【感想・ネタバレ】三人屋のレビュー

あらすじ

朝は三女・朝日の喫茶店、昼は次女・まひるの讃岐うどん屋、夜は長女・夜月のスナック――朝・昼・晩で業態がガラリと変わるその店は、通称「三人屋」。やって来るのは、三女にひと目惚れしたサラリーマン、出戻りの幼なじみに恋する鶏肉店主、女泣かせのスーパー店長など、ひと癖ある常連客たち。三姉妹が作るごはんを口にすれば、胃袋だけじゃなく、心もたっぷり満腹に!? 心とお腹にじんわりしみる、美味しい[人情×ごはん]エンタメ!「高いビルの屋上から、道行く人をじっと眺めているような小説である。大所高所から見下ろしているという意味ではない。ちっぽけな人間たちが、時に迷ったり立ち止まったりしながらも、それぞれの目的地を目指して懸命に歩いている姿を目にした時の、あの切ないような尊いような心持ちを思い出させてくれるのだ。」――北大路公子氏「解説」より

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感情タグBEST3

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三人姉妹がそれぞれ同じ場所で別の店を開く。
姉妹だからこそできるのか。でも一人一人に違う生き方や考え、人生がある。だけど最後三人は姉妹だなって思わせられる。最後は気になって読み通した。

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2025年11月25日

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ネタバレ

◯お話の舞台について
新宿から私鉄で西に15分、駅から延びるラプンツェル商店街が舞台。架空の商店街だけど、現実の世界でいうと西武新宿線の沼袋駅(普通電車で約15分、中野区)か上石神井駅(急行で15分、練馬区)の辺りかな。昔その間に住んでいたのでよくイメージできる。三人屋がある街としてぴったり。いちおう東京23区内なんだけど周りの人には十中八九「どこ?」って訊かれるし、地元の常連さんが集うこじんまりとしたお店が多い。大きな買い物はみんな新宿に出ちゃうから、地元では地に足のついた買い物をする。

夜月と大輔が中絶手術を受けに行った(読むのが辛かった)渋谷始発私鉄の駅というのは、京王井の頭線のどこかかなと思う。西武新宿線と京王井の頭線って主に杉並区を挟むようにして通ってるんだけど、それぞれ全然違う文化圏に属している。夜月の心情としてクリニックを選ぶならできるだけ顔見知りに会わない遠いところを選ぶだろうな、でも医療受給者証が使えて通いやすい場所というと自分の住む区内でなければ、という点で井の頭沿線というのが実にリアル。

◯三人姉妹について
長女は愛されキャラで親にも贔屓され、次女は頑張り屋で何でもかんでも引き受けて貧乏くじを引き、三女は上二人を反面教師に真面目かつ実利的に物事をこなす、という関係性がリアル。三人きょうだいって、生まれ持っての性質ももちろんだけどお互いの関係性からこんなふうに違いが出てくるものだよね。夜昼朝、と名は体を表すを地で行くフィクション的な名付けもよかった。性格も容姿も、よつばとのあさぎ・風香・恵那を思い浮かべながら読んだ。

◯本のカバー絵について
単行本では夜月の白ごはんがセンターにあったけど、文庫本では朝日のトーストに配置が変わっていた。トーストのほうが見栄えがいいのかな。原田さんはおっぱいマンション→そのマンション、終の住処でいいですか?の改題でも思ったけど、文庫化に際しての再パッケージ化がお上手。

◯食べ物の描写について
低い評価をつけている人もいるけど、私はどの食べ物もおいしそう、原田さんは料理をする人なんだな、と感じた。毎回精米すると浸水〇分でもお米は美味しく炊けるとか、ホームベーカリーにあまり長く材料をセットしているとパンの風味が落ちるとか、わかるなあ。絶品ぬか漬けの秘訣が味の素だったとかね。男って単純。単純といえば、胃袋をがっちり掴まれている森田くんも単純だ。丁寧に気を遣ってよそう野間さんのお鍋を食べてみたいと思ってしまった私も単純かな。

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2024年06月02日

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3人姉妹で、亡き父の喫茶店を切り盛り。朝は、朝日の喫茶店。昼は、まひるの讃岐うどん屋さん。夜は、夜月のスナック。

なんてユニークなお店!確かに、こういった切り盛りの仕方ってあるよなぁ、家賃を3人で負担したら安くなるよなぁ、と小説そっちのけで、ビジネスを考えてしまったわw

あ、3人の名前も、朝昼夜にちなんで付けてあるね、とふと気づく。

3人とそれぞれに関わりを持つスーパーの店長は、罪な男。チャラ男を装っていても、誰よりも親身に3人姉妹と関わっている。結構いいヤツじゃん!

