池澤夏樹のレビュー一覧
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池澤夏樹『終わりと始まり 2.0』朝日文庫。
朝日新聞連載コラムの書籍化第2弾。
国際感覚にも優れる池澤夏樹の眼力は日本という国の脆さや本質を見事に表現し、その主張は清々しいまでにぶれることが無い。極めて冷静な文章からは池澤夏樹の怒りと憂いが読み取れる。
福島第一原発事故の後始末、嘘と誤魔化しを続ける東電、大嘘で固められた東京オリンピック招致、格差を拡大させ続ける歪んだ日本経済、日本を戦争可能な国家に変貌させようとする政治家、世界各地の紛争や社会問題、沖縄の基地問題などなど読み応えのあるコラムが並ぶ。
本作にも書かれているが、地震や津波は再び日本を襲うだろう。地震や津波ではなく、北朝鮮 -
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池澤夏樹さん、春菜さんの、本が大好きな親子だから実現した濃厚な対談です。対話形式だから読みやすい。
読書を趣味にしたいけど、どうせなら良いものを手に取りたいという方にオススメ。決して本を読む事は偉いとか、沢山読んだ奴が勝ち、なんて事はなく、出てきた本の中から自分の心にささったものを手に取ってみる。合わないと思ったら本を閉じてOK。そんな、ゆるーい感じで未知の本とのマッチングをしてくれる本です。
お二人とも知識量が半端なく、賢い方同士の会話って、聞いていて興味深いし、得られるものが多々ありました。
また、自分の好きな本が取り上げられていると嬉しいですね。 -
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いやいや、恥ずかしながら読んだことがなかった。日本文学科出身であるにもかかわらず…アメリカ人の友人がマンガで読んでいると聞き、こりゃあ日本人としては読まねばと思ったわけで。
こんなに神がわんさか出てきて、奇想天外、おかしな話のオンパレードだとは知らなかった。因幡の白兎がここにおさめられている話だってことも知らなかった。淡路島が一番最初に作られたとされる島だってことも。
三浦佑之さんという方の「解題」より。
戦前の一時期、古事記は、国民一丸の戦争協力体制を組みあげるために利用された。それが、戦後の古事記嫌いや神話嫌いを作ってしまい、学校教育の現場からすべての神話が排除される原因にもなった。近代 -
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池澤夏樹3作目。
火山という自然現象を軸に、過去と未来を行き来し、科学の力とそれを超える超自然現象と交感し、物語と神話について考察しながら作品が進んでいく。
どうしたらここまで人間総体を遠くから眺めるような視点を持つことができるに至ったのか分からないのだけれど、本当にすごい作家だなと思った。
科学的な素養を持ちながら超自然的(精霊とか)な視点を取り入れて、鳥瞰図的な世界を描写する能力。そして、それでいて、あくまでストーリードリブンであり続ける。そしてなによりも説教臭くない。ジブリがそれに近いものがあると思うのだけれど、ジブリって高度な技術とストーリーテリングは上手いけれど、いつも説教を聞かされ -
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お父様が最高の本読み仲間であるという池澤春菜さん。
羨ましいです。
私の父も本が大変好きでしたが、もうこの世にいないので、話ができません。(50代で早逝しました)
私事で恐縮ですが、高校のときビクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』をどちらが早く全巻読めるか、競争したことを思い出しました。父は完読したけれど、私は遂に完読できずじまいでした。
そして、皆さんご存知かと思いますが、春奈さんのおじい様は福永武彦さんです。
でも、春奈さんは、読むこと、書くことは血でなくて、環境だとおっしゃっています。
私は目下、SFが読んでみたいけど、何を読んだらわからないジャンルなので、春奈さんの「SFはパパの書庫が -
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最近は池澤夏樹にハマっている。なんとなく、彼の清潔で頭の良さそうな感じの物語世界が今の気分にぴったりな感じ。文明社会に組み込まれつつも少しだけ距離を取り、人間以外の世界の仕組み(動植物や星空や宇宙など)と対比させる感じが、巣篭もり生活の良き伴走者になってくれる感じがする。
本作は、文学版「あつ森」みたいな感じで、ちょっとした気の緩みから孤島に流れ着いた新聞記者が、島の生活に順応していくという物語。遠い南の島の孤独な生活がとても心地よい感じがする。
読後感は、ゴツゴツとした感触で、まさしく、処女作といった感じの小説だった。これから文章で身を立てていくという意気込みみたいなのがとくに後半部から -
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明治維新後に北海道に入植した和人とアイヌの民の話。
文明と文明が出会うとき、多数派、科学文明の力の強い方が相手を押潰してしまう。これまで何度も繰り返されてきた。
語り部である由良の言葉にある「もっと深い恐れか憎しみか、何かとても暗くて嫌なものがあったような気がする。姿と言葉の異なる人に対する恐れと憎しみ。人間の心の中に棲むいちばん忌まわしい思い」これが人の心の中にある限り、これからも起こるのだろうか。
アイヌの民と牧場を開き、共に生きた宗形三郎の生きざまに人としての理想の姿を見る。
だからこそ結末があまりに衝撃的で哀しい…三郎のこともアイヌの民のことも。
けれどこれが現実なのだろう…つらい。
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まずは古事記の成り立ちについて。
元明天皇(天智天皇の皇女)が、大朝臣安麻呂(おおのあそみやすまろ)という官僚に対して、天武天皇が稗田阿礼(ひえだのあれ)にという記憶の天才に口付から教えた正しい歴史を文字にして残せと命じたもの。それを受けて安麻呂は、古い音声を漢字に移すのに苦労しながら、古事記三巻として和銅五年正月に奏上した。
上巻は国の始まりから、神々の時代。大国主が治めていた地上を天上界の神の天照大御神に譲り、現代にも続く天皇家の血筋が作られた。
中巻は、初代神武天皇から十五代応神天皇の時代で、神々と人間とが融合している。
下巻は、十六代仁徳天皇から三十三代推古天皇の時代で、終盤になると現