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Posted by ブクログ
最近は池澤夏樹にハマっている。なんとなく、彼の清潔で頭の良さそうな感じの物語世界が今の気分にぴったりな感じ。文明社会に組み込まれつつも少しだけ距離を取り、人間以外の世界の仕組み(動植物や星空や宇宙など)と対比させる感じが、巣篭もり生活の良き伴走者になってくれる感じがする。
本作は、文学版「あつ森」みたいな感じで、ちょっとした気の緩みから孤島に流れ着いた新聞記者が、島の生活に順応していくという物語。遠い南の島の孤独な生活がとても心地よい感じがする。
読後感は、ゴツゴツとした感触で、まさしく、処女作といった感じの小説だった。これから文章で身を立てていくという意気込みみたいなのがとくに後半部から書き連ねられており、その気迫みたいな熱さを感じた。
これから飽きるまで彼の作品を追っていくつもりでいるのだけれども、どうなるか気になる。
Posted by ブクログ
初版は1990年、著者の小説デビュー作。
内容の概要を書いてもいいのだけれど、それを書いてしまうとこれから読む人たちのあの最初の印象を奪ってしまうことになるので、伏せておいた方がいい気がする。
そうなるとここに書くことは、一体どういうものがいいのだろう。わたしの、漠然とした、自分にしかわからないイメージや浮かんだ言葉の列挙か、もしくはどこかの引用か?
とにかく、淡々とした描写の中に、具体的なものと漠然としたものが混在し、主人公の思考も、その思考の移り変わりも、かなり鮮明になって頭の中に浮かび上がる。
小説としてもすごくおもしろかったけれど、お金以外で量る幸福度を考えるのにもいい本じゃないかと思った。
一番好きな設定は、主人公の元々の職業が地方の記者だったってこと。
Posted by ブクログ
取材のためマグロ漁船に乗り込んだ日本人の新聞記者が、事故で海に落ち、無人島へと漂着する。
自然の中で生活するうちに、文明や社会、人間そのものについて考え、島民としての自分と、かつて文化人として生きていた自分とのあいだを漂う物語。
最初こそ絶望していた主人公も、現代社会から切り離されることで、職業や国籍、他者からの評価といったことから解放されていき、これまでとは違う本来の自分に気づいていく過程には悲壮感がないため、いい意味でハラハラせずに読めた。
木に登って椰子の実を採り、海に潜って貝を獲り、かつて島に暮らしていた人々の住居に手を加えて生活する。
もし彼と同じ状況に置かれたとして、同じように生きられる人が果たして何人いるだろう。
静謐で美しい文章で、夏のカラッとした風や、徐々に暗くなっていく夕焼け、雨で湿気った森や土の匂いなど、ありありと風景を想像できた。
Posted by ブクログ
新聞記者のヤスシ・キムラは、遠洋マグロ漁についてのレポート企画の準備をしているとき、誤って船から落ちてしまい、無人島に流れ着きます。彼は、自分が漂着した島を「アサ島」と名づけ、ヤシの実やバナナを食料に現代のロビンソン・クルーソーのような生活を送ります。しかし、周辺の島の探索をはじめた彼は、「ユウ島」と名づけた島に一件の家が建てられているのを発見します。そして、その家にアメリカ人の映画俳優であるマイロン・キューナードがやってきて、二人は出会うことになります。
彼は、文明社会へつながる導線を保ったままで島の暮らしをたのしむマイロンに、ときおり説明のできない反発をおぼえます。マイロンは、そんな彼の態度にロマン主義的な心情を見てとり、そのことを指摘しますが、彼にとってより大きな問題だったのは、マイロンに出会ったことでみずからの心情に説明がつけられてしまうことに対する疑いでした。やがてマイロンは島を出ることになりますが、彼はまだしばらく島に滞在すると告げ、自分自身の体験を記すことを決意します。
南洋での彼の生活は、文明と自然を対照する視座そのものを包むようなスケールを示し、彼はそれを前にして説明することばをうばわれながらも、表現を通じてその自然を包み返す試みへとつながるプロセスがえがかれているように感じました。
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