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Posted by ブクログ
明治維新後に北海道に入植した和人とアイヌの民の話。
文明と文明が出会うとき、多数派、科学文明の力の強い方が相手を押潰してしまう。これまで何度も繰り返されてきた。
語り部である由良の言葉にある「もっと深い恐れか憎しみか、何かとても暗くて嫌なものがあったような気がする。姿と言葉の異なる人に対する恐れと憎しみ。人間の心の中に棲むいちばん忌まわしい思い」これが人の心の中にある限り、これからも起こるのだろうか。
アイヌの民と牧場を開き、共に生きた宗形三郎の生きざまに人としての理想の姿を見る。
だからこそ結末があまりに衝撃的で哀しい…三郎のこともアイヌの民のことも。
けれどこれが現実なのだろう…つらい。
アイヌの民の気高さ、自然と共の生きる思想の深さが伝わってきた。
熊の神が語った「大地を刻んで利を漁る所業がこのまま栄続けるわけではない。いつかずっと遠い先にだが、和人がアイヌの知恵を求める時が来るだろう。神と人と大地の調和の意味を覚える日が来るだろう」それが生かされる時が来るのでしょうか。
Posted by ブクログ
明治維新直後、淡路島から北海道開拓を志し、静内に移り住んだ一族の歴史物語。
静内は今でも馬産地として有名であり、自分の生まれた町からもそれほど遠い場所ではない。おそらくは自分の祖先も、同じような道を歩んで来たのだろうと思うと、とても興味深く読む事ができた。
でも、もし自分が主人公の宗形兄弟の立場だったら、アイヌの子供と友達になれただろうか。周囲の反対を押し切ってまで、アイヌの人々と事業を起こす事が出来たのだろうか、と考えさせられた。
考えても答えは出ないが、もしかしたら他の和人同様にアイヌの人々を蔑んでいたかもしれない。
残念ながら自分は宗形兄弟やイザベラ・バードのような、立派な志は持ち合わせていないが、せめてクラーク博士が札幌農学校の生徒に説いたよう、紳士でありたいと思った。
現在、何かと領土問題で騒がしい世の中だが、国内にも存在した占領と搾取の歴史について、日本人の一人として決して忘れてはいけないと思う。
Posted by ブクログ
北海道の開拓史に関心のある方に、おすすめしたい一冊です。
昭和13年を生きる主人公「由来」の回想を通して、明治10年、札幌の開拓使本庁に勤めていた伯父「三郎」と、アイヌの人々との交流や暮らしぶりが描かれています。
物語は、淡路島出身の侍の子である三郎とその弟・志郎が、御一新の流れを受けて北海道・静内に開拓民として移住するところから始まります。
本作は、アイヌ文化の衰退を個性豊かな登場人物たちとともに描く歴史小説であり、文明開化の波に呑まれていく人間の姿を伝えてきます。
私自身、すでに狩猟民族を滅ぼしてしまった「文明」の側にどっぷりと浸かっている身ですので、読んでいてとても重たい気持ちになりました。それでも、登場人物のやりとりを浮かび上がらせてくれる会話描写が多く、読みやすく引き込まれます。
物語の終盤には、松浦武四郎(1818–1888)の記述が登場します。アイヌへの思いを深めながら読み進めていたので、その場面はまるで悪夢のように感じられました。
「御一新」以前の空気を少しでも感じたくて、カムイ岳はもちろん、三重県にある松浦武四郎記念館にも行ってみたくなりました。心を動かされる小説です。
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