池澤夏樹のレビュー一覧
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ネタバレ父と娘の本に関する対談。
羨ましい。
私も、読んだ本について思う存分語り、読んでない本について存分に語られているつもりで、つまり第3の話者のつもりで読みました。
もう本を読みながら心の中で語る、語る。
だって児童文学、少年文学、SF、ミステリ、好きなジャンルの本ばかりなんですもの。
比較的少年文学は読んでいないけれど。
私はイギリスの文化(小説、音楽、映画)が好きなのですが、児童文学というのは圧倒的にイギリスが多いのだそうです。
なるほど、子どもの頃イギリスの児童文学を読みふけった結果、すり込まれたんやな。
物心ついた時から周りには本が当たり前にある環境で育った娘は、留学していた時、段ボール箱1箱分の本を持って行った。
それっぽっちの本、すぐに読み終わってしまう。
そうしたら、そのあと読む者もなく、どうしたらいいのだろうと恐怖だったと。
(実際には体調不良で途中で帰国したようですが)
私は、家に本がふんだんにはなかったので、何度も何度も同じ本を読んで育ちましたから、多分一通り読み終わったら最初から読みなおすね。
何の恐怖もなく。
最強の読書人親子だと思いますが、実は彼らは翻訳物の児童小説で育ったので、日本の者をあまり読んでいない。
それは私もわかる気がする。
昔風の言い回しが今も残る近代の日本文学より、今の言葉で訳してくれている翻訳物の方が断然読みやすかったし、遠い世界の風物を想像する楽しみもあったり、何より日本の小説は(児童文学も)辛気臭くて説教臭くて貧乏ったらしいものが多かったので。
でも、池澤夏樹は「何が面白いの?」と切って捨てた『次郎物語』は、私すごく面白く読めたんだよねえ。
それに出て来る無計画の計画は、今も私の行動指針だ。
だから感想なんてものは人それぞれなんだよね。
読みながら心の中で大いに語っていたので、多分私の血液はふつふつと煮えたぎっていたと思います。
そのくらいエキサイティングな読書でした。
ああ、楽しかった。
でも本当はリアルでこういう話をしたいんだよねえ。
だれか誘ってくれないかなあ。←自分からは出て行けない小心者 -
Posted by ブクログ
こういう誰かにとってのなつかしい一冊や大切な本について書かれたものが好きなので、とても楽しく読めた。
有名な一冊もあれば初めて知る本もあったけれど、本の紹介とともに語られる選者である作家の方々の思いを読んでいるうちに、一緒に記憶を辿っているような感覚になり、胸の奥がすーんとするような気持ちになった。
特別な本との出会いというのは、一回読んだだけで心を鷲掴みにされる場合もあれば、気がつけばいつの間にか心の奥にあったと後から気付く場合など様々だと思う。だけどそれは出会おうと思って出会えるものではなくて、いつどんな本が自分にとっての特別な一冊になるかわからないところが、素敵だなと思った。
それにしても、魅力的な本が多くて読みたい本が増えたけど、私にとってのなつかしい本もまたゆっくり読み返したいし、時間が足りなくて今とても焦燥感に駆られています。 -
Posted by ブクログ
読書案内の本。
毎日新聞に連載された書評欄より。新刊書の書評じゃなく、選者の思い出の一冊を紹介している。まず読みやすい。上質な紙。藍色だけ使った文字と挿絵。字体も、誰もが手に取れる読みやすさ。センスがいいが、何よりも。池澤夏樹さんの序文からして、上手い。この方は当代一流の読み巧者のお一人だけれど、この読書案内の面白さは、そこで決まらない。
選ばれている本は硬軟取り混ぜいろいろ。とにかくまあ読んでみる。という、その行動だけを促す。そういう読書に向いている。というのも、序文で、『一度読んだ本が、今なら面白く読めるよ、と戻ってくる事がある』旨を書かれているのだけど、こういうことって本当にあるからだ。
権威的な名作主義はつまらないけど、スタンダードな本には、やはり長い時間を生き抜いてきたチカラがある。
難しいのかと思っていた本も、こんなの読まないよと思っていた本も、読んだ人から『こんな本なんだけど」と取っ掛かりを付けてもらえば、あとは作品が面白いので、ぐいぐい読めたりする。
