小説作品一覧

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  • 官能記
    5.0
    1950年――昭和25年、11月。5歳の女の子が50歳くらいの男に手を引かれて、遠い親戚の家にいこうとしていた。その刹那、女の子の心の中に、その年齢にはいささか似つかわしくない、ある「思い」が地下水のように静かに湧きだしてきた。「わたしはこの世界に何の借りもない」と――。天涯孤独の身に生まれた“みーこ”が綴る、自由奔放に生きた波瀾万丈な女の一代記!
  • 凶器
    -
    ある雨の夜、二人のやくざ者を殴り倒したときが、おれの暴力衝動の最初の爆発だった。自分の肉体を凶器として戦う瞬間の、狂おしいまでの快楽。やがておれは、世話になった内藤の愛人・淳子と関係を結ぶ。極上の肉体を持つ、銀座の女だ。淳子に溺れたおれは、内藤に現場を押さえられ、償いに殺しを命じられた。そのとき、あの快楽が再びおれの体を駆け抜けた。暴力とセックスのめくるめく陶酔に浸る青春を、鮮烈な筆致で描く衝撃の官能バイオレンス!
  • ちーちゃんは悠久の向こう
    4.0
    1巻506円 (税込)
    幼馴染のちーちゃんと穏やかな日常を送っていた「僕」。しかし、ある怪異事件を境に2人の日常は一変し……。”変わるはずのない日常”が崩壊する恐怖と青春時代の瑞々しさを描いた、日日日の鮮烈デビュー作、復活!
  • ゴルファーは眠れない
    3.0
    何かに魅きつけられるように、グリーンに集う人々。ここは、人生の始発駅でもあり、終着駅にもなる。そして、ときには愛を捜しにくることも……。表題作ほか「オーバー・ザ・レインボー」「ゴルフ島奇譚」「葡萄畑にボギーマン」「サンドグリーンへ、ようこそ」「北の旅人」を収録。グリーンの波間に垣間見た、6人の様様な人生劇場を描いた、渾身のゴルフ小説短編集。
  • On The Beach
    4.3
    湘南、ハワイ、ロス……夏の風が吹き抜ける海辺の街で生まれた5つの愛の物語――。小学生の頃、塾の先生から教わったビートルズの曲を2人で口ずさんだ初恋の思い出を切なく綴る「あの日、『ペニー・レイン』を歌ったね」、ひと夏だけ滞在した大学生との恋を明るく描いた「風を見ていたサバ」など、夏のカラッとした爽やかさの中に、ほろ苦さ、切なさが溢れるハート・ウォーミングな物語。ほかに「ノース・ショア・セレナーデ」「敗戦投手に、口づけを」「潮風のパスタ」。大人のための恋愛小説集。
  • 六道ヶ辻 死者たちの謝肉祭
    3.5
    終戦直後の東京・ドヤ街。誰もが今日を必死に生きていた時代。復員兵の西郷は、ふとしたことから孤児の未知夫とバーの踊り子・朱里と疑似家族のように暮らしはじめた。貧しい中で、ささやかな幸せをかみしめる3人。その頃、街では人食い鬼の仕業と噂される猟奇的な連続殺人事件が起こっており、犯人として西郷が疑われてしまう。そんな彼を助けたのはダイドウジを名乗る人物だった――。大道寺と大導寺。死者たちの宴に彩られ、彼ら一族の忌まわしき過去が紐解かれていく。シリーズ第5弾!
  • 在原業平殺人事件
    5.0
    早川明子は、「在原業平の寺」といわれる京都の十輪寺で細川和也と出会う。和也は平安文学を研究する大学助教授で、知識が豊富な美青年だった。数日後、和也に誘われた明子は学者達が集まる新年会に出席する。だが、そこで教授の娘との結婚が噂される助手が、毒入りワインで殺害された。さらに長岡京跡では講師のひとりが毒物死する。派閥抗争の果てか、学説の対立か? それとも教授の娘をめぐる愛憎劇なのか? 恋人・和也への愛と不信の狭間に揺れる明子。ミステリー界の双璧が放つ本格長編推理。
  • きみの愛が、僕に降りそそいだ
    3.0
    カメラマンとして活躍する哲男は、ある日、心身の異変を覚え、愕然とする。医者は「原因は心の“金属疲労”」だと言う。傷つき、故郷に戻る哲男。そんな時、一人で食堂を切り盛りする女性・凪に出会い、彼女の生命力あふれる純朴さに惹かれていく。やがて、哲男は彼女との触れ合いに生と性の回復を感じる。が、凪は、ある理由から最後の一線を越えることを拒んだ……。ひとつになれない男女の切なさを本音で描く、極上の恋愛小説。
  • リチャード三世
    3.9
    身体に障害を負った野心家グロスター公リチャードは、兄のエドワード四世王が病に倒れると、王権を狙い、その明晰な知能と冷徹な論理で、次つぎに残忍な陰謀をくわだて、ついに王位につく──。魔性の君主リチャードを中心に、薔薇戦争終結へといたる権謀術数の暗部を描き、口を開いた人間性のおそろしい深淵に、劇詩人シェイクスピアが、真っ向からいどんだ傑作史劇である。
  • ジュリアス・シーザー
    4.1
    “おれはシーザーを愛さぬのではく、ローマを愛したのだ” 高潔な勇将ブルータスは、自らの政治の理想に忠実であろうとして、ローマの専制君主シーザーを元老院大広間で刺殺する。民衆はブルータスに拍手を送ったが、アントニーの民衆を巧みに誘導するブルータス大弾劾演説により形勢は逆転し、ブルータスはローマを追放される……。脈々と現代に生きる政治劇。
  • ハムレット
    3.8
    城に現われた父王の亡霊から、その死因が叔父の計略によるものであるという事実を告げられたデンマークの王子ハムレットは、固い復讐を誓う。道徳的で内向的な彼は、日夜狂気を装い懐疑の憂悶に悩みつつ、ついに復讐を遂げるが自らも毒刃に倒れる――。恋人の変貌に狂死する美しいオフィーリアとの悲恋を織りこみ、数々の名セリフを残したシェイクスピア悲劇の最高傑作である。
  • 何の印象もない女
    3.7
    グレゴール・ザムザは困っていました。ついこの間朝起きてみたら一匹の虫に変身していて往生したばかりなのに、今度は一台の顕微鏡に変身していたのです(――「顕微鏡になった男」より)。 魔法使いが売った呪文に始まり、神様の悩みや同情するロボットまで、出会いから出会いへ、九つのおとぎ話が一つにつながった奇跡的傑作「九つの物語」(ナイン・ストーリーズ)や、書き下ろし作品「僕の国」を含むオリジナル短篇集。小説の新たなる可能性を探る著者が、引き出しの奥に秘めていたとっておきの物語です。
  • ぶたぶたのおかわり!
