池澤夏樹のレビュー一覧
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海軍少将、天文学者、そして敬虔な聖公会のクリスチャンとして人生を全うした秋吉利雄という人の一生を描いた長大な伝記小説。兵学校を卒業し、海軍に入軍したが、その学究的な性格から東大に天文学の学びのため、留学し、海軍水路部に入り、天文学の知識を航海に生かす働きに従事する。1934年1月、ミクロネシアのローソップ島での皆既日食の観測を経験。若い日には妻チヨ、そして妹・トヨを産後に失うという悲劇、妹トヨが長男・武彦を孕み、その後・福永末次郎と結婚する場面は実に数奇な場面。作家・福永武彦の誕生秘話だ。後妻ヨ子(よね)との間に産まれた子どもたちがクリスチャンとして成長していく姿も麗しい。讃美歌を歌い、歌詞を想う場面が度々登場するだけでなく。信仰的な会話の場面が頻出し、利雄と親戚一族の熱心な信仰ぶりが感じられた。非戦主義の考えを持ちつつ、戦争の時期を乗り越えたのは、多くの苦労があったと思う。福永武彦が晩年、洗礼を受けたと聞いているので、このような背景は興味深かった。海軍兵学校の同期、加来止男とMとの語らいも場面も戦争の背景を語るのに上手い挿入である。利雄の語りで物語は進み、1947年の利雄の最期の場面は利雄とチヨの長女・洋子が語り手として、「また会う日まで」「主よみもとに近づかん」が歌われたことを語るという感動的なラストだった。またローソップ島での現地民は宣教師を通して信仰を持っており。「また会う日まで」を歌って別れを惜しむ場面も感動的だった。
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Posted by ブクログ
いやはや、長い。p. 723 片手で持つには重すぎ、持ち歩くにも辞書レベル以上。よく読んだ、という満足感が、内容よりも濃くの星の数に出そう…
史実に基づき、池澤夏樹の大伯父、秋吉利雄の生涯を語る。軍人であり、科学者、クリスチャンの父より、聖公会の使徒。長崎の鎮西学院から海軍兵学校を経て、艦隊を体験した後、大日本帝国海軍の水路部に所属。東大の天文学を学び直し、天測暦を用いて潮汐表や海図の作成に励む。
学徒の加来止男、Mとの親交。
ハンモックナンバー16 (卒業時の成績順)
キリスト教に救いを求めつつも戦時下に大切な妻、子ども、友人や多くの軍人を亡くす。
聖路加病院の20代の日野原先生や、山本五十六との会話、天皇陛下の終戦の放送原文、また、真珠湾攻撃、アインシュタイン… 井の頭線や九品仏、築地など変わらない東京の地名が歴史を身近に感じさせる。教科書以上の話が面白い。
とにかく細かい。当時の原文や聖書の話など…それらが果てしない…
聖路加という病院の名は福音書を書いた聖者に由来する。その方は医者であったと伝えられるから病院の名にふさわしい p. 30
白地に赤で日輪と十六本の光条を描いた軍艦旗
疎にまばらに、開く 疎開 p.502
立教高等女学校に水路部の井の頭分室が開設
創業者の名にある「寅」の字にちなんで「虎印計算器」と名付けられ、やがて日本製は品質が信用できないという風評に対抗すべく「タイガー」と名を替えたと聞いている。舶来と思わせたのだ p.516
信仰は人のふるまいを制限するのではなく解放するのだ p.521
進駐軍、進んできて駐在する軍、米軍や占領軍より日本側の敗北感の色が薄められる p.602
太公望/ 呂尚、文王の祖父である「太公」が長らく待ち「 望 のぞ 」んでいた周の中国統一を実現する人という意味。「釣り好きの人」の代名詞これは釣りをしていた太公望呂尚が文王に見いだされたという故事にもとづく
明眸めいぼう/ 美しい人 白皙はくせき/ 色白
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ネットでHeveneseのラストトークを見ていて、本書に言及があったので購入。令和の語源である万葉集をほとんど知らなかったので、とても興味深く読んだ。8人の著者の、改元をきっかけに書かれた万葉集に関するエッセイ集。
鈴木大拙は「日本人の霊性」の中で万葉集を「稚拙」だとか「幼稚だ」とか、あまり良い評価をしていなかった。しかしながら本書から万葉集の他の歌集との違いがわかり、納得した。
曰く、万葉集には中近東的な雰囲気がある、とか、万葉集は文字ではなく大和言葉の響きを口にうたうための歌集である、とかなどと言うように書かれていた。また万葉集には代作という表現があるとの事。これについては日本人が原作を尊重しつつも模倣する、現代のコミケの同人誌の根底にあるものの起源のように感じた。模倣は多文化では真似や盗作だが、万葉の代作からくる日本の「なぞらえる」とか「あやかる」文化は、まねる、まなぶ、につながるのではないかと思った。
星四つ。