あらすじ
家族と共にフランス・パリの郊外フォンテーヌブローに移住した著者は、18世紀の家に住み、朝市の食材の豊かさに驚嘆。高校生のデモの明快な意思表示に民主主義の本来の姿を見、ローマ法王の訃報に接し信仰の意味について考えを巡らせる。「その土地を拠点としてものが見えること、世界のからくりがわかること、が大事なのだ」。異国の客として暮らす日々の発見と、しなやかで豊かな思索のクロニクル。
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Posted by ブクログ
フランスのフォンテーヌブローに移住した著者が各章日々の生活から、フランスの社会、政治、歴史にまで掘り下げるのは読みやすく、「プロの外国滞在記」で面白い。
特に最終章のイラクで拘束されたジャーナリストの帰還で、同様の事件の日本の対応は興味深かった。
フランスの魅力はグローバルとローカル、古いものと新しいものが両立しているところにあるんだろうな、と思った。
2019.2.23
Posted by ブクログ
池澤さんのことばを借りると、「カジュアルなファシズム」。今の日本の国民の思想や思考のあり方を形容するのに、これほど的確な表現は無いだろう。
2000年代に起きた様々な国際問題を、近代以降の歴史の延長に見ると同時に、この時期自身が移住したフランス、フォンテーヌブローを中心としたフランスの現代社会事情と日本のそれとを対比させる。こうした比較を踏まえた上で、私たちの身の回りに立ち返ると、この国を今なお蝕んでいる、抗いがたい負のエネルギーの本質が見えてくる。
Posted by ブクログ
池澤夏樹のエッセイはスラスラ読めてしまう。でも、ところどころ引っ掛かる言葉や人名、場所があって、その都度メモしたりgoogleで調べたりすることになる。読書という個人的な体験に、自分なりの意味を与えるとしたら、それは間違いなくそんな「引っ掛かり」に出会うことだと考えている。その点、池澤夏樹のエッセイは自分にとって「いい」本だ。
近年、彼の関心は9.11以降の情勢に向けられています。そのため、この本は著者が沖縄からフランスに移住してから1年程の間の出来事を綴ったエッセーなのですが、そこでの生活に垣間見える出来事や国民性などの向こうに、9.11以降の世界について書かれた文章が多く含まれており、彼の国と我が国の国民性の違い等々、考えさせられます。
もちろんそれ以外の多くの部分では、パリ郊外フォンテーヌブローでの暮らしや出来事が、ある種の落ち着きをもって描かれていて(浮かれた感じがしないという意味で)、落ち着いて読めました。良質なエッセイ。
Posted by ブクログ
池澤さんがフランスへの移住で感じたことを知りたくて。
あらゆる国が地続きの大陸に住むということが
どのようなことなのか。考えてあれこれ心動きました。
ヨーロッパの古い町並みで、駐車事情はどうなっているのか
前々から疑問でしたが、まさかそんなに苦労が多いとは。
アスパラガスを食べてみたくなりました。
Posted by ブクログ
自分の意思で自分が生まれ育った国と異なる地へ移り住んだ人は、どれだけその地に馴染もうともやはり一生エトランゼだと思う。いい悪いとは彼岸の問題で。そういう覚悟で行った方が返って馴染めるかも知れない(二世以降は別。はらからだ)
本書のタイトル「異国の客」というのは、一歩距離を置いたいいタイトル、著者の人生のスタイルなのかも知れない。
大吉堂にて購入。
Posted by ブクログ
著者である池上夏樹氏がフランスでの生活を綴ったエッセイ。
食事や教育・・・駐車事情まで、実際に現地ですごし体験した著者だからこそ感じる日本との文化的差異が読者にも理解でき勉強になる。
しかし、池上氏のルポはどうも説明口調な部分が多く、ハワイイ紀行でもそうだったが、もう少し現地の風というか雰囲気を感じさせてくれたらなと個人的に思う。
知識としてはおもしろいんだろうけど、ルポルタージュの醍醐味である追体験が感じられないのが残念だ。
Posted by ブクログ
著者がフランスに移住した時のエッセイ。
フランスに住んで見ると、日々の生活が新鮮な感じで日本文化との違いや比較も可能になるらしい。断片的なエッセイを繋がりのある3つのテーマでまとめてあり、著者の薀蓄が面白い。
高校生が大学入学資格試験バカロレアの変更に反対デモを起こす風景は、日本では有り得ない光景に見えたようである。
著者が綴る街の風景、フランスの隣人達のものの考え方を読むと、フランスは哲学の国としてのプライドが感じられる。