池澤夏樹のレビュー一覧

  • 古事記

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    古事記が敗者に寄り添う物語だというのが凄い。よくぞ現代まで残ってくれたという感じだ。
    まずは冒頭の訳者の「この翻訳の方針」を読んで欲しい。そして「太安万侶の序」。この流れにはすっかり感動してしまった。なんとなく日本神話でしょ、と思っていた感覚とは全く違って、人が紡いできた物語だということがよく分かる。古代と現代が直に繋がっていることを実感するたびに心が震える。

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    2016年06月30日
  • 南の島のティオ

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    再読。夏になると読みたくなる本。
    小さな南の島に住むティオに会いたくなるのです。

    10編の美しい短編集で、ティオと出会った個性的な人や物?幻想?がなんだか不思議でもあり、自然でもあり。いつの間にか心が豊かに満たされるのです。

    すべての物語に魔法の匂いがするのに、受け入れてしまうのです。

    たぶん、その昔、精霊たちと人間はうまくやってたのでしょうね。
    街がコンクリートになって、すべてが理論や科学で立証されて、自然との対話がなくなって、見えなくなり感じなくなっちゃったんでしょうね。

    ティオの棲む珊瑚礁の島には、まだこの魅惑的な精霊たちと魔法に満ち溢れていました。また読むことになるだろうな。

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    2016年06月16日
  • 古事記

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    現代語訳も注も読みやすく、全編通して飽きることなく読める。予想に反して、全般の神話部分のほうが自由奔放な発想で面白い。後半はどちらかというと皇位継承争いなどによっておこる悲劇を描いた話が多い。必ずしも天皇の正統性を誇示するような内容ではない。
    全般的にはかなりエロい話が多い。禁忌や社会常識が現在と異なることを前提に読むべきであるのは当然なのだろうが、であればチャタレイ裁判など噴飯物ではないのか。そのくらい描写が凄い。

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    2016年04月20日
  • 古事記

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    日本人に生まれたのだからと思って手に取った、我々日本人のルーツ。
    初めての古事記。

    脚注をこまこま読んでたせいか最初はなかなか内容が頭に入ってこず苦戦し、間があいてそれまで読んだ内容を忘れてしまったのをきっかけにざーっと読み返したら、流れが生まれて面白くなった。
    やっぱり、神話の世界を描いた上巻が個人的にはおもしろい。ぶっとんだことが淡々と書いてあって。
    中巻では神話の世界と地続きで歴史上の人物が出てくるので、歴代天皇たちまで神話の世界の実在しない人かのような気持ちに…。
    下巻はTHE権力争い、という感じ。
    下知識の足りない私にとって、時代背景や奥行きを知る手助けを大いにしてくれた脚注も、なんとも興味深く、ありがたい存在。(先に書いたように、まとめて読むやり方が私には合っていた)
    他のを読んでいないので比べようがないのですが、とっつきやすく、大変読みやすい現代語訳なのではないかと思います。
    わかりやすく書かれていることで、古代の話と思えないくらいの不思議な親近感。
    登場人物たちの人間臭さよ。
    あと、名前が雑な人とか性的描写とかがあからさまだったり、展開が早かったりして笑える。

    敗者の物語がこうして残っているのはすごいことだなと思う。
    最後の解説がまた、なんともよいです。
    プレスト。

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    2016年08月15日
  • 南の島のティオ

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    何年も前に読んだのを再読。
    内容はよく覚えていなかったが、好きだった&タイトルだけは覚えていたのでずっと読みたかった。
    思い出以上にすーっと入ってくる不思議な、でも世界のどこかにありそうな日常。すごく素敵です。
    きっと内容を忘れた頃、また読みたくなるんだろうなぁ。

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    2015年08月21日
  • 南の島のティオ

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    絵葉書をもらってみんなは行きたくなるけど、私はこの本を読んで行きたくなった。そして、来月ポンペイ島に行ってきます!

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    2015年06月09日
  • 古事記

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    この本、どこかで読んだことがある。そんな気がした。内容ではない。見かけのほうだ。読みやすい大き目の活字で組まれた本文の下に、小さなポイントの太字ゴチック体の見出しに続いて明朝体で脚注が付されている。丸谷才一他訳による集英社版『ユリシーズ』のレイアウトそっくりではないか。まさか敬愛する丸谷の訳本に、自分の訳本を重ねたわけでもあるまいが、偶然とは考え難い相似である。考えすぎかもしれないが、古代の神々と英雄の冒険を語る『オデュッセイア』に擬した自作を『ユリシーズ』と名付けたジョイスにあやかるつもりか。たしかに、この「古事記」、日本文学の古典というよりもモダニズム文学の文体のほうに余程似ている。行替えやら一字下げやら括弧・カタカナを駆使した表記のおかげで、風通しのよいテクストとなった。