選者の方のご経歴は錚々たる顔ぶれだけど、ご経歴は巻末にまとまっていて、主役は本そのもの。そして読書体験の共有そのものなんだという編集方針も心憎い。そういう意味で、まあ、良いから実際に読んでみるか。という気にさせる読書案内なのだ。
スタンダードは、難しいんじゃないかという思い込みを外すこと。それさえ叶えば、むしろ自分で選ばない本が多かったので、まず立って本を手にしにゆこう。読めば人間の綴ったものだもの。先に読んだ人もいるのだし、私が読んだって絶対面白い。
昔読んだきりの、あの本も。名前だけうろ覚えのあの本も。出会える。藍色の文字に導かれて、やあ、と手に取ろう。ダメだったら?時期見てまた会いに来たら良い。
読書ってそういうものだ。 -
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池澤夏樹『終わりと始まり 2.0』朝日文庫。
朝日新聞連載コラムの書籍化第2弾。
国際感覚にも優れる池澤夏樹の眼力は日本という国の脆さや本質を見事に表現し、その主張は清々しいまでにぶれることが無い。極めて冷静な文章からは池澤夏樹の怒りと憂いが読み取れる。
福島第一原発事故の後始末、嘘と誤魔化しを続ける東電、大嘘で固められた東京オリンピック招致、格差を拡大させ続ける歪んだ日本経済、日本を戦争可能な国家に変貌させようとする政治家、世界各地の紛争や社会問題、沖縄の基地問題などなど読み応えのあるコラムが並ぶ。
本作にも書かれているが、地震や津波は再び日本を襲うだろう。地震や津波ではなく、北朝鮮のミサイルが原発を攻撃して来るのかも知れない。今まさに世界が苦しむ新型コロナウイルス並みの感染症が再び起きるかも知れない。不安定な地球に暮らし、不安定な世界と関わる限り、一瞬先は闇なのだ。闇の中だからこそ、進むべき道を見失ってはならないと思う。
本体価格950円
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池澤夏樹さん、春菜さんの、本が大好きな親子だから実現した濃厚な対談です。対話形式だから読みやすい。
読書を趣味にしたいけど、どうせなら良いものを手に取りたいという方にオススメ。決して本を読む事は偉いとか、沢山読んだ奴が勝ち、なんて事はなく、出てきた本の中から自分の心にささったものを手に取ってみる。合わないと思ったら本を閉じてOK。そんな、ゆるーい感じで未知の本とのマッチングをしてくれる本です。
お二人とも知識量が半端なく、賢い方同士の会話って、聞いていて興味深いし、得られるものが多々ありました。
また、自分の好きな本が取り上げられていると嬉しいですね。 -
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いやいや、恥ずかしながら読んだことがなかった。日本文学科出身であるにもかかわらず…アメリカ人の友人がマンガで読んでいると聞き、こりゃあ日本人としては読まねばと思ったわけで。
こんなに神がわんさか出てきて、奇想天外、おかしな話のオンパレードだとは知らなかった。因幡の白兎がここにおさめられている話だってことも知らなかった。淡路島が一番最初に作られたとされる島だってことも。
三浦佑之さんという方の「解題」より。
戦前の一時期、古事記は、国民一丸の戦争協力体制を組みあげるために利用された。それが、戦後の古事記嫌いや神話嫌いを作ってしまい、学校教育の現場からすべての神話が排除される原因にもなった。近代天皇制国家が成立して以降の古事記の扱いについてはきちんと生産し、謝った方向へ古事記を連れ出した眼鏡を叩けばよかったのに、古事記に罪を着せてしまったところがある。しかし、古事記という作品には何の罪もない。
過去の歴史を忘れるべきではないが、なんの誓約もなく、とくべつの思想に縛られることもなく、物語としてのおもしろさを享受できる今こそ、古事記にとってはもっとも幸せな時代ではないか。そしてこの機会に、古事記が、あらゆる読者を受け入れることのできる奥の深い古典として存在することを知ってほしい。
