田内志文のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
説明不要なくらい名作と名高いディストピア小説である。もう1つの名作アトウッド『侍女の物語』が面白かったのでこちらも読んでみた。主人公が体制中の反逆者なので設定だけなら『誓願』が近いかもしれない。
本書は1949年に刊行されている。当時は全く架空世界だったろうが、現代から見ればかなり現実味を帯びた世界が描かれている。街中に監視カメラがあり、マイナンバーにより口座や病歴などあらゆる情報が名寄せできる環境が整っていて、SNSやAI動画による新たな「真実」が途方もない勢いで出現し、本当に歴史が修正されている現代人からすると、ディストピア小説というより、やや暗めの近未来予想という印象である。
登場人物がひとりの人間に見えるかという点でいえば、圧倒的にアトウッドの2作が勝る。アトウッドが主役を一人称で舞台に置いたのに対し、本書は三人称の視点で語られることもあり、主人公ウィンストンも恋人ジュリアも物語のなかで都合よく振舞う著者の代弁者という感じがしなくもない。また、作中の本の内容が長々と引用(?)される部分があるが、架空の世界の本を盗み見ているというより、オーウェルが考えた1984の設定資料を読んでいる気分になった。
本書の中で「支配の方法は分かる(知っている)がそこまでして支配する理由が分からない」と主人公が考えるシーンがある。私も常々、古代ローマやモンゴルの支配者たち、プーチンやネタニヤフやトランプや、公文書を改竄しデマをまき散らすような日本の政治家は、いったい何のためにその地位にしがみつき、何のためにそんな真似をしているのかと不思議に思うことがあったので、何かしら回答が提示されることを期待して読みすすめたが、示されたのはなんということはない回答だった。だが、それが真実なのかもしれない。困っている人に手を差し伸べる者が、息をするように他意なく自然とそうするように、征服し、支配する者は当然の権利のように、生まれながらの本能のように、特に深い理由も目的意識もなく他人に対してそのように振舞うのかもしれない。たまったものではない。
ウィンストンは最終的に反抗心も疑いも捨て、党の支配者ビッグブラザーを心から愛するようになる。その様に全体主義への批判や皮肉というより、宗教的な崇高さを感じた。恐怖と暴力をもって行動も思考も変容させる圧倒的な支配者を愛するというのは、神への信仰そのものである。地球が太陽のまわりをまわり、物理法則に支配された外部の世界はまぼろしであり、意思によって変えられると、体制側のオブライエンはいう。外の世界に抗おうともがいても、結局は受け入れるほかない。過酷な状況もとらえ方次第で歓喜にみちた世界になる。圧倒的な存在に屈するならばそれを愛そうというのは、そんな人間に備わった精神の機構だし、強さでもあるのだろう。
ただし、ビッグブラザーは神ではなく、党も不変のものでもない。オブライエンは自らを司祭だと言ったが、神でもないものに屈する必要はないのだ。ただ立ち上がり、蠅を追い払うウマのように身を震わせて、ビッグブラザーを打倒しよう。
フランス革命は粗削りで犠牲も過大だったけど、人類にとって大きな一槌だったのだなと思った。われわれには力があり、何者をも打倒できるのだ。 -
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ネタバレ最初の100ページくらいは結構頑張って読んだ…。
デイヴィッドを取り巻く環境についての説明パートがかなり退屈だった。ただ、その後の不思議な世界での出来事にデイヴィッドの置かれている環境が深く関わっているから必要なパートではある。
結果的に、頑張って読み進めて良かったなと思う。
異世界で初めてデイヴィッドに優しくしてくれ、ループたちから守ってくれる木こりがすごく頼もしく、かっこよかった。
ねじくれ男が実は味方のパターンかと思って読み進めていたけれど、実は悪役だった。
王様が怖いと思うものが狼で、その恐怖が膨れ上がることでループが増えているという構造が面白かった。
後半は冒険物語のような感じで比較的楽に読み進められたけど、そもそもの世界観を理解することが難しく、情景を思い浮かべることも難しく、久しぶりの読書に選ぶ本ではなかった。