これらのお店にやってくる商店街のお客さんが一癖も二癖もあり、その人情味あふれるエピソードに、いつしか夢中になって、読み進めていった。

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2024年02月17日

購入済み

物語にひきこまれていく

読んでいるうちにどんどん小説の世界に引き込まれていく内容でした

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2022年10月18日

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ネタバレ

所々に出てくる食べ物の描写がとても素敵
まひるにすごく同情してしまう
自分なら許すことは出来ない
みんないろんな事情をかかえてるんだなーと当事者にしか分からないことがあるよなーと

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2025年10月19日

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オーディオブックにて

美味しいものが出てくる
町の人たちの人情
三人屋の3人姉妹のそれぞれの事情
ドラマになったら…
妄想で配役を考えてみたり
楽しめた

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2025年10月08日

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ネタバレ

三人姉妹が営むお店。
朝は三女朝日が焼きたてパンとコーヒーのモーニング、お昼は次女まひるが讃岐うどん、夜は長女夜月がスナックを開店させ、商店街でもファンの多い客の絶えないお店になっている。
もともとは両親が喫茶店として使っていたお店だったが、両親が他界し、今は三人で時間帯で分けてお店を営業している。
夜月は若い頃から家出がちであり、朝日も自分のことばかり考えていて面倒なことは引き受けず、次女まひるが親の介護や葬儀等の家のことを引き受けることが多かった。
話の中で、夜月がお店のお金を持ち出して家出したシーンがある。まひるはそんな夜月に苛立つ部分と、本当は夜月を慕っている自分に気付き、お店の新たなスタートを予感させながら本編ストーリーは終わっていった。
商店街に住む客たちそれぞれの視点から、三姉妹のことが描かれたり、三姉妹それぞれの視点から家族への思いが描かれていたりとても面白かった♪
私個人としては、朝日のモーニングのコーヒーが飲みたいなぁと感じた。
このあとすぐに続編を読む予定!楽しみ!

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2025年08月05日

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とある商店街で飲食店を営む3姉妹の物語
姉妹が協力してトラブルありながらもほのぼのとした日常が描かれるのかと思っていたら、全然違いました。

登場する男性たちにイライラさせられることも度々…

真実ではないけれど信じる物が一つになった時、姉妹は新しいステージに進むことができるのでしょう。

3人屋で三食食べたくなります。どれもとても美味しそうです。

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2025年06月03日

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サンドの女を先に読んでしまったので、なんとなく感想が書きづらくはある
5人の男性の視点で書いているのは同じ
そこにそれぞれの姉妹のエピソードが書かれている 長女がやや多めかな
長女がなぜ高校生で駆け落ちすることになったのか
なぜ長女が突然失踪しなければならなかったのか
そのあたりが書かれていて
奔放でミステリアスなイメージの長女の謎が少し解決した

三姉妹は仲が悪そうだけど、根っこのところで父親との思い出で結ばれているのだろうなと思った

カリフワトーストも腰の強いうどんもツヤツヤ炊きたてご飯もどれも大好きだ

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2025年03月12日

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あなたは、”朝・昼・晩で業態がガラリと変わる”というお店にピンとくるでしょうか?

