【感想・ネタバレ】ワカタケルのレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2021年08月19日

久しぶりに小説を読んだ。前半の盛り上がりが後半失速する感じがちょっと残念。
本書と関係ないですが、たまたま手に取った本が妻と一緒でなんでウチに2冊あるんだ?という話になった。妻と同じ本を読んで色々話ができる幸せを味わいました。

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Posted by ブクログ 2021年05月08日

日本文学全集の「古事記」の全訳が、池澤夏樹の日本古代史正篇としたら、これは日本古代史列伝だろう。小説とは違う、というものを池澤夏樹は目指した。自らが稗田阿礼の如き語部となし、現代の考古学的成果を少しだけ取り入れながら、綿々と「伝えられてきた」神話を語って見せた。だから近代小説の持つドラマトゥルギーや...続きを読む研究書の持つ歴史的な正確さは無視する。

何故ワカタケル(雄略)だったのか。おそらく、古事記の中でも比較的研究が進んでいて、現代の著者の中に豊かにイメージが湧いたのだろう。ホントは最も語りたかったのはヤマトタケルなのに違いないが、それは本書の中で「既に神話となった物語」として生き生きと語られる。

当然、日本統一の物語も、半島侵略の物語も、大和の豪族経営も、現代に解るように語られるけれども、それが歴史的事実であると池澤夏樹自身が信じているわけではないだろう。古事記全訳をした後に、その魂のままにワカタケルの生涯を「夢の力」で見聞きしたのだろう。それは全訳をした者しか聴けぬ声だった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年01月18日

日本の第21代天皇、雄略天皇(仁徳天皇の孫)の物語。
天皇の系譜では、ここからが実在の天皇と言われているようです。ワカタケルや巫女の井ト、皇后となるワカクサカ、みな生き生きとして、リアリティがあります。
権力の座を手に入れるため、ライバルを次々と殺すワカタケル 。しかし、国を一つにまとめあげるには彼...続きを読むの持つ力が必要でした。日本は、彼によって国家が始まったとされています。
葛城の亡霊と語り、使いの狐と言葉を交わすワカタケル 。現実と神話が神話が溶け合って、特別な世界観が生み出されています。
小説なので全てが真実ではないけれど、この時代の「大王」(おほきみ)の概念や、「巫女」のもつ力の現れ方などは分かりやすい。「怨念」については、もう少し書かれていてもよかった気がします。

女性は道具のように扱われて嫌悪感を感じるかもしれませんが、ここではじつは女性と交わり、女性が産み育てることがなければ「大王」は力を得ることも、力を継承することもできない存在なのだと分かります。
ワカタケルは本当に残酷な男ですけれど、そこにも女性の影響が見てとれるのは象徴的です。「大王」の権力を繋げることは難しくても、人を、知恵を未来へ繋げることができるのは、女性の力なのかもしれません。

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Posted by ブクログ 2020年11月17日

恐らく記紀の記述に基づいて書かれたと思うが、神話の不可思議さ、古代日本のおおらかで野卑な雰囲気がよく表れた物語となっている。

ワカタケル(雄略天皇)の4代後の武烈天皇に直系がなく、5世代遡った応神天皇の5世孫である継体天皇が継ぐなど、この頃には天皇制が定着していることを示唆するように思えるが、現代...続きを読む皇室承継の参考例にもなる気がする。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年10月11日

 日本経済新聞の連載で読んでいた。早く一冊の本になってまとまらないかと楽しみにしていたが、1年も経ってようやくだ。『日本文学全集』の編纂作業と並行して大変だったのかな。
 その全集の完結に寄せてと、出版社のフライヤに、日本人の性格の要点を知ったと、著者は以下の3つを挙げている;

一、自然すなわち神...続きを読む々への畏怖の念
二、常に恋を優先する生き方
三、弱きものに心を寄せる姿勢

 そして、「今、ぼくたちはこういう日本人ではなくなってしまったかもしれない」と。

 そんな思いも汲みながら、本書を振り返ると、原日本人への回帰の思いが感じられる気もした。ちょうど、平成から令和へと、生前退位が成って、皇位継承が既定路線で時代が移り変わろうというタイミングでの連載だったので、今の天皇制への期待と批判の気持ちもあってのことかと思っても読んでいたが、むしろ、我々日本人に、原点への回帰と、新しい時代を迎えて再生、再出発を促す作品だったのかとも思う。

