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Posted by ブクログ
古事記の上巻は、主に天皇の系譜について書かれたが、まだ天皇たちは神であって、人ではない。
中巻、下巻になると、天皇が歴史に登場するようになるが、内容は民話的、物語的になっていく。日本書紀は官吏が黙読で読み、歴史を勉強するもの、中巻、下巻の古事記は誰か(この時代は庶民ではなく豪族の師弟、宮廷の舎人や采女たち)に読んで聞かせる物語のようで、のちの猿楽や狂言に通じるおおらかさがあるという。
池澤さんは小説家なので、専門的なことへの言及は避けておられるが、世界中の神話の成り立ちを持ち出したり、発想がとても自由。
エピソードにも、取り上げられている歌にも、とても惹かれる。
(まだうたは長歌の時代。長々と、詠唱する形式だった)
Posted by ブクログ
2014年に現代語訳を刊行した著者による古事記解説。
あまり細部には入り込まず(入るときは入る)、俯瞰的に全体像をつかみ易い。
章立ても「創世記」「神々」「地政学」「天皇列伝」「女たち」「詩歌と歌謡」等(他に「入り口での戸惑い」「残った話題」)、適切でバランスの取れたもの。
著者による訳本でなくても、町田康の口訳を併せて読むとわかり易い。
Posted by ブクログ
讃美でも、無味乾燥な研究でもなく、ほどよい熱量で、忌憚ない解説。
まずは、文学としての体裁が整っていないという前提をハッキリ。
その上で、物語伝承記録書と歴史の記述を同時に行っているから、その歪みも後々把握しづらい文章になっている、と。
現在の天皇制に対しては言及を控える、というくだりも、いいスタンス。
にしても日本書紀、万葉集と、数十年単位で文章の筋合いがかなり異なるとか、ますます興味惹かれる。
旧約聖書、ギリシャ神話、 西アフリカの伝説など、縦横無尽なのも、よい。
ちなみに107p「アジア大陸の上に架かった虹としての日本列島と南西諸島」、つい最近何かの本で読んだばかりのはずなのに、何だったか……意義深い地図。
民俗学や文化人類学と関連づけて深堀りしたい、が。
こうの史代「ぼおるぺん古事記」再読、池澤夏樹訳、「ワカタケル」、町田康「口約 古事記」とか、落ち着いて手を伸ばしたい、が。
なかなかね。