    以前に訳者の父である福永武彦が書いた「古事記物語」(岩波少年文庫)を読んだことがあるが、子ども向けということもあって、幾百にも及ぶ神名・人名は主要なものを除いて省略されていた。今回の新訳で驚かされるのは、漢字とカタカナによる神名・人名表記の羅列だ。神のヒエラルキーをそのまま地に下ろして、地方の豪族の祖先を組み込むことで、反乱を繰り返す地方豪族を武力ではなく言葉の力によって懐柔し、従属させる意図があってのことだろう。乱れてしまっていた帝紀・旧事を正すという原著が持つ意味からもこの羅列は必須であった。ほとんど読み飛ばされるだろう箇所に、興味を持たせるためか、出身地方にあたる現在の地名が詳細な脚注に記されているのもうれしい。

    こんなことでもなければ一生読まずにすませただろう「古事記」の中身だが、ヤマトタケルやオホクニヌシの話は誰もがよく知っている。神名・人名の羅列による系図の部分を除いたら、あとは神々や英雄の冒険、悲恋、裏切り、復讐の炎渦巻く物語の世界である。現代語訳のせいもあって、スピーディーな展開は驚くほど。あれよあれよという間に話は進んでいく。そのあっけなさを救うのが、所々に配された歌謡である。天皇らしく国見の歌もあれば、女に誘いかける歌もある。宴会の歌もあれば、名のりの歌もあって、元の歌を示した後に続けて現代語に訳した歌、そして脚注に詳しい解説が記されている。歌のリズムは原文、意味は訳、説明は脚注で分かる工夫。

    神代の話は線が太くおおらかで力強い。糞尿譚やら、何かで女陰(ホト)を突く話やらが登場する話がやたら多いのには驚きもし呆れもするが、それが古代日本に生きた人々の心性というものなのだろう。温水洗浄式便座が愛されるには理由があったのだ。歴代天皇が登場するようになると、話はぐっと人間的になる。床下で遊んでいて自分の父を殺したのが天皇であったことを知り、復讐を果たす王子の話など、シェイクスピアの悲劇にでも出てきそうだ。実の兄妹どうしの悲恋や、負け戦を承知の上で筋を通して天皇に反旗を翻した臣の話等々、敗者に肩入れした記述が多いのは意外であった。読んでみるまでは歴代天皇の事跡を誇らしげに語ったものが多いのだろうと勝手に思い込んでいたのだが。代々に亘る血腥い闘争や姦計、裏切りに至るまであからさまな筆致で記している。

    正月はもちろん、何かあるたびに伊勢神宮を参拝する宮家や政府高官の姿が報道されるのは、皇祖神とされる天照大御神をまつっているのが、伊勢神宮(内宮)であるからだが、意外なことに「古事記」には皇統でない出雲にまつわる話が多く採録されている。また、韓(から)との関係も古くから続くこともしっかり書かれている。戦前の教育に対する反省の上に立ち、戦後は教育の現場から神話が排除されてきた。「古事記」についても、日本史の中で触れられるにとどまり、真剣に中身まで読む機会がなかった。今回、世界文学全集に続いて、日本文学全集が企画され、その第一巻として「古事記」新訳が編者の手によってなされることになり、読むことを得た。訳だけでなく、組版やレイアウトなども読みやすいかたちになっていて、以後一般読者にとっては、これがスタンダードになるのではないかと思う。幅広い読者を得られるようになれば何よりだ。何かときな臭い時代である。だからこそ、誰もが自分の国の成り立ちや、そこに暮らしてきた人々のあり方に、誰かの目を借りることなく、自分の目で真っ直ぐに向き合うことが必要とされている。その意味でも時宜を得た出版であるといえよう。

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    2015年04月15日
  • 古事記

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    面白い。。
    古事記に関しては以前にこの本の解題として最後に
    書かれている三浦佑之氏の書籍いらいですが。現代語訳
    とはいえ、古事記をそのまま読めたことが、面白いと
    思いました。
    日本の神様はとっても人間臭いというか?ぶっとんでいて、天皇は女性ばかり追い求めていて。。
    簡単に敵をほろぼしてしまうし。。でもその敗れた側
    に対してのシンパシーを感じているところとか
    とても面白く。やはり日本って、西洋・中国とは違うなあと思います。

    また、この池澤直樹氏の個人編集とされる日本文学全集
    は今後の配本を見ると、古典なり名作が現代語訳などで
    、現代の著作者によって復活するというもので、
    わくわくするものが多く。これは読みたいと思います。

    たとえば。。
    折口信夫の万葉集。江国香織の更級日記。
    角田光代の源氏物語。内田樹の徒然草
    いとうせいこうの曽根崎心中
    とかとか。。。

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    2015年01月31日
  • 古事記

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    もっと時間をかけてじっくり味わいたかったのだけれど読みやすいのだもの。順序は逆だけど勾玉の世界へ。仕方ないので次巻が出るまでしばし何度か味わいたいと思います。

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    2014年11月25日
  • 氷山の南

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    どのように生きるべきか?どのように自然と共生すべきか?
    というちょっと難しいことを考えさせる小説でありながら、
    冒険小説やミステリーのようなワクワク感もある、読んでて楽しい本です。
    すごく価値のある本だと思う。
    読めて良かった。