 それにしても、連載は混乱を極めた。というか、ストーリーというものが掴みにくかったり、当時の言葉そのままの記載の部分と、現代語訳が並び1日分の文量で、まったく話が進まない日が続いたり、ちょと一筋縄にはいかない連載だった。それでも、古代史の魅力、舞台が奈良であることの魅力などから、個人としては、とても楽しめた内容だった。

 古代史は、史実というより、伝承だったり、そもそもが作り話だったりで、事実がハッキリしない。だからこそ、作家の創造性の発揮のしどころという面白みもあった。
 連載と並行して読んだ安部龍太郎の『平城京』での、葛城氏と皇室との関係などは捉え方が異なり興味深かったし、このワカタケル=雄略天皇の描き方も全く相反するものだった。
 先代の天皇殺しのクダリは、安部『平城京』では、ワカタケルが父親を暗殺し、その罪を眉輪(まゆわ)王という葛城氏の血筋の者に濡れ衣を着せたとして描く。一方、池上史観は日本書紀に則り、安康天皇は葛城氏の姫の連れ子の目弱(まよわ)に暗殺され、それをワカタケルが成敗して帝位に就く。一応、主人公としてのキャラクター作りがされていた。
 古代史の解釈は定説がないだけに、発想が自由で面白い。

 とにかく、神話と歴史がせめぎ合う時代の物語は、暴力的でもあり血なまぐさいが(そして、エロチック)、実にプリミティブで、人間が躍動している。
 またそこに、卑弥呼を出すまでもないが、古代史における女性の立場の重要性もクローズアップされている描き方も、実に今的でもある。
 『古事記』の現代語訳を行った著者、上中下巻とある古事記は、「政治的な動きが具体化されて権力闘争や武闘もある。そこに女たちが自分の意思を持って関わっている」下巻が面白いと言う。だから、ワカタケルを主人公にした物語を描いたのだろう。

 自然=神々との関係が近かった時代という設定だ。ワカタケルもたびたび神と言葉を交わす。そして、側近として仕えるヰトやワカクサカといった女性たちが、神の御神託を夢を介して予言としてワカタケルに授ける。雄略天皇なきあとの主人公は、いや、もとより物語を動かしていたのはヰトであったかのような終盤には、ちょっと唸らされた。
 そんな「神話と歴史がモザイクのように並列する世界」が、遠い昔、我が故郷の奈良で繰り広げられていたのかと思うだけで、心躍るではないか。

 そうした女性たちが代々天皇に仕え、故事や世の理を後世に伝える役割を担っている。ヰトやワカクサカたちが、その役割を、稗田阿礼という「役職」を継いでいくというのも、面白い仕立てだった。

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Posted by ブクログ 2021年08月28日

主人公は雄略か、と思わせてオリジナルキャラの女性。
持統天皇メインの構想もあるらしく、そこにつなげる意図が書いてるうちに出てきたらしい。
允恭が偉大な王だった設定で、作中では雄略がそれを超える事績を示さないまま死ぬので、なんで雄略を題材にしたのかわからない読者も出そう。
元ネタの記紀を知ってる人向け...続きを読むだったのか。

物部目、物部荒山の親子が登場したのは評価できる。特に荒山は古代系創作物では初なのでは。

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Posted by ブクログ 2021年07月06日

ワカタケルとは雄略天皇の当時の呼び名です。
雄略といえば、鉄剣が発見されたことで実在することが証明された一番古い天皇(だという説を信じてる私)で、ココから先は神話ではなく現実の天皇家の系譜がはじまるイメージでしたから、本書のような神話と現実が融合する狭間な世界観はこの時代ぽくてよかったです。

...続きを読むその他雄略天皇のイメージと言えば武烈と共に傍若無人な専制君主。。
こちらもまあイメージどおりですね。
当時の女性の扱いもあんなものでしょうし、それでいて女性の巫女的な霊力に頼る一面も納得感がありました。

神々が身近なこの時代、やっぱり好きだなー

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Posted by ブクログ 2021年03月19日

ワタケル(雄略天皇)の一代記.男と女の役割,ここまでの歴史の真否,大陸との関わり,神々の捉え方など様々な問題を含んだ物語.

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Posted by ブクログ 2020年10月10日

古事記や日本書紀を現代語訳した池澤夏樹さんだから書ける物語。こういう文体でも、それはそれでエンタメにかんじました。

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