謙虚に耳をすまして古代の声を聴く、そのような態度で古事記に向き合うと、現代に生きるわたしたちは、時にとまどいながらも、さまざまなことを教えられる。神話は、古代の人々にとって、哲学であり、教訓であり、歴史であり、科学であり、規範であり、そして何よりもたのしい文学であった。あらゆることを神話に教えられて生きる、神話に耳を傾け、そして語り継ぐという営みは、そのような行為としてあったのだ。 -
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池澤夏樹3作目。
火山という自然現象を軸に、過去と未来を行き来し、科学の力とそれを超える超自然現象と交感し、物語と神話について考察しながら作品が進んでいく。
どうしたらここまで人間総体を遠くから眺めるような視点を持つことができるに至ったのか分からないのだけれど、本当にすごい作家だなと思った。
科学的な素養を持ちながら超自然的(精霊とか)な視点を取り入れて、鳥瞰図的な世界を描写する能力。そして、それでいて、あくまでストーリードリブンであり続ける。そしてなによりも説教臭くない。ジブリがそれに近いものがあると思うのだけれど、ジブリって高度な技術とストーリーテリングは上手いけれど、いつも説教を聞かされているみたいな気になって鼻白んでしまうのだけれど、彼の作品にはそれが無い。 -
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お父様が最高の本読み仲間であるという池澤春菜さん。
羨ましいです。
私の父も本が大変好きでしたが、もうこの世にいないので、話ができません。(50代で早逝しました)
私事で恐縮ですが、高校のときビクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』をどちらが早く全巻読めるか、競争したことを思い出しました。父は完読したけれど、私は遂に完読できずじまいでした。
そして、皆さんご存知かと思いますが、春奈さんのおじい様は福永武彦さんです。
でも、春奈さんは、読むこと、書くことは血でなくて、環境だとおっしゃっています。
私は目下、SFが読んでみたいけど、何を読んだらわからないジャンルなので、春奈さんの「SFはパパの書庫があった」というのも羨ましいと思いました。
この本で一番読みごたえがあったと思うのは、児童文学の章です。
『星の王子様』の基本にある世界観は農業というのは初めて知ったし、『ムーミン』のアニメは楽しいけれど原作はかなり鬱々とした暗い話だというのも知りませんでした。
少年小説はイギリスだという結論も興味深かったです。
SFの章では、日本はSF・ファンタジーに関して、翻訳大国であるということ。
これはやっぱり読まないと損なジャンルかもしれないと思い、挙げられた書名をメモしましたが、お薦めの、『サンリオSF文庫総解説』を買うのもいいかも(私には少し高度な気もしますが)しれません。
春奈さんの書評やエッセイは拝読したことがありますが、脚本家でもあられたことは、マルチな方だと驚きました。小説を書きたいとも思っていらっしゃるそうです。
そして、私は池澤夏樹さんの評論は拝読したことがあるのですが、小説は『スティル・ライフ』を積読していますが、なんとまだ1冊も読んでいないことに気づきました。
春奈さんお薦めの『マシアス・ギリの失脚』と小説ではないけれど、『いつだって読むのは目の前の一冊なのだ』は前から読みたかったのですが、読んでいないので是非、読まないとと思いました。 -
Posted by ブクログ
最近は池澤夏樹にハマっている。なんとなく、彼の清潔で頭の良さそうな感じの物語世界が今の気分にぴったりな感じ。文明社会に組み込まれつつも少しだけ距離を取り、人間以外の世界の仕組み(動植物や星空や宇宙など)と対比させる感じが、巣篭もり生活の良き伴走者になってくれる感じがする。
本作は、文学版「あつ森」みたいな感じで、ちょっとした気の緩みから孤島に流れ着いた新聞記者が、島の生活に順応していくという物語。遠い南の島の孤独な生活がとても心地よい感じがする。
読後感は、ゴツゴツとした感触で、まさしく、処女作といった感じの小説だった。これから文章で身を立てていくという意気込みみたいなのがとくに後半部から書き連ねられており、その気迫みたいな熱さを感じた。
これから飽きるまで彼の作品を追っていくつもりでいるのだけれども、どうなるか気になる。