池澤夏樹のレビュー一覧
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父親と娘が、こんなふうに共に読んだ本のことを話し合うなんて、素敵だなぁ、と思う。しかも、こんなにも心ゆくまで・・・。
春菜さんが子供の頃、本にのめり込んでも、お父さんは見守っていた。「本を読むことは自閉ではない、自開なんだよ。だから心配ない」という池澤さんが素敵。
SFやミステリはあまり読まないのでさらっと読み、児童文学のこと、池澤さんの家族のことについてをしっかり読んだ。春菜さんが忘れられない、大好き、という物語でも、父はそうとは限らない。「出会うのに遅すぎたのかも」という。児童文学には、ふさわしい出会いの時期があるのだ。
夏樹さんは、父のいるうちは小説を書こうとしなかったこと。母は本を読む人の邪魔をしてはいけないという人だったから、母親が本を読み始めたら今日は夕食のおかずに僕がコロッケを買いに行くんだな、と思ったこと。春菜さんが父の言葉に耳を傾けて真剣に聞いている様子が伝わってくる。
藤沢周平さんの娘さんのエッセイも、お父さんについての素晴らしい本だったけど、これもまた父と娘の本として心に残った。 -
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ネタバレ著者の本は初読みとなりました。
表題の通り、本作の主人公は南の島のティオ。
そこで語られる島民や、人ならざる物たちとの10篇からなる児童文学。
どことなく不思議な世界観でした。
説明
内容紹介
小さな南の島に住むティオと出会った人々を中心に、つつましくも精神的には豊かな島の暮らしをさわやかに描く。
お父さんとティオが経営しているホテルに絵はがき屋さんがやってくる。島やホテルの風景の絵はがきをお客さんが買って手紙を出すと、もらった相手は、どうしてもこの景色をみたくなる。だから、このホテルに必ず人を連れてくるはがきなのだという。この夢のような話を信じたティオに、絵ハガキ屋さんが最後におまけにくれた一枚とは?。
花火で「空いっぱいの大きな絵」を描いた黒い鞄の男などの個性的な人々とティオとの出会いを通して、つつましさのなかに精神的な豊かさに溢れた島の暮らしを爽やかに、かつ鮮やかに描き出す連作短篇集。第41回小学館文学賞受賞作に、新作「海の向こうに帰った兵士たち」を収録した増補版。
内容(「BOOK」データベースより)
受け取る人が必ず訪ねてくるという不思議な絵ハガキを作る「絵ハガキ屋さん」、花火で「空いっぱいの大きな絵」を描いた黒い鞄の男などの個性的な人々とティオとの出会いを通して、つつましさのなかに精神的な豊かさに溢れた島の暮らしを爽やかに、かつ鮮やかに描き出す連作短篇集。第41回小学館文学賞受賞。 -
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池澤春菜さんのお名前は「本の雑誌」でお見掛けしていたけど、似た名前の方だなと長いこと思っていた。池上冬樹さんという書評の方もいらしたから、池のつく姓と春夏秋冬の名は語呂が良いんだなぐらいに思っていた。
父君の夏樹氏の書評は昔、良く読んだ。お嬢さんもかなりの読書家らしいので、小川洋子さん・平松洋子さんの「洋子さんの本棚」に似た感じかなと思って読む。
「岩波ようねんぶんこ」、知らなかった。「ムギと王さま」の挿絵が冒頭にある。積み上げた本の前で、本にのめり込んでる女の娘が春菜さんそのままだったんだろうな。冒険モノが多いのと、ナンセンスものが好きだったという。羨ましい。僕ももっとそういう読書したかった。
中盤はSFやサスペンスについて。
父娘が次々に挙げる本を互いに読んでいるのことに驚く。僕なぞ知らん本が沢山列挙されるのに。
父君の夏樹さんが自作「マシアス・ギリの失脚」を「あれは若くて元気な時だから書けた作品だよ」と云われているのが、納得しつつも残念。
春菜さんの書かれたものは未読。探してみようかな。 -
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日本の現代詩のだいたいのところを読んでみようと思って、これが手っ取り早いかなと思って読んでみた。
明治から平成までの詩を池澤夏樹、短歌を穂村弘、俳句を小澤實という人たちがそれぞれ選んでいる。
