池澤夏樹のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
明治維新後に北海道に入植した和人とアイヌの民の話。
文明と文明が出会うとき、多数派、科学文明の力の強い方が相手を押潰してしまう。これまで何度も繰り返されてきた。
語り部である由良の言葉にある「もっと深い恐れか憎しみか、何かとても暗くて嫌なものがあったような気がする。姿と言葉の異なる人に対する恐れと憎しみ。人間の心の中に棲むいちばん忌まわしい思い」これが人の心の中にある限り、これからも起こるのだろうか。
アイヌの民と牧場を開き、共に生きた宗形三郎の生きざまに人としての理想の姿を見る。
だからこそ結末があまりに衝撃的で哀しい…三郎のこともアイヌの民のことも。
けれどこれが現実なのだろう…つらい。
-
Posted by ブクログ
まずは古事記の成り立ちについて。
元明天皇(天智天皇の皇女)が、大朝臣安麻呂(おおのあそみやすまろ)という官僚に対して、天武天皇が稗田阿礼(ひえだのあれ)にという記憶の天才に口付から教えた正しい歴史を文字にして残せと命じたもの。それを受けて安麻呂は、古い音声を漢字に移すのに苦労しながら、古事記三巻として和銅五年正月に奏上した。
上巻は国の始まりから、神々の時代。大国主が治めていた地上を天上界の神の天照大御神に譲り、現代にも続く天皇家の血筋が作られた。
中巻は、初代神武天皇から十五代応神天皇の時代で、神々と人間とが融合している。
下巻は、十六代仁徳天皇から三十三代推古天皇の時代で、終盤になると現 -
Posted by ブクログ
ネタバレ再読日 19940301 20000529
主人公のヤシが島で生きていくための知識をひとつずつ覚えていくのが、自分のことのように感じられて面白い。島の生活に馴れた結果、文明との距離の取り方、そしてラストで文明に回収されることを先延ばしにし続ける態度に共感できる。マイロンの別荘があるため、文明と完全に隔絶しているわけでもない、いわば中間の存在。このような島での生活ができれば、文明の日常に帰還する必要ってあるのだろうか? 20000723
-----
20250903
とても面白かった。うまく言えないけれど、一度読んでさくっと「こんな感じかな」というふうに感想がまとめられる小説もあれば、なんだ -
Posted by ブクログ
ネタバレ北海道ツーリング中に読んだ一冊。
内地を追われた侍による、アイヌ迫害・馬やジャガイモを使った開墾の歴史が伺える。
熊送りは北方民族資料館(網走)によれば北方民族共通の習慣だという。
足るを知っていたアイヌの生活の基盤を和人が奪っていく中、アイヌへの憧れから彼らとの共存、むしろ飢饉時にジャガイモをアイヌに配るなど、和人を裏切る側にたち、力尽きて妻子を追ってアイヌ装束で自害した一人の才人の物語。
幕府の近視眼的な政策(奴隷ですら資産だったのに)やシャクシャインの乱での和人のだまし討ち、榎本武揚がオランダを模して独立しようとしたという解釈など、教科書からは知れない解釈も随所に。
文字を持たな -
Posted by ブクログ
池澤夏樹『終わりと始まり』朝日文庫。
世界情勢や日本の世相にテーマを見出だし、斬れ味の鋭い文章で我々が向かうべき未来を描いて見せた名コラム。
2009年5月から2013年3月までに書かれたコラムで構成されている。この間に2011年3月11日に起きた東日本大震災があることから、以降は被災地、原発事故をテーマにしたコラムが増える。これまでずっと東北地方に暮らし、三陸沿岸に義理の両親が暮らし、現在は福島に暮らす自分にとっては共感することが多く、ここまではっきりと言い切ってもらえるのは非常に気持ちが良い。
また、表題ともなっている最初のコラム『終わりと始まり』には唸らされた。女性詩人ヴィスワヴァ -
Posted by ブクログ
敬愛する(といってもまだまだ良く知らないニワカですが)池澤夏樹さんの仕事術公開本。
SNSの話から始まりますが、ご本人は自身の事を語るなど、こっ恥ずかしくてできないそう。少し前からFacebookをROMっている私も同様です。
ただ、自己の記録として、WordPressによるブログのみは続けて行こうと思っています。それと、そこそこのフォロワーのいるツイッターは。
こういう知的生産の技術書というのは、昔から有名な書籍が何冊も出ています。知の先達たちが後輩のために親切にノウハウを公開してくれているのですね。
でも、わかっちゃいるけどついてけねー。というのが本音のところ。
それができれば苦労 -
Posted by ブクログ
ケルアックの「路上」から石牟礼道子の「苦界浄土」まで、世界文学の傑作を新訳メインで提示した世界文学全集に続き、池澤夏樹が日本文学を独自のパースペクティブで編纂する日本文学全集シリーズの1冊。他の作品が全て、特定の作品・作家を対象としている中、本作だけは「日本語のために」と題打たれ、歴史的・地理的に変化を遂げてきた日本語そのものを対象とし、その全体像を示す。
収められているのは、祝詞、アイヌ語、琉球語、憲法、聖書、日本語の文法論、漢語など、それぞれのジャンルでの第一級の文章が収められている。琉球語で書かれた詩歌は、沖縄という場所でないと成立しなかったであろう場景を示す単語の豊穣さなど、これまで -
Posted by ブクログ
再読。夏になると読みたくなる本。
小さな南の島に住むティオに会いたくなるのです。
10編の美しい短編集で、ティオと出会った個性的な人や物?幻想?がなんだか不思議でもあり、自然でもあり。いつの間にか心が豊かに満たされるのです。
すべての物語に魔法の匂いがするのに、受け入れてしまうのです。
たぶん、その昔、精霊たちと人間はうまくやってたのでしょうね。
街がコンクリートになって、すべてが理論や科学で立証されて、自然との対話がなくなって、見えなくなり感じなくなっちゃったんでしょうね。
ティオの棲む珊瑚礁の島には、まだこの魅惑的な精霊たちと魔法に満ち溢れていました。また読むことになるだろうな。