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短い繁栄の後で没落した先祖たちのことを小説にするのは、彼らの物語を聞いて育ったぼくの夢だった--明治初年、淡路島から北海道の静内に入植した宗形三郎と志郎。牧場を開いた宗形兄弟と、アイヌの人々の努力と敗退をえがく壮大な叙事詩。著者自身の先祖の物語であり、同時に日本の近代が捨てた価値観を複眼でみつめる、構想10年の歴史小説。第3回親鸞賞受賞作。〔解説・高橋源一郎〕
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Posted by ブクログ
ボリュームもゴツく、アイヌに深く関わる文化物と敬遠する要素満点だが、読みやすく話の進め方も魅力的で退屈せず読めた。話の要所にフックがあり丁寧。 池澤夏樹らしいスピリチュアルさも健在。
数年前に熊野古道を訪れた際、松浦武四郎という人の存在を知った。そこからアイヌという人たちについての本を読むことが増えた。 淡路島から幕府御一新のために北海道に入植した内地の人間が話の軸だ。 続く
ゴールデンカムイでアイヌに対する興味が高まっていた中、田原町の本屋でアイヌ関係の本が10冊くらい並んでいる中でこの本を選んだ。 序盤から悲しいエンディングを匂わせる中でも、アイヌの躍動や三郎さんの札幌留学生活などワクワクするエピソードも散りばめられていて読んでいて楽しかった。 北海道で生まれ育っ...続きを読むた日本人として、自分の生活は多くのアイヌ(や「和人」)の犠牲の上に成り立ったものだったという、本当は当たり前だったけど目を背けていた事実を考え直すきっかけになった。 アイヌの生活様式や民話は面白く、一見ナンセンスだったり非合理なように思えて、自然と長く共存するための知恵として継承されてきたという合理的な面も知れて、失われた(失われたつつある)ものの大きさを感じた。幸い文献や作品はあるので吸収できるものをしたい。 次は「熱源」。松浦武四郎関連も。
明治維新後に北海道に入植した和人とアイヌの民の話。 文明と文明が出会うとき、多数派、科学文明の力の強い方が相手を押潰してしまう。これまで何度も繰り返されてきた。 語り部である由良の言葉にある「もっと深い恐れか憎しみか、何かとても暗くて嫌なものがあったような気がする。姿と言葉の異なる人に対する恐れと憎...続きを読むしみ。人間の心の中に棲むいちばん忌まわしい思い」これが人の心の中にある限り、これからも起こるのだろうか。 アイヌの民と牧場を開き、共に生きた宗形三郎の生きざまに人としての理想の姿を見る。 だからこそ結末があまりに衝撃的で哀しい…三郎のこともアイヌの民のことも。 けれどこれが現実なのだろう…つらい。 アイヌの民の気高さ、自然と共の生きる思想の深さが伝わってきた。 熊の神が語った「大地を刻んで利を漁る所業がこのまま栄続けるわけではない。いつかずっと遠い先にだが、和人がアイヌの知恵を求める時が来るだろう。神と人と大地の調和の意味を覚える日が来るだろう」それが生かされる時が来るのでしょうか。
かつてそこはアイヌの地だった。 エスキモーやインディアンにも共通する自然に対する畏怖と感謝、共存の世界がそこにはあった。 その地に和人が住み、暮らすようになり次第にアイヌは追いやられ、和人は自然を蔑ろにしていく。 私利私欲の世界の始まりだ。 自然界の仕組みのごく僅かな事しか知らない人間はテクノロジ...続きを読むーによって自然を制御できると思い込む。 そうで無いことに気付かされるのが自然災害だとすればそれはあまりに皮肉な事だ。 今だからこそ、彼かに学び直す必要がある。そんな一冊。
明治維新で北海道開拓移民となった旧淡路藩の武士宗形三郎、志郎とアイヌとの交流。アイヌの価値観や宗教観に共鳴。インディアンやアボリジニなどの先住民族との共通点が多く人類の向かうべき方向性を示唆していると思う。
明治維新直後、淡路島から北海道開拓を志し、静内に移り住んだ一族の歴史物語。 静内は今でも馬産地として有名であり、自分の生まれた町からもそれほど遠い場所ではない。おそらくは自分の祖先も、同じような道を歩んで来たのだろうと思うと、とても興味深く読む事ができた。 でも、もし自分が主人公の宗形兄弟の立場...続きを読むだったら、アイヌの子供と友達になれただろうか。周囲の反対を押し切ってまで、アイヌの人々と事業を起こす事が出来たのだろうか、と考えさせられた。 考えても答えは出ないが、もしかしたら他の和人同様にアイヌの人々を蔑んでいたかもしれない。 残念ながら自分は宗形兄弟やイザベラ・バードのような、立派な志は持ち合わせていないが、せめてクラーク博士が札幌農学校の生徒に説いたよう、紳士でありたいと思った。 現在、何かと領土問題で騒がしい世の中だが、国内にも存在した占領と搾取の歴史について、日本人の一人として決して忘れてはいけないと思う。
明治時代から200年経った今のこの世の中だったら、アイヌとシャモは、もっと良い意味で、違った運命を辿ることができているだろか。人は歴史から何かを学び、共に歩むという選択肢を選べているだろうか。ひとつの文化を滅ぼさずに済んでるだろうか。いつも、人は失ってから、その文化の大切さ、高貴さに気付く。 (20...続きを読む08年12月11日 記) まずはパートナーと共に生きるということからかしら。 本当に感動した本だったと思い出す。
北海道の開拓とアイヌのことを 少しでも知るために この本を読んで本当に良かった。 池澤夏樹さんの語り口は アイヌの伝承を 一層美しく引き立て 哀しくも儚い物語を色どり 心にすぅっと染み込んでくれた。
読み応え満載の1冊! アイヌ絡みもあり、作者の熱意も読んでいるうちに伝わった! もう少し一気に読みたかった…。 もう一度心が余裕あるときに一気に読みたい!
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