人によって一日24時間の使い方はさまざまだと思います。とは言え、会社員の方であれば出勤、退勤時刻を元にほぼ決まりきった時間の流れの中で毎日を送られているでしょう。そんな私たちが日々訪れる場所は必ずしもあなたが普段目にしている姿が全てとは言い切れません。時間帯によって提供するサービスが変化していく場合があるからです。また、そんなお店で働いている人だって同じではないでしょう。シフトによって一日の中でお店の人もどんどん変わっていきます。

とは言え、業態そのものに変化はないはず。『讃岐うどんの店』が『モーニング』を出したり、まさか『スナック』に変貌したりするなんてことはありえないはずです。でも本当にそんなことが絶対起こらないと言い切れるでしょうか?

さてここに、朝は『モーニングのみの喫茶店』、昼は『うどん屋』、そして夜は『スナック』に変貌するというお店を舞台にした物語があります。『三人姉妹』がそれぞれの時間にそれぞれの”食”を提供する様を見るこの作品。そんなお店に通う人たちを描くこの作品。そしてそれは、ひと癖、ふた癖ある人物たちの饗宴を見る「三人屋」の物語です。

『ずっと閉店している、と思っていた』と、『ラプンツェル商店街の真ん中あたり』にあり『ガラス窓を覆った蔦やシダでほとんど中は見えな』かった店の『蔦がきれいさっぱり取り払われ、窓が磨かれている』のに気づいたのは森野俊生(もりの としき)。蔦に『覆われていたドアの上に「ル・ジュール」とカタカナで書かれた真鍮の看板』のかかったそのお店は『日々、元気を取り戻し』ます。そんなお店に『会社の出戻り四十女の野間さん』のことを重ねる俊生は、『一か月ほど前に社内の飲み会のあとで、彼女のアパートで寝てしまったこと』を思い出します。そんなある日、『店から若い女性が出てき』て『ドアノブに小さな看板をかけ』るタイミングに遭遇した俊生。『きゅっとしまった腰に目が吸い寄せられる』俊生は『モーニング 六時から十一時 三九〇円』と書かれているのを見て『やってます?』と声をかけました。『あ、やってますよ、どうぞ』と『笑顔でにっこり』と招き入れられた俊生ですが、『店に入ると、カウンター席にずらりと大小の男たちが座っていて、少しひる』みます。『初めての方ですよねえ』と『微笑みながら水を出してくれた』彼女に『あの、モーニングって?』と訊くと『コーヒーと焼きたてパンのセットです…』と説明する彼女は細かくオーダーをとってくれます。『朝日ちゃん、コーヒーのおかわりちょうだい』という老人の声に『はあい』と返事をする彼女の声を聞いて、『あさひ、というのか、きれいでさわやかな名前だな、と思』う俊生は、『名は体を表す、いい見本だ』と感じます。そして、『ほどなく、俊生のパンとカフェオレが運ばれてき』て、『パン、おいしいですね』と食べ始めた俊生は満足感の中に店を後にします。そして、『ちょくちょく「ル・ジュール」で朝食を食べるようになった』俊生。
場面は変わり、『会社近くの居酒屋で歓迎会』が開かれ『三十分ほど遅れて会場に着』いた俊生が『上席の部長課長』を『避けるように末席に座る』と、『すかさず野間幸子が彼の隣にいざり寄ってき』ます。『森野君、なに飲む?』と寄ってきた野間を見て一か月ほど前のことを思い出す俊生。『ちょっとした数字の間違いを次長に注意された』俊生が『小さく舌打ち』した音が『しんと静まりかえっていた部屋の中に響き渡』ってしまいます。『しまった』という事態の先に『針のむしろの日々』を送ることになった俊生。そんなある夜、『気にすることないですよ』と話しかけてきたのが野間でした。『大丈夫。次長には私から言っとく』と言う野間に『どういう関係なんだ?』と思うもありがたく感じた俊生は『ちょっと飲んでいきます?』と声をかけます。そして、翌朝、野間の家で目覚めた俊生の前には『旅館の朝食みたいな、本格的な和定食がテーブルに並んでい』ました。それからしばらくして再び『野間幸子のアパートで、彼女のかいがいしい愛撫を受けていた』俊生は、やがて『ことが終わ』ってとろとろと寝てしまいます。そんな時、『起きて、森野君、起きて』と揺り起こされた俊生。『起きて。次長が来てる』という言葉に『頭が一瞬でしゃきっとした』俊生は『急いで』、『ベランダに出て』と押し出されます。いつまで経っても部屋に入れないどころか『二人の愛の嬌声が聞こえ』てくる始末。『ここは耐えるしかない』と頑張る俊生でしたが、翌朝『体が冷え切って目が覚め』ると、そこが二階ということもあって『ベランダを伝って降りま』した。『部屋に戻って』半休の連絡を会社に入れた俊生は『一眠りして、昼前に起き』ると家を出ます。そして、『「ル・ジュール」の前を通った』俊生は『モーニング以外の時間で「ル・ジュール」を訪ねるのは初めて』という中に店の扉を開けます。『朝日の姿はなかったが、カウンターの席に座』り、『さあて、何にしようかな、と顔をメニューの方にまわしてぎょっと固ま』ります。『うどん、三九〇円、と一言だけ書いてある』そのメニュー。『慌てて周りを見回す』と、『なんと、他の客たちは皆、ずるずるとうどんをすすってい』ます。『間違った店に入ってしまったのだろうか』と思うも『店はいつもの「ル・ジュール」だし、調度品も同じ』です。『その時、三角巾で髪を包んだ、無表情の女が伝票を片手に彼の前に立』ち、『何玉?』と尋ねます。繰り返し問われ、『え?あの…トーストは?』と訊く俊生に『はあ?トースト?ありませんけど?』と答える女。『じゃ、コーヒー』、『ありません』、『朝日さんは?』、『朝日?はああああん?』という言葉と共に『顔をしかめて、大きな舌打ちを』する女性は、『で?どうしますか?』と、『女看守のように腰に手を当て』ます。『じゃ、うどん…』、『ふ、ふたたまで』…とあたふたと注文する俊生。『ほどなく、どん、という音とともに、目の前にうどんが置かれ』ました。『よく混ぜてください』と『女看守』に言われ、『素直に言葉通り混ぜ』る俊生は、汁をすすると『うまいなあ』と『思わず、声が出』ます。『朝、昼、晩』で三つの顔を持つ『三人屋』を舞台にした物語が描かれていきます。

