田内志文のレビュー一覧
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バリツ(Baritsu)。私を含めシャーロッキアンなら誰もが知っている日本の武術。かつてライヘンバッハの滝で宿敵モリアーティ教授に対峙したホームズの命を救った謎の武術である。
バリツとは何なのか、長らく論争が交わされてきた。曰く、コナン・ドイルの創作である。曰く、日本語の武術(bujutsu)の誤記である等々…。
それらの中で最も有力な説の一つが、英国人バートン=ライトが編み出した護身術パーディツ(Bartitsu)ではないかというもの。バートン=ライトは日本で柔術を学び、帰国して後、1899年に自身の名と柔術を組み合わせて命名した護身術を発表した。これをドイル(ないしホームズ)が知ったのではないかというのである。
本書はそのバートン=ライトが物したパーディツの指南書である。当時の写真がそのまま使用される等、実に興味深い。柔術をベースにした体術の他、紳士の国だけにステッキを使った護身術もある。いかに強く見せるか等という付録もあって面白い。
ただ、タイトルは完全なミスリードだろう。バリツの研究書かと思って手に取ると大いに肩透かしを喰らうことになる。 -
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ネタバレ自分で作ったジンクスで母親を病死しないよう繋ぎ止めようとするところ、自分もすぐジンクスを自身に課す子供だったから、その強迫観念が思考を支配する感覚が久々に思い出された。
まだ子供で、というだけでなく、多分自分の考えにとらわれてしまうタイプもあり、物事を冷静に客観的に考えられない主人公が、自分を信じてくれる木こりやローランドと出会い、広い視野を得ていくところ、成長を追えて良かった。
けど、それまでの王様には何故木こりやローランドがいなかったの?比較してしまって、普遍的な物語としては少し腑に落ちなかった。
アオサギが部屋にいるところで、映画「君たちはどう生きるか」のアオサギの意味がやっと分かった。この本からインスパイアされた映画だったのね。これまで吉野さんの本が原作だと思ってたので、何故この本が原作でこの映画に???となっていたので、その点は腑に落ちた。 -
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2025年最後の読書は森の生活になりそうです。良くも悪くもイメージや予想をひっくり返された本。タイトルからくる私の勝手なイメージ。静かに森の中で過ごす生活が書かれていると思っていた。確かに、静かに森の中で生活しているのですが、まぁ、賑やかというか、怒れるソローであり、全然静かな本ではなかった!批判的であり、物申す文章が多め。だけど、自然描写については細かく丁寧。自然への畏怖、憧れ、尊敬、感謝を十分に感じる。個人的にはアリについて書かれている所が好き。こんなに細かい、優しいけれども客観的な視点で地面を這うアリを見ていたのか。驚いたのは、この頃から動物愛護協会があると知ったこと。狩猟をする一方で、動物愛護。そして、肉食を極力していないことも書かれており、菜食主義やヴィーガンにもつながる思想なのかなと思った。とにかく、予想と違って驚くことばかりの読書体験だった。本は読んでみないと分からない。読んだつもり、知ってるつもりはいけないなと強く感じた読書時間になりました。
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事前情報なく読む。
これは宮崎駿さんの「君たちはどう生きるか」のモチーフになった本?。映画は説教臭いタイトルで、面白くなさそう(失礼すぎ)だったので見てないのですが、この本を読んだ今は俄然気になってます。
序盤は大好きな母を失った後の新しい家族の形に馴染めない男の子のモヤモヤ。この坊やがある事をきっかけに異世界へ。そこからは一気にファンタジーの世界へ。異世界に入ってからは、誰もが知ってるグリム童話が私たちが知ってる内容とはかなり解離したどす黒い形で表現され、いい意味での大きな違和感あり。ハイブリッド生物がでてくるのは最近の物語だなぁと思ったり(でも基本は馬、剣、城などのファンタジー)。グロシーンもあったりしてどの世代に読ませたいのだろうと思ったり。
少年の冒険、成長譚なんだけど、脇を固める大人達が彼の成長を近く遠くでしっかりフォローしていてハラハラドキドキ、ラストは疾走感マックスで最後まで楽しめます!映画見たい。
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英国人作家の寓話集で、イギリスで絶滅した熊に捧げる8篇からなります。個人的に英国文学は不案内ですが、いかにもな?皮肉とユーモアが満載の大人向けの短編集と感じました。
