶどうかい…緊張とゾクゾク
O一人二役…覆面とトリックがかぶるけど、こちらは可愛らしい
O百面相役者…変装系だけど、面白い悪戯
接吻、モノグラム、木馬は廻るは、愛と嫉妬だけど、軽い嫉妬だからかわいらしい。
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『百面相役者』
ある劇場でみた百面相芸人。あまりの変装の見事さに驚く男。ここ最近起きる奇妙な墓泥棒の謎。男の友人Rの推理。
『一人二役』
妻との生活にあきた男が妻に仕掛けた罠。他人になりすまし布団に入る。布団に入り込んだ男に恋をした妻。他人に恋した妻に対する嫉妬。
『疑惑』
酒乱の父親の殺害事件。何者かになたの様なもので頭を割られている。妹や母親の怪しい行動。事件現場近くの祠にかくされた秘密。
『接吻』
新婚の妻が写真に接吻する所を見てしまった山名氏。疑惑を向けた相手は上司である村山課長。疑いのあまり辞表を出してしまった山名氏。
『踊り一寸法師』
サーカスでの宴会の席。一寸法師と呼ばれる豆蔵に絡む人々。無理やり酒を飲まされ侮辱された豆蔵。宴会の席で行われた豆蔵の奇術。串刺しにされ首を切られる美女。
『覆面の舞踏者』
ある集まりに参加した男。友人の井上次郎に誘われた仮面舞踏会。どこの誰とも知らぬ女と一夜を共にするが・・。相手の女は井上の妻。はたして自分の妻は?
『灰神楽』
同じ女を争う奥村を撃ち殺した男。事件当時に飛び込んだ野球のボール。自分に疑惑が向けられた時、男が奥村の弟に告げた嘘。火鉢の灰にかくされた秘密。
『モノグラム』
かつて憧れていた女性が持っていた紙入れに入れられていた自分の写真。妻との間に不満を持っていた男の夢。妻が語る真実をあこがれの女性の正体。
『人でなしの恋』
新婚の夫の奇妙な行動。土蔵の中にかくされた秘密。妻が目撃した夫の恋人の正体。
『木馬は廻る』
2009年2月16日購入
2009年2月20日初読
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人でなし(=鬼畜)なお兄さんが恋をする話なんじゃないかと勝手に思っていましたが人でなし(=人外)との恋のお話だったんですね!なんていうか、普通に、好きなお話だ…
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初期短編集。「人でなしの恋」は初期としては力作といえるだろう。「踊る一寸法師」は「孤島の鬼」に連なるテイスト。当時の挿絵が載っているが時代の空気が読めて素晴らしい。
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短編集。『一人二役』、『モノグラム』辺りが好み。『灰神楽』はベーシックな推理小説な感じで良いですね。表題先にもなった『人でなしの恋』は、さすが乱歩な描写で素晴らしかった。
Posted by ブクログ
かなり久しぶりの乱歩ワールド。美形で優しい( と思われていた ) 夫の心ここにあらずな様子を怪しんだ妻は、ついに夫が何者かと逢瀬を重ねていることを突き止めるのだが…
やっぱり乱歩はねっとりしているなぁ。表題作は現代社会に置き換えてもあり得るストーリーかもしれない。
三次元の生身の女性より、二次元のアニメキャラに傾倒する男性は珍しくもないし…と言うか、この頃からそういう志向の人々はいたのかな。
一人二役 が個人的にはどきどきしました。自分の妻に他の男をしのばせて反応を見る…がその男を演じるのは自分で…歪んだ世界ですなぁ。
Posted by ブクログ
短編集。
母の蔵書を帰省中に読んだ。
おどろおどろしかったり、とぼけた味わいだったり。
初期作品群のせいか、
よくE.A.ポオの影響が指摘されるようだ。
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乱歩をちゃんと読んだことがなかったのですが、オチは意外と・・って感じで・・。時代が違うからか。「人でなしの恋」がタイトルとともに一番好き。映像が浮かぶ。
Posted by ブクログ
乱歩のマイナーな作品集。
そこまで有名じゃない作品ばかり集めたとはいえ、流石は乱歩。
楽しませてくれた。
いかんせん、サービス精神旺盛な作者の性分か、どうも話しが見え透いている感はある。