“朝は三女・朝日の喫茶店、昼は次女・まひるの讃岐うどん屋、夜は長女・夜月のスナック ー 朝・昼・晩で業態がガラリと変わるその店は、通称「三人屋」。やって来るのは、三女にひと目惚れしたサラリーマン、出戻りの幼なじみに恋する鶏肉店主、女泣かせのスーパー店長など、ひと癖ある常連客たち。三姉妹が作るごはんを口にすれば、胃袋だけじゃなく、心もたっぷり満腹に!?心とお腹にじんわりしみる、美味しい[人情×ごはん]エンタメ!”と内容紹介にうたわれるこの作品。原田ひ香さんの人気作の一つであり、続編も刊行されています。

原田ひ香さんというと、代表作の一つでもある「ランチ酒」など、”食”を前面に押し出した作品がすぐに思い浮かびます。上記した内容紹介、そして美味しそうなイラストの表紙からこの作品も”食”が登場することがわかりますが、それ以前に”朝・昼・晩で業態がガラリと変わる”という記述が気になります。同じ場所で”食”を提供してもその内容が変わるお店はリアル世界にもあります。そして、小説の世界もそれは同様です。私が読んできた小説の中では伊吹有喜さん「BAR追分」シリーズがそれに当たります。新宿伊勢丹近くの路地の奥で”昼はバールで、夜はバー”と営まれる「BAR追分」を描く物語は昼と夜で違う姿を見せるからこその演出をもって描かれていきます。そして、この原田ひ香さんの作品はそれが3つに変化するというさらなるバリエーションを見せます。これは面白そうです。では、まずはそんなお店『ル・ジュール』がどんなお店かを見てみましょう。

 ● 『ル・ジュール』ってどんなお店?
  ・元々は3人姉妹の両親が喫茶店を営んでいたが両親が亡くなったことで、三人がべつべつの店を始めることにした
  ・『朝、昼、晩と営業形態が違う』
   朝: 朝日が担当、モーニングメニューのみの喫茶店
   昼: まひるが担当、讃岐うどんの店
   夜: 夜月が担当、スナック
  ・モーニングは十一時まで、ランチうどんは十一時半から、夜の開店は七時
  ・『ランチタイムのまひるの店が一番苦戦している』
  ・『「ル・ジュール」なんて誰も言わねえよ。あそこは「三人屋」』