興味をもち手にする方への助言です。訳者の田内さんのあとがきに、本書に限って本編より先に読んでいただきたい、とありました。えー、読んじゃいましたよー! 仕方ありません…トホホ。イギリスの熊史を把握すると理解が進むんですね。
凶暴な熊と人間の長きに亘る格闘の結果…と勝手なイメージは、見事に裏切られました。8篇全て、熊たちの悲哀に満ちた声が聞こえてくるようです。
この時代の熊が、いかに人間に振り回されていたかが解ります。勝手に畏怖・崇拝され、道楽の対象にされ、虐げらるなど、酷い扱いを受けた事実が淡々と綴られます。
8篇がつながっているわけではありませんが、著者の熊への贖罪と哀悼の念という点で、どこか共鳴し合っているような不思議な印象をもちました。
また、階級社会につながる側面もあり、下級労働者や身寄りのない老人などへの冷遇が、熊の扱いの関係と似ているようです。
要所に挟まれる挿絵もなかなか味わい深く、独特な雰囲気が本書によく合い、私たちの想像の幅を広げてくれる気がしました。 -
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海外短編を紹介するポットキャスト<翻訳文学試食会>で取り上げられた本。
最初の2,3短編を読んで、この短編集の題名『アメリカへようこそ』が、この短編集のテーマなのかなあと思っていたら、短編の中の一つの題名でしたね。
しかし短編集の全てが、今この現実の社会の出来事であるように書きながら、さり気なく、しかし確実に読者に目に付くように現実社会にはない用語が出てきます。それにより、現実の社会の問題点を目立たせて「さあ、読者の皆さん、考えましょう」って感じです。そのためこの短編集全体的が「アメリカってこんな社会ですよ。ようこそ、真実のアメリカへ。」って印象を受けました。
しかし…正直言ってそこまで惹き込まれない…(-_-;)。巻末のあとがきでは「寓話的」って言っていますが、寓話にしてはわかり易すぎるというか、エンタメっぽいというか、作者は問題定義だけして、小説の社会に対しても読者に対しても皮肉目線で他人事なんだよなあ…。
私がこの短編集を★3つにした理由として、小説の表現方法として「羅列」が多くて一本調子、問題定義がわかり易すぎる、その問題定義に対して優しさというか社会を良くしたいって感じがしない他人事感がある、たまに「妙にこだわっているようなこの設定必要?」というものがある…、うーん、要するに私には合わないだけです。ごめんなさい…(-_-;)
<翻訳文学試食会>の課題作品はこちら
『儀式』
生産性のなくなった老人は親族に「儀式」の招待状を出す。この社会は社会の役に立たなくなる70歳目安で自●するのだ。だがもうその年令を超えたオーソン老人は「わしは儀式はしない」と言っている。彼の親族はもちろん、その下の代の親族も亡くなっているが、オーソン伯父さんだけは生きている。この老人は、親族が引き受けざるを得ない負の相続品なのだ。
==老人問題が課題ですね。小説内では、事故や病気などの死は誰にも心の準備ができない突然のことであり、それに対して70歳での儀式はお別れも言えて社会の役にも立つ、選ばれた者だけの栄誉って扱いです。
「姥捨て山」がテーマの物語はたくさんありますが、正直言ってその中でも真剣味がないっていうのか…。
その他収録短編。
『売り言葉』
中高年の兄弟で、兄は「幽霊語」を作り、弟は死語を研究している。
幽霊語とは、国語辞書盗用避けのために載せる架空の定義を持つ架空の言葉という造語のようです。この物語ではこの中高年兄弟が自分の姪っ子をいじめる中学生男子をギャフンと言わせてやろう事柄を通して「幽霊語」「死語」を使って「現在ある言葉よりこのほうが分かりやすいよね」って書き方をしています。小説としてのオチというかこの兄弟が見言うだけで行動が伴わってないので、結局は言葉遊びに興じて現実生きられないのかな…(-_-;)
『変転』
要するに、大切な家族が「今の自分は本当じゃない。本当の姿に戻るんだ」と言うけれど、そってが道徳的に受け入れられない場合に、それでも家族は本人の「自分らしさ」を受け入れるの?ってお話。
この話は、息子を「失う」ことになる母親の苦しさが身に迫りました。でも息子本人は今の世界は苦しいんだよ、ってこと。
『終身刑』
刑務所や死刑などの刑罰は廃止された。その代わりに罪に応じて自分に関する記憶を消されるようになった。軽い詐欺とかなら1年って感じ。
ウオッシュは生まれてからの自分に関する記憶を消された。自分の家族ってところに戻る。最初は様子を伺うような家族、自分の中に沸き起こる何かを欲する気持ちを持ちながら、彼は真面目に働き、家族とも馴染むようになる。だがたまに見せる家族の不安の表情、そして自分の中から沸き起こるこの衝動は…。
==犯罪者となる生まれ育ち経験や、犯罪を犯す気持ちの記憶を消されて、ゼロから再出発するとしたら、人間は変わるのだろうか?それともやはり同じような犯罪を犯してしまうのか?
