池澤夏樹のレビュー一覧

  • 夏の朝の成層圏

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    ネタバレ

    池澤夏樹さんのデビュー作。
    無人島に漂流した主人公と自然との関わりを描いたもの。
    最初は苦労しながらも何とか生き抜いていた。
    そんな矢先、他の人が訪れたことで元の世界に戻れる機会を得る。
    しかし、彼は帰還することなくあえて自給自足を続けた。それは何故か。

    そうさせる力や欲求というのは簡単に説明することのできないものだ。しかし、最後には主人公はその生活で学んだことを表現しようと決意する。それは可能なのかどうか。
    池澤さんは感覚と思考、この二つを両立させようと試みているように感じる。また、目に見えないもの、形を成さないものに対しても敬意を払っている。その大切さを感じているからだと思う。

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    2012年12月21日
  • 夏の朝の成層圏

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    独特な空気感と理屈が南の島という舞台に融合していて気持ち良く読めた気がした。
    どっちが本当の世界なのか、どこからが日常なのか、境界線がないようであるものの、それも曖昧。
    そんな感じが心地良い。

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    2012年08月01日
  • 真昼のプリニウス

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    本を読むときに、作家がどのレベルで人間を見ているかということを感じるのはとても重要で、そのレベルがわたしと一致しているかわたしの求めるものでない限り、読書というのは多かれ少なかれ空虚なものになりがちだとおもう。池澤夏樹の人間に対する向き合い方はすごく好き。好感が持てる。それに加えて、この本では自然の描き方もとても素敵だった。自然に向き合ってきた人の書き方だと、体感ゆえの書き方だと、だからこんなに迫ってくるものがあるのだとおもう。理系の煌めきをぎゅっと文学に凝縮するものの、物語としての魅力を失わせないストーリーテラーとしての才能。好きすぎる。真昼のプリニウスだと、読み終わったあとに思わず呟いてし

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    2012年06月12日
  • 静かな大地

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    北海道開拓とアイヌの話。当時、蔑まれていたアイヌと共に土地を拓き、事業を興したものの、妬みや策謀によって離散という結末を辿るという、なんともやるせない。しかも実話に基づいている。
    人間は自分至上主義というものから逃れられないものなのか、さらにそのおかしな考え方が強ければ強いほど力を持ってしまう、追従してしまうのはどうしたらこの世から消滅させられるのか、考えさせられる。
    物語という形式ではなく、父親の問わず語りを後に娘が回想しながら文字化するという形式なので、途中の娘たちの会話に著者の考えが書かれているのが気に障ると感じる人もいるかも。

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    2012年06月10日
  • 南の島のティオ

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    ほっこりした不思議な10個のお話が詰まっている。「絵はがき屋さん」がいちばん好き。すごく幸せな気持ちになれる。

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    2012年06月06日
  • 真昼のプリニウス

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    ネタバレ

    女性火山学者が主人公のお話。
    学問でも生き方でも、この頃、私たちは情報や理屈などに頼りすぎている。
    言葉や考えはそれほど頼りになるものではないよ。
    と池澤さんが考えておられるのを文中から感じました。
    作家だからよりそう感じるのかもしれません。

    あっちに世界があって、こっちに人がいて…ではなく、人があってこそ世界があるのではないか。だから人の数だけ、異なる世界があってもよいし、もっと感覚的に自分が真実だと思う世界を探そうとする心がけが必要なんじゃないか。そんなことを考えました。

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    2012年05月23日
  • 真昼のプリニウス

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    先日、心躍る素敵な本屋さんを見つけ、山登りに関わるコーナーに置かれていたので、手に取る。
    ここで終わりなの?!というところで終わるこの物語。
    読み手に委ねられたのね、頼子さんの未来は。

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    2012年05月20日
  • すばらしい新世界

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    「光の指で触れよ」を先に読んでしまったので、林太郎や森介、アユミの5年前、ネパールの風車、森介の大冒険とは、「光の・・・」で出てきた話はこういうことだったのね。と納得しながら読みました。美しいといえば美しい、でも普通の風車とはにても似つかないダリウス型の風車ってどんな形なんだろうと思ってネットで確認しました。そしたら、「家庭と職場」の章のタイトルの下にダリウス型の模型の写真があったのですね。読み終わってから気づきました。エネルギー問題、環境問題、途上国の問題、登場人物と一緒にちょっと真剣に考えてしまいました。

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    2012年04月19日
  • 夏の朝の成層圏

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    抑制されたリズムの中に一言一言が重みを持っています。空気の薄いところで自分の現実に出会ったらこんなように際立って感じるのかな。無人島漂着した主人公、と設定やストーリーは物語世界のものですが、表現された肌感覚や主人公の思考には諸手を上げて共感。それが美しい言葉で。うーん、折々で読み返したい本になりました。

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    2012年02月23日
  • 夏の朝の成層圏

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    ぼくが彼になって、またぼくに戻ってくる話。
    振り返ってみて後から「あれは幸せなことだったんだ」と気付くこと。生きることに一生懸命で居られることは幸せなんだと彼が気付くくだりに、自分を重ね合わせて少し泣いた。

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    2012年01月18日
  • 真昼のプリニウス

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    情報の提供サービスを夢想しつつも、自身は物語も神話にも信じられなくなっている男。心にかかったフィルターが強過ぎて自分の直感さえも本物か贋か分からなくなっている。