    3.6
    「ぶたぶた」シリーズの名物店が、再び登場! とびきりの朝食を提供するカフェ「こむぎ」。秘密をひとつ話さなければいけない不思議な会員制の喫茶店。町の和風居酒屋「きぬた」。そして今回、新たに築地のお寿司屋さんとしても、ぶたぶたが大活躍! 山崎ぶたぶたは、今日もどこかであなたのために、料理の腕を振るっています。すこぶる美味しい、短編コレクション。
  • 無理矢理な人たち ~この素晴らしき世界~
    -
    1巻506円 (税込)
    物語の語り手である《おれ》は、とあるバーで出会った奇妙な老紳士《傷の痕》氏から、人の内面をのぞき見ることができるという不思議なコンタクトレンズを受け取る。《おれ》は個性豊かな7人の人生を覗き見て老紳士に語り聞かせる。 一見普通に見かけるような人々…。愛嬌がある太めの女の子。データ入力を生業にする痩せ細った男。変態性癖を隠し持つビルの清掃員兼ブルースギタリスト。勘違いな超ナルシストのビジュアル系バンドマン。男性不信の三十代後半独身キャリアウーマン。過去のトラウマゆえ人形にしか心を開かないSV(スーバーバイザー)の男。石膏のような厚化粧をした良家の令嬢。 物語はそれぞれの人生を細やかに描き出していく。彼らがそれぞれに抱えている決して普通ではない闇と光、痛みと喜び。何が今の彼らをつくったのか。やがてそれぞれの物語が交錯して絡み合ってゆき、《おれ》と老紳士《傷の痕》の関係にも劇的な変化が訪れるのであった。 救いのないようにも思えるエピソードの中で、愚かでどうしようもない、それでも愛すべき「人という生き物」を軽妙な語り口で描いた一冊。 ※本作品は2010年に、ぶんか社より電子出版されていたものを加筆訂正し再発売。 表紙絵・寺澤晋吾

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  • 田崎教授の死を巡る桜子准教授の考察
    3.5
    1~2巻506~572円 (税込)
    マンションも買った。車も買った。足らないものは男だけ。桃沢桜子42歳。立志館大学准教授。出世争いには巻き込まないで的な、食事は売れ残り弁当でOK的な合理主義な女。ある朝、田崎教授が大学の玄関ロビーで死んでいた。前日に教授と言い争っていたのを目撃された桜子は警察に事情を聞かれる。一癖も二癖もある教授たちと大人になりきれない学生たち。魑魅魍魎が跋扈する大学内ミステリー。
  • 僕の行く道
    3.8
    離れて暮らす母に会うため、小学3年生の沖田大志はひとり、旅に出る。途中、さまざまなトラブルが大志に降りかかるが、行く先で出会う人々の優しさに助けられ乗り切っていく。心細い思いをしながらも健気に旅を続ける大志は、果たして母に会えるのか? 「涙でページがめくれませんでした」という読者が続出した、親子愛溢れるハートフルストーリー。
  • 木更津キャッツアイ ワールドシリーズ
    4.7
    余命半年を宣告されたぶっさんは、元野球部のバンビ、アニ、マスター、うっちーと昼は野球とバンド、夜は怪盗団の「木更津キャッツアイ」を結成。生き延びていたぶっさんが亡くなり、三年が経とうとしていた。
  • 木更津キャッツアイ 日本シリーズ
    4.4
    熱狂的ファンを獲得した伝説の連ドラ「木更津キャッツアイ」を映画化、大ヒットした作品のシナリオ本。またしても余命半年を宣告されたぶっさんと仲間たちの最低で最高の夏をぎゅっと詰め込んだ傑作物語。
  • 門司・下関 逃亡海峡(十津川警部シリーズ)
    -
    大学講師の篠塚昭夫は、留学生のアン・ミカと浮気をしている。それに気づいた妻は、夫と無理心中をしようと部屋に火をつけ焼身自殺。だが、遺体から睡眠薬が検出され、夫に疑惑が……。十津川警部に容疑の目を向けられた篠塚は、葬儀の途中で姿を消し、愛人と逃亡を図る。警察の追跡を巧みにかわす二人を追い詰める十津川警部たち。決死の逃避行の果て掴んだ驚愕の愛! 長編旅情ミステリー。
  • 奇貨
    4.0
    男友達もなく女との恋も知らない変わり者の中年男・本田をとらえたのは、レズビアンの親友・七島の女同士の恋と友情だった。女たちの世界を観察することに無上の喜びを見出す本田だが、やがて欲望は奇怪にねじれ……。熱い魂の脈動を求めてやまぬ者の呻吟を全編に響かせつつ、男と女、女と女の交歓を繊細に描く友愛小説「奇貨」と、著者26歳の時に書かれた危うい思春期小説を併録。
  • 十津川警部 古都千年の殺人
    -
    京人形に仕込まれた爆弾による殺人事件が東京と京都で起きた。警視庁と京都府警の合同捜査が始まり、十津川警部は人形師・京屋一太郎を重要参考人として手配した。しかし、京屋一太郎は来日中のカナダ副首相夫人を誘拐し、各所旧跡の無差別爆弾の予告と町の景観改善を要求する脅迫状を京都市長に送ってきた。難事件解決に十津川警部が動き出す。
  • ポプラの秋
    4.0
    父が急死した夏、母は幼い私を連れて知らない町をあてもなく歩いた。やがて大きなポプラの木のあるアパートを見つけ、引っ越すことにした。こわそうな大家のおばあさんと少しずつ親しくなると、おばあさんは私に不思議な秘密を話してくれた──。大人になった私の胸に、約束を守ってくれたおばあさんや隣人たちとの歳月が鮮やかに蘇る。『夏の庭』の著者による、あたたかな再生の物語。
  • テレビでは流せない芸能界の怖い話【解禁編】
    -
    人気番組を手掛ける現役放送作家が芸能関係者から集めた最恐怪談集。【内容紹介】初めてゴールデン番組の海外ロケにキャスティングされた駆け出しのお笑い芸人。彼が現地ミャンマーの病院地下で見たものとは。蕎麦好きの若手イケメン俳優。楽屋から注文した出前の蕎麦には。自宅の神棚にヨーヨーを祀っている人気歌舞伎役者。それには超いわくつきの理由があった。ほか、あまりの怖さゆえにこれまで封印されてきた戦慄の裏話が今明かされる!数々の人気番組を手掛ける現役放送作家が語る最恐怪談集。
  • 言語小説集
    3.7
    ワープロのディスプレイ上でカギ括弧同士が恋をした。威張り腐った●や■に他の記号たちが反乱を起こす「括弧の恋」。方言学の権威が、50年前自分を酷い目に遭わせた特高の元刑事を訛りから見破って復讐する「五十年ぶり」。ある日突然舌がもつれる青年駅員の悲劇を描く「言語生涯」など言葉の魔術師による奇想天外な七編に加え、抱腹絶倒の四編を新たに収録した著者最後の短編集。
  • 4ページミステリー 60の奇妙な事件
    3.5
    大好評の「4ページミステリー」待望の最新作。ちょっとした待ち時間や移動時間に、気軽に読めちゃうショートショート・ミステリーを、一挙60本収録。たった4ページでも、謎と推理は本格的! お出かけのお供にぴったりの一冊。
  • 硝子戸の中
    3.8
    自己を語ることに寡黙であった漱石が「自分以外にあまり関係のない詰らぬ」事を書くとことわって書いた連作エッセー。記憶の底に沈んでいる体験や回想に光をあてることで静謐にして一種不思議な明るさに充ちた表現世界を生み出している。この作品は『こころ』のあと『道草』の前という漱石の晩年に書かれた。 (解説・注 竹盛天雄)

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  • ジュリエットXプレス
    3.2
    寝台特急での誘拐事件に遭遇した少女。学生寮でスナッフフィルムの噂を語る少女。そして、ある少女の自宅に侵入してきた殺人鬼。大晦日を超えた45分後、3人の少女たちの運命は!? 衝撃のリアルタイムノベル!
