佐藤優のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
現在の国際情勢をインテリジェンスの視点から読み解く内容と、そこで用いられるインテリジェンスの技法をビジネスや仕事に活かす方法が、おおよそ半分ずつ紹介されています。
どちらも興味深い内容でしたが、個人的には、もう少し国際情勢そのものについて詳しく知りたかったというのが正直なところです。インテリジェンスの視点を通して世界情勢を見ることで、普段何気なく見ているニュースにも、さまざまな見方や考え方があることに気づかされ、ニュースそのものがより面白く感じられるからです。
一方、ビジネスへの応用については、著者がこれまでの著書で述べてきた内容と重なる部分も多く、既刊を読んでいる人にとっては復習として楽しめる内容だと思います。
情報を集め、分析し、そこから意味を読み取るというインテリジェンスの能力は、国際情勢を理解するだけでなく、ビジネスや日々の仕事にも幅広く活かせるものだと改めて感じました。
今後も、こうしたインテリジェンスをテーマにした本があれば、ぜひ読んでみたいと思います。 -
Posted by ブクログ
人は不条理に出会って宗教を求める。そう考えていた。だが、順序は逆なのかもしれない。人は間違った世界観の中に生まれる可能性を、自分では選べない。
親が信じる神を知り、共同体の善悪を教えられ、何を尊び、何を恐れるべきかを覚えてゆく。それが正しいかどうかを選んでから生き始める者はいない。
やがて「私たちは正しい」が「彼らは間違っている」に変わる。しかも本人には、暴走しているという自覚さえない。生まれたときから、それが世界だったからである。
ならば宗教の暴走を止めるものは、信仰を捨てることではあるまい。
自分が立っている場所もまた、絶対ではないと知ること。
「私は間違っているかもしれない」。その小さな疑いこそ、他者とともに生きるための、最初の祈りなのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
前半は良かったが、後半は期待外れ。結局、日本型民主主義については、トッドを引用しているだけだった。
トッドは、民主主義をフランス・アメリカ・イギリス型、ドイツ・日本型、ロシア型の3つの類型に分けた。家族類型が文化の基本で、識字率が向上し、人々が広く価値観を共有し合える環境ができあがった時代の考え方が普遍性を持った(トッド「大分断」)。日本では、江戸から明治に識字率が向上し、家長、長子の権威や権利が高まり、国も富国強兵の時代の思考が日本型民主主義に取り込まれた。
池上は、60年安保は大勢の人が民主主義の危機を認識した結果立ちあがった運動だったとみている。社会党や総評が安保条約反対闘争を呼び掛けても、全然盛り上がらなかったが、岸内閣が国会に警官隊を導入して強行採決したのをテレビや新聞で目にして、多くの人たちが怒りと強い危機を感じた。社会党は、民主主義の危機であることを前面にして、共産党やそれと対立する全学連の主流派も含む安保改定阻止国民会議というネットワークをつくり、その周囲に一般の人たちも結集して内閣を倒すような運動になった。
ポピュリズムは、わかりやすい敵をつくり、バッシングする。部分的な前進があれば、それを「改革の成果」にするが、本質的な問題はスルーされてしまうことに弊害がある。 -
Posted by ブクログ
手に取った一番の理由は「皇統」について佐藤氏の考えが記述されていることをYouTube番組で知ったからだ。
1章『「国体の本義」にみる「理念OS」と組織の持続力』で、1937年に当時の文部省思想局によって刊行された国家理念書【国体の本義】の意味を紐解く。
当時の日本では急激に流入する欧米思想と近代科学技術をいかに消化し、生き残るべきか真剣に考えられていた。
単純に拒絶するのではなく、自国にあった文脈に変換することを目指していて、これは日本史の本流だとする。
確かに日本の「言語」は漢語、ひらがな、のみならず、カタカナを残している。これも立派な「外来文明を変換する能力」のひとつだろう。
この「変換能力」が日本の国家OSの本質だ。
ところが今の日本はグローバルスタンダードを無批判に受け入れることで「変換」を省略して「直接模倣」へ傾斜しつつあると警鐘をならす。理性主義の限界、神や道徳、共同体の根拠といった超越性的領域については理性だけでは完全に把握できない。西欧諸国の啓蒙主義は「神話の解体」へむかった。理性によって神話を破壊することはできる。その結果、人間を支えていた共同体の基盤まで失われてしまう。
だから「国体の本義」は神話を実証することではなく、解釈することを重視した。神話の内部にある共同体原理や歴史意識を読み解くことが重要だ。
マスコミ報道で私のもつ何かモヤモヤしっくりこない、言葉では言い表せない不快感の理由がわかった。
