池澤夏樹のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
再読。夏になると読みたくなる本。
小さな南の島に住むティオに会いたくなるのです。
10編の美しい短編集で、ティオと出会った個性的な人や物?幻想?がなんだか不思議でもあり、自然でもあり。いつの間にか心が豊かに満たされるのです。
すべての物語に魔法の匂いがするのに、受け入れてしまうのです。
たぶん、その昔、精霊たちと人間はうまくやってたのでしょうね。
街がコンクリートになって、すべてが理論や科学で立証されて、自然との対話がなくなって、見えなくなり感じなくなっちゃったんでしょうね。
ティオの棲む珊瑚礁の島には、まだこの魅惑的な精霊たちと魔法に満ち溢れていました。また読むことになるだろうな。 -
Posted by ブクログ
日本人に生まれたのだからと思って手に取った、我々日本人のルーツ。
初めての古事記。
脚注をこまこま読んでたせいか最初はなかなか内容が頭に入ってこず苦戦し、間があいてそれまで読んだ内容を忘れてしまったのをきっかけにざーっと読み返したら、流れが生まれて面白くなった。
やっぱり、神話の世界を描いた上巻が個人的にはおもしろい。ぶっとんだことが淡々と書いてあって。
中巻では神話の世界と地続きで歴史上の人物が出てくるので、歴代天皇たちまで神話の世界の実在しない人かのような気持ちに…。
下巻はTHE権力争い、という感じ。
下知識の足りない私にとって、時代背景や奥行きを知る手助けを大いにしてくれた脚注も、なんとも興味深く、ありがたい存在。(先に書いたように、まとめて読むやり方が私には合っていた)
他のを読んでいないので比べようがないのですが、とっつきやすく、大変読みやすい現代語訳なのではないかと思います。
わかりやすく書かれていることで、古代の話と思えないくらいの不思議な親近感。
登場人物たちの人間臭さよ。
あと、名前が雑な人とか性的描写とかがあからさまだったり、展開が早かったりして笑える。
敗者の物語がこうして残っているのはすごいことだなと思う。
最後の解説がまた、なんともよいです。
プレスト。 -
Posted by ブクログ
この本、どこかで読んだことがある。そんな気がした。内容ではない。見かけのほうだ。読みやすい大き目の活字で組まれた本文の下に、小さなポイントの太字ゴチック体の見出しに続いて明朝体で脚注が付されている。丸谷才一他訳による集英社版『ユリシーズ』のレイアウトそっくりではないか。まさか敬愛する丸谷の訳本に、自分の訳本を重ねたわけでもあるまいが、偶然とは考え難い相似である。考えすぎかもしれないが、古代の神々と英雄の冒険を語る『オデュッセイア』に擬した自作を『ユリシーズ』と名付けたジョイスにあやかるつもりか。たしかに、この「古事記」、日本文学の古典というよりもモダニズム文学の文体のほうに余程似ている。行替えやら一字下げやら括弧・カタカナを駆使した表記のおかげで、風通しのよいテクストとなった。
以前に訳者の父である福永武彦が書いた「古事記物語」(岩波少年文庫)を読んだことがあるが、子ども向けということもあって、幾百にも及ぶ神名・人名は主要なものを除いて省略されていた。今回の新訳で驚かされるのは、漢字とカタカナによる神名・人名表記の羅列だ。神のヒエラルキーをそのまま地に下ろして、地方の豪族の祖先を組み込むことで、反乱を繰り返す地方豪族を武力ではなく言葉の力によって懐柔し、従属させる意図があってのことだろう。乱れてしまっていた帝紀・旧事を正すという原著が持つ意味からもこの羅列は必須であった。ほとんど読み飛ばされるだろう箇所に、興味を持たせるためか、出身地方にあたる現在の地名が詳細な脚注に記されているのもうれしい。
こんなことでもなければ一生読まずにすませただろう「古事記」の中身だが、ヤマトタケルやオホクニヌシの話は誰もがよく知っている。神名・人名の羅列による系図の部分を除いたら、あとは神々や英雄の冒険、悲恋、裏切り、復讐の炎渦巻く物語の世界である。現代語訳のせいもあって、スピーディーな展開は驚くほど。あれよあれよという間に話は進んでいく。そのあっけなさを救うのが、所々に配された歌謡である。天皇らしく国見の歌もあれば、女に誘いかける歌もある。宴会の歌もあれば、名のりの歌もあって、元の歌を示した後に続けて現代語に訳した歌、そして脚注に詳しい解説が記されている。歌のリズムは原文、意味は訳、説明は脚注で分かる工夫。