  • 十津川警部 小浜線に椿咲く頃、貴女は死んだ(十津川警部シリーズ)
    3.0
    十津川警部の妻・直子に、京都K女子大学同窓会の招待状が届く。同期の金井富美が、日本画の賞を受賞したお祝いだという。直子たちは、“椿の君”と呼ばれた富美をはじめ仲良し5人で、美女軍団と称していた。同窓会直前、仲間の三原敏子が殺害される。十津川警部は、同窓生から情報を得るため京都へ向かうが、また軍団メンバーが殺害され……。椿の因縁をめぐる謎を追って、東京、京都、福井を結ぶ推理行。
  • スリーピング・ピル 幻想小品集
    3.7
    ねぇ君、愛は痛いのです――。パール、ピアス、チョコレート、睡眠導入剤……乙女の日々になくてはならない偏愛アイテムが、物語へと昇華する。単行本未収録作品をボーナストラックとして収録。
  • ラスト・イニング
    3.9
    野球を通して少年たちの瑞々しい想いと情熱を描き、世代を問わず爆発的な人気を得た「バッテリー」シリーズ。シリーズ屈指の人気キャラクター・瑞垣の目を通して語られる、彼らの「その後」の物語。新田東中と横手二中、運命の試合が再開された! ファン必携の一冊!
  • 不幸な恋の終わらせかた
    4.0
    「カラダの、つきあい」略して「K2」を重ねてしまうあたしは、なぜ不幸な恋からぬけだせないのだろう? 本当の恋をもとめるすべての人に贈る、究極の恋愛小説!
  • アゲイン 28年目の甲子園
    3.9
    もう一度、甲子園を目指しませんか――。40代半ばの元高校球児、坂町は見知らぬ女性に突然、声を掛けられる。彼は高校時代、ある出来事が原因で甲子園への夢を絶たれていた。記憶の蓋をこじ開けるような強引な誘いに苛立ちを覚える坂町だったが、かつてのチームメイトと再会し、ぶつかり合うことで、再び自分自身と向き合うことを決意する。夢を諦めない全ての大人におくる感動の物語。
  • ぼけナースいつもオドロキ編 新米看護婦物語
    3.5
    病棟に獅子舞がやってきた! 患者さんにつけ届けをもらっちゃった! 患者さんが自殺しようとしてる! 病院はいつも驚きでいっぱい、新米ナースのドキドキには終わりがありません。それでもさりげなく進んでいく病院の日常を、ナース経験をもつ著者が愛情こめて描きました。医療現場に吹き始めた新しい風も予感させつつ、好評の「ぼけナース」シリーズ、ついに完結編です。
  • ぼけナースたまにオトボケ編 新米看護婦物語
    3.0
    ナース十人いれば看護も十色。新米ナース・有福のこだわりは、「白衣の天使」とはちょっと違います。患者さんの髪にかぶせてあげるネット。床ずれの効果的な治療法。そして、死にゆく人の最期の言葉……。力みかえったり、ホロリとしたり。天然ぼけと正義感の絶妙なバランスで、現代社会の縮図・病院の日常を生き生きと描きます。「病気になんか縁がない」と思っている人にもおすすめしたい、人気コミック『おたんこナース』の原案小説化です。
  • デス・ネイル
    3.5
    ネイリストを目指す奈々子はボランティアで老人ホームを訪れ、かつ江という老婦人の爪を美しくマニキュアした。数週間後、かつ江が亡くなったという知らせとともに、遺品の眼鏡が奈々子のもとに届けられる。奈々子がその眼鏡をかけると不思議な映像が見え、奈々子を窮地から救い、導いてくれた。かつ江の眼鏡を武器に、一躍カリスマネイリストへの道を歩み始めた奈々子だったが……。日本ホラー小説大賞短編賞受賞作家の待望の作品集!
  • 誰の中にでもいる彼
    3.4
    人生には忘れがたい瞬間がある。十四年前、東京駅のプラットホーム。そこにいたのは互いに縁もゆかりもない29歳の人妻と27歳の独身商社マン。運命が連れ添うはずもない二人を引き寄せたのだった。だが、輝かしい時間も歳月とともに色褪せてゆき……。燃えるような恋とその後の顛末を綴った文庫オリジナル作品「誰の中にでもいる彼」ほか6編を収録。ベストセラー『水曜の朝、午前三時』の著者が贈る、珠玉短編集。
  • 東京観光
    3.7
    アパートの水漏れがきっかけで、下の階に住む男と親しくなったあかり。男はある日、奇妙な相談を持ちかける。「俺と、部屋を交換しない?」(「天井の刺青」)。街のあちこちに灰色の公衆電話が存在していた、あの時代。初めて東京を訪れた私が泊まったホテルの部屋には、なぜか外国人女性が住んでいて……(「東京観光」)。不思議で、ユーモラスで、じんわり染みる。直木賞作家が贈る、味わい深い七つの物語。
  • 花が咲く頃いた君と
    3.6
    気鋭の作家が四季を彩る花とともに描く青春小説。4編からなる連作集。祖父との交流を描いた「椿の葉に雪が積もる音がする」は必読の1編。
  • ハリール・ジブラーンの詩
    5.0
    愛し合いなさい、しかし愛をもって縛る絆とせず、ふたりの魂の岸辺のあいだにゆれ動く海としなさい。(「結婚について」より) 深い思索の中から紡ぎだされた、静かな叡智に満ちた詩の数々。人生の礎となる一冊。
  • 橋をわたる
    -
    時間給の高さに惹かれ、大学の夏休みの期間だけ、僕は塾講師のアルバイトをすることにした。担当する科目は小学校五年生の算数。文学部の僕にとって、彼らに算数を教えるのは至難の業だった。なんとか夏期講習前期最後の授業まで辿り着き、ひと安心した矢先、教室で信じられない出来事が起こる。女子生徒の一人がシャーペンで自分の顔を突き刺し始めたのだ。なぜ彼女はそんなことを? 僕は、人には言えない特殊な能力を使って、事件の裏に潜む謎を調べ始める……。驚愕のホラー小説!