ー 「国体の本義」が問題にしていたのは、単なる統治制度としての天皇ではない。日本という共同体を内側から支える精神的・歴史的連続性であり、日本国家の理念構造そのものだった。つまり、国体とは制度以前の問題なのである。さらに重要なのは、国体とは「発見するものであって、人工的に構築するものではない」という点だ。
【日本は祭祀共同体である】
ー 健康な人間が、自分の内蔵や筋肉の動きを普段は意識しないのと同じように、健全な国家においては、国体はあえて問題化されない。逆に言えば、国体が激しく議論され始める時、それは国家が危機状態に入っていることを意味する。
この点で東浩紀氏の「平和と愚かさ」でも平和を定義する文脈で同じように書かれていた気がする。
唐突に本書に登場する山口周氏は私もいくつか著書を読んでいる好きな著述家さんだ。お互いに尊敬しあっているのがWEB対談でも感じられた。そんな山口氏に対するメッセージ性を感じたのは気のせいだろうか。企業が意味を軽視するようになったと問題提起している山口氏に日本企業に必要な内部規範、理念OSの必要性を説く。何を守るのか?どこまで利益を追求するか?どこで撤退するか?誰の為に存在するか?類推すれば国家に必要なOSは何か?正しさが揺らぐ世界において生き残るための理念OSとは何か?を訴えているように思えた。
最後にWEB対談より抜粋
ですから外交でも日本の国益ということを考えないで国際評論をしているだけでは足りないのです。われわれが生き残るために何が必要かを考えなければいけない。リベラルアーツも単なる飾りとしての教養ではなく、複雑な世界を読み解く知恵、生存戦略として生かすことが重要なのだと思います。
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Posted by ブクログ
印象に残った言葉のメモです。
何をやるかではなく、何をやめるか。この選択が人生後半の質を決定します。
すべてを知る必要はありません。むしろ、知らないことを選ぶ勇気が必要です。
人生後半とは、失われていく時間ではありません。むしろ、無駄を削ぎ落とし、本質だけを残すことができる時期です。その意味において、人生の中で最も戦略的で、最も自由な時間であるとも言えるでしょう。
必要なのは、怨念ではなく、役割の認識とユーモアです。実際、苦しい局面においてもユーモアを失わないことが、精神の均衡を保つうえで極めて重要になります。
資本主義社会における最大の社会貢献は「納税」であると考えています。所得税、住民税、法人税。これらを継続的に支払うことによって、近代国家は維持されています。逆に言えば、納税しているという事実だけで、その人はすでに社会に対して十分な責任を果たしているのです。
特に納税の部分は救われました。 -
Posted by ブクログ
戦略論はビジネス書でよく扱われるテーマで、かつ戦前の資料の読み解きという主題で、なんとなく佐藤優さんぽくないなと思いながら手に取ったが、的を射た現代日本の社会批評で、めちゃくちゃ読み応えがあった。
なんとなく戦前の社会や空気を理解した気になって軍国主義とレッテルを貼る論調がマスコミを中心に多く見られる。でも本来それは先人が日本を西洋列強から守り生き抜くための行動の結果であって、その読み解きは、軍部の暴走や行き過ぎた拡張主義のようにひと言で終わらせず、丁寧に行うべきだ。
権威と権力を分離してきたこと、現場の判断力を重視してきたこと、空気を読み関係性や共感で意思決定をしてきたこと、これらは日本人が培ってきたらしさであって、完全に逃れられるわけではない。その意味でKPIをはじめとする西洋の経営理論はなじみにくいのかもしれない。日本が国家や組織をこれからどう考えるべきか、そのガイドになるべき一冊だと思う。
また個人のアトム化が進む日本でもう一度「共同体」を構築し直すことの大切さも伝わってくる。お盆休み中に実家で過ごしたこともあって、社会のなかでの自分の振る舞い方を改めて考えた。 -
Posted by ブクログ
人生の「時間泥棒」を排除し、カイロスを生きるための戦略書
本書は、単なる時間管理術の本ではない。人生の残り時間を意識し、いかにして他者に奪われる時間(クロノス)から、自分自身の創造的な時間(カイロス/トゥルース)を取り戻すかを説いた「人生戦略書」である。
自身のキャリアの転換期において、以下の視点が極めて重要だと感じた。
・時間泥棒との戦い: 他者のための時間は、自分の時間を奪われているという強い認識を持つこと。
・カイロスの記録: 毎日の単なる事実の羅列ではなく、そこに思考を書き添えることで、客観的な時間を主観的な意味ある時間へと変換する。
・引き算の戦略: 45歳を過ぎたら、何をするかではなく、何をしないかを決める引き算の時間。
仕事においては、まだ早いかもしれないが「承継・戦略優先」の意識を持つことで、突発的なタスクへの反応から、長期的視点へのシフトが可能になる。
「朝時間を聖域化する」という即効性の高い戦術から始め、情報のノイズを遮断し、自身の創造性を最大化するサイクルを確立したい。主導権を取り戻したいビジネスパーソンに推奨する一冊。