池澤夏樹のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ようやくきちんと読んだ古事記三巻。アマテラスが弟スサノヲの所業を見て、天の岩屋戸に入って中から戸を閉じてしまう話や、八俣のオロチをスサノヲが退治する話、稲羽の白兎と大国主命の話あたりはよく知っているが、あとは代々天皇の伝説的な話が続く。とても読みやすい現代語訳ではあるし、池澤夏樹氏が丁寧につけてくれている注釈を参考にしつつ読めば話についていくことはできるが、如何せん、代々天皇は妻が多く子だくさんで、もちろん伝説と実話の区別は不明だから、名前が列記されているページはかなり読み飛ばしてしまった。
古代ヤマトを伝える書物として、古事記、日本書紀があるが、解題によれば、日本書紀よりも古事記の方がはるかに自由で大らかな「文学」のようだ。(日本書紀は未読)。確かに古事記はなかなか話がスピーディーに進むし、神様たちは神々しくはなく、続く天皇たちも恋し、喜び、恨み、競い、殺し合う。ギリシア神話を思わせる物語も少なくない。とりあえず「古事記を読めた」という満足感。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ新聞連載の大作。少し前の『ワカタケル』を思い出させる単行本の文量だ。
著者池澤夏樹の大伯父・秋吉利雄の生涯を透し、近代日本の歩んだ歴史を描き出す、一市民の大河小説。
歴史の大まかな流れは日本人なら誰もがよく知る大正~昭和史、その大きな流れの中で、海軍軍人でありキリスト教信者、そして天文学者という、一見相容れない側面を持つ主人公の人生、ヒトトナリを、いかに矛盾なく描き通すかが見せどころ。
主人公利雄は、当然のことながら、キリスト教の信仰と軍人としての責務(戦争としての殺人行為)を、個人の中で、矛盾を抱え葛藤しつつ、人生を全うしていく。
史実の中に、個人の生の存在を描き出す筆致は、30余年ものキャリアを積んだ著者をして成せるところだろう。主人公やその家族の他、登場人物の多くは実名だ。そのそれぞれに人生があり、物語がある。個々の物語、storyが、大きな束となって、歴史、historyを紡いでいく流れに、なんとも言えない感銘を覚える。
歴史は、けっして個々人の人生とは切り離されているものではないのだ。
海軍の水路部に所属し、天文学者としての知見をいかんなく発揮し、海図を描く主人公の姿が尊い。
「星天と向き合っていると自分が一つの点になる。万象は絶対不動と思われる。
不動だからそれを基準に自分の位置、大洋にあっては艦の位置を知ることができる。
私は点になった自分が好きだった。わたしもまた星である。」
生涯、自分の立ち位置を、不動の星の位置を頼りに見定め、ブレることなく生き抜いた。天に召されるまで、何度か繰り返されるタイトルの「また会う日まで」は、主人公秋吉利雄の最大の業績とも言える、1934年のローソップ島における日食観測、その時、島を離れる際に島民が歌ってくれた讃美歌のこと。
人生は、多くの人との出会いと別れを繰り返し紡がれていく。主の元で、また出会えると信じ、自分に正直に生きた利雄は、別れのたびに「また会う日まで」を胸中でリフレインしていたことだろう。 -
Posted by ブクログ
池澤夏樹さんの大伯父・秋吉利雄さんの生涯を描いた作品。秋吉さんは海軍軍人、天文学者、キリスト教徒として明治~終戦まで生き、決して戦争に賛成ではないが、海洋地図製作などを通じて一翼は担う状況だった。あの太平洋戦争は誰が見ても間違いで、多くの人が敗戦がほぼ決まった状況の中でも無駄に命を落とした。海軍少将まで出世し海外のこともよく知っており冷静な判断ができる秋吉さんのような人たちが、どのような行動に出れば戦争を回避または早く終わらせることができたのだろうかと思う。特別な地位もなく海外も知らない当時の多くの国民にはできることは限られていただろう。主流のように見えてもおかしいなと感じることがあれば声を上げることができて、軌道修正される世の中になっていくといいなと思った。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ古事記 712年 天武天皇の命により 池澤夏樹
神様の血縁関係
歴史 神話 伝説 系譜 歌謡
なる=勝手に生まれてきたもの
ヤマトタケル 弱いものへの共感
