池澤夏樹のレビュー一覧

  • 南の島のティオ

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    子供の頃に読み、大人になって読み、何度でも爽やかな夏の空気とじんわりとした優しさを味わえる。また数年後に。

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    2024年08月16日
  • また会う日まで

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    朝日新聞連載小説をまとめたもの。作者の親、その叔父世代の話。海軍軍人で天文学者、そして敬虔なキリスト教徒であった秋吉利雄。日露戦争の後、さまざまな軍艦に乗り、順調に昇進。第二次大戦時は戦地には行かず、測量が仕事の水路部に所属する。戦前、ローソップ島での日食の観測にも出ている。キリスト教の信条と軍人の仕事とのはざまで悩み続ける。
    昭和天皇に、水路部の仕事は平時こそ大切だと言われ、それが戦後、水路部の資料を燃やせという命令を受けた時にこれに抗う決意を後押ししているのが興味深い。平時に使える資料として占領軍にすべてを渡したのだ。

    文学、地理、測量、非戦。スティルライフの頃からの作者の作品の来歴が浮

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    2024年07月07日
  • 真昼のプリニウス

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    ぐいぐい引き込まれるストーリーとは言いにくく、主人公の思索が多いため、ページ数のわりに読み進める時間を要したが、非常に充実した読後感であった。

    物語を排除して見つめるということは、科学に携わる者にとっても実はかなり難しい。文庫の解説が素晴らしい。

    しかし、紹介文がすごいネタバレであることよ。ストーリーとしてはそう書かなければならなかったのだろうけど。

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    2024年03月31日
  • 古事記ワールド案内図

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    池澤先生は、学者ではなく小説家。古事記の翻訳をしておられる。
    古事記をそのまま読んでも、人名の羅列だったり、どこまでが神話でどこからが歴史なのかわからない。池澤先生によれば、古事記は文学的ではないという。個々のエピソードは面白いものもあるのに、ぶっつり切れていたりして構成がない。そこで、読みやすい形に翻訳したとおっしゃっている。

    古事記の上巻は、主に天皇の系譜について書かれたが、まだ天皇たちは神であって、人ではない。
    中巻、下巻になると、天皇が歴史に登場するようになるが、内容は民話的、物語的になっていく。日本書紀は官吏が黙読で読み、歴史を勉強するもの、中巻、下巻の古事記は誰か(この時代は庶民

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    2024年03月27日
  • こどもを野に放て! AI時代に活きる知性の育て方

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    養老孟司さん 自然の中で身体を動かすことで無意識に教育を受けている

    中村桂子さん たとえ都会の真ん中でも、小さい子にとって、自然はいくらでもある

    池澤夏樹さん 遊びや余白にこそ、私たち人類の可能性がある

    三人の話はどれも、自然を特別なものとせずというより、人も自然の一部であることを感じることの大切さを教えてくれる

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    2024年03月05日
  • 古事記

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    今となっては複数ある現代語訳古事記の一つであり,膨大な固有名詞を上手く整理しているところが本書の特徴である。

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    2024年01月06日
  • 古事記

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    太安万侶にリスペクトして訳された池澤夏樹さんの『古事記』はとても禁欲的な文章なのではないかと思います。ということは、原典にたいへん忠実だということになります。2014年に「日本文学全集」の一冊として出されたものの文庫化で、そこにも「解題」を書かせてもらったのですが、今回、まったく別の内容で「解題」を書き下ろしました。

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    2023年12月03日
  • また会う日まで

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    ネタバレ

    クリスチャンで天文学者で、海軍少将だった秋吉利雄。池澤夏樹の父である福永武彦の伯父。軍人ではあるが、艦隊勤務ではなく、天測によって航路を知り航海暦を策定するのが主たる任務。タイトルはクリスチャンにはなじみのある聖歌の一節。聖公会は日本では少数派のクリスチャンの中でも、さらに少数派。七百ページを超える大部の小説で、クリスチャンのありようを語り尽くす作品は、日本文学の中でも稀有なこと。ミッションスクールの外国人宣教師が、戦時中の日本を語った文章はいくつも存在しているが、戦前、戦中、軍隊にあって、天文学者という合理を極め用とした人が、聖書で日常を語る人など、これまでなかった。この作品をキリスト教文学

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    2023年09月24日
  • 星の王子さま

    購入済み

    読みやすい

    本を読み慣れていない私でも読めたので、どんな人でも読めると思いました。

    #感動する #笑える #エモい

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    2023年07月11日
  • また会う日まで

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    海軍軍人、天文学者、キリスト教徒でった筆者の大伯父(祖母の兄)の一生涯、戦争に翻弄されつつ信念を貫き通した人生を描く感動作。

    全く前知識なく読み、実在の人物を描いた小説であったことを途中で知る。海軍兵学校では、ミッドウェーで空母飛龍艦長として戦死した加来止男と同期だった秋吉利雄。妻や子、当時の死亡率の高さには驚かされる。キリスト教徒として肉親の受け入れる、時に迷いつつも。

    朝日新聞に連載されたという大作。Mという友人の語る戦局があまりにも後世からの視点になっているところが気にはなるものの(少年Hのように)、それを差し引いても感動する作品でした。

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    2023年07月03日
  • みっちんの声

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    発売と同時に買ったのに,ずっと積ん読。
    まる2年以上も!
    きのう、雨に降り込められ、何となく読み始めたら
    止まらなくなった。
    よくぞ、買っておいたものよ、でかした2年前の私!

    当時は石牟礼道子を、ちょこちょこと読んでいたので買ったものの
    池澤夏樹が、ちょっとなぁ、若い頃好きだっただけに、最近は・・・と
    読むのをためらっている間に、まる2年!

