あらすじ
「独裁」の再来
2025年1月にアメリカ大統領に就任したトランプは関税引き上げ、
カナダ合併などの提案・政策をぶち上げている。
佐藤優元外務省主任分析官はそのふるまいを「皇帝」に準え、
舛添要一元東京都知事は「ヒトラーやスターリンの手法と同じ」と言う。
ロシアはプーチン大統領が、中国は習近平国家主席がそれぞれ独裁色を強め、
ヨーロッパでは反移民を掲げる右派勢力が躍進している。
20世紀は「独裁者の時代」と呼ばれ、人種主義はホロコーストなどの
悲劇をもたらした。
それらは二度の世界大戦を経て、過去の遺物となったはずだった。
それがなぜ近年よみがえってきたのか。
時代の転換期を迎え、日本はどうすべきか。碩学2人が警鐘を鳴らす。
(以下、目次)
はじめに――時代の転換期に、正確な情報と分析を供する(佐藤 優)
第一章 SNSが政治を変えた
第二章 充満する国民の不満
第三章 ニヒリズムの革命
第四章 二一世紀の排外主義・反移民
第五章 独裁国家に囲まれた日本
おわりに――過ちを繰り返さないために(舛添要一)
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Posted by ブクログ
勉強になりました。
歴史は繰り返す。また万物は流転する。
独裁者の時代と呼ばれた20世紀は2度の世界大戦を経て自由主義陣営が勝利したはずだった。しかし民主主義国家において選挙で選ばれたはずの指導者の中から『皇帝』や『王』のような振る舞いをするリーダーが現れ始めた。右傾化するヨーロッパ。移民の問題。これからの日本はどうすれば良いのか。
考えさせる内容盛りだくさんでした。
舛添さんの『モンテスキューを疑え』。やはり本物の学者は古い考えに囚われたりしないんですね。常にアップデートしていく。
勉強になりました!
Posted by ブクログ
元外交官の佐藤優氏と元東京都知事や元厚生労働大臣の舛添要一氏の対談集です。
この本では舛添要一氏のセリフに興味を覚えました。
都庁職員は霞が関の役人よりも高給をもらっており、勤務時間も短く、都議会で舛添氏が自分の言葉で説明したところ、役人から「どうして台本通りに読まないのですか、そのため5時に終わらなかったじゃありませんか。勝手な答弁はしないでください」と言われたようです。(60P)
また、厚生労働大臣の時代には石破総理が防衛大臣や農林水産大臣であったため、懇意にしており、石破さんの地元鳥取で一緒に蟹を食べていたようです。石破総理は田中角栄の薫陶を受けた方であるため、日本のリーダーに相応しいと書かれています。(103P)しかし(残念ながら)9/7に退陣を表明してしまいました。
この本はこれからの日本の政治を読み解くためのヒントが詰まった本です。政治に興味がある方にはお薦めします。ありがとうございました。
Posted by ブクログ
本作は個人的に佐藤氏より舛添氏の国際政治学者の矜持が垣間見えた。どこを読んでも面白く参考になる言説だが、特に3章のニヒリズムの革命と4章の21世紀の排外主義・反移民は必読。こういう本物の評論を読まんとアカンな。
Posted by ブクログ
21世紀になってから欧米だけでなく韓国や日本でも民主主義は後退し、独裁・権威主義が復活してきている。
ロシアや中国が権力集中国家の代表と位置づけ、この両国を中心にSNSや監視技術が権威主義を強化していることを分析している。
特に近年は民主主義国家でも排外主義や反移民が高まり、「独裁的な要素」が浸透する兆しがある。
本書では、都知事選の石丸伸二や兵庫県知事選の斎藤元彦、参政党の神谷宗幣が支持されている理由などにも触れている。
経済・社会の不安、政治不信、格差・移民問題などを背景に、従来の民主主義体制や価値観が揺らいでおり、それが排外主義・反移民運動などと結びついている。
インターネットやSNSが政治や情報の流れを変え、独裁・監視・情報操作・世論誘導の手法が新たな形を得ている。
私の情報収集は、テレビ・ラジオ・新聞が中心でSNSはほとんど利用していない。
今のSNSがどんな内容なのかよく知らないのだが、佐藤・舛添の両氏は、政治・情報環境に警戒が必要だとしている。