  • 雨は見ている 川は知ってる
    4.0
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 ずっとずっとひとつの思いに沈みこんでその中でさまよっていると今がいつでここがどこなのかは大事でなくなる そんなふうにふだんの時間もすごせたらいいのに
  • ナンバー
    3.5
    1巻506円 (税込)
    所轄署から警視庁本部への転属が決まった西澤は意気軒昂として桜田門に向かう。だが、所属は期待していた刑事部の華といわれる捜査一課ではなく、詐欺や横領事件といった知能犯を追う捜査二課だった……。犯人や同僚・上司。事件に関わる人間の裏表を、かつてない緊迫感で描く迫真の警察小説。
  • これからの誕生日
    4.0
    1巻506円 (税込)
    千春はバス事故で友人や教師を失い、一人生き残った罪悪感に打ちのめされる。そんな千春を取り巻く弟、伯母、担任教師、亡くなった友人の母親、新聞記者、ケーキ店店主という6人の視点で、人間が新たな一歩を踏み出してゆくまでの道のりを丹念に見つめる。明日を生きるための強さを優しく描きだした連作短編集。
  • あなたの気持ち
    -
    30歳を目前に控えたなつき。イラストレーターと物理学者の卵という、二つの顔を持つ。恋人は妻子持ち。気ままな独身生活の心地よさの中で、何か大きな変化に飢えていた。ある日、なつきは、出版社のパーティーで、カメラマン・矢沢と出逢う。大酒呑みで、離婚歴2回、しかも仕事でほとんど日本にいない矢沢。そんな彼に、アザラシ・ウォッチングの旅に誘われた。彼の「人生観が変わる」という言葉に惹かれて、なつきはマドレーヌ島へ。二人の心に、運命の扉が開きつつあることを、まだ気づかずに……。傑作結婚小説。
  • 李陵・山月記 弟子・名人伝
    4.3
    1巻506円 (税込)
    漢の最盛期、武帝の時代。が、北辺の地に匈奴の来襲があいつぎ、時代に影が兆しはじめた。李陵は、五千の少兵を率い、十万の匈奴と勇戦するが、捕虜となった。その評価をめぐり、華やかな宮廷に汚い欲望が渦巻く。司馬遷は一人李陵を弁護するが、思いもかけぬ刑罰をうける結果となった。讒言による悲運に苦しむ二人の運命に仮託して、人間関係のみにくさ美しさを綴る「李陵」他に、自らの自尊心のため人喰い虎に変身する李徴の苦悩を描く「山月記」など六編を収録。
  • 舞踏会・蜜柑
    4.2
    「私は花火のことを考えていたのです。我々の生のような花火のことを」秋の夜の鹿鳴館舞踏会で、露台に出たフランス海軍将校は明子に教えるような調子で言った。……夜空に消える一閃の花火に人生の空しさを象徴させた名作「舞踏会」、ほのぼのとした小品「蜜柑」。ほか「葱」「路上」「鼠小僧次郎吉」など大正8年度作品を収録。
  • 眠りの家
    3.5
    学生時代からの友人潤木と吉沢は、千葉・外房で奇妙な円筒形の建物を発見する。釣人を装い調査を始めたが……。表題作のほか、不朽の名作「ゆきどまりの女」を含む全六編を収録。
  • 杜子春・南京の基督
    4.3
    「杜子春」は、中国伝奇を骨子としたメルヘンで、唐の洛陽の若者が仙人から母の愛の尊さを教えられる話。同じく中国物の「南京の基督」は、秋の一夜年若い売春婦が体験した、基督との不思議なふれあいを描き、短篇技巧の冴えを示す。ほか、名作「秋」「お律と子等と」など大正9年度の作品十数篇を収む。
  • インドラの網
    3.0
    ツェラという高原を歩いているうちに、ふと“天の空間”に滑り込んでしまい、天人、蒼い孔雀、天界の太陽などあらゆる美の極致を目にする主人公を描く表題作「インドラの網」をはじめ、夢と神秘にあふれた幻想的作品を集める。「雁の童子」「学者アラムハラドの見た着物」など“西域異聞”と呼ばれる作品も含め、賢治の持っていた〈心象宙宇〉の途方もない大きさと透明度をあますところなく伝え、賢治世界の真骨頂ともいえる童話集である。
  • 余は如何にして服部ヒロシとなりしか
    3.2
    同級生の姉に連れられて訪れた古い家屋。軒下には文化祭のセットで作ったはりぼての風呂。彼女はここで汗を流せと自ら服を脱ぎ始める。グロテスクな不条理の世界が選考委員の度肝を抜いたホラー大賞短編賞受賞作!
  • 丸の内殺人物語
    4.0
    ◎部下と帰宅途中、飲酒運転の人身事故を起こしてしまった! ◎単身赴任先で浮気をしていたら、突然妻がやってきた! ◎やりすぎの領収書ゴマカシがついに経理の女の子にバレた! ◎トイレで専務と並んで用足し。どんな挨拶をしたらいいのか! サラリーマンなら誰でも体験しそうなピンチの数々。うまく脱出をはからねば、破滅があなたを待っている……。身につまされる笑いのあとに、背筋も凍る恐怖。読み出したら止まらない興奮の短編5連発!(『それは経費で落とそう』改題)
  • まじめ半分
    3.3
    結婚披露宴でのジョークを一つ。「夫婦円満のコツは、相手をほめることです」というスピーチを聞いて、花嫁がその夜ベッドの中で早速実行したそうだ。「あなたって上手ね」と。阿刀田高は、現実と非現実の境目にあるぼんやりしたものをすくいとる天才だ。意気消沈している人は、この本を読んで元気になって下さい。真面目すぎる人は、少しは笑って下さい。ジョークなしの人生なんて考えられないのだから……。阿刀田高の頭の中を全面公開したこの一冊、お見逃しなきよう!!