おおよそのイメージが伝わったかと思います。では、『朝、昼、晩と営業形態が違う』というそんなお店で供される”食”の描写を少し見てみましょう。朝日の営む『モーニング』の『トースト』の描写です。

 『厚切りで、こんがり焼けている。さくっと食いちぎった。
 「う」
  半分にカットされているのに、手に持った時、ずしりと重い。焼いた表面はかりかりだが、中はしっとりときめ細かく舌にからみつく。フランスパンの白い部分のようで、もう少し軽い。官能的なトースト。そんな言葉があれば、だが。バターの塩気が利いている』。

流石の原田ひ香さんです。『トースト』一枚をこれだけ美味しそうに描写されるとこれはたまりません。

 『うまい。トーストってこんなにうまかったか』

主人公の満足する様子が説得力をもって伝わってきます。次は、まひるの営む『讃岐うどん』も見ておきましょう。

 『どんぶりの中にすらりと白いうどんが入っている。その頂点に細かく細かく切られた刻みネギ、ぽっちりの大根おろし、白ごま、すだち半かけが載り、底に汁が入っている』。

見た目を単純に羅列しているだけとも言えますが、なぜか美味しそうなうどんが目に浮かびます。

 『うどんは硬いと言っていいほど腰があり、喉越しが冷たい。すだちの酸味が利いている。大根おろしはわずかに辛い。それがまた、全体にいい刺激を与えている。麵を嚙めば、甘みがある』。

そして、このように鮮やかな食レポが続きます。見た目、そしてこの食レポと、文字を読んでいるだけなのになんだか食欲が刺激されます。これはたまりません。期待に違わない”食”の描写がここに存在します。

しかし、しかしです。この作品の中心は”食”ではない、それが読後私が感じたことです。確かに上記したような”食”の描写が登場しますが、その分量が、例えば「ランチ酒」などに比べると圧倒的に少ないのです。”食”を楽しみに選書された方には少し肩透かしを食らう感じはあると思います。そして、この作品の本来的な魅力は、書名の「三人屋」にあるのです。つまり、一つのお店を『朝、昼、晩』にそれぞれ営む『三人姉妹』に光を当てていく物語、それこそがこの作品の中心に流れるものなのです。この世の兄弟姉妹のパターンはさまざまです。この世の数多の小説にもさまざまなパターンが登場しますが、その中でも『三人姉妹』は独特な雰囲気感に魅了されるものがあります。ここに『三人姉妹』に光を当てる物語をまとめておきましょう。

 ● 『三人姉妹』に光を当てる物語
  ・綿矢りささん「手のひらの京」: 『本音でぶつかってるけどあまり喧嘩しない』京都に暮らす奥沢三姉妹を描く物語

  ・山崎ナオコーラさん「ニセ姉妹」: 『私と姉妹になってください』という先に松並姉妹と「ニセ姉妹」の対決を見る物語

  ・恩田陸さん「夏の名残りの薔薇」: 『彼女たちは作り話をするのが習慣なのだった』という沢渡”曲者”三姉妹を描く物語

いずれもそれぞれに味わい深い物語ばかりです。そんな作品群の中にあってこの原田ひ香さんの作品は、それぞれの形態で店を営む志野原家の『三人姉妹』が描かれていきます。簡単に見ておきましょう。

 ● 志野原『三人姉妹』について
  ・夜月: 三十五歳、人生の大半は家出している
    → 作品中の見出し表記 ”●○○”

  ・まひる: 三十二歳、既婚、二児の母
    → 作品中の見出し表記 ”○●○”

  ・朝日: 二十三歳、大学生
    → 作品中の見出し表記 “○○●”

