池澤夏樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
各話一つだけ不思議なことを入れておく。
藤子F不二雄の言うところの「少し不思議(SF)」の南の島ファンタジー版でしょうか。
不思議がギリギリのところで生き延びている世界。池澤さんが挟んでくる不思議要素や島の伝統は非合理的だが、きっと昔の日本にもあった類のこと。文化人類学にも非常に精通してるようです。
南の島を日本人が書けるのか?と思いますが、深い洞察とリアリティ。日本人が何故書けるのか。たまに他の国の世界を我がものとして見ることのできる人間がいますが、池澤夏樹さんはポリネシアのこの島にどこか繋がれるものがあるんでしょう。南の島だけでなく世界中の多くの場所に繋がっているのかもしれません。
世界樹 -
Posted by ブクログ
憲法は国の暴走から私たちを守ってくれる大切な理念です。
米国から押し付けられたものだから改正すべし、と声高に言う人々もいるけれど、この世界的にも先進的な憲法の案は、当時の日本人に喝采をもって支持され、合法的な手続きを経て旧「大日本帝国憲法」から現憲法に切り替えられたのでした。つまり、案を提示したのはGHQでしたが、これを選んで施行したのは日本人です。
国の権力から私たちを守るという立憲主義を180度引っくり返して、国民の権利よりも国の都合を優先させるような改憲案を自民党が提示し、参院選の争点にするなどといっている現在、現憲法を読み直して、その素晴らしさを再確認し、自民改憲案がどれほど危険なも -
Posted by ブクログ
火山学者である頼子は、広告の仕事をしている門田と出会い、彼にある嫌悪感を抱く。門田はあまりにも軽率に言葉を濫用している。彼の仕事は頼子に言わせれば「贋の物語、贋の神話を作って、それを新製品にもったいぶってくっつけること」であり、彼自信が言葉や妄想で真実や本当の気持ちを覆ってしまい、ずいぶんと不誠実な人間だと頼子には思えた。しかし、彼に対するこの嫌悪感はすぐに頼子自信に返ってくる。彼女もまた科学という権威ある神話の中で安穏と生活をしている。火山が噴火するメカニズムは解けても、真に迫りくる脅威としての火山は知らない。頼子もまた閉じられた神話の中で生きていたことに気づく。そして、世界の真実に迫るため