  • 空想列車(上)
    -
    1~2巻506~550円 (税込)
    同じ列車に偶然乗り合わせた四人の女性。二十代、三十代、四十代――年齢も境遇もまったく違う彼女たち。現在の生活に不満はないが、特別満足しているわけでもない。ただ、ほんの少しの願望を持っているだけ。その空想をそれぞれが想い描いている時、突然、列車事故で自分の空想が他人に取り込まれてしまった。ちょっとした出来事。それは、彼女たちの運命の歯車を少し動かしただけのようにみえたが……。男と女の不透明な時間。
  • ワンナイトミステリー 「シアトルの魔神」殺人事件
    -
    化粧品会社に勤める永峯希美は、顧客向けに制作しているPR誌の小説を読んで驚いた。8年前にシアトルで体験した恋人との別れの場面が、セリフもそのままに描かれていた。作者は、ほかでもない過去の恋人。だから99%が事実。だが1%が違う。作中の希美は哀しい最期を遂げているのだ! 希美は別れた男の真意を探るためにシアトルへ。指定された再会場所へきた男は自らを「魔神」と呼ぶ変人に変貌をとげていた。そして最悪の事態が……。ワンナイト、今回の探偵役は烏丸ひろみ!
  • テロルのすべて
    3.0
    一九八六年に生を受けた僕、宇津木の鬱屈の正体、それはアメリカという国家だ。都合のいいようにルールを決め、世界の覇者気取りで澄ましているあの国を、心の底から軽蔑している。嫌いじゃない、大ッ嫌いだ。では、僕の取るべき行動は何か。強者の脳天に斧を振り下ろすこと。そう。テロルこそもっとも有効な手段なのである! 僕はまずアメリカの大学への留学を決め、そこから事を始めた。
  • 8月のカモメたち
    4.0
    18歳の薊は、死んでしまった祖父の相続税を払うため、夕陽の当たる海辺のバー〈サンセット〉でアルバイトを始めた。過去を語らぬ店長の浩一に魅かれ、彼がかつての新鋭作家だと知った。……薊は初めての恋に落ちていた。人生への不安、胸の痛み、そして抱きしめてくれた腕の熱。彼の残した唯一の小説を探り、いつしか薊は小説家を目指す。人生で一番濃密で、一番短い夏が終わる。薊はその夏失った大切な命を描こうと誓った。小説に寄せる著者の切実な想いを込めた青春ロマン。
  • 恐怖小説集 金曜日の女
    3.8
    自分を捨てた男からの電話を、何年も電話の前で待ち続ける女。婚礼の前日、会ったばかりの男と駆け落ちを企てる女。女たちの胸の奥底に渦を巻く出口のない想いがえぐり出される。森瑤子の遺した傑作サイコホラー集。
  • 地図のない旅 おいしいコーヒーのいれ方 Second Season VIII
    4.1
    誰一人として、勝利くんを罰しようとしなかった。その結果、彼はあそこまで追い詰められたんです――中沢の言葉を反芻しながら、風見鶏のマスターは、自分がかれんの兄であることを花村家に告げに行く。由里子さん、若菜ちゃんもそれぞれのつらい経験を乗り越えようと、一歩ずつ足を前に進める。あのとき以来、時間がとまったままの勝利だったが、急遽オーストラリアから帰国することになり……。
  • プールサイドで踊ろう
    -
    ハワイ。ホノルル国際空港。今朝も僕はロケ隊を迎える。ケン・タナベ、27歳。日系四世。ロケのコーディネーターをしている。――夢と挫折に揺れる和美。終わった恋を胸に埋めた美樹。泣きたい程の不安を抱いた明実。そして、いつも大人でいようとした信子…。次々と訪れるロケ隊。瞬間の煌めきと一粒の涙を残し、少しだけ違う自分を見つけて、彼女たちは日常へと帰っていく。生命の輝きを映す四つの書き下ろしラヴ・ストーリー。
  • 湿った空乾いた空
    -
    可憐でやさしく、それでいて嫉妬深く自己中心的な女性M・Mと、ゼンソクの持病がある作家の「私」が、外国旅行をする。ラスベガスでの大喧嘩からはじまって、パリの空港で別れるまでの、一組の男女の繊細な感情の揺れ動きを吐露した表題作。他に、別居した妻と入籍を迫るM・Mとの間で、自己の“青春の復活”を凝視する「私」の緊張感を表白した『赤い歳月』を併録する。
  • 少し酔って
    4.0
    1巻506円 (税込)
    ホテル・ルームで、バーで、レストランで、二人がグラスを合わせる時、物語(ラブ・ストーリー)の幕が上がる。あるいは、物語の幕が下りる。ブランデーで、バーボンで、カンパリで、少し酔っている。男も女もグラスを武器にする。ハッピー・エンドでもない、悲しい結末でもない、贅沢で粋な10篇。
  • ジョーカー
    3.0
    父の愛人・カオルの店で過ごす時間は、19歳の万穂子にとって唯一くつろげる時であった。またそれは、父と秘密を共有することも意味していた。19歳、27歳、32歳――自らの愛の局面で、知らず知らずのうちに誰かの切り札(ジョーカー)を演じてしまう万穂子。そのことはいつも誰かを救ったが、どこかで誰かを、時には自分をも傷つけた――祈るような人間へのいとおしみをクールにそして暖かく描く、著者初の連作長編小説。
  • 花刑
    3.0
    サラ金地獄で首が回らなくなった男が企てた高利貸しの老婆殺害計画――社会問題化する生活破綻の実態をリアルに描いた表題作「花刑」をはじめ、定年を迎えた男がかつて通勤電車の窓から目撃した“白いハンカチを振るOL”を探す「完全犯罪の鏡像」。異なる家族が暮らすマンションでおこる人間関係の憎悪をテーマにした「凶隣の巣」など、身近にある殺意を収めた傑作社会派推理短編集! 完全犯罪の鏡/凶隣の巣/死媒祭/花刑を収録。
  • 悪夢喰らい
    3.4
    1巻506円 (税込)
    「走れ、もっと早く走るんだ!」謎の声に導かれ、憑かれたように走って死を迎える男。獣臭と血臭の入り混じる山小屋の中で繰り広げられた、血塗られた饗宴。漆黒の闇の中を泳ぐ巨大な竜。濃霧の中から突然広がる死屍累々の世界……。夢枕獏ワールドのエッセンスが凝縮された、珠玉の恐怖小説集!