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    2014年10月24日
  • 氷山の南

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    南極の氷山を曳航して、水資源として利用しようとする計画を担う船にこっそり乗り込むジン。様々な国籍の乗組員や港で知り合ったジムと交流する中で色々な経験を積む彼は少しずつ人として出来上がっていく感じがする。

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    2014年10月05日
  • 氷山の南

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    池澤夏樹の視点が基本的に大好きなせいか、とても楽しく読めた。テーマも大きく、ちりばめられたエピソードも楽しい。風力発電のお話とともに大好きな本になりました。

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    2014年09月06日
  • 夏の朝の成層圏

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    ネタバレ

    あらすじは、「彼」が遭難して、無人島で暮らす。以上。その生活を見事な文章で綴りあげています。情景描写と心境語りのバランスが非常に良くて、するする入ってきて、共感を生みます。
    そして何より、詩的です。この作品を読んだことによって、ピタゴラスイッチ的に伊坂幸太郎の「重力ピエロ」の評価が下がりました。「重力ピエロ」は筋書きは面白くないけど、時々びっくりするほど詩的なことを言い出す、それが唯一良いところだと思ってました。しかし、「夏の朝の成層圏」を隣に置いたら陳腐に見えます。「重力ピエロ」は、台詞に詩を仕込んでくるので非常に違和感があったのですが、こちらの作品がそこのバランスがとてもいい(無人島なのでそもそも台詞がない)。
    非常に感動しました。美しい小説です。買います。

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    2014年09月01日
  • 南の島のティオ

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    夏の日の読書にぴったり。
    子供の頃の、海で友達と遊ぶ時のあの楽しさとか、水に潜った途端に周りの喧噪が遠くなる感じとか久しぶりに思い出した。
    ずいぶん前に行ったポナペは、輝く白砂のビーチと透明な青い海に囲まれた静かで美しい島だった。戦争中この島にいたという男性が奥さんとともに島を訪れているのに居合わせたけど、あのときの老夫婦も初音さんと同じように誰かを迎えに来ていたんだろうか。
    鎮魂という意味でも夏に相応しい一冊だ。

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    2014年08月17日
  • 静かな大地

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    明治維新で北海道開拓移民となった旧淡路藩の武士宗形三郎、志郎とアイヌとの交流。アイヌの価値観や宗教観に共鳴。インディアンやアボリジニなどの先住民族との共通点が多く人類の向かうべき方向性を示唆していると思う。

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    2014年01月08日
  • 南の島のティオ

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    マリサさんからのプレゼントです
    ティオが出会う大人や子供たちのファンタジー
    『幸運を一人占めすると同じ大きさの不運を連れてくる』
    心に残りました
    プレゼントされなければ出会えない本、マリサさんありがとうございました

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    2013年12月08日
  • 真昼のプリニウス

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    「自然」に関する、池澤夏樹らしい作品。
    「自然」と、人の語る「神話」が対になって登場し、言葉を超えたものの存在を訴えかける。
    小説は、まさに言葉によって作られた物語だ。それが神話を否定するのは、自己矛盾だ。
    だけど、さらさらとした筆致は空気に触れると溶けて、言葉の印象を残さない。場面は淡々と切り替わり、何が始まり何が終わるのかを理解する前に手から零れ落ちる。
    そして結局、訴えかけられた内容だけが心に残る。作者の試みは成功した、少なくとも私に対しては。

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    2013年08月04日
  • 静かな大地

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    明治維新直後、淡路島から北海道開拓を志し、静内に移り住んだ一族の歴史物語。

    静内は今でも馬産地として有名であり、自分の生まれた町からもそれほど遠い場所ではない。おそらくは自分の祖先も、同じような道を歩んで来たのだろうと思うと、とても興味深く読む事ができた。

    でも、もし自分が主人公の宗形兄弟の立場だったら、アイヌの子供と友達になれただろうか。周囲の反対を押し切ってまで、アイヌの人々と事業を起こす事が出来たのだろうか、と考えさせられた。

    考えても答えは出ないが、もしかしたら他の和人同様にアイヌの人々を蔑んでいたかもしれない。
    残念ながら自分は宗形兄弟やイザベラ・バードのような、立派な志は持ち合わせていないが、せめてクラーク博士が札幌農学校の生徒に説いたよう、紳士でありたいと思った。

    現在、何かと領土問題で騒がしい世の中だが、国内にも存在した占領と搾取の歴史について、日本人の一人として決して忘れてはいけないと思う。

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    2014年03月24日
  • 叡智の断片

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    蘊蓄に終わるか、生きて行く上での糧になるか、読み人次第だという池澤さんらしい辛味の効いた一冊。今は、この人が発信しようというものが少々ながらも解るようになった自分が誇らしい。

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    2013年04月29日
  • 憲法なんて知らないよ

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    前書きだけでも読みたい。我らが憲法はなかなかいいこと言っている。全文は「積極的平和主義」の考えというらしい。読んでいると気分が良くなる。声に出して読みたい日本語。ただ、この憲法を掲げていくためには世界にももっと変わってもらわないと困る(笑)。

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    2013年05月08日