『楽園の凶日』
男尊女卑だ、いや今の社会は女尊男卑だ、と言われるけれど、「では社会生活を送るのは女性だけで、男性は収容所で管理したらどうなる?」って短編。
この短編数全体的に、テーマがわかり易すぎるっていうか、問題定義だけで終わってるんだよなあ。
『女王陛下の告白』
テーマは物欲とか、ミニマリストとか。
物を持つことが恥ずかしいと言われる社会で、物欲がある人たちが、周りから好奇と軽蔑の目に晒されながらも、物への執着を捨てられないお話。
この短編集ではいくつか「妙にこだわっているようなこの設定必要?」というものがあるんですが、ここだとヒロインの母親が盲目者だ、ってことはなにか意味があるんだろうか。見えないけど物を持つことを執着するってこと?
『スポンサー』
一般人もスポンサーを持ってお金を出してもらう社会。短編でも具体的な企業名とか商品名を並べて、それらに書評登録のRマークをつけるという工夫がされています。
『幸せな大家族』
子供は社会で育てる、人類みんな家族!みたいな。
赤ちゃんが生まれたら保育所、学生寮で育ち、社会に出てゆく。「いや、自分の家族は自分と配偶者と子供だ」と考える一部の過激派は田舎で隠れ住み、警察に見つかったら子供たちは施設に保護される。そんな社会の恩恵をどっぷり受けた女性が、自分が生んだ赤ちゃんを保育所から盗み出して自分の手で育てたいと願うお話。
小説として、担当刑事二人の風貌を拘って描写してるんだけど、小説としてなにか意味があるのか(-_-;)?
『出現』
彼らはある時突然出現した。彼らは勝手に住み着き、元からいる住民の仕事を奪い、家族まで作っている。なぜここにいるんだ、元の世界に帰るか、彼らの滞在が許されている他の州に行け!なに?「ここが僕たちの世界だ、家には家族もいるんだ」って?生意気な。
==移民問題ですね。…ということがわかり易すぎて、それなら「出現」なんて用語作らなくてもよくないか?って思っちゃう。
『魂の争奪戦』
魂を持たない赤ちゃんが生まれるようになり、ある団体が死ぬことを望まれている病人とか、動物を生贄として捧げて、その魂を赤ちゃんに捧げれば良いんじゃない?という産院を作った。魂が他の人に移ることがあるのだろうか?それなら親子でも全く違う事があることの説明がつくではないか。
グロテスク描写、スプラッタ描写が続く(-_-;) 魂を望みすぎて暴走する母親と、どんな魂を持っていても息子を愛し続けることを確信する母親の対。私はこのレビューで作者の文句を散々言っていますが、ところどころ感情に訴える描写もあるんだよなあ。
『ツアー』
ものすごいセックスをして世界が変わって見えた(-_-;)???
『アメリカへようこそ』
アメリカなんてうんざり!独立しよう!僕たちはこの小さな独立国家の名前に誇りを込めて「アメリカ」と名付けた。
==国家って何?自分たちが国家を作ることって?法律は?軍は?そして軽蔑していた以前の国家とどう違うの?自分たちが望んだ自由って何?理想と現実って?
意見が違っても同じ国を作る国民の団結と言うか心のつながりもちょっとは書かれてたけど。
『逆回転』
現実は三次元だけど、僕は四次元に生きる人間なんだ。四次元人類には、過去とか未来とか一方通行ではなく、全てを一度に見るんだ。
==この社会は人間は「生まれる」のではなくて、墓から掘り出されたり、打ち上げられたりどっかから出現したりするらしい。死んだ人間が生き返るので四次元になったのか?そんな四次元と三次元の人々が共に暮すすれ違いとか、でも小説の最後では「人々は三次元に戻りました」ってこと(-_-;)? -
Posted by ブクログ
ネタバレとある小説にソローの名前と著書の名前が出てきて、気になったので読んだ。思想家でもあったので理屈っぽいし、現代にも残る社会の仕組みが嫌だったからかかなり皮肉っぽい。ただ、自然の中で生きているはずの人類が社会制度や更なる欲に振り回されて「らしさ」なく人生を生きているっていう考えはなるほどなと思う。それはSNSが発達し、ソローが生きた当時より欲が強くなってる現代なら尚更。ソローみたいな生活は無理だけど、一度立ち止まって自然を観察して考えて気づきを得る(視野を広くする)のは必要だよなぁと思う。
ウォールデン湖ってどんな感じだろうとネットで調べると、どうやら観光客や遊泳客による汚染、スポーツフィッシングのために湖に住む在来種を一掃し外来種を放ったという数年前に書かれた記事が出てきた。今がどこまで変わったかはわからないけれど、この本を読んでからだとこの記事は考えさせられるものがある。