  • 黒い蝶
    4.0
    1巻506円 (税込)
    商売に失敗した三田村は、偶然に江藤という富豪と知り合った。江藤は死んだ娘のためにソ連の世界的ヴァイオリニスト・ムラビヨフを日本に招聘することを思いつく。三田村は招聘の運動費と称して江藤から金を引き出し、自分の新しい事業に注ぎ込むが、江藤の美しい妹にその魂胆を見透かされた時、奇妙にも本気でムラビヨフを招んでやろうと考え始める……。著者唯一の書下ろし長編。
  • 日本三文オペラ
    3.5
    1巻506円 (税込)
    大阪造兵廠跡のスクラップをねらう食いつめ者たちの集団、アパッチ族の動物的エネルギーと愉快にして滑稽な行状、原始共産制を思わせる泥棒社会の、妙に活気に満ちた姿を描く。最低の生活条件のなかで、社会的な虚飾や被覆を一切はぎとられた時にかえって逞しくうごき出す生の諸欲望をさわやかに描き出す。
  • リア王
    -
    純真な末娘より、甘言を信じ、長女と次女に国を譲ったリア王は、忘恩の娘達に追い出され、発狂し嵐の荒野をさ迷う。急を聞き、父を援けに出た末娘は、不運にも捕えられ殺される。理性をとり戻した王は、真実の愛情と虚偽を見分け出来なかった愚をくやみつつ息を引きとった。シェイクスピア全劇作品中、最高作と評価される一作。
  • トロイラスとクレシダ
    -
    トロイ戦争とその戦争の中に咲いた悲しい恋の物語。西欧の文学に歌いつがれたこの「恋愛と名誉」の伝統的な主題をシェイクスピアはこの戯曲の中でまったく非情の眼で直視する。トロイやギリシアの華やかな英雄たちはその栄光の座から引きずり降ろされ、純情なトロイラスは、女性を理想化したため深い幻滅を味わされる。最も古典的な物語がシェイクスピアの手によって一変する。
  • 新・オリエント急行殺人事件
    4.0
    ロンドン~ベニス間を一昼夜で走るオリエント急行は、その歴史、豪華さ、風格、話題性から考え、まさに“伝説の中の列車”であった。日本からツアーに参加した安養寺ら10名の男女は、その華やかさに酔いしれていた。一年後、彼らの間で次々と起こる謎の連続殺人事件。誰が加害者で誰が被害者なのか。捜査の焦点は、ある日時のある場所で起こった事件へ……。“夢の超特急”オリエント急行を舞台に、森村誠一が満を持して新境地に挑む、本格長編推理。
  • 奇巌城
    -
    ある夜、ジェーヴル伯爵の館に何者かが侵入した。狙いは伯爵の集めた美術品だった。犯人は撃たれ、負傷した。すぐに屋敷の出口は封鎖され、徹底的な捜索が加えられた。だが犯人の姿はどこにもなかった。これをルパンの犯行と断定したのは、天才的な少年探偵ボートルレだった。少年の鋭い推理が次第にルパンを追いつめてゆく…。追う者と追われる者、一片の古文書に記された暗号をめぐる、頭脳と頭脳の闘い! そして舞台は荒涼たるノルマンジーの海岸へ。そこには無気味な古城、奇巌城が…。ロマンの香りをゆたかに湛えた、ルパン・シリーズの最高傑作!
  • 影絵の町
    3.0
    ときめく恋――淋しい恋――情熱的な恋――せつない恋――〈おとこ〉と〈おんな〉。新たな〈恋〉のドラマが始まる時、夕闇という名の幕(ヴェール)は、静かに二人の姿を隠す……恋のドラマにあわせて、阿刀田高が奏でる恋の〈夜想曲(ノクターン)〉。今夜(こよい)の観客は、貴女ひとりです。
  • おれがあいつであいつがおれで
    3.9
    1巻506円 (税込)
    斉藤一夫は小学六年生。ある日クラスに斉藤一美という転校生がやってきた。なんと彼女は幼稚園で一緒だった、ちょっとやっかいな女の子。みんなの前で秘密をばらされたり、ちょっかい出されたりで弱った一夫は、ちょっと脅かしてやろうと「身がわり地蔵」の前で一美に体当たり。ところが二人ともでんぐりかえって気を失ってしまった。気がつくと、二人の体は完全に入れ替わっていた!!
  • 浮舟寺
    -
    結婚詐欺にあっても、心からは女を憎めず、怒れず、それどころか女の勝手気儘な大らかさを羨望する「浮舟寺」の稲次郎。燃えるような恋の道行には、なりうるはずもなく、何やら佗しいがほのぼのとしたアバンチュールに終わる「中年」の妻子もちの有川とハイミスの私の一泊旅行。――酸いも甘いも知りつくした中年男と女の、あいまい模糊とした愛情のありようを、上方芸人の世界や関西の商家を舞台に自由奔放なタッチで描く好短篇集。
  • 命ある限り
    3.3
    旭川で小さな雑貨店を切り盛りしていた一人の主婦が、新聞の懸賞小説に当選するや、生活の激変を体験する。次々に寄せられる祝福、巨額の賞金に対する周囲の様々な反応、多くの仕事の依頼、次作への重圧……。しかし、こうした体験を経てもなお変わることがなかったのは、信仰に対する深い思いと、献身的な愛を惜しまない夫への感謝の気持、そして人生の本質を静かに見つめる曇りのないまなざしだった。病との絶え間ない闘いなど、起伏に富んだデビューからの道のりを振りかえりながら、生きることの意味を問う、愛と感動の自伝長編!