長女・夜月と三女・まひるの間に十二年もの差が開いているのが大きな特徴ですが、それにもましてこの『三人姉妹』はこんな関係性にあることが説明されます。

 『朝日とまひるが必要最小限の言葉を交わすようになったのは、最近のことだ。店を開ける前は考えられなかったし、長女の夜月とまひるは今でも口を利かない』。

なんともキョーレツです。一つのお店を『朝、昼、晩』に分かれてそれぞれの店を営業しているという理由がここにあります。そうです。この作品はそんな前提のもとに『三人姉妹』の関わりを描いていくのです。

そんなこの作品は5つの短編が連作短編を構成しています。共通点は上記でご紹介してきた通り、志野原『三人姉妹』と彼女たちが営む「三人屋」にあることは間違いありません。しかし、5つの短編につけられた短編タイトルは、あれれれれ?という様相を見せます。目次を見てみましょう。

 1. 森野俊生(26)の場合
 2. 三觜酉一(52)の場合
 3. 飯島大輔(36)の場合
 4. 桜井勉(32)の場合
 5. 志野原辰夫(故人)の場合

お分かりいただけるでしょうか?それぞれの短編で主人公となる人物がそこに記されています。もちろん、短編中では、志野原『三人姉妹』にも視点が移動し、彼女たちの物語が描かれていくのですが、それとは別にここに挙げた5人の男性の物語も描かれていくのです。志野原『三人姉妹』の父親が登場する『5』は少し赴きが異なりますが、それ以外の物語では、それぞれの人物が「三人屋」を訪れることから物語は始まります。

レビュー冒頭でご紹介した森野俊生を例にすれば俊生はたまたま朝日が営業する朝の『モーニング』のお店を訪れます。朝日のことがすぐに気になるようになった俊生ですが、会社では年上の野間との間で微妙な関係性をもっていることが描かれていきます。それはまさしく会社員である野間の日常が描かれる物語です。一方で「三人屋」に訪れた俊生の目を通して朝日、まひるの人となりが描かれてもいきます。その他の短編も基本的な考え方は同じです。当該短編に登場する男性視点で見る「三人屋」と、そんな店を営む『三人姉妹』それぞれの視点から見るお互いを見る物語が絶妙な塩梅で描かれていきます。そんな物語は、作品冒頭から少しずつ匂わされていくある事がらが一つの伏線となって盛り上がりを見せていきます。『三人姉妹』の繋がりを見るその結末。そこには、それぞれに強い個性を持つ『三人姉妹』のこれからの人生を暗示する、そんな物語が描かれていました。

 『ここの三人姉妹はどれも一筋縄ではいかねえよ』

一つのお店を『朝、昼、晩と営業形態』を変えて『三人姉妹』が営む中に「三人屋」と呼称されるようになった『ル・ジュール』。この作品ではそんなお店に集う人たちの日常と、『三人姉妹』の関係性を見る物語がテンポのよい視点移動の中に描かれていました。それぞれのお店の”食”を楽しめるこの作品。『三人姉妹』ものの面白さを堪能できるこの作品。

結末のまとめ方にう〜ん…という思いが残りはするものの、全体としてはサクッと気軽に読める、原田ひ香さんらしい作品でした。

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2025年03月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトル通り、三人姉妹が朝、昼、夜の時間帯で別々の品を出すお店の話。
朝は三女の朝日、昼は次女のまひる、夜は長女の夜月という様に時間と名前が一致してるのも素敵!

読み始める前の想像では、仲良しの姉妹たちが協力して営んでいるお店で食べ物の暖かい力でお客さんの悩みを解決していくようなグルメ小説かと思っていましたが
姉妹たちは不仲だし、どちらかと言うと店のお客さんの物語を織り交ぜて話が進んでいくのも予想外で面白かったです。

最初の印象では若くて美しく元気な女子大生!という感じの朝日ちゃんも、話が進むにつれて家族にしか見せないドライな面が出てきたりするのがリアルでした。
酉一さんが靖子さんと無言で鍋をつついて理解し合うシーンがとっても好きです。肉屋同士でしか伝わらない世界・・・

続きも読みます!