SNSには陰謀論を流布させているという一面があり、無批判に指導者の思想に従ってしまう人達が一定数いる。
そうして誕生したのが、アメリカのトランプでもあるのだ。
ヒトラーの時代はテレビも普及しておらず、新聞・ラジオ・映画というメディアで大衆を洗脳したが、SNSをうまく活用した人が独裁者となることは十分に考えられる。
私が今困っていることは、テレビ・ラジオ・新聞・SNSのどの情報が正しいのか分からないこと。
テレビは視聴率とスポンサー確保に繋がる番組作りなので、ニュースもバラエティ化してる。
NHKのニュースは事実だけを報道しているように感じるが、深く掘り下げた独自のコメントは言わないのでつまらない。
報道していることは事実かも知れないが、(権力者に)都合の悪いことは報道しないし追及もしないので隠し事がたくさんありそう。
佐藤優氏はロシア大使館、舛添要一氏は都知事および参議院議員として、実務で揉まれていることもあり、生きた政治が分かっている人物だ。
ご両人は、逮捕されたり、メディアに叩かれたりと酷い目にも遭っているが、権力に媚びることなく実直に持論を展開していると思う。
なので、このような本に興味が湧いて読んでみたくなる。
Posted by ブクログ
20世紀のヒトラー、ムッソリーニ、スターリンのように、21世紀もまたプーチン、習近平らの独裁政治が国際社会で勢力を拡大し、これに対抗するかのようにアメリカのトランプ大統領が再選を果たし、議会を通さない大統領令を連発し独裁者然と振舞ったあげく、いわゆるトランプ関税では連邦控訴裁判所で違法の判決が下った。ロシア、中国の国民たちは、独裁政治で表現や思想などの自由を奪われ苦しんでいるかと思いきや、安定した政権の社会経済政策の下で、治安の行き届いた社会、質の高い行政サービスを受け、満足度の高い生活を送っていて、アメリカやヨーロッパ諸国でも自国ファーストを掲げる国家のリーダーたちが熱烈な歓迎を受けている。今日もニュースで「外国人に使う金を俺たちに使え」と叫ぶ人たちがいる日本も同様。先進国といわれる民主主義国家は今、日本もヨーロッパも先の見えない経済不況による生活困窮、移民問題などの治安の悪化で国民の不満が充満している。こうした時代の潮流をとらえて著者たちが「21世紀の独裁政治」というモデルを見立て、なぜこのようになっているのか、中国、ロシア、トランプのアメリカと北朝鮮を加えたこれらの独裁大国に挟まれ日本はどこに向かうべきか、SNS社会の席巻、ニヒリズムの台頭、既存宗教の賞味期限切れと絶大な権力者に対する神のごとき崇拝(その指導者の言うことは何でも正しいとするトゥルー・ビリーバーたちの誕生)、生活不安が醸成する排外主義などを切り口に、対話と思考を重ねていく。著者たちは独裁政治の躍進はそれに対向する民主主義という政治形態が機能不全を起こしているからだと解くのだが、1930年代には元ナチス高官のヘルマン・ラウシュニングが、庶民が無数の雑多な利害の中で粉々に砕かれている様子を看破し、日本で自由民権運動が起こったころ新島襄は国民の教育が行き届かなければ代議制民主主義は金権政治へと堕すと、事の始めから主張していたことを考えると、なかなか民意が反映されず相も変わらずの政治と金の問題ばかりの議会制民主主義というのは、これが安定形態なのかも知れないと思ってしまう。独裁政治を助長するものは、『自分で判断して行動することに疲れ』た大衆が、『強力な独裁者に魂を奪われていく』様態であり、独裁者にむやみに身を委ねず、『独裁者の嘘を見抜くには読書をはじめ、不断の自己研鑽が必要である』と説く著者の主張に同感する。
Posted by ブクログ
本書は、現在の自分も感じていた危機感をまとめてくれた一書でした。とはいえ、もう一度、読み直しつつ、しっかりまとめなおしてみたいと思いました。
歴史は繰り返しているんだろうなとも思いつつ、どうそれに歯止めをかけていくのか、微力な立ち位置ながら、もう少し考えてみたいと思いました。
Posted by ブクログ
個性の強い2人の対談であるからして、かなり思い込みの強い発言もあるものの、まぁ常識的な内容。アメリカと韓国の大統領が『王』になったとの指摘には納得した。また三権分立は必ずしも絶対の正義でないとの主張も新鮮だった。