池澤夏樹のレビュー一覧

  • ぜんぶ本の話

    Posted by ブクログ

    本が大好きな親子の対談本。知らない本の名前がいっぱいでした。
    当然の如く読んでる御二人の読書量には舌を巻きます。
    ふたりして毒を吐いてるところ、ミステリオタクの会話みたいで良かったです。

    「とにかく一度書いて、しばらく放っておくといいよ。半年くらい置く。そのあと、読み返すと、きっと欠点が見つかるから。そこからどうするか、考えればいい。」
    この考え方は何事にも共通しますね。

    0
    2021年08月17日
  • ぜんぶ本の話

    Posted by ブクログ

    児童書、少年小説、SF、ミステリー、そして「作家の父を持つこと」について、父娘が初めて語らった対談集。


    春菜さんが学校の図書室の本を読みきって「転校したい」と言った伝説を持つのも頷けるほど、二人の児童書知識がものすごい。私は岩波ようねんぶんこ及び岩波少年文庫とは縁遠く、挙げられている本のなかで読んだことがあるのはダールくらいだった。幼い頃から日本の作品より海外のものが好きだったというところは共感。子どもの本に詳しく、けれど読書傾向に口出ししない両親がいるのは羨ましい。
    二人が今の職業に行き着くまでを語った最後の章も興味深かった。福永武彦と原條あき子のあいだに生まれ、女であるがゆえにキャリア

    0
    2021年05月26日
  • ワカタケル

    Posted by ブクログ

    日本文学全集の「古事記」の全訳が、池澤夏樹の日本古代史正篇としたら、これは日本古代史列伝だろう。小説とは違う、というものを池澤夏樹は目指した。自らが稗田阿礼の如き語部となし、現代の考古学的成果を少しだけ取り入れながら、綿々と「伝えられてきた」神話を語って見せた。だから近代小説の持つドラマトゥルギーや研究書の持つ歴史的な正確さは無視する。

    何故ワカタケル(雄略)だったのか。おそらく、古事記の中でも比較的研究が進んでいて、現代の著者の中に豊かにイメージが湧いたのだろう。ホントは最も語りたかったのはヤマトタケルなのに違いないが、それは本書の中で「既に神話となった物語」として生き生きと語られる。

    0
    2021年05月08日
  • 南の島のティオ

    Posted by ブクログ

    豊かな自然と精霊の息づく島の、
    透明な、絵はがきみたいな短編集。

    見たことがないはずの美しい景色が鮮明に、
    なぜか懐かしく思い浮かぶような、
    原風景のような作品でした。

    それにしても、精霊とか南の島とか、
    そんなに馴染みやすい舞台設定ではないはずなのに
    なんでこんなにすっとはいってきて、
    心地よく馴染むのか。

    子供を読者として想定している池澤さんの作品、
    すごい好きだ。

    風景描写もさることながら、
    登場人物のおおらかさ、あっけらかんとした感じも
    さっぱりと心地よい。

    “たぶん勇気というのは男らしさや元気や
    無謀な冒険心とはまるで違うもので、
    ひょっとしたら愛と関係があるのかもしれない

    0
    2021年05月05日
  • されく魂 わが石牟礼道子抄

    Posted by ブクログ

    石牟礼さんの三回忌を前に、インタビュー集「みっちんの声」と共に出された石牟礼道子論集。池澤夏樹をしても石牟礼さんは掴みきれないという無力感が感じられて好ましい一冊。おそらく同じように不足感を感じたであろう米本浩二の評伝を立てているのも同じ志と失意を共有する仲間のようで好感がもてる。それにしてもやはりいくら言葉を費やした石牟礼論であっても、石牟礼さんの一行の引用にはかなわない。