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2024年12月12日

Posted by ブクログ

美味しい物を食べて身体も心も癒される系の内容かと思っていたけど、全く違った。商店街の閉鎖的でプライバシー全く無い感じとかシャッター街の少し煤けたような人の少し薄暗い部分を見るような内容。みんなそれぞれ頑張ってるのに報われない虚しさも。最後少しだけ光が見えたような。

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2024年09月01日

Posted by ブクログ

表紙の絵といい最初の展開といい、オッサンやらなんやらがいい感じに癒されたりする話かと思いきや。
いやかなりのドロドロっぷりで。いや大人は子どもに泥だらけになって何やってんのとか言うわけですけど、大人も泥んこ遊びは大好き、っていうか嫌よ嫌よも好きのうちっていうか、もうどうしようもないな感が堪らんですよ
全体的にイケメン及び美女が揃っている設定なので、不幸になっていく実感がないのが問題。ここは温水洋一とか大久保佳代子あたりを思い浮かべながら読むとより親近感が湧くのではないか。

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2024年07月20日

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タイトルから想像して、三姉妹が仲良く営む料理屋の物語かと思ったら珍しい営業形態のお店が舞台で面白かった。商店街の人々の恋愛事情が複雑だった。
最終的に、父のレコードが手に入りほっとした。

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2024年06月09日

Posted by ブクログ

あっという間に読み終わる。いつも通りこの著者はどんどん進む。三姉妹の話と取り巻く男たちの話しなのだが、いつもながら女子の心の中の語りが素晴らしい。
例えば朝日の朝と夜の客の距離感の記述が秀逸だった。
マイナス1は最後の夜月のくだりからエンディングまで。何それ?ってとこが不満。
でも、次作があるそうなので、楽しみ。

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2024年05月25日

Posted by ブクログ

勝手に仲良し3姉妹がやってる店かと…
3姉妹それぞれ違った魅力があっていい。それなのに大輔とそれぞれエピソードがあったり。ラプンツェル商店街に全てが筒抜けな閉塞感と、客として来てくれるアットホームな感じ。いい面も悪い面もという感じがリアルでいい。まひるが夜月にコンプレックスあるのもいいし。思った以上に夜月が危なっかしくて最後読むまでハラハラだった。

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2025年11月20日

Posted by ブクログ

久しぶりに再読。反目していても、どこか通じ合う、こんなに心温まる本だったのかと再認識した。朝日がモーニングの内容を説明するシーンが好き。朝日のモーニングの常連になりたいな。

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2025年11月16日

Posted by ブクログ

物語に出てくる食べ物が美味しそうだった。3人姉妹のそれぞれの性格の違いや関係が徐々に変化していくところには面白さを感じました。別のシリーズも気になります。

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2025年11月08日

Posted by ブクログ

こんなお店があったらいいなと思うくらい食べ物の描写はワクワクした。
さらっとは読めたけれど、三姉妹以外の登場人物の結末がどうなったのか気になってしまった。きっと幸せであると思いたい。

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2025年11月08日

Posted by ブクログ

父の残した店で三姉妹それぞれ朝昼晩で別の飲食店として営業する三人屋。
男女間のもつれ、姉との確執など人間関係はままならないことばかりで、ハッキリとした答えや正解はない。そういうのが人生だよなぁと読んでしみじみ思った。

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2025年10月31日

Posted by ブクログ

商店街にある、三人姉妹が営むお店が舞台の話。
三人姉妹が仲良しなのかと思いきや、予想を裏切り仲が悪いというのが面白さのひとつ。
三姉妹が作るパン、うどん、ご飯がそれぞれ美味しそう。軽く読めて気分転換に良い。続編も読もうっと!