    けれど『また会う日まで』で池澤長編を読み、
    池澤の本へのためらいが解けたところ
    なのも良かったのか。

    前置きが長くなってしまった。

    本書で、わたしは、大きな間違いをしでかしていたことに気づく。
    「苦界浄土」はルポルタージュだと思っていた。
    あれは紛

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    2023年06月03日
  • 科学する心

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    文系頭にやさしい科学エッセイ。
    世界は乗法的、冪的。加法で済むのは局地的な問題だけ、というのは分かりやすい。大気は無限というかつての信仰。福島から大気中にあふれた放射性物質を例にとり、「希釈は消滅ではない」という説明が池澤夏樹らしい。
    種は絶滅する。弱肉強食ではなく、適者生存。肉食獣は草食獣に生命を負っており、草食獣は植物に生命を負っている、というベクトルの向きもなるほど、だ。AIとロボットで人が単純労働から解放されても、余暇は平等には分配されない。失業者と過労者が増えるだけ。雇用する側にのみ恩恵をもたらす、というのは、農業と定住が結果的にヒトを忙しくしてしまったことと似ていないだろうか?

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    2023年01月08日
  • 夏の朝の成層圏

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    臨場感があって自分も漂流しているような気分になった。星や宇宙や内臓の話をミランダとしてるシーンが好き

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    2022年10月05日
  • あなたのなつかしい一冊

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    人には誰も座右の書を持っている。著名人にとって個人的な心の古典。毎日新聞の書評欄のエッセイ1 年分を取りまとめたもの。

    掲示される書籍のジャンルが多岐にわたり楽しく読むことができた。
    ただし、それなりに人生を読書に費やしたつもりだったが、ことの他読んでない本が多いことにガッカリ。まだまだ世の中名著が溢れている。

    それぞれ簡潔な中に的を得たエッセイ。読書の合間に少しずつ読むとさらに世界が広がる、読書の魅力の溢れた一冊。

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    2022年09月17日
  • 静かな大地

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    ボリュームもゴツく、アイヌに深く関わる文化物と敬遠する要素満点だが、読みやすく話の進め方も魅力的で退屈せず読めた。話の要所にフックがあり丁寧。
    池澤夏樹らしいスピリチュアルさも健在。

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    2022年09月03日
  • ぜんぶ本の話

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    ネタバレ

    父と娘の本に関する対談。
    羨ましい。

    私も、読んだ本について思う存分語り、読んでない本について存分に語られているつもりで、つまり第3の話者のつもりで読みました。
    もう本を読みながら心の中で語る、語る。

    だって児童文学、少年文学、SF、ミステリ、好きなジャンルの本ばかりなんですもの。
    比較的少年文学は読んでいないけれど。

    私はイギリスの文化(小説、音楽、映画)が好きなのですが、児童文学というのは圧倒的にイギリスが多いのだそうです。
    なるほど、子どもの頃イギリスの児童文学を読みふけった結果、すり込まれたんやな。

    物心ついた時から周りには本が当たり前にある環境で育った娘は、留学していた時、段

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    2022年06月07日
  • わたしのなつかしい一冊

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    こういう誰かにとってのなつかしい一冊や大切な本について書かれたものが好きなので、とても楽しく読めた。

    有名な一冊もあれば初めて知る本もあったけれど、本の紹介とともに語られる選者である作家の方々の思いを読んでいるうちに、一緒に記憶を辿っているような感覚になり、胸の奥がすーんとするような気持ちになった。

    特別な本との出会いというのは、一回読んだだけで心を鷲掴みにされる場合もあれば、気がつけばいつの間にか心の奥にあったと後から気付く場合など様々だと思う。だけどそれは出会おうと思って出会えるものではなくて、いつどんな本が自分にとっての特別な一冊になるかわからないところが、素敵だなと思った。

    それ

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    2022年06月03日
  • 終わりと始まり 2.0

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    折々に池澤さんが考えたたくさんの事を読みました。
    何かを感じても言葉にする前に過ぎてしまう時間を前に呆然としている自分が見えました。少しでも言葉にしてみたいと思いました。

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    2022年02月23日
  • わたしのなつかしい一冊

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    読書案内の本。

    毎日新聞に連載された書評欄より。新刊書の書評じゃなく、選者の思い出の一冊を紹介している。まず読みやすい。上質な紙。藍色だけ使った文字と挿絵。字体も、誰もが手に取れる読みやすさ。センスがいいが、何よりも。池澤夏樹さんの序文からして、上手い。この方は当代一流の読み巧者のお一人だけれど、この読書案内の面白さは、そこで決まらない。

    選ばれている本は硬軟取り混ぜいろいろ。とにかくまあ読んでみる。という、その行動だけを促す。そういう読書に向いている。というのも、序文で、『一度読んだ本が、今なら面白く読めるよ、と戻ってくる事がある』旨を書かれているのだけど、こういうことって本当にあるから

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    2022年01月29日
  • わたしのなつかしい一冊

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    毎週楽しみにしている新聞の書評欄の1コーナー。タイトル通り、書き手にとっての"なつかしい"1冊をエピソードとともに紹介するもので、往年の名作が登場することも多い。個人の体験や思いをからめて語られると、それぞれが唯一無二の光を帯びて見えるのがとても楽しく興味深い。
    執筆者は作家や学者、評論家、演劇や映画人などで、今の仕事に関連する本だったり、子供のころに読んだ本だったり。
    私が今読んでいるあれやこれやも、数十年経てば"なつかしい"ものとして何か書けるようなものになるのかなあ、と思ったりする。

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    2022年01月15日