池澤夏樹のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
700Pに及ぶ長編小説というだけあって、本当に多くの事柄を含んだ小説。それでいて、読み辛いとかくどいとかいうことは一切ない。むしろ、1章1章に読ませる部分があって、うんうん唸ったり、クスリとほくそ笑んだり、グサっと心に刺さったりする。「やがてヒトに与えられた時は満ちて…」を読んだ時の衝撃も、それはそれで大きなものがあったのだが、この小説もまた違った意味で自分の中に大きく残る小説だった。
この小説は本当に色んなメッセージを含んでいて、「これはこういう小説だ」と一言で表せるようなものではない。むしろ表そうとすること自体がナンセンスであるほどだ。でも、これほどある意味で欲張りに、詰め込みに詰め -
-
-
Posted by ブクログ
とても読みやすく、内容的にも共感できる話が多くするっと入ってきた。
現代社会は自然と切り離されており、そこに歪みが生じたり違和感を感じる人はやはり一定数いるんだなと。資本主義の競争社会を走り続け、KPIがどうとか成長だ自己啓発だ、そんなことだけを真面目に取り組み続けるのはやっぱり違くて、自分の力だけではどうにもならない自然の中に身を置いて感性に従いたいなと思った。
まずは衣食住を見直す(自分が着たいもの、食べたいものを人任せにせず作ったり)ことは今すぐにでもできる。その上で、数日でもいいから自然に入ってみたい。
2026年最初の読書だったので、今年の目標にしてみようと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ父と娘、祖父も入れれば三代で作家であり、今なお本の世界に魅了されている二人がただただ延々とこれまで読んできた本のことや作家になるまでの人生を語り合うという内容。
全編を通して特に海外文学の翻訳書への造詣が深い様子が描かれ、児童文学からSF、果てはミステリーまで数多くの本について語られている。
私はこの本を読んだことでほしいものリストに20冊以上の本が増えた。うーん商売上手。
これまでいくつか海外文学に手を付けたことはあるが、そのほとんどは途中で投げ出してしまい、苦手意識を持っていた。
しかし、よくよく考えてみれば子どものころに読んだことのある有名な絵本は海外のものが非常に多く、それには原作 -
Posted by ブクログ
著者のお二人を「理想的な親子」と言ったら、言い過ぎでしょうか?
もちろん、見えないだけで、家族にはいろんな側面があると思います。
でも、この本で本について語り合うふたりのやりとりには、
まさに “同志” としての絆を感じる、信頼に満ちた空気が流れていました。
私も父とはあまり多くを語りませんが、本のことだけは、なぜか少しわかり合えている気がします。
父は、本を読む私を、どこかで信じてくれているような気がするんです。
そして今は、幼い娘とも、いつかそんな関係が築けたら、と願ってしまいます。
もしかすると私は、娘のために、少しずつ本を集めているのかもしれません。
いつか彼女が困ったとき、つら -
Posted by ブクログ
日露戦争の12年前にクリスチャンとして生まれ、軍人となり、天文学者として功績をあげた秋吉利雄。敗戦とともに地位を失い生涯を閉じた海軍少将を綴る歴史物語です。
700頁におよぶ長編で、明治から昭和初期にかけてのモビリティの発展を個人の生活史から知ることができます。
航海技術が世界をつなげ、鉄道で組織化がすすみ、自動車と1903年の飛行機によりカオス化したあの時代に、位置情報を提供する水路部の職業軍人として活躍した個人史です。
ずしっとくる読後感。我が国の失墜に耐えきれなくなり1/700の戦艦のプラモデルを組み立てることで和らげたくなる大日本帝国の物語でもあります。 -
Posted by ブクログ
北海道の開拓史に関心のある方に、おすすめしたい一冊です。
昭和13年を生きる主人公「由来」の回想を通して、明治10年、札幌の開拓使本庁に勤めていた伯父「三郎」と、アイヌの人々との交流や暮らしぶりが描かれています。
物語は、淡路島出身の侍の子である三郎とその弟・志郎が、御一新の流れを受けて北海道・静内に開拓民として移住するところから始まります。
本作は、アイヌ文化の衰退を個性豊かな登場人物たちとともに描く歴史小説であり、文明開化の波に呑まれていく人間の姿を伝えてきます。
私自身、すでに狩猟民族を滅ぼしてしまった「文明」の側にどっぷりと浸かっている身ですので、読んでいてとても重たい気持ちに