  • ムッシュ・クラタ
    3.9
    戦前・戦後、新聞社のパリ特派員を勤め、フランス文化をこよなく愛して「ムッシュ・クラタ」と呼ばれた男。日本人の常識から逸脱した行動をとり、鼻持ちならないキザな奴と見られていた彼が、記者として赴いたフィリピンの戦場でしめしたダンディな強靱さを鮮やかに描いた表題作。ほかに夫婦の絆の裏表を鋭い人間観察で切り取った「晴着」「へんねし」「醜男」をおさめる中・短編集。
  • しぶちん
    3.4
    “しぶちん”とは大阪弁でケチン坊のことだが、ケチが陰にこもらない開放的な言い方である。19歳で伊勢の沢庵売りから大阪の材木問屋に奉公して財をなした山田万治郎は、“しぶまん”と呼ばれながらも、昭和初年に、商工会議所の議員に推薦される。大阪商人の金銭への執念を捉えた表題作の他、大阪富商の町、船場に憧れと執念をもやした女の一生を描く『船場狂い』など、全5編を収録する。
  • 家族場面
    3.5
    気がつけば、おれは石川五右衛門だった…。神出鬼没に時空を飛ぶ作家一家。読者を物語のブラックホールに突き落とし、ねじれた迷宮へと誘う表題作。被害者の遺族が死刑囚の刑を執行するという狂気の設定で、獄中で執筆し続けた囚人作家の断末魔を描く『天の一角』。長年の忍従に暴発した作家夫人の怒濤の糾弾を活写する法廷劇『妻の惑星』等、表現への熱い慟哭が刻まれた傑作7編。
  • 鬼の女房
    4.5
    王朝の夜は、一寸先も見えない漆黒の闇だった。その闇の中を、鬼は、御所の内に、橋のたもとに、北山に、時に天空を翔り、彼岸・此岸をも自在に往来し、わが物顔に徘徊した――。若く美しい人間の女房をもてあました、中年のユーモラスな鬼、当代随一の歌よみに挑んだ芸術鬼など、さまざまな鬼の姿を軽妙洒脱な語り口で描く、鬼ものがたり六話。
  • 雨の中に死ぬ
    2.5
    指名手配の強盗殺人犯を追っていた捜査一課の山崎刑事が何者かに腹を刺されて殺害された。ところが、雨上がりの路上に倒れていた山崎の死体の左手には何かを示すように三本の指が伸びていた……。(雨の中に死ぬ) 大都会の片隅に残された死者からのメッセージをテーマに描く表題作他、人間心理の奥底を照射し、意外な結末で贈る傑作オリジナル短編集!
  • いちにち8ミリの。
    5.0
    好きな美澄に会いたくて、1日8ミリずつうごく石と、その石と話のできる恋敵のペットの猿を描いた表題作。他2篇も、どこかにありそうで、どこにもなかったおとなの読む童話のような短編小説です。父・中島らもを超える物語の紡ぎ手の登場!
  • 【写真詩集】やがて今も忘れ去られる
    4.4
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 【写真詩集】私たちは進みます、あなたの愛を背にうけて、ふりかえらずに進みます、あなたに愛を返すため。人生は限りなく続く荒野か、希望あふれる海原か、だれかを想うその胸に、やさしくひびく写真詩集。
  • 駅前旅館
    3.6
    昭和30年代初頭、東京は上野駅前の団体旅館。子供のころから女中部屋で寝起きし、長じて番頭に納まった主人公が語る宿屋稼業の舞台裏。業界の符牒に始まり、お国による客の性質の違い、呼込みの手練手管……。美人おかみの飲み屋に集まる番頭仲間の奇妙な生態や、修学旅行の学生らが巻き起こす珍騒動を交えつつ、時代の波に飲み込まれていく老舗旅館の番頭たちの哀歓を描いた傑作ユーモア小説。
  • 岸辺の祭り
    -
    1巻506円 (税込)
    凄惨な戦闘、正月休戦の短い平和、米兵や村民たちの日常、日本人少年との美しい友情。南ヴェトナムにジャーナリストとして従軍した久瀬の鮮烈な体験を描く秀作「岸辺の祭り」。ヒトラーの貧しい美術学生時代を描いて人間の孤独の深淵を抉った初期の傑作「屋根裏の独白」。他に「一日の終りに」「兵士の報酬」「森と骨と人達」を収める。
  • 影の分岐
    -
    人の一生に影のごとくつきまとう犯罪への道。それは甘い誘惑の香りを漂わせ、絶えず誰かが踏みこんでくるのを待っている。いま、あなたが立ちどまった人生の分岐点。影の道へ進むかどうか、それを決めるのはあなただ!作家志望の小高省吾は、同人誌のなかま松江の素晴しい才能に瞳れていた。ある時、松江をそそのかした小高は彼の作品で文学賞に応募、見事入選を果してたちまち流行作家にのし上った。だが、松江の存在に悩む彼は……。問題作「文学賞殺人事件」ほか5篇を収めた、森村誠一の傑作短編集!
  • イチかバチか
    -
    「男の勝負は一生に一度か二度、どんとやることだけや」―南海製鋼社長・島千蔵は、新入社員の北野真一にいった。茶はぬるいのが経済的という徹底的合理主義者千蔵の一大計画、それは200億円の資金を予定する大工場の建設である。その工場を東三河市に誘致しようと画策する変り者市長太田原恭平。イチかバチかの大仕事をめぐる虚々実々の駆け引きをユーモラスに描く、傑作小説。
  • 田辺聖子の今昔物語
    4.1
    今は昔。いつのころか、一昨年のことだったか――。何だか怪しいなとは思ったが、不思議でならなんだが――。こんな話があった。ほんとの話だ。見果てぬ夢の恋、雨宿りのはかない契り、愛嬌のある欲ボケ、猿の才覚話――。貧しい若者、ならびなき風流男、帝、生霊、動物、遊芸人、美女と主人公は様々だ。徹底して滑稽で、哀切で、怪(こわ)くて、ロマンティックな29話を語り伝える田辺流今昔物語。
  • 零からの栄光
    4.0
    〈グラマン・ヘルキャット〉に太刀打ちできる戦闘機がほしい! 緒戦以来、「零(ゼロ)戦」が日本の戦闘機の花形であったが、敵にヘルキャットが出現すると形勢逆転、「零戦」は餌食にされるばかりだった。だが、おそまきながら、この日本戦闘機部隊の悲願にようやく新型機の「紫電改」が応えようとしていた。「川西航空機」は、戦闘機メーカーとしては通りが悪い田舎会社であった。社長の川西竜三も、さしたる飛行機好きでもなかった。それがなぜ、当時としては、最高性能の戦闘機がつくれたのだろうか。軍部のいわれのない圧力をはねのけ、血の滲みでるような苦闘と熱意で新型機をつくりだした“飛行機にとり憑かれた男たち”の不屈のドラマ!
