原田ひ香のレビュー一覧
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同著者の本を読むのは4冊目。
以前読んだ3冊の印象は「本によってアタリハズレの差がデカい」こと。
そして今回は「アタリ」の方だった。メデタシ。
ある意味とても良く練られた、小説らしい小説。さすがプロ、という感じ。
①食べることと料理の楽しさ、②代々料理学校を経営して来た品川家の歴史、③主人公・留希子と坂崎との関係性の3本の糸が、時間の軸を相前後しながらバランスよく交錯し、エンディングで見事に大団円。こりゃ素人には書けないわ。読み進むのが実に楽しく心地良く、ストレスなく一気に読み終えた。
唯一の難を挙げれば、ラストに感じた若干の「尻切れトンボ」感。読者の想像力に委ねた余韻あるエンディング、とも云えるのかも知れないが、個人的には、これだけ面白く練り上げたストーリーだけに、最後もあともう一歩、具体的な「形」を見せて締め括って欲しかったなあ、と。
しかしこれだけ面白い小説も書ける著者。なんでかハズレも少なくない。これはもう、個人的な相性の問題ですな。 -
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可もなく不可もなく、タイトルから想像したらものと内容にギャップがあった。
登場人物みんなに一癖も二癖もあり、彼ら彼女らにガッツリと共感は出来なかったが、様々な人間模様や他人の思考を垣間見ることができるのは小説の醍醐味。読み進めていくに連れぐいぐいキャラクターが立って歩き出してくれたのは人物像の表現力の高さ故かと。
白黒決着まで付けず謎めいたラストが気に入りました。これが映画であの終わり方だったらモヤモヤしていたかも。
ちょうど私生活で中古マンションの購入を検討しているので、ここまで極端な例はないかと思うが、やはり人生の中で1.2を争う大きな買い物なのだとドギマギしてきました。 -
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なんともドヨンと澱んだものが残る物語です。
ホラーやのようなリアリティのあるグロもさあり、
でも、もっと深い救いのない後味の悪さが残ります。
本のうらすじにはクライム小説とありますが、
そんな感じで括れないような気がします。
今の世の中の実情とリンクした貧困、高齢化、
介護ケアの闇がテーマです。
しっかりした取材力に裏打ちされた骨太の構成は、
この作家の底知れない才能を垣間見ます。
主人公藍の不倫相手、高柳が言う「底知れない品の悪さ」や「関わったら、ずっと下に堕ちていってしまいそうな。いや、堕ちるっていっても、不倫とかそういう堕ちるじゃなくてさ」、「その後ろには俺たちとは全然違う、何かがある」という考え方は、昭和に育った自分の底にもあるようで、苦々しさがこみあげできます。
毒親と毒祖母に育てられた藍の心情は、正直シンパシーは感じられませんが、普通のしあわせを羨望しそれを奪われ、絶望の中からもがき苦しむ姿は、本当に生きづらい今の世の中を生きる者としてとても親和性を感じます。
自分も堕ちそうで堕ちない崖の上にいるのではないか?
そんな恐怖感を感じながら今を生きています。
藍と美代子が遊んだ家の裏の崖は、世間とその先にある底知れない底を、シンボライズしたものではないでしょうか。
この物語の身に迫る閉塞感が、現実味を帯びて迫ってくる、心のコンディションがいい時にしか読めない作品です。
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『東京ロンダリング』(&『失踪.com』)以来の原田ひ香さん。
山崎ミチル、45歳。バツイチ、無職。
バブル期に美味しい思いをしまくった記憶を引きずりつつも、将来への不安を抱えながら日々を過ごしている状態です。
"妥協"で受けたスーパーのレジ打ちバイトにも落ちて、流石に凹んだミチルでしたが、「経験年齢不問」のチラシのポスティングバイトを始めることになり・・。
序盤は、若い頃チヤホヤされていた、華やかなりしバブルの頃の記憶にしがみついているミチルさんを痛々しく思いながら読んでいたのですが、彼女がポスティングのバイトを始めて、その関係で知り合った佳代子さんのスマホの契約に付き添ってあげたり、きく乃さんの家賃交渉をしてあげたりといった、高齢者の方々と交流していくあたりから段々とミチルさんに好感を持つようになりました。
そう、何だかんだでミチルさんって根が良い人なんですよね。
若い頃から男性にモテていたのも、容姿だけではなくて持ち前のコミュ力の高さっていうのもあったからなんじゃないのかな~・・なんて思いました。
加えて、バブル入社とはいえ、大手企業で正社員として働いていた社会人スキルもきちっと身についていて、ひょんな事から勤める事になった家賃交渉事務所での働きぶりからもその適応力が垣間見れますよね。
そんなバブル世代のミチルさんと現代の若者代表(?)の優奈ちゃんとの会話の場面も、それぞれの世代の考え方の差が現れていて興味深かったです。
そしてラストは、バブルの呪縛から解放されたミチルさんが運転免を取ろうと決意する前向きな着地で、爽やかな読後感でございました~。
それにしても、本書の中でミチルさんが語っていたバブル期就職の売り手市場っぷりには(フィクションとはいえ)唖然としちゃいますね~・・シンプルに羨ましい~(*´□`*) -