神代の話は線が太くおおらかで力強い。糞尿譚やら、何かで女陰(ホト)を突く話やらが登場する話がやたら多いのには驚きもし呆れもするが、それが古代日本に生きた人々の心性というものなのだろう。温水洗浄式便座が愛されるには理由があったのだ。歴代天皇が登場するようになると、話はぐっと人間的になる。床下で遊んでいて自分の父を殺したのが天皇であったことを知り、復讐を果たす王子の話など、シェイクスピアの悲劇にでも出てきそうだ。実の兄妹どうしの悲恋や、負け戦を承知の上で筋を通して天皇に反旗を翻した臣の話等々、敗者に肩入れした記述が多いのは意外であった。読んでみるまでは歴代天皇の事跡を誇らしげに語ったものが多いのだろうと勝手に思い込んでいたのだが。代々に亘る血腥い闘争や姦計、裏切りに至るまであからさまな筆致で記している。
正月はもちろん、何かあるたびに伊勢神宮を参拝する宮家や政府高官の姿が報道されるのは、皇祖神とされる天照大御神をまつっているのが、伊勢神宮(内宮)であるからだが、意外なことに「古事記」には皇統でない出雲にまつわる話が多く採録されている。また、韓(から)との関係も古くから続くこともしっかり書かれている。戦前の教育に対する反省の上に立ち、戦後は教育の現場から神話が排除されてきた。「古事記」についても、日本史の中で触れられるにとどまり、真剣に中身まで読む機会がなかった。今回、世界文学全集に続いて、日本文学全集が企画され、その第一巻として「古事記」新訳が編者の手によってなされることになり、読むことを得た。訳だけでなく、組版やレイアウトなども読みやすいかたちになっていて、以後一般読者にとっては、これがスタンダードになるのではないかと思う。幅広い読者を得られるようになれば何よりだ。何かときな臭い時代である。だからこそ、誰もが自分の国の成り立ちや、そこに暮らしてきた人々のあり方に、誰かの目を借りることなく、自分の目で真っ直ぐに向き合うことが必要とされている。その意味でも時宜を得た出版であるといえよう。 -
Posted by ブクログ
面白い。。
古事記に関しては以前にこの本の解題として最後に
書かれている三浦佑之氏の書籍いらいですが。現代語訳
とはいえ、古事記をそのまま読めたことが、面白いと
思いました。
日本の神様はとっても人間臭いというか?ぶっとんでいて、天皇は女性ばかり追い求めていて。。
簡単に敵をほろぼしてしまうし。。でもその敗れた側
に対してのシンパシーを感じているところとか
とても面白く。やはり日本って、西洋・中国とは違うなあと思います。
また、この池澤直樹氏の個人編集とされる日本文学全集
は今後の配本を見ると、古典なり名作が現代語訳などで
、現代の著作者によって復活するというもので、
わくわくするものが多く。これは読みたいと思います。
たとえば。。
折口信夫の万葉集。江国香織の更級日記。
角田光代の源氏物語。内田樹の徒然草
いとうせいこうの曽根崎心中
とかとか。。。 -
Posted by ブクログ
ネタバレあらすじは、「彼」が遭難して、無人島で暮らす。以上。その生活を見事な文章で綴りあげています。情景描写と心境語りのバランスが非常に良くて、するする入ってきて、共感を生みます。
そして何より、詩的です。この作品を読んだことによって、ピタゴラスイッチ的に伊坂幸太郎の「重力ピエロ」の評価が下がりました。「重力ピエロ」は筋書きは面白くないけど、時々びっくりするほど詩的なことを言い出す、それが唯一良いところだと思ってました。しかし、「夏の朝の成層圏」を隣に置いたら陳腐に見えます。「重力ピエロ」は、台詞に詩を仕込んでくるので非常に違和感があったのですが、こちらの作品がそこのバランスがとてもいい(無人島なのでそもそも台詞がない)。
非常に感動しました。美しい小説です。買います。 -
Posted by ブクログ
明治維新直後、淡路島から北海道開拓を志し、静内に移り住んだ一族の歴史物語。
静内は今でも馬産地として有名であり、自分の生まれた町からもそれほど遠い場所ではない。おそらくは自分の祖先も、同じような道を歩んで来たのだろうと思うと、とても興味深く読む事ができた。
でも、もし自分が主人公の宗形兄弟の立場だったら、アイヌの子供と友達になれただろうか。周囲の反対を押し切ってまで、アイヌの人々と事業を起こす事が出来たのだろうか、と考えさせられた。
考えても答えは出ないが、もしかしたら他の和人同様にアイヌの人々を蔑んでいたかもしれない。
残念ながら自分は宗形兄弟やイザベラ・バードのような、立派な志は持ち合わせていないが、せめてクラーク博士が札幌農学校の生徒に説いたよう、紳士でありたいと思った。
現在、何かと領土問題で騒がしい世の中だが、国内にも存在した占領と搾取の歴史について、日本人の一人として決して忘れてはいけないと思う。