Posted by ブクログ
2010年01月20日
池澤夏樹のエッセイはスラスラ読めてしまう。でも、ところどころ引っ掛かる言葉や人名、場所があって、その都度メモしたりgoogleで調べたりすることになる。読書という個人的な体験に、自分なりの意味を与えるとしたら、それは間違いなくそんな「引っ掛かり」に出会うことだと考えている。その点、池澤夏樹のエッセイ...続きを読むは自分にとって「いい」本だ。
近年、彼の関心は9.11以降の情勢に向けられています。そのため、この本は著者が沖縄からフランスに移住してから1年程の間の出来事を綴ったエッセーなのですが、そこでの生活に垣間見える出来事や国民性などの向こうに、9.11以降の世界について書かれた文章が多く含まれており、彼の国と我が国の国民性の違い等々、考えさせられます。
もちろんそれ以外の多くの部分では、パリ郊外フォンテーヌブローでの暮らしや出来事が、ある種の落ち着きをもって描かれていて(浮かれた感じがしないという意味で)、落ち着いて読めました。良質なエッセイ。