小野田和子のレビュー一覧
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この卷で世界の仕組みと状況は、ある程度は分かります…。が、この世界が抱える問題は全く解決しません。そして、暗いです。(※ですが、面白いです。色々謎のピースがはまったとき、また、この巻のラストは、えーっ!と声が出てしまいました。)
続きの翻訳も出るようなので楽しみにしています。
また、多くの方が書かれているように、初めの3分の
1くらいまではかなり読みすすめるのが大変です。
サイアナイトという女性が出てくるあたりからかなり世界の状況が分かるようになります。前半は読み流すような感じで読むのがオススメです。
また、LGBTQ+に対してかなり配慮された(というか、この世界ではそうした人たちが自然に溶け込んだ)内容です。また、その他、(この物語の中の価値観におけるものですが)差別についても、表現にかなり生生しさを感じます。著者のバックボーンもあると思うのですが、かなりのリアリティがあり、自分の住む日本と海外(アメリカ)との差別に対する認識の違いに気付かされました。
文化人類学的なSFのストーリーも勿論面白いのですが、私達はもっと差別から自由になってもいいと感じさせられる内容です。興味を持たれた方は是非ご一読を! -
Posted by ブクログ
ネタバレ出会ったかもしれない。
N・K・ジェミシン、覚えよう。
近所のセレクションセンスがいい本屋さんで発見。
「前人未到の三年連続ヒューゴー賞受賞」が気になり手に取った。
「では、世界の終わりの話からはじめようか。」
というダサいコピーは無視して(が、しかしこれは物語の一行目だ)ヒューゴー賞のセンスを信じ(今のところ割と信頼できる)。
こういう本との出会いはネットショップではできない。
なかなかの長編だけれど、一気に読んだ。
所要時間1.2日くらいかな。
こんな没入は久しぶり。
世界観がしっかりしており、エンターテイメント性もあり、最後に読者を驚かせるポイントもあり、つまりそのための構成の計算も丁寧にされており、加えて各登場人物のキャラクターもしっかり立っており素晴らしい。
そういう意味では私は主人公の一人、サイアナイトがあまり好きじゃない。
余計なことをするタイプ。
まあキャラクターだ。
描かれる世界に関しては、巻末に用語集や歴史上の「季節」への説明があるなど、かなり綿密にデザインされている模様。
なので(第一部を読む限りに置いては、)物語上の破綻はない。
ジェミシンは細かい説明はしないタイプの人なのだろうか。
説明くさい文章はないが、時に理解するために頭を、というか推理(推測の方が正しいかも)が必要とされるシーンがちらほら。
結局それは何が起こったのか?
が明記されず、次のセクションでは過去のこととして語られる。
会話から大体想像するが、確信は持てない。
この辺りは、まあいいや。と思わないと次に進めない。
ほほー、と唸ったのが伏線の回収。
三人の女性がパラレルに描かれるが、その三つの世界が実は一本の線の異なる時代だ、ということが次第に判明していく。
そこも、まあまあ「なるほど」と思わせる仕組みなんだけど、最も感心したのは、三人の女性のうちの一人のパートで用いられている二人称。
他の二人は普通の三人称(名前)で語られるのに、一人、三人の中でも恐らく最も主人公格と思われる人のパートでは「あんた」という二人称が使われる。
これがちょっとぎこちない感じがしてずっと気になっていたんだけど、ちゃんと理由があることが最後に判明する。
これは想定外で「お見事」と言わざるを得ない。
そうか、そうきたか。
★5じゃないのは、完結していないから、が大きいかな。
結局オベリスクがなんなのかわからないし、ストーリーも終わっていない。
三部作って言うか、一作品の上・中・下の方が正しいのでは…?