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2025年10月10日

Posted by ブクログ

あらすさざだけ読むと三人姉妹が仲良くひつつのお店をやっているんだろうと思っていました。
でも、じつはそうではなくて三人、仲が悪いことに驚きました。
それでもモーニングは朝日、昼はまひる、夜は夜月と考えてやっているとこほが素敵だと思いました。
私は真ん中っ子なのでまひるに感情移入してしまいます。
相変わらず原田ひ香さんの料理の描写は素敵だなと思いました。

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2025年09月23日

Posted by ブクログ

三姉妹の、三女がモーニングの時間帯にパンを、お昼は次女がおうどんを、夜は長女がスナックでごはんを提供…一つのお店なのに、時間帯ごとにお店が変わっている???
炭水化物祭会場はこちらですか??笑

出てくるごはんは全部、美味しそうだった!
特に、モーニングのパン!
ブロイラーを使った鶏鍋も、、、あ~おいしそう!
適材適所って言葉があるとおり、こだわりすぎないことも人生においては大切なのかもしれない。

人物的には、スーパー経営している幼馴染が、なんていうか、好きになれなかった。
こういう人がいることで救われている人もいるんだろうけど。
長女の突飛な行動にも、ちょっと引っかかったり。
出てくる人に、あんまりハマれなかったのが残念。
あと、もうちょっとごはんシーンがあったらいいのになあ~、ちょっと寂しい気持ち。

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2025年06月11日

Posted by ブクログ

料理など食べ物が出てくるお話が好きで、こちらもそれを期待して購入。
確かに飲食店を経営する三姉妹のお話なので食べ物は出てくるけれど、それほど魅力を感じるに至らず…。
さらに、登場人物の誰にも共感も感情移入もできなかった。
シリーズもののようだれけど、読まないかな。。。?

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2025年02月23日

Posted by ブクログ

白いご飯が、
うどんが
厚切りトーストがやたらに食べたくなる(笑)炭水化物ぱかりやん
という感じの食べ物&下町の人情話
みんな、少しだけ不幸で幸せに日々が流れていく。
父のレコードの下りはちょいわかりにくい気がしたが、三姉妹の繋がりにはかかせないのかな。
三姉妹と言えば(笑)大輔か
大輔の優しすぎる情けなさがなんとも言えない

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2025年02月22日

Posted by ブクログ

面白いし読みやすい…のだけど、なんか心に残らない。多分夜月さんの行動がよくわからず、他の2人の姉妹の掘り下げも深くないからかもしれない。

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2025年02月19日

Posted by ブクログ

姉妹が個性的なため、想像しやすく読みやすい。
商店街というスモールワールド感が私は体験したことないからこそ、面白かったが感情移入しにくいな〜と感じた。

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2025年01月27日

Posted by ブクログ

読み終わってまず思ったことは、「三人屋が近くにあれば毎日通う」
朝のトーストも、昼のうどんも、夜の呑みからの〆も魅惑的。

食事のおいしさの描写はキラキラしてて、すごく魅力的なのに、他の描写は寂れたグレーのイメージが強くて、読み進めてもその色はずっと拭えなかった。

人間の弱さや怒りなどが具現化したような三人姉妹の気持ちが分かるわーとなったり、三人姉妹の行動に人間の強さを感じたり。

最後だけ、ちょっと感じてたグレーが晴れる気がして、結局三人姉妹に元気付けられた気がするな。

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2024年11月16日

Posted by ブクログ

短い商店街の中ほどにある喫茶店の娘なら
あることないことウワサに想像をトッピングして
育っていくことは容易に想像できる。
街を出るとき、薄紙を剥がしていくように
「〜の娘」が取れていくのに、親の残した
その場所から離れれれないのが、私には不思議。

行き場のない年寄りや責任持たない男の
溜まり場で、3姉妹の生活が支えられているのは
優しい地元愛というわけではなさそう。

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2024年09月29日

Posted by ブクログ

美人な三姉妹。でも仲は悪い。それでもやっぱり原田ひ香さんの作品なので、ほっこり安心して読み進められました。最終話だけ、そんな綺麗事だけでは済ませてくれませんでしたが。。
私にも姉と妹がいるので、自分ならどう思うか、どうするか重ねながら読めて、楽しかったです。

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2024年09月23日

Posted by ブクログ

 ほのぼのタッチの連作短編集。一話目では外からの目で「三人屋」を紹介し、次第次第に、三人姉妹の内側に入り込んでいく構成、ちょっとした謎が徐々に明らかにされていく構成は、よく計算されている。読んでいるうちに、なんとなく飽きる感じもするけど、一方で、いつでも気楽に読める感じもある。

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2025年12月07日

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