    0
    2021年04月18日
  • ぜんぶ本の話

    Posted by ブクログ

    とてもディープな読書対談でした。かっちりと手応えのあるものをたくさん読んできたお二人の姿がくっきりと見えてきます。親子ですけれど、すごく対等な、ちょっとドライな仲の良さも、嫌味がなくて好感が持てます。一箇所だけ、他の方に対して「あれ?ちょっと上から目線??」と、どきっとした箇所があり、読んだ私の感じ方が過敏だったかなと思うので、もう一度時間を置いて読み直すつもりです。こちらがある程度の読書量がないと楽しめない本なので、知らないことが出てきても、ふむふむと気軽に読んで、こちらの読書量を底上げしましょう。

    0
    2021年03月10日
  • ワカタケル

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    日本の第21代天皇、雄略天皇(仁徳天皇の孫)の物語。
    天皇の系譜では、ここからが実在の天皇と言われているようです。ワカタケルや巫女の井ト、皇后となるワカクサカ、みな生き生きとして、リアリティがあります。
    権力の座を手に入れるため、ライバルを次々と殺すワカタケル 。しかし、国を一つにまとめあげるには彼の持つ力が必要でした。日本は、彼によって国家が始まったとされています。
    葛城の亡霊と語り、使いの狐と言葉を交わすワカタケル 。現実と神話が神話が溶け合って、特別な世界観が生み出されています。
    小説なので全てが真実ではないけれど、この時代の「大王」(おほきみ)の概念や、「巫女」のもつ力の現れ方などは分

    0
    2021年01月18日
  • ワカタケル

    Posted by ブクログ

    恐らく記紀の記述に基づいて書かれたと思うが、神話の不可思議さ、古代日本のおおらかで野卑な雰囲気がよく表れた物語となっている。

    ワカタケル(雄略天皇)の4代後の武烈天皇に直系がなく、5世代遡った応神天皇の5世孫である継体天皇が継ぐなど、この頃には天皇制が定着していることを示唆するように思えるが、現代皇室承継の参考例にもなる気がする。

    0
    2020年11月17日
  • ぜんぶ本の話

    Posted by ブクログ

    中学校のお友達のキヨちゃんのお父さんが半村良だった、というエピソードに「へぇ」3つ。
    (キヨちゃんは苗字の略だったようで)

    0
    2020年10月28日
  • ワカタケル

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

     日本経済新聞の連載で読んでいた。早く一冊の本になってまとまらないかと楽しみにしていたが、1年も経ってようやくだ。『日本文学全集』の編纂作業と並行して大変だったのかな。
     その全集の完結に寄せてと、出版社のフライヤに、日本人の性格の要点を知ったと、著者は以下の3つを挙げている;

    一、自然すなわち神々への畏怖の念
    二、常に恋を優先する生き方
    三、弱きものに心を寄せる姿勢

     そして、「今、ぼくたちはこういう日本人ではなくなってしまったかもしれない」と。

     そんな思いも汲みながら、本書を振り返ると、原日本人への回帰の思いが感じられる気もした。ちょうど、平成から令和へと、生前退位が成って、皇位継

    0
    2020年10月11日
  • 作家と楽しむ古典 古事記 日本霊異記・発心集 竹取物語 宇治拾遺物語 百人一首

    Posted by ブクログ

    古典文学を訳すにあたり、作家たちがどう読み取って現代語訳に落とし込んだか、その思考の一端に触れることができる。
    訳された作品だけでも面白いが、本書も合わせることでより読み易くなったと感じる。
    是非一緒に読んでもらいたい。

    0
    2020年10月07日
  • 古事記

    Posted by ブクログ

    ページの下部に脚注が詳細に付いており、訳者に「ほらここ、これはこういう解釈で」「ここはちょっと意味わかんないよね」みたいな解説をしてもらいながら読んでる気分になる。名前の羅列も、ただの羅列に終わらず、読み進められました。古事記の無秩序さが魅力的にも見えてくる。

    0
    2020年09月03日
  • 南の島のティオ

    Posted by ブクログ

    2020.08.19~08.27
    子供文学だから、言葉遣いがとても優しい。
    でも、内容は十分大人を楽しませてくれる。そして、自然が隣同士の世界を思い描かせてくれる。
    背景描写が特に好き。空、海、山、それぞれが色を持って、目の前に現れてくれる。朝、昼、夜の空気感もわかるし、そこに身を置きたくなる。
    ああ、こんな島に遊びに行きたい!!!