日本霊異記 平安初期 日本最古の仏教説話集 伊藤比呂美
ブロークンな漢文
性を書く博愛主義
くながひ=杭を交える、つっかえる(婚、愛婚) とつぐ=戸を継ぐ(交通)
竹取物語 平安前期 森見登美彦
かぐや姫が地球に来た理由は不明
帝さえも拒否し、世の中のルールをすべて拒否して帰っていく
宇治拾遺物語 鎌倉初期 町田康
原曲を再現するのではなくカバー曲、メロディーもムードも変えない
原文から聞こえてくる音以外は付けない
百人一首 奈良から鎌倉初期 小池昌代
たくさん言葉を費やさないといけないのが現代詩、一行で済むのが和歌 -
Posted by ブクログ
「宝島」のロバート・ルイス・スティーヴンソンの詩集"A Child's Garden of Veres"「子供の詩の庭」池澤夏樹・春菜 父娘による共著。
あとがきによると池澤夏樹さんが子供の頃に母親と読んだ詩、9篇を訳し、残りは春菜氏による訳。
この詩集には船や航海をテーマにしたものが多く、子供の無邪気でおおらかな詩から、スコットランド人にとって海が身近なものであることやスコットランドの夏の昼の長さなどを感じることが出来る。
マートル・シェルドンによる挿絵も繊細で美しく、ここで使用されている挿絵は1916年M.A.Donohue社(シカゴ版)に収録されたものとこと。
この挿絵を見るだけでも楽しい。
池澤春菜さんによる前書きも素晴らしい。
これから始まる素敵な詩集に素敵な文章で誘ってくれます。
夏樹氏のあとがきからはその両親、夏樹さん夫妻、そして春菜さんへのさり気ないファミリーストーリーを感じることが出来ました。
同世代の女性として、多くの意味で豊かで、あたたかい家庭で大好きな本を好きなだけ読み、きっとしたいだけ好きな勉強を伸び伸びと出来たのだろうと想像出来、それがこの素敵なまえがきにあらわれているのですが、少し彼女のことが羨ましく思えました。
実際のところは何も知らないけれど。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ政治家たちよ!
p11
意見を言わない国では使い道がない。日本人は好みは言っても意見は言わない。異を唱えると角が立つから、議論は避ける。
TV! TV!
p40
「ぼくはきみの意見には反対だ。しかし、きみがそう言う権利のためには命を懸ける」。(ヴォルテール)
愛国心について
p54
二十世紀でいちばん偉い英語の詩人エズラ・パウンドは、
何人かが、祖国のために死んだ。
「美しく」も「名誉で」もなく
昔の嘘を信じて
地獄の泥に目まで沈んで。
信じなかった者は
生きて嘘の家に帰った。
戦争ですよ
p94
左翼の作家ジョージ・オーウェルが「最も速やかに戦争を終わらせるには、負ければいい」と言うのは筋が通っているけれど、言葉の裏にはそれは不可能だという思いがある。
p96
勝者がないのが現代の戦争。だから人は、十八世紀の後半にベンジャミン・フランクリンが言った言葉に戻るべきなのだ。
「良い戦争というものはないし、悪い平和というものもない」
2007年刊行。文庫化は2011年。
国内外の政治に関する皮肉は若干古びていたものの楽しく読めました。雑誌の連載なので、そういったタイムリーな話題としてあげることを選んだのかもしれません。
辞書などを参考に書かれていますが、誰が言ったかもわからないアノニマスの発言もあり面白かったです。日本人の書物は極端に引用が少ない気もしますし、日常生活で用いられる所謂ジョークというものも海外と比べると堅い印象。
政治の時事ネタはともかくとして、最後のあとがきの地震に関して、他、自殺や病気、それから戦争など普遍的な章もあり、部分ぶぶんで考えさせられます。 -
Posted by ブクログ
池澤親子の、これでもか的に、ほぼ本の話だけの対談。
夏樹氏は昔からファンだけど、声優の娘さんについては、この本が出るまで知らなかった。
小難しい評論ではなく、読書好きの親子の普通の会話と言う感じ。
読まないジャンルの話になると、取り上げる本も知らないんだけど、お二人の話しぶり、家族の会話らしい力みのなさ、どういうものが好きなのか、といった部分が面白い。
そして密かに気になっていた、夏樹氏は村上春樹をどう思っているのかについて、「世界の終わり~」が好きと言うのは、あ~そんな感じと納得しつつ、「あの文体は飽きる」とバッサリだったのが受けた。