    一方は科学者の女性。自分は正しく世界を観測し分析していると思っているが…。
    うさぎの例え話のように、その先に危険が待っていたとしても何があるか知りたいという本能に従い火口へと赴く。

    ストーリーと言えるほどのものはないけど、人物や事象の一つ一つが象徴として機能しているあたりが池澤夏樹さんの凄いところです。とても心に響く一冊だった。

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    2011年12月07日
  • 叡智の断片

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    縲?譛亥?繝励Ξ繧、繝懊?繧、騾」霈我クュ縺九i隱ュ縺ソ蟋九a縲∵怙蛻昴↓蜃コ縺溷腰陦梧悽繧定ェュ繧薙□縲よ悽隱後〒縺ッ騾」霈我クュ縺?縺」縺溘¢縺ゥ繝励Ξ繧、繝懊?繧、閾ェ菴薙r隱ュ縺セ縺ェ縺上↑縺」縺溘?縺ァ縲∫カ壹″縺ッ縺?▽縺句腰陦梧悽縺ァ縲√→讌ス縺励∩縺ォ縺励※縺?◆繧峨?繝ャ繧、繝懊?繧、縺悟サ??縺ォ縺ェ縺」縺ヲ縺励∪縺」縺溘?ゅ?碁?」霈峨r隱ュ繧薙〒縺翫¢縺ー濶ッ縺九▲縺溘?阪→謔斐d縺セ繧後◆豎?貔、螟乗ィケ縺ョ縲弱お繝シ繝√?繝?繝ウ繝壹Φ縲擾シ磯?」霈我クュ縺ョ鬘悟錐?峨′譁?コォ蛹悶&繧後?∵軸霈峨&繧後◆繧ゅ?蜈ィ驛ィ縺瑚ェュ繧√k繧医≧縺ォ縺ェ縺」縺溘?ょャ峨@

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    2019年10月07日
  • すばらしい新世界

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    『光の指で触れよ』の前のストーリー。
    日本の技術系サラリーマンが、ネパールに風車を建てにいく話。
    主人公とともにネパールの空気を感じることができるし、先進国が開発途上国を助ける際の問題点も考えられる。
    『光の〜』同様、宗教やスピリチュアルも大いに関係していて興味深い。四つ星なのは『光の〜』よりも読むのに時間がかかってしまったこと。おもしろかったけど、中盤ちょっと退屈した。まぁ、でもそのスローペースがいいのかもしれないけど。

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    2011年10月09日
  • 叡智の断片

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    私がいちばんウケたのはスコットランド人ネタ。今後の人生でたくさんのスコットランド人と出会いたいものだぁ。そういえば、ロンドンのタクシーの運転手さんに「君はハイランド出身?」と訊かれた! ベタな東洋人顔ですけど〜+そんなにそっち方向に英語訛ってますか〜?

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    2011年09月20日
  • すばらしい新世界

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    電力の話とか今の日本を予言しているような。とはいえ難しい感じはまったくなくて、押しつけがましくもなく、悲観的でもなく、するするとおもしろく読めた。淡々とした感じがいいなあと。でも、もっとダライ・ラマの話が出てくるのかな、登場するのかもとすら期待していたんだけどそれは期待はずれだった。まあいいけど。映画「クンドゥン」を見たくなった。

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    2011年09月18日
  • 夏の朝の成層圏

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    無人島に漂流した青年の島でのサバイバル生活の話。池澤夏樹さんの小説デビュー作。過酷な漂流から無人島にたどり着き、「生きる」。冒険物にあるワクワク感や緊張感を感じない、不思議な透明感ある小説。著者のメッセージや根底を探ると難しいので、さらっと読み進めた。再読だったが、いつかまた読んで探ろう。

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    2011年07月16日
  • すばらしい新世界

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    風車製作会社の一技術者サラリーマンが、妻の提案でネパールの小さな村に小さな風車を作る話。戸惑いながらもその計画に魅せられていき、ついに現地を訪れる。えっ?本当に実行するんだ!まさに男のロマンか!!語りかけるように綴られる家族(妻、息子)とのe-mail。そこには作者のエネルギー、資源に対する思いやメッセージがそっと込められ、まさにタイムリーな話題で唸る。そして後半に向かって繰り広げられる大冒険!爽やかな風が吹き抜けた。

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    2011年07月04日
  • 真昼のプリニウス

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     あー。これはすごい面白い。
     物語が読み手の手から離れて、(確かな力量のある著者の手によって)幻想的なイメージで展開し、楽しませてくれる。
     下手な人が書けば「だからどうなの?」となりそうな展開。

     計算ずくで書いているのだろうと思うけど、これが天然で素だったらすごいなぁ。すごかった。

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    2011年03月19日
  • すばらしい新世界

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    現代社会への様々な問題提起がされており、たくさんのテーマが詰められているお話だとおもう。
    今まで読んだ事のない感じ。
    長かったけど、おもしろかった。

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    2011年02月16日
  • すばらしい新世界

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    再読。初読2003
    環境問題に対する取組が、日常生活の物語として描かれていて、当時とても新鮮。
    今読み返して、その取組も、考えの厚みがあるように思える。
    あるいは家族について。

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    2010年11月24日