いつかリベンジしたい。 -
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「1984」にハマり2作目となるオーウェルの作品。
1984は読み進めていく中で近代史、現代史に疎い自分でも世界について、社会について感じること、連想させられること、考えさせられることがあったが、
今作は寓話として描かれている分、自分が勤める会社という小さな世界に当てはまる部分が多く感じた。
(この作品を読んで連想する世界が自分の勤める会社ということは…(汗)
しかしこの作品、そして収録されている著者の生い立ち、境遇、何故書くのか、何を伝えたいのかを知ることのできる随筆を併せて読むことで、このあとあの超傑作「1984」に続いていくのだなと感じられる作品だった。
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Posted by ブクログ
「君たちはどう生きるか」の原案になったかもしれないという噂のようなものを聞いて。少年デイヴィッドの中にある数多の物語と長くない人生の中で得た実体験が混ざり合い出来上がったグロテスクな世界観にデイヴィッド本人が迷い込み、生々しい冒険を経て道を切り開いていく。その世界は確かに何者かによって作られた場所でありながら、常に現れるかもしれない新たな他の誰かによって姿や理を変えられる世界でもあった。何者かの意思により迷い込んだデイヴィッド自身が、導いた本人の全く意図しない変化をその世界に巻き起こす。この物語、訳者がイギリスの本屋で偶然に出会い、惚れ込んで自ら企画を出版社に持ち込み日本語訳の出版にこぎつけただけあって、描写へのこだわりが素晴らしい。
「彼女はローズであっても、ローズではありません。夜明けの約束を持たぬ夜であり、光の希望を持たぬ闇なのです。」
こんなふうに、ふと意識を奪われてしまうような一節がところどころにある本だった。
これを日本語で読める喜びを噛み締めてしまう一作。
おすすめ。
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Posted by ブクログ
久しぶりに児童書を読んだ!先月はずっとオーディブルを聞いていたので、読むのに時間がかかってしまったけど、児童書特有?の薄暗い不気味さがずっと漂っていて、めちゃくちゃ懐かしい気持ちになった。
児童書だよね?本当に子供向け?と疑いたくなるくらい、思ってたより割と残酷な物語だったけど、ここまで空想に満ちた話を読むのが久々だったから、これはこれで面白く読めたかも。話に入り込むのになかなか時間はかかったけど、最後の方はデイヴィッドが見違えるほど成長していて頼もしく、間を空けずに一気に読むことができた。
最後のシーンがとてもよかったな。誰にでもその人だけの天国がある。
p.432
地上で送る人生は一瞬にすぎず、だから、人間は誰でも自分の天国を夢に描くのです。
失われしすべてのものを再び見つけたデイヴィッドは、暗闇の中、瞼をそっと閉じました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレもっと爽快感のある動物VS人間の話だと思っていたら、想像よりも社会風刺のきいた物語だった。
悪知恵の働く一部の層とその親類が一方的に豊かになっていき、その他の愚かな層が搾取され続けるという形は、独裁的な国家にありがちな物だなと感じた。1940年代が初出らしいのだが、当時からそういった人間の醜い姿は変わっていないのだなと思った。
本文だけでだいぶお腹いっぱいになってしまい、後半に載っていた「出版の自由」に関しては初めの数ページしか読めていないのだが、当時この話を刊行するにあたって「ロシア(ソビエト)すぎる。」と跳ね返されたとあった。
ソ連がどうなったかは歴史の先を生きている私たちが1番良く知っているが、ふと、今の日本がその道筋の途中にいないと断言できるのだろうか?と不安になった。
動物農場がはじめ少ない違和感から変わっていきすっかり元の荘園農場に戻ったように(もしかしたら元より悪いかも)、これから先日本が同じことにならないとは断言できないなと感じた。違和感の種を感じたら悪知恵の働く者に言いくるめられず、その種を摘み取っていきたい。