まるでBTTF2の終わりみたい。
一作品ならちゃんと完結しようよ。
しかも。
残りの二作まだ発売していないらしい。
2021年秋って、一年後な気がするんですけど気のせいですかね(今は2020年9月)。
悶絶。
今私たちが住んでいる世界とは異なる世界なので(でも地球らしいけど)、言葉も少し違う。
「神」的な意味で「地球」という言葉が使われるし、恐らくけなし言葉、「くそっ(英語ではShitとか、OMGも含むかも)」のような感じで「錆び」という言葉が使われる。
読んでいけば意味はわかるんだけど、なんかもうちょっといい訳なかったかな?
訳のぎこちなさを感じるというか、ナチュラルな感じがしないというか。
でもこれらの用語にニュアンスを乗せるのが難しいのは想像に難くない。
舞台は地球。
パラレルワールドなのか、古代の話なのか、未来の話なのか。
最後に「月」の言及があるから、未来かな。
一旦文明が滅びないとこういう世界にはならないだろうな。
私たちが住んでいるこの世界に第5の季節が訪れ、私たちの文明が消えたのか?
《破壊された地球》3部作だからそういうことか。
いろいろ謎も残るが、全ては残り二作目、三作目ってことか…。
ちょっと消化不良。
でも久々にこれぞと思える世界観を持った小説と出会った。
嬉しい。 -
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ネタバレ今世紀末ごろ?月面に半径500mアルミニウム・ドームに酸素を満たしてつなげたほぼ自給自足の居住施設ができて、観光収入を主な収入源としている。創業者にして“統治官”のフィデリス・グギの偉業。人口は約8000人、出産は地球でないとできない、以前12歳、現在16歳以上でないと移住できない。主人公ジャスミン(ジャズ)は、イスラム教徒で(非ギルド)溶接工の父と信仰を継がないこと&全財産をふっとばしたことで仲違いして家出して今はケチな宅配業をしている。膨大な報酬でデッカイ破壊工作を依頼され、
電子マネー社会が作品の書かれた時点では目新しいものだったろうが、現在の眼で見るとマイクロチップを生体埋め込みしない理由がわからない。 -
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2年ぶりのティプトリー作品は、装丁がこれまた印象的な「あまたの星、宝冠のごとく」。この作品、初訳にしてなんと2016年刊行。早川書房の創立70周年を記念する文庫企画「ハヤカワ文庫補完計画」の一環として発表されたようですが、没後30年を経過してなお読書を魅了し続けるティプトリーになんだか感動してしまったり。
本書は中期から晩年にかけての10篇を収録。2年前に読んだ「故郷から10000光年」に比べると、やはりどれも読みやすい作品ばかり。あのついていくのが大変な作風にちょっぴりの懐かしさを覚えつつも、とりわけ以下4作品が印象に残りました。
「ヤンキー・ドゥードゥル」
薬漬けの帰還兵を描いた作品で、なんだか現実世界でも起こりえそうな物語。本書はわりと後味の悪い作品が多く収録されていますが、本書もそんな作品のひとつ。躊躇ない展開が魅力。
「いっしょに生きよう」
本作品は『SFマガジン700【海外篇】』に収録されており、今回は再読にあたりました。初読の際はそんなにヒットしなかったのですが、今回なかなか印象に残ったのは、後味の悪い作品が多いなかで唯一(?)救いのある作品だからでしょうか。地球からの異星調査隊が奇妙な共生生物と出会う心温まる物語です。
「もどれ、過去へもどれ」
本書で一番好きな作品。
開発されたタイムマシーンは過去の自分と未来の自分を2週間だけ入れ替わらせることができる。いまや老いたドニーとダイアンは75歳の老夫婦。彼らは55年前、つまり当時20歳の自分と入れ替わることを決意。そして、20歳のドニーとダイアンは、彼らと入れ替わりに55年後の世界に到着する。驚愕の未来に当惑するふたりだが…
最後までハラハラドキドキしながら読み進めましたが、まさかあんな展開になるだなんて…後味の悪さは本書で随一でしょう。それだけに深く心に刻まれた作品でした。
「地球は蛇のごとくあらたに」