短歌と俳句は関心がないのでナナメ読み。
詩は島崎藤村から入沢康夫まで41人。
一人につき1つか2の詩。
金子光晴と中野重治しか印象に残らなかった。
現代詩は、田村隆一、谷川雁、大岡信、荒川洋治、谷川俊太郎 とか、名前を聞いたことがある人たちの詩をたぶんはじめて読んだけれども、よくわからなかった。
といってあわてる必要もない。
そのうちわかるようになるかも。 -
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『フィクションを書くには、心理的にある一線を飛び越えなきゃいけないんだ。世の中には「嘘をついてはいけない」という倫理があるけど、フィクションってそもそも嘘だからね。(中略)言ってみれば万引きと同じ……というと語弊があるけど(笑)。最初は勇気が要る。でも、だんだん上手になるにつれて、大きなものが盗めるようになる。その一線は越えなきゃいけない。中途半端に事実に近いところだけ書いていても、結局半端なものにしかならない。』
これは小説を書こうか悩んでいるという春菜にした夏樹のアドバイス。だから、僕は池澤夏樹の本が好きなんだと思う。
じめじめとして、他人と自分に、つまり、人間に興味津々な日本の作風からちょっとだけ離れて、ちょっと離れたところから俯瞰するような作風がやっぱりこの今の日本の感じに合う。
この本は池澤夏樹とその娘の池澤春菜の本に関する対談本で、彼の血族、福永武彦→池澤夏樹→池澤春菜の、その特異な文学者の血脈の物語でもあるようにも見えた。彼らは血について、そんなに影響はない、って言っているんだけど、やっぱり何処かにあるように自分からは見えてしまう。
元々、アフター6ジャンクションでの池澤夏樹と池澤春菜の対談が面白かったので、これも読んでみようと手にとってみた。本について語り合ったりする様子は、どことなくパパに懐いている感じで、その懐き方は、娘でありながらも友人で、そして、それ以上の親友のような親密さもあって、それでライバルのような感じがあって、羨ましい。とても幸福な親子関係だと思う。
でも、その代わりと言ってはなんだが、池澤春菜の母親については、あまり語られていなかったように見えたけれども、それは何か意図がありそうな感じもある。まだ、何か池澤家に隠された何かが…… -
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これまでにも南の島での暮らしをテーマにした小説を執筆してきた池澤夏樹と、海の写真を多く撮影してきた芝田満之の作品です。
「カイマナヒラ」とは、ハワイのダイヤモンド・ヘッドのことで、そのふもとにある一軒の巨大な家の管理をしているロビンやジェニーといった人びとと、一人の日本人の交流をえがいた連作短編となっています。
ゆっくりと流れる時間と、人びととの心温まる交流といった南の島での暮らしに癒しを感じることのできる作品です。もちろん、こうした幻想をいだいてしまうことに対する自省的なまなざしをもつ読者もいるでしょうが、そうした自家中毒的な内省のループに陥るのではなく、物語のもつ力に自分自身をゆだねてしまうことが、この作品をたのしむコツなのではないかという気がします。 -
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風力発電の開発に従事している天野林太郎が、小型の風力発電装置を開発し途上国で売り込むために、ネパールのナムリンという村を訪れます。彼は、現地で献身的に支援をおこなってきた工藤隆や、チベットの行く末を案じるブチュンといった人びとに出会い、さらに彼の帰りを待つ妻のアユミと小学生の息子の森介、会社の上司であり林太郎をサポートしてくれる浜崎課長らに支えられながら、文明と環境、あるいは宗教と国家などの問題について考えさせられることになります。
著者自身の思想的な関心が前面に押し出されており、物語そのもののおもしろさにどっぷり身を浸すといったたのしみかたのできる作品とは、すこしちがった印象です。魅力的な登場人物たちが、仕事や生活のなかで巨大な問題の一端に触れ、みずからの足もとを見なおしつつ、問題の本質にせまっていく過程がていねいにえがかれているという意味では、優れた作品だと感じましたが、物語そのものがもっている力と著者の思想がうまく接合できているかというと、やや疑問に思えます。