あらすじ
移動する文化人として、さまざまな土地を訪れ深い思索を積み重ねてきた作家がつづる、感動、怒り、戸惑い、落胆、祈り──。3.11の大震災と福島原発事故を経て、少数者の居場所、民主主義の多数決の欺瞞などを問う、明晰で情のある名コラム。
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Posted by ブクログ
池澤夏樹『終わりと始まり』朝日文庫。
世界情勢や日本の世相にテーマを見出だし、斬れ味の鋭い文章で我々が向かうべき未来を描いて見せた名コラム。
2009年5月から2013年3月までに書かれたコラムで構成されている。この間に2011年3月11日に起きた東日本大震災があることから、以降は被災地、原発事故をテーマにしたコラムが増える。これまでずっと東北地方に暮らし、三陸沿岸に義理の両親が暮らし、現在は福島に暮らす自分にとっては共感することが多く、ここまではっきりと言い切ってもらえるのは非常に気持ちが良い。
また、表題ともなっている最初のコラム『終わりと始まり』には唸らされた。女性詩人ヴィスワヴァ・シンボルスカの同名の詩を取り上げ、終わりと始まりを人生に例え、終わりと始まりの間の時間の重要性を示してくれる。再就職活動中でふらふらした時間を過ごす今の自分には有難い提案であり、気持ちが楽になるものであった。
Posted by ブクログ
池澤夏樹の文章は読ませる文章だ。このコラムはまさにそんな文章。3.11直後の連載だからその手の話が多い。
すばらしい新世界にみるように氏は自然エネルギーの支持者であり思い入れの強さが伝わってくる。知識人は社会の様々な情報を集め自らの思想と照らし合わせて発信する、と定義していたが大変腑に落ちた。これからもそのような発信を期待したい。