地球を男性として愛する頭のおかしな女性が主人公。女性のバカらしい言動に苦笑いしつつ、これまたなんだか救われない作品なのですが、バカな女のあの結末はむしろ喜劇なのかもしれないと思ったり。
さてさて、残るティプトリーの小説は、短篇集「老いたる霊長類の星への賛歌」と長編「輝くもの天より堕ち」のみ。読みたいけど、読み終えたくないという寂しい思いが胸中に。複雑な心境です。 -
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「ブラッド・ミュージック」で名高いグレッグ・ベアのネビュラ賞受賞の本書は、人類が火星移民を始めて100年後の22世紀後半が舞台。いまだ地球への依存が強い火星で沸き起こる独立の声。そんな情勢のなか、主人公キャシーア・マジュムダーは、ひょんなことから、火星統一を目指すドーブル知事への反対デモに参加する。キャシーアからすれば、デモは散々な結果に終わるが、彼女はそこでチャールズという好青年に出会う。デモへの参加、そしてチャールズとの出会いが彼女の人生に大きな影響を及ぼし、その数年後、彼女は火星統一を目指す立場として、この赤の惑星を背負って地球と対峙することになる…
あらすじのとおり、本書は地球に対する火星の独立戦争を描いた作品です。「地球からの独立」を描いた作品としては、ロバート・A・ハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」が真っ先に頭に浮かびます。本書を読み終わってみても、やはり類似点がいくつか見受けられましたが、解説によると、類似点はあれど単なる火星版「月は無慈悲な夜の女王」であるわけでなく、立脚点は異なるようです。とはいえ、どちらも「読ませる作品」であることに間違いはなく、本書も表題の真意が明らかになる中盤以降は食い入るように読み進めることになりました。
さて、主人公のキャシーアの職業は政治家。政治というと何だか堅苦しい作風になりそうな印象が強いのですが、本書はそんな先入観を見事に打ち壊し、むしろ大きな魅力に仕立てあげてすらいます。そしてこの魅力をうまく補うのが、緻密に築き上げられた世界観。火星開発の中心である「結束集団(BM)」と「家系」の存在は、主人公らの政治的動向を時に左右する味わいを見せ、テクノロジーを極める地球の偉大さ(横暴さとも)は、火星の独立をより困難なものとする壁として立ちはだかります。こうした幾つもの「しがらみ」がある世界だからこそ、政治の魅力が活きるのかもしれません。物語はまさに終盤、火星のトップとして重大な決断を下す主人公とその後の展開は、なんだか政治のおもしろい側面(人民のために行動する勇気とそれに反する人民の反応)をみているようで、単なるヒーローものでは起こりえない内容かと。 -
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ベアの「ナノテク」世界は面白いんだか面白くないんだか非常に微妙な感想を持っているのですが、こいつはちょっと違う。火星に植民し、地球の圧力に屈せず戦う人々の物語だ。解説でも指摘されている通り、ハインラインの「月は無慈悲な夜の女王」を髣髴とさせる設定。しかしたどる道は大きく違います。
月にしろ火星にしろ、生身のままでは生きていけない苛酷な環境です。その過酷さと(過去に生物がいたという設定の下の)神秘さについての描写はエンディングの一つの大きな感動の元になります。そんな環境で、できるだけ「生の」人間として生きようとしている火星人。一方で地球人は「セラピー」の影響下で冷静な判断力を身に着けている。主人公はそんな地球を体験し、地球の「母性」に包み込まれて自らの故郷を強く意識します。
そんな中、統一政府を作っていく火星。徐々に地球に対して従順でないと見なされていく中、事件が発生し、エンディングまで怒涛の展開で突き進んでいきます。SF的なアイディアは実に大風呂敷もいいところで(途中で更に大風呂敷を…すぐ畳んでしまいますが…広げて見せます)、それによって危機が起こり、しかし、それによって火星は救われます。主人公の一人称で進んでいく物語は、一人の成長物語としても読むことができますし、SF的ガジェットは相変わらず満載です。そしてそれが王道的に使われているのも物語自体の面白さに一役買っていると思います。