池澤夏樹のレビュー一覧

  • 静かな大地

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    かつてそこはアイヌの地だった。
    エスキモーやインディアンにも共通する自然に対する畏怖と感謝、共存の世界がそこにはあった。
    その地に和人が住み、暮らすようになり次第にアイヌは追いやられ、和人は自然を蔑ろにしていく。
    私利私欲の世界の始まりだ。

    自然界の仕組みのごく僅かな事しか知らない人間はテクノロジーによって自然を制御できると思い込む。
    そうで無いことに気付かされるのが自然災害だとすればそれはあまりに皮肉な事だ。

    今だからこそ、彼かに学び直す必要がある。そんな一冊。

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    2019年04月06日
  • 異国の客

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    フランスのフォンテーヌブローに移住した著者が各章日々の生活から、フランスの社会、政治、歴史にまで掘り下げるのは読みやすく、「プロの外国滞在記」で面白い。
    特に最終章のイラクで拘束されたジャーナリストの帰還で、同様の事件の日本の対応は興味深かった。

    フランスの魅力はグローバルとローカル、古いものと新しいものが両立しているところにあるんだろうな、と思った。

    2019.2.23

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    2019年02月24日
  • 知の仕事術(インターナショナル新書)

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    著者が日ごろ行っている、情報の入手方法、ストック、フローの考え方、書物の扱いなどなど作家が行っているノウハウというか、神髄を語ってくれている。

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    2018年11月25日
  • 日本語のために

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    気を紛らすために3日ぶりに読書再開

    良い編集の本だった

    祝詞にはじまって、漢詩、仏典、聖書、琉球語、アイヌ語、憲法、現代語、、、

    日本語の広さを知るのに、他にない良い編集

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    2018年11月18日
  • 夏の朝の成層圏

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    ネタバレ

    再読日 19940301 20000529

    主人公のヤシが島で生きていくための知識をひとつずつ覚えていくのが、自分のことのように感じられて面白い。島の生活に馴れた結果、文明との距離の取り方、そしてラストで文明に回収されることを先延ばしにし続ける態度に共感できる。マイロンの別荘があるため、文明と完全に隔絶しているわけでもない、いわば中間の存在。このような島での生活ができれば、文明の日常に帰還する必要ってあるのだろうか? 20000723

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    20250903
    とても面白かった。うまく言えないけれど、一度読んでさくっと「こんな感じかな」というふうに感想がまとめられる小説もあれば、なんだ

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    2018年10月15日
  • 南の島のティオ

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    心がホクホクするとても暖かい短編集ですね♪10編ともに懐かしい暖かい優しい清々しい物語です。誰しもティオの島に行きたくなり暮らしてみたくなるに違いないなぁ

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    2017年09月25日
  • 静かな大地

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    ネタバレ

    北海道ツーリング中に読んだ一冊。
    内地を追われた侍による、アイヌ迫害・馬やジャガイモを使った開墾の歴史が伺える。

    熊送りは北方民族資料館(網走)によれば北方民族共通の習慣だという。

    足るを知っていたアイヌの生活の基盤を和人が奪っていく中、アイヌへの憧れから彼らとの共存、むしろ飢饉時にジャガイモをアイヌに配るなど、和人を裏切る側にたち、力尽きて妻子を追ってアイヌ装束で自害した一人の才人の物語。

    幕府の近視眼的な政策(奴隷ですら資産だったのに)やシャクシャインの乱での和人のだまし討ち、榎本武揚がオランダを模して独立しようとしたという解釈など、教科書からは知れない解釈も随所に。

    文字を持たな

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    2017年09月03日
  • 終わりと始まり

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    池澤夏樹『終わりと始まり』朝日文庫。

    世界情勢や日本の世相にテーマを見出だし、斬れ味の鋭い文章で我々が向かうべき未来を描いて見せた名コラム。

    2009年5月から2013年3月までに書かれたコラムで構成されている。この間に2011年3月11日に起きた東日本大震災があることから、以降は被災地、原発事故をテーマにしたコラムが増える。これまでずっと東北地方に暮らし、三陸沿岸に義理の両親が暮らし、現在は福島に暮らす自分にとっては共感することが多く、ここまではっきりと言い切ってもらえるのは非常に気持ちが良い。

    また、表題ともなっている最初のコラム『終わりと始まり』には唸らされた。女性詩人ヴィスワヴァ

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    2017年04月07日
  • 知の仕事術(インターナショナル新書)

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    敬愛する(といってもまだまだ良く知らないニワカですが)池澤夏樹さんの仕事術公開本。

    SNSの話から始まりますが、ご本人は自身の事を語るなど、こっ恥ずかしくてできないそう。少し前からFacebookをROMっている私も同様です。

    ただ、自己の記録として、WordPressによるブログのみは続けて行こうと思っています。それと、そこそこのフォロワーのいるツイッターは。

    こういう知的生産の技術書というのは、昔から有名な書籍が何冊も出ています。知の先達たちが後輩のために親切にノウハウを公開してくれているのですね。

    でも、わかっちゃいるけどついてけねー。というのが本音のところ。
    それができれば苦労

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    2017年02月27日
  • 日本語のために

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    ケルアックの「路上」から石牟礼道子の「苦界浄土」まで、世界文学の傑作を新訳メインで提示した世界文学全集に続き、池澤夏樹が日本文学を独自のパースペクティブで編纂する日本文学全集シリーズの1冊。他の作品が全て、特定の作品・作家を対象としている中、本作だけは「日本語のために」と題打たれ、歴史的・地理的に変化を遂げてきた日本語そのものを対象とし、その全体像を示す。