  • 少年狩り 野田秀樹戯曲集1
    -
    登場人物――西田幾多郎、護良(もりなが)親王、サン・テグジュペリ、少年1・2・3、あんあん、のんの、立の木リサ、その他――をいちいち説明してもはじまらない。南北朝時代から600年をへだてた世紀末、すなわち現代の、たとえば「人に刃物を持たせると危ない」ような暑い夜、愛の絆などが問題になるのではけっしてなく、「うつつの世は夢、夜の夢こそまこと」である現世において、「月の光と鏡のいたずら」によって事が起き、鎮まり、ついに「鏡の海の果ては、行く先々で千夜一夜」という言葉で果てる、烈しさのあまり人の手を焼く、華麗不遜な、失なわれゆくものの物語。
  • 虚構の空路
    5.0
    小田原付近を通過中のひかり号車内で、検札の車掌が若い女の死体を発見!死因は青酸中毒で、目撃者の証言から、東京駅発車寸前に降りた男の犯行との見方が強まった。そして三か月後、こんどは都内のホテルで男の刺殺体が。2つの事件の重大な共通点が捜査本部を緊張させた。被害者は二人とも同じ会社の社員だったのだ。ただちに綿密な聞き込みが行われ、その結果、ある海外旅行社の営業部長が重要容疑者として浮かび上がった。だが彼には、両事件ともに完璧なアリバイがあった。巧みなストーリィの展開と意表をつくトリック、著者会心の本格長編推理小説。
  • 延命の負債
    3.0
    “死にたくない。商売がこんな大事なときに死んでも死にきれない”――町場の印刷工場の主・村野末吉は、病院のベッドで思った。苦労を重ね続けた人生が、ようやく好転しかけていた。彼は意を決して、縁者から多額の借金をし、最上等の個室に入り、心臓手術の担当医にも十分な謝礼をした。そして無事、退院を果せたが……。表題作ほか「湖畔の人」「ひとり旅」「九十九里浜」「賞」「春の命」など、人生の皮肉、孤独をテーマとする初期作品12編を収録。
  • 鮮やかな男
    -
    男にとって企業とは何か? 自分の能力を発揮し、経済生活を支える場、いわば男の全生活は企業と結びついている。――大銀行にパワー・エリートとして勤める竹原のところに組合運動でクビになった友人が訪れた時から何かが狂いはじめた……! 有能で会社のため全能力を注いでいる男が、ある日、企業との関係を誤まり、その生活ばかりか、性格まで変わってしまうケースを描いた表題作他、企業で峻烈に生きる男達を見事にとらえた傑作作品群!
  • ルパンの告白
    -
    本書は『怪盗ルパン』につぐ、ルブランの第二作目の短編集である。第一作をしのぐという高い評価を得ているだけあって、文字どおり粒よりの傑作ぞろいである。各篇ともトリックに工夫がこらされ、推理小説の醍醐味を満喫させてくれる。ルパンが暗号をみごとに解いてみせる「太陽のたわむれ」、軽妙なオチがたのしい「結婚指輪」、幻想的な導入部の「影の指図」、絶体絶命の危地に追いこまれたルパン「地獄の罠」、そして名作の呼び声高い「赤い絹のストール」、そのほかに「白鳥のような首をもつエディット」「麦わらの茎」「ルパンの結婚」の8篇を収録する。
  • 地の指 上
    -
    1~2巻506~550円 (税込)
    深夜の路上に毒殺死体で発見された元新聞記者島田は、「シュウ」と記する不思議な紙片を持っていた。タクシー運転手三上は、その死体を目撃した折の客の挙動に不審を抱き、客が都厚生局職員山中であることを突き止めた。そして山中はまた、不二野精神病院事務長飯田、都議岩村ともつながりを持つことを知った。(三人の関係に何かがある!)と三上は思った。……病院経営をめぐる黒い霧と謎の連続殺人を描く、巨匠の長編社会派推理。
  • ワンス・ア・イヤー 私はいかに傷つき、いかに戦ったか
    3.8
    もうこの男の手の届かないところにいる――このフレーズをつぶやくまでに、私はどれほど傷つき、戦ってきたことか。就職が決まらなかった女の子がベストセラー作家にステップ・アップしていく道のりは、身を切るような恋の出会いと別れの日々でもあった。23歳から36歳まで、その人生を決定づける大切な14年間の、愛と葛藤のすべてを一年ごとに描き切った、画期的自伝長編小説。
  • ローマの休日 小説 ロマンチック洋画劇場
    4.0
    平凡で色あせた日常に光のように射し込んで来た「恋」に酔う18歳の2人は、やがておとずれる中年期や倦怠のことなど思いもよらないことだった――「いつも2人で」。結婚目前の私、見合いを始める愛子。いくつもの諦めを胸にアトランタへと旅立った――「風と共に去りぬ」。その他「ローマの休日」「卒業」など12の名画の名場面、名セリフをモチーフにした、映画より心おどらせ、胸つまらせる、私たちの恋愛小説集。
  • バルセロナの休日
    -
    パリでバレエ留学中の安奈は、ある日窃盗事件に巻き込まれる。忌まわしいその体験が甘美に思い出されるのは、その時に出会った美しい男の黒い瞳のせいだ。もう一度会いたい。安奈は彼から手渡された「鍵」を手がかりに、パリからバルセロナへ旅立つ――。光と闇に彩られた「カタロニア」を舞台にくり拡げられる恋と冒険と希望の物語。極上の、ラブサスペンス!
  • 薔薇の殺人
    3.0
    浅見光彦の遠縁の大学生・聡が女子高生誘拐の嫌疑をかけられた。一目惚れして家まで後をつけていたという彼に呆れる浅見だが、濡れ衣を晴らそうと行方不明になった文絵の家を訪れる。そこに届いた脅迫状には、文絵の出生の秘密をばらすという内容があった。文絵は人気俳優・三神洋と「宝塚」出身の女優・鳥越美春との秘めやかな愛の結晶だったのだ。数日後、文絵が遺体で発見され、浅見は真相を追って乙女の都・宝塚へ向かう。
  • 罪深き緑の夏
    4.1
    12年前の夏、“蔦屋敷”と呼ばれる熱海の洋館で、淳は白いドレスの少女百合に出会った。幼い少年の日の、謎めいてエキゾチックな邸での記憶そのまま、今、淳の目の前に百合が居る。兄の婚約者として、事故で動かなくなった体を横たえ眠っている――。画廊の火災を発端に度重なる災厄、死までも華麗な舞台装置とし、耽美な物語世界を独得な個性で描く。森村誠一氏、夏樹静子氏絶賛の、横溝賞受賞女流の長編ミステリー。
  • 失恋カレンダー
    3.0
    正月帰省や卒業や新学期、バレンタインとか夏休みとかXマスとか。女の子の年中行事は、恋がめばえたり、深まったりしそうな絶好のチャンス。だけど、あれこれ期待する胸のうちとはうらはらに、いつもその機が裏目に出て、恋がぎくしゃくしてしまう……。移りゆく四季の情景をバックに、恋する娘心の機微と哀楽をたくみに描いた12ヶ月の失恋物語。
  • 霧の旗
    4.3
    柳田桐子は、強盗殺人事件の犯人にされた兄の弁護を依頼に、著名な大塚弁護士を訪ねて九州から上京する。が、依頼をことわられる。偶然、桐子を知るジャーナリスト阿部はこの事件に興味をもつが、桐子の兄は獄死する。上京し、酒場の女になった彼女の心は、大塚への復讐に燃える。巨匠が見事に描きあげた復讐譚。

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