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Posted by ブクログ
今、地球が抱えているさまざまな問題をいろいろな角度から天野家の物語に盛り込んであり、とても読み応えがあった。集中ではなく、分散。大規模ではなく、小規模。視点を変えて考えてみると、今とは違う道が見えてくる。こんな時だからこそ、読んで考えてみるといいのだと思う。それから、「現場の知」ということと、アユミさんがしきりに言っていたナショナリズムとの距離の置き方。もう少し、自分でもよく考えてみようと思う。それと、森介の新しい学校の担任の先生が言った「変わったところのある、おもしろいお子さんですね」というひとことが印象に残る。そんな感覚を私も忘れずにいたいと思う。
Posted by ブクログ
政治も宗教も哲学も科学も、極めてフラットな視点で語られる。
ちょっと変わった、でも絵に描いたような仲良し家族。
一枚板ではないNGO。
利益を追求する企業の論理/ステレオタイプな会社員。
魅力的なナムリンの人々。
世界そのものを変えるのではなく、「自分」と「世界」の関係性を変えること。
個人の視座次第で、ガラリと世界は表情を変える。
新しい世界とは、そういうこと。
常識とは、極めて狭い世界での通奏低音なんだと気付かされる。
本当は世界はとてもシンプルで、複雑にしているのは自分や社会の固定観念なのかもしれない。
(ルールを作ったのは人間だ)
良い風が吹いたら、流れに乗ればよいのだ。
Posted by ブクログ
700Pに及ぶ長編小説というだけあって、本当に多くの事柄を含んだ小説。それでいて、読み辛いとかくどいとかいうことは一切ない。むしろ、1章1章に読ませる部分があって、うんうん唸ったり、クスリとほくそ笑んだり、グサっと心に刺さったりする。「やがてヒトに与えられた時は満ちて…」を読んだ時の衝撃も、それはそれで大きなものがあったのだが、この小説もまた違った意味で自分の中に大きく残る小説だった。
この小説は本当に色んなメッセージを含んでいて、「これはこういう小説だ」と一言で表せるようなものではない。むしろ表そうとすること自体がナンセンスであるほどだ。でも、これほどある意味で欲張りに、詰め込みに詰め込んで書いた小説がこれほどサッパリと読める、心に入ってくるというのは本当にスゴイことだ。自分のような凡人が、これほどのメッセージを一つの物語に詰め込もうとしたら、冗長になりすぎてくどいと言われるに違いない。確かに職業としての小説家なのだから、それが出来て当然なのだと言われれば確かにそうなのかもしれない。しかし、ただ一つのテーマを書くにも冗長にならざるを得ないのだ、と開き直っているような小説家がこの世の中にはいないだろうか?
池澤夏樹の文章の魅力はそこにある。小説の中に、「形容詞が多すぎる文章は疑った方がいい。そのような文章には、必ず裏に知られたくない真実がある」というようなことが書いてあった。これは全く疑う余地がないほど正しい。本当に文章が上手い人、或いは話が上手い人というのは、少ない言葉、簡潔な言葉で伝えたいことを伝える。ムダに話が長い人、文章が長い人(自分も含めて)は言いたいことは少ないのに、それを伝える文章、言葉が冗長なのだ。「完璧とは、何かを足せない状態になることではない。 何も削るものがなくなった状態のことだ」。つまり、そういうことだ。
その池澤夏樹が、700Pに及ぶ長編小説を書いているのだ。そこに含まれるメッセージが多岐に及ぶのは当然だ。そして、それが決して冗長にならず、すっきりした言葉で読者の胸に迫ってくる。そんな小説が良い小説でないはずがない。今まで、池澤夏樹を知らない人に何か一冊薦めるのならば、取っ付きやすさなどをふまえて「南の島のティオ」あたりを薦めるのが妥当だと思っていた。しかし、これから「池澤夏樹がどんな作家か知りたい」と言われたら、迷うことなくこの作品を薦めるだろう。それほど、この作品は池澤夏樹という作家の成分を多く含んだ良作だ。
続編である「光の指で触れよ」が今年発売されている。是非、そちらも読んでみたい。
Posted by ブクログ
2000年9月に出版された本で、2000年といえば9.11もまだだし、東日本大震災も、福島の原発事故も当然起こっていない。今とはまったく違う世界である。
その当時から、環境問題や原発の危険性についてこれだけのトーンで語っているのに、20年経った今はどうだろう。原発事故は起こってしまったし、環境問題もよくなっているとは思えない。この20年は一体なんだったのかと愕然としてしまう。
ともあれ、全体的にとても美しい物語と語り口で、文庫で700ページにも及ぶ長編ながら、夢中で読み切ってしまった。
特に中盤の娼婦の夢の描き方が最高だった。
やたらと文章の上手い妻子や、なんでもあけっぴろげに語り合う夫婦関係にちょっと白けた部分もあったのでマイナス1。
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