池澤夏樹のレビュー一覧
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海軍少将、天文学者、そして敬虔な聖公会のクリスチャンとして人生を全うした秋吉利雄という人の一生を描いた長大な伝記小説。兵学校を卒業し、海軍に入軍したが、その学究的な性格から東大に天文学の学びのため、留学し、海軍水路部に入り、天文学の知識を航海に生かす働きに従事する。1934年1月、ミクロネシアのローソップ島での皆既日食の観測を経験。若い日には妻チヨ、そして妹・トヨを産後に失うという悲劇、妹トヨが長男・武彦を孕み、その後・福永末次郎と結婚する場面は実に数奇な場面。作家・福永武彦の誕生秘話だ。後妻ヨ子(よね)との間に産まれた子どもたちがクリスチャンとして成長していく姿も麗しい。讃美歌を歌い、歌詞
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いやはや、長い。p. 723 片手で持つには重すぎ、持ち歩くにも辞書レベル以上。よく読んだ、という満足感が、内容よりも濃くの星の数に出そう…
史実に基づき、池澤夏樹の大伯父、秋吉利雄の生涯を語る。軍人であり、科学者、クリスチャンの父より、聖公会の使徒。長崎の鎮西学院から海軍兵学校を経て、艦隊を体験した後、大日本帝国海軍の水路部に所属。東大の天文学を学び直し、天測暦を用いて潮汐表や海図の作成に励む。
学徒の加来止男、Mとの親交。
ハンモックナンバー16 (卒業時の成績順)
キリスト教に救いを求めつつも戦時下に大切な妻、子ども、友人や多くの軍人を亡くす。
聖路加病院の20代の日野原先生や、山 -
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ネットでHeveneseのラストトークを見ていて、本書に言及があったので購入。令和の語源である万葉集をほとんど知らなかったので、とても興味深く読んだ。8人の著者の、改元をきっかけに書かれた万葉集に関するエッセイ集。
鈴木大拙は「日本人の霊性」の中で万葉集を「稚拙」だとか「幼稚だ」とか、あまり良い評価をしていなかった。しかしながら本書から万葉集の他の歌集との違いがわかり、納得した。
曰く、万葉集には中近東的な雰囲気がある、とか、万葉集は文字ではなく大和言葉の響きを口にうたうための歌集である、とかなどと言うように書かれていた。また万葉集には代作という表現があるとの事。これについては日本人が原作を