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混迷深まる現代を知的に生きていくためには、「情報」や「知識」だけではなく、さらに深い「思想」が必要だ。それをいかにして獲得し、更新していくか。自分の中に知的な見取り図を作るための、新聞や本との付き合いかた、アイディアや思考の整理法、環境の整えかたなどを指南する。小説だけでなく、時評や書評を執筆し、文学全集を個人編集する碩学が初めて公開する「知のノウハウ」。
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Posted by ブクログ
著者が日ごろ行っている、情報の入手方法、ストック、フローの考え方、書物の扱いなどなど作家が行っているノウハウというか、神髄を語ってくれている。
敬愛する(といってもまだまだ良く知らないニワカですが)池澤夏樹さんの仕事術公開本。 SNSの話から始まりますが、ご本人は自身の事を語るなど、こっ恥ずかしくてできないそう。少し前からFacebookをROMっている私も同様です。 ただ、自己の記録として、WordPressによるブログのみは続けて行...続きを読むこうと思っています。それと、そこそこのフォロワーのいるツイッターは。 こういう知的生産の技術書というのは、昔から有名な書籍が何冊も出ています。知の先達たちが後輩のために親切にノウハウを公開してくれているのですね。 でも、わかっちゃいるけどついてけねー。というのが本音のところ。 それができれば苦労はない。継続は(天才)力である・・・と自己弁護で解釈しています。 それでも良いから、格好だけで良いからついていきたい。というので、同様な本にまたもや手を出してしまいます。 そしてもう一つ。基本は実践者の脳髄に帰結するのでしょうが、その時に応じたツールが出てきます。 本書は発行日が読書日と1ヶ月ほどしか違いません。まさに湯気の出ている新刊書でしょうか。なので、現在進行系のツールの解説も適切に行われています。 特筆すべき事として、著者は最初にワープロ原稿で芥川賞を受賞した人。創作のIT化に最初期に取り組んだ人でもあります。現在使用しているデバイスもiPhone6sPlusだったりして、ボクとおんなじ。 でも、あまり具体的に手取り足取りという紹介はありません。執筆にどんなソフトを使っているかとか。まあ、Wordのネタとかは出てきますが。 仮にアプリケーション名を挙げたところで、すぐに淘汰されてしまう(ドッグイヤー)運命ですから。私達自身がそこはさがしていくところでしょう。 最新の技術状況を踏まえつつ、外堀の埋め方をレクチャーしてくれます。 古典の読み方。紙の本と電子書籍の使い分け。等々。 フィールドワークのノウハウはまるでハンティングに行くよう。 で、シンプルイズベストですね。 日々身を削るように仕上げる執筆作業が目に浮かぶようです。膨大な資料を選択し、読破し、必要な部分を抽出し、作品に仕上げていく。産みの苦しみ。 そして脱稿した暁の爽快感・カタルシスは癖になると語っています。 私も掌編で良い(とはなんだ!)ので、創作チャレンジしてみようと思わせてくれる一冊です。
池澤夏樹(1945年~)氏は、北海道生まれ、埼玉大学理工学部中退の小説家、詩人。ギリシャ、沖縄、フランス(フォンテヌブロー)に在住経験あり。『スティル・ライフ』で芥川賞(1988年)を受賞したほか、多数の文芸賞を受賞。個人編集の「世界文学全集」、「日本文学全集」の刊行は話題を呼んだ。紫綬褒章、フラン...続きを読むス芸術文化勲章オフィシエ受章。 本書は、小説のほか、書評・時評の執筆、翻訳、文学全集の個人編集など、文芸分野で幅広く活動する著者が、自らの知的生産術を綴ったものである。 章立ては、1.新聞の活用、2.本の探しかた、3.書店の使いかた、4.本の読みかた、5.モノとしての本の扱いかた、6.本の手放しかた、7.時間管理法、8.取材の現場で、9.非社交的人間のコミュニケーション、10.アイディアの整理と書く技術、11.語学習得法、12.デジタル時代のツールとガジェット、で、知的生産に関わるテーマは一通りカバーされているが、類書には無く、参考になった点は以下である。 ◆本の新刊広告の表舞台は、新聞一面下段のサンヤツ(三段八割)。各出版社が出しているPR誌のページ左端には、新聞広告スペースを買えない小さな出版社のここでしか出会えない情報に遭遇することがあり役立つ。 ◆ノンフィクションの場合、目次は本の内容全体を表しているので、本文を読みだす前に頭に入れておくと理解度が変わってくる。解説や翻訳本の訳者あとがきも、難解な本を読む場合には先に読んだ方がいい。 ◆本は私的な所有物であると同時に公共財であるという意識があるため、いずれ手放すという意識で本を扱う。よって、マーキングは6Bくらいの鉛筆で、消そうと思えば容易に消せるように行う。それは、自分なりの本に対する敬意。 ◆読書(本)は「ストックの読書」と「フローの読書」に分けて考える。フローの読書に当たる本については、「キャッチ・アンド・リリース」する、即ち、自らの知的レベル・好奇心に応じて、(蔵書を)随時「更新」していくことが重要。 ◆海外を本気で旅する際(取材など)には、「地球の歩き方」、「ミシュランガイド」より「ロンリープラネット」が重宝する。 また、ハウツーの詳細のほかに、「はじめに」に書かれた次の件が印象に残った。 「しばらく前から社会に大きな変化が目立ってきた。人々が、自分に十分な知識がないことを自覚しないままに判断を下す。そして意見を表明する。そのことについてはよく知らないから、という留保がない。もっぱらSNSがそういう流れをつくった、というのは言い過ぎだろうか。ツイッターが流す「情報」をろくに読みもしないで、見出しだけを見て、「いいね」をクリックする。それで何かした気になって、小さな満足感を味わう。・・・ものを知っている人間が、ものを知っているというだけでバカにされる。ある件について過去の事例を引き、思想的背景を述べ、論理的な判断の材料を人々に提供しようとすると、それに対して「偉そうな顔しやがって」という感情的な反発が返ってくる。彼らは教えてなどほしくない。そういうことはすべて面倒、ぐじゃぐじゃ昔のことのお勉強なんかしないで、この場ですぱっと思いつくままにことを決めようよ。いまの憲法、うざいじゃん、ないほうがいいよ。さっくり行こうぜ。こういう人たちの思いに乗ってことは決まってゆく。この本はそういう世の流れに対する反抗である。反・反知性主義の勧めであり、あなたを知識人という少数派の側へ導くものだ。」 知性を否定する(「反知性主義」の本来の定義とは少々異なる)こうした風潮が、今や世界中を覆い、世界を動かしつつあることに、私は著者と同じく強い危機感を持っているが、著者の思いに反して、そうした人々に限って本書を手に取ることはないだろうと思うと、暗澹たる気分になる。 文芸分野でマルチな活躍をする池澤氏が、反・反知性主義を勧めるべく書き下ろした知的生産術である。 (2022年9月了)
池澤さんは生産性の高い作家だと思っていたので、その仕事術には関心があった。本人は愚直と言うが、よく考えられている。自分には何が必要か。
池澤夏樹のノウハウ本。生きるためには、情報、知識、思想が必要。情報とはその時に起きていること、起きようとしていることやデータ。知識は、ある程度普遍化した情報。思想とは情報や知識を素材にして構築される大きな方針のことを言う。それを踏まえ著者が実戦している仕事術、ノウハウを紹介する。 作家の仕事術本とい...続きを読むうことで、サラリーマンの仕事とは多少違和感を感じる部分もあるが、参考にできる事も多かった。
作家・詩人の池澤夏樹さんが自身の「知のノウハウ」を公開した本。 現代社会を知的に生きるためには、情報(日付のあるデータ)、知識(普遍化された情報)、思想(情報や知識を素材にして構築される大きな指針)の3つを常に更新していくことが大事です。 情報・知識・思想をいかに更新していくのか、池澤夏樹さんなり...続きを読むの方法が本書に書かれています。 社会をまとめていくためには議論が必要になります。議論をするには「知」がなければなりません。そして、「知」は常にアップデートしなければ議論についていくことができないのです。
文字通り、知を育成するにはどうすれば良いかを説いた一冊。 有名な作家だけあって、説得力があった。
この本は良い、作家である池澤夏樹氏が自身の技術論を公開してくれており、多くの刺激を受ける。 新聞の活用法、本の探し方等実用的なノウハウを多く教えてくれる。特に書評については私も本選びの参考にしている。 やはり定期的にこのような本を読む必要性を感じる。新たな気付き、知的興奮が人には必要と思う。反知...続きを読む性主義に抗していくために。
興味を引かれたところを2点、引用。 ・「本選びは精錬に似ている」 世の中に出回る本ぜんたいをざっと眺めて、その中から価値あるものを選び出す行為。それは金属の精錬に似ているという説。全ての本に目を通すことが不可能な以上、何を読むか(=何を読まずに切り捨てるか)を選ぶことは非常に重要な行為。それは主観...続きを読むで構わない。というか、主観にしか意味はない。そうしていかに自分なりに、純度の高い金属を取り出すか。そこを意識すると読書の意味が変わり、密度の濃い読書ができるだろう。 ・「メディアこそがメッセージである」 マクルーハンの孫引用。発信するのにどのメディアを選ぶか?そこにこそメッセージの核心が含まれている、意識するしないに関わらず。メディアにはそれぞれ特性があり、そこを見誤ると間違ったメッセージを発することになるだろう。今現在、メディアの中心的役割を担うSNS。著者はSNSはやらないと豪語するが、「メディアこそがメッセージである」ということを踏まえれば、納得がいく。SNSは物事を深く考えるのに向かない。直接的、瞬間的、感覚的に訴えることに向くメディアだと思う。SNSを好むかどうかは個人の自由だが、SNSにどっぷりでは思考力がなくなってしまうことを、この本を読んで体感的に理解した。
非常に心地よく読めた一冊だった。特に文章の美しさが際立っていて、小説でもないのにすらすらと読めた。筆者の仕事の進め方が細かく書いてあったが、この年代の作家さんでも結構最新のガジェットを使い倒していることに驚いた。
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