    収められているのは、祝詞、アイヌ語、琉球語、憲法、聖書、日本語の文法論、漢語など、それぞれのジャンルでの第一級の文章が収められている。琉球語で書かれた詩歌は、沖縄という場所でないと成立しなかったであろう場景を示す単語の豊穣さなど、これまで

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    2016年11月20日
  • 近現代詩歌

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    網羅性がとても高いという点で、私のような詩歌初心者にぴったりの内容。勿論「汚れちまった悲しみ」なんかもあります。
    自由律俳句も収録されているが、大好きな尾崎放哉が入っていないのが残念。

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    2016年11月05日
  • 日本語のために

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    文学全集にこのような内容のものを入れるのは非常に珍しいと思うけれど、逆にこれこそが池澤夏樹のこだわりなのだろう。ケセン語、アイヌ語、琉歌の形式など大変興味深い内容が収録されているが、なんといっても政治の言葉の部分に説得力を感じだ。

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    2016年10月11日
  • 真昼のプリニウス

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    言葉にしたらすべて嘘になってしまう。くっきりと輪郭を持ってしまうと除外されていくものがある。嘘にしたくない。なにも除外したくない。全部知りたい

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    2016年07月30日
  • 古事記

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    古事記が敗者に寄り添う物語だというのが凄い。よくぞ現代まで残ってくれたという感じだ。
    まずは冒頭の訳者の「この翻訳の方針」を読んで欲しい。そして「太安万侶の序」。この流れにはすっかり感動してしまった。なんとなく日本神話でしょ、と思っていた感覚とは全く違って、人が紡いできた物語だということがよく分かる。古代と現代が直に繋がっていることを実感するたびに心が震える。

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    2016年06月30日
  • 南の島のティオ

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    再読。夏になると読みたくなる本。
    小さな南の島に住むティオに会いたくなるのです。

    10編の美しい短編集で、ティオと出会った個性的な人や物?幻想?がなんだか不思議でもあり、自然でもあり。いつの間にか心が豊かに満たされるのです。

    すべての物語に魔法の匂いがするのに、受け入れてしまうのです。

    たぶん、その昔、精霊たちと人間はうまくやってたのでしょうね。
    街がコンクリートになって、すべてが理論や科学で立証されて、自然との対話がなくなって、見えなくなり感じなくなっちゃったんでしょうね。

    ティオの棲む珊瑚礁の島には、まだこの魅惑的な精霊たちと魔法に満ち溢れていました。また読むことになるだろうな。

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    2016年06月16日
  • 古事記

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    現代語訳も注も読みやすく、全編通して飽きることなく読める。予想に反して、全般の神話部分のほうが自由奔放な発想で面白い。後半はどちらかというと皇位継承争いなどによっておこる悲劇を描いた話が多い。必ずしも天皇の正統性を誇示するような内容ではない。
    全般的にはかなりエロい話が多い。禁忌や社会常識が現在と異なることを前提に読むべきであるのは当然なのだろうが、であればチャタレイ裁判など噴飯物ではないのか。そのくらい描写が凄い。

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    2016年04月20日
  • 古事記

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    日本人に生まれたのだからと思って手に取った、我々日本人のルーツ。
    初めての古事記。

    脚注をこまこま読んでたせいか最初はなかなか内容が頭に入ってこず苦戦し、間があいてそれまで読んだ内容を忘れてしまったのをきっかけにざーっと読み返したら、流れが生まれて面白くなった。
    やっぱり、神話の世界を描いた上巻が個人的にはおもしろい。ぶっとんだことが淡々と書いてあって。
    中巻では神話の世界と地続きで歴史上の人物が出てくるので、歴代天皇たちまで神話の世界の実在しない人かのような気持ちに…。
    下巻はTHE権力争い、という感じ。
    下知識の足りない私にとって、時代背景や奥行きを知る手助けを大いにしてくれた脚注も、な

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    2016年08月15日
  • 南の島のティオ

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    何年も前に読んだのを再読。
    内容はよく覚えていなかったが、好きだった&タイトルだけは覚えていたのでずっと読みたかった。
    思い出以上にすーっと入ってくる不思議な、でも世界のどこかにありそうな日常。すごく素敵です。
    きっと内容を忘れた頃、また読みたくなるんだろうなぁ。

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    2015年08月21日
  • 南の島のティオ

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    絵葉書をもらってみんなは行きたくなるけど、私はこの本を読んで行きたくなった。そして、来月ポンペイ島に行ってきます!

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    2015年06月09日
  • 古事記

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    この本、どこかで読んだことがある。そんな気がした。内容ではない。見かけのほうだ。読みやすい大き目の活字で組まれた本文の下に、小さなポイントの太字ゴチック体の見出しに続いて明朝体で脚注が付されている。丸谷才一他訳による集英社版『ユリシーズ』のレイアウトそっくりではないか。まさか敬愛する丸谷の訳本に、自分の訳本を重ねたわけでもあるまいが、偶然とは考え難い相似である。考えすぎかもしれないが、古代の神々と英雄の冒険を語る『オデュッセイア』に擬した自作を『ユリシーズ』と名付けたジョイスにあやかるつもりか。たしかに、この「古事記」、日本文学の古典というよりもモダニズム文学の文体のほうに余程似ている。行替え

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    2015年04月15日