    0
    2020年08月30日
  • ぜんぶ本の話

    Posted by ブクログ

    本をたくさん読む人たちは、もちろんどんな才能があっても、本が好きという立場ではわたしたちと同じところに立ってくれる。読書というのは贅沢な趣味だな!!池澤夏樹さんの読書エッセイも絶対好きだと思うから読みたいし、こういう人たちのセレクトショップには信頼が置けるので、河出の全集も少しずつ揃えられたらなと思いました。

    0
    2020年07月11日
  • 南の島のティオ

    Posted by ブクログ

    南の島に暮らす少年ティオと、島でホテルを営む父、そして彼らを取り巻く島民たちと、島を訪れる人びととの交流をえがいた連作短編集です。

    不思議な絵ハガキを売りにくるピップという男や、島にあるムイ山に登るために島にやってきたトモコとトムの夫婦、太平洋戦争中に出会ったマリアという女性をたずねてきたホセ、予言者のカマイ婆など、魅力的な登場人物たちと、ゆったりとした時間の流れていく南の島での生活が、少年ティオの視点からていねいにえがかれています。

    本作は、児童文学の雑誌『飛ぶ教室』に連載されていたということで、できることならば少年時代に読みたかったと思わされます。もちろん大人になっても作品の魅力を十分

    0
    2020年05月10日
  • 作家と楽しむ古典 古事記 日本霊異記・発心集 竹取物語 宇治拾遺物語 百人一首

    Posted by ブクログ

    学生のときに古文をかじっていたから楽しく読めた。勉強していて良かった。
    古文を古文のままで理解できない自分としては、現代語訳に頼ったり自分なりに訳したりしながら読むわけだけれど、どうしても型にはまった蓄語訳は分かるのやら分からないやらはっきりとしないと言うことが起こる。そこが楽しむことを目的として古典を読む際の障りとなってしまうので、こういう訳者のカラーが表れている現代語訳は面白い。
    古文って行間を読む楽しさが詰まっているのだと分かる。町田康はやりすぎの感もあったが。
    自分は森見登美彦、妻は町田康が好きなので、両者の需要が一致した一冊だった。
    両作家が現代語訳を手がけた作品の方はまだ買ってない

    0
    2020年05月03日
  • 知の仕事術(インターナショナル新書)

    Posted by ブクログ

    池澤さんは生産性の高い作家だと思っていたので、その仕事術には関心があった。本人は愚直と言うが、よく考えられている。自分には何が必要か。

    0
    2020年04月03日
  • 静かな大地

    Posted by ブクログ

    読み応え満載の1冊!
    アイヌ絡みもあり、作者の熱意も読んでいるうちに伝わった!

    もう少し一気に読みたかった…。

    もう一度心が余裕あるときに一気に読みたい!

    0
    2020年02月25日
  • 終わりと始まり

    Posted by ブクログ

    池澤夏樹の文章は読ませる文章だ。このコラムはまさにそんな文章。3.11直後の連載だからその手の話が多い。
    すばらしい新世界にみるように氏は自然エネルギーの支持者であり思い入れの強さが伝わってくる。知識人は社会の様々な情報を集め自らの思想と照らし合わせて発信する、と定義していたが大変腑に落ちた。これからもそのような発信を期待したい。

    0
    2020年01月31日
  • 南の島のティオ

    Posted by ブクログ

    10篇のショートストーリー。南の島を舞台とした、少年ティオを取り巻く人たちとの出会いや、別れ、生活や、ファンタジーなど、島の情景がよく想像ができるくらいの緻密で、美しい文章でした。絵はがき屋さんはどうなったのだろう。

    0
    2020年01月11日