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ネタバレ「古本食堂」に続き、原田ひ香さん作品は2作目で、かなり「古本食堂」とは雰囲気が違う感じがしたので驚きつつも、主人公の里里の年齢、里里の子供の年齢、仕事しながらの子育てという視点で自分と近かったので、とても物語に入りやすかった。
善良と悪がはっきりと書き分けられないのがとても良いと思った。
今だと「毒親」と言われてしまいそうな里里の母親のバックグラウンドも描かれることで、ただただ母親が悪いという単純化されたストーリーにしないのに好感が持てた。
ただ私として不思議なのは、「普通」で「幸せな家庭」とは呼べないような家庭環境で育った里里がどうして最も簡単に、妻子持ちの人と付き合い、シングルマザーになれたのか…
私もそうだが、そういう家庭で育った人こそ、「あ 暖かい家庭」、「両親仲が良い家庭」で我が子を育てる事に人一倍憧れるものではないのか。そのために慎重になるものではないのか。
そこの描写が私としては全く腑に落ちず。
里里の場合、自ら進んでシングルマザーになったような感じがとてもあり、同情や共感があまりできなかった。
そしてこちらの作品では、男性が基本あまり良くなく描かれている気がするので、男性はどう思うのかが少し気になる。
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新刊情報で見掛けて気になり、手に取った作品。
装画とテーマがとても好みだった。
「恋と食」をテーマに描かれた小説、掌編、エッセイのアンソロジー。
作家さん以外にお笑い芸人さん、料理コラムニストさん、コピーライターさんが参加されていて豪華メンバー。
山本ゆりさんのレシピには大変お世話になっている。
本書のタイトルを見て、「心温まる話が多いのかな」と思っていたら、いろんな意味で衝撃的な話が多く、それも含めて楽しめた。
どの作品も出てくる料理がとてもおいしそうー!
パエリア、ロールキャベツ、カニクリームコロッケ…食べたい…!
食欲を刺激されまくりの一冊だった。
︎✿「わたしたちは平穏」一穂ミチさん
性格や食の好みが合い、同棲している2人。一見平穏に見える2人の間に潜んでいる不穏さが怖い。ラストは若月さん、まさか…?この2人、この先どうなっちゃうんだろう…。
︎✿「ワタシノミカタ」古内一絵さん
家庭内には味方が必要だよね。この3人には世間の目に負けず幸せに暮らしていってほしい。昴の例え方が秀逸!昴が作ったキャンプ飯、私も食べたい♡
︎✿「初恋と食事」田辺智加さん
「ぼる塾」の田辺さん。描かれていること全てに共感しかない。私もしんどい時はとりあえずおいしい物を食べて、乗り切っている。
︎✿「ヴァンパイアの朝食」君嶋彼方さん
目次を見て一番気になっていた作品。タイトルだけ見てファンタジーなのかと思いきや、ヴァンパイアって、そういうこと…!恋愛の甘さと苦さが詰まった作品。
︎✿「くちうつし」錦見映理子さん
人生にどれだけ絶望しても、食べることをやめなければ、いつかはきっと立ち上がって生きていける。食べることは生きることに直結するんだなぁと改めて感じた。
︎✿「ゆかりとバターのパスタ」山本ゆりさん
母が作ってくれたお弁当にはいつもゆかりご飯が入っていたことを思い出した。ゆかり買ってきてパスタ作ってみよう。
︎✿「白と悪党」奥田亜希子さん
土鍋にまつわる初恋のお話。美弓の関谷への執着がなんだか怖く感じた。私は何故か小さい頃からお粥の描写にとても惹かれてしまう。土鍋でかしぐお粥、いいなぁ。
♥「SUMMER STREAMER」尾形真理子さん
野球観戦を通じて知り合う2人が絆を深めていく様が微笑ましい。自分が好きなものを一緒に楽しめる相手がいるって素敵。そして試合のシーンがとても胸熱。
︎✿「夏のカレー」原田ひ香さん
男女が知り合ってから40年間のお話。結婚はやっぱりタイミングだなぁ。人生で全てを捨ててでも一緒にいたい相手に出会えることは幸せなことだと思う。
︎✿「恩讐の彼方のトマトサラダ」山田詠美さん
序盤から衝撃すぎる…!だって、真実なんだもん。(p.348)って…!失恋のお話なのに湿っぽくないのは山田さんのお人柄なんだろうな。 -
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大学の同級生とその妻のカップル2組が、二世帯住宅を買いシェアハウスをするというお話。
自分らしい生き方をする為に、経済(仕事)に捉われず好きな事、夫婦や友達と過ごす時間を大切にするという主旨。
順調にスタートしたその暮らしは、5年を過ぎた頃から歪みが出てくる。
エコノミックアニマルと言われた昭和の日本を肯定する隆と、失われた20年、経済は停滞し成長が無くなった現在を肯定する一樹。
隆より年上で子どもを産めない,産まないコンプレックス、その事に引け目を感じ夫の浮気を疑る薫、喫茶店でウェイトレスをやる事にやりがいを感じ、いつも冷静で達観しているが、実は保守的で子どもを産むことや一樹の仕事の安定を求めている未世子。
お互いの打算の上にうまく行っていた生活は、隆の行動から破綻に向かって行く。
アイビーハウスという蔦の絡まる家に憧れて暮らし始めたが、実は蔦は酸を出していて家をダメにしていく。
自分達の暮らしと重ね合わせこれからの来し方を考えさせる良品です。、