田内志文のレビュー一覧
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ディストピア小説ととして有名なお話
原作は1949年に刊行
そして作者の命日が1950年1月21日(46歳没)
作者は、数十年後に世界がこんな風になっていると思っていたのかいなかったのか……
執筆された当時、世界はアメリカとソ連の二大勢力が対立する冷戦へと突入していた時期
ビッグ・ブラザーのモデルはソ連のスターリンなのでしょうね
東側諸国の全体主義の脅威に対する警鐘という意味合いをどうしても読み取ってしまう
作中の世界の現状
オセアニア、ユーラシア、イースタシアの三つの大国による戦争が起こっていると思われる
オセアニアの旧イギリスに住む党員は、テレスクリーンと呼ばれるモニタに党のプロパガンダ映像が常に流れ、内蔵されているマイクやカメラで常に監視されている生活
主人公のウィンストン・スミスは、党の発表した情報と現実の齟齬に対して、過去の記録を改竄する事で整合性を保つ省庁に勤務している
そんな生活の中、禁止されている日記を記録として残そうとしているところから物語は始まる
公に手に入れられる情報は過去に遡って改竄させられたもの
何が事実で真実かがまったくわからない社会
既存の言語は、ニュースピークと呼ばれる言語に置き換えられつつある
不適切な単語や不要な単語を排除し、簡略化した言語
人は存在しない言葉ではその事について考える事はできず、言語により思考の枠を決められている
ダブルシンク(二重思考)と呼ばれる、「矛盾した2つの信念を同時に持ち、同時に受け入れる」という思考能力がオセアニア国民には要求されている
二分間憎悪という、毎日仕事を中断してホールに集まり、大きなテレスクリーンの前で、党と人民の敵に対してありったけの憎悪を見せなければならない日課が課せられている
もうこの設定だけでもディストピア小説とわかる
そんな社会でもレジスタンスのような存在が噂されているが、実在するかは不明
また同じく、ビッグ・ブラザーの存在も確かではない
主人公のウィンストン・スミス
日々の生活に不満があるのかないのか
過去に目にした一枚の写真が、彼の党への不審感の目覚め
読者としては、いっそのこと長いものには巻かれろ的な生き方をした方が楽に生きられるのにと思ってしまう
でも、それこそが全体主義の狙いなのですけどね
ジュリアはオブライエンの手先の可能性がある
拷問を受けたような形跡はあるだろうか?
ウィンストンに近づいたタイミングも怪しい
政治的な思想もないのが怪しいけど、でも人を騙す目的があるとしたら、その辺まむしろ作り込んだ設定で演じそうかな
まぁだとしても、ウィンストンは党が禁止している恋愛や性愛によるハニートラップに引っかかってる時点で反体制的な人物ではある
後半、三国の戦争状態の真実(?)がわかるあたり、ちょっと恐ろしい
こんな社会なので、権力というものは他人よりも多くを得たい
でも、その権力は何かの為の権力ではなく、権力の為の権力という構造になっているあたりがエグい
それでもオブライエンはそこそこいい暮らしをしてるように見えるし
純粋に権力のためだけの権力でもない気がするけどね
同じくディストピア小説として有名な「華氏451度」(レイ・ブラッドベリ)では、過去の文書の改竄まで行っているのかは不明だけど
不都合な書物は焼いている
もしかして、1984のような世界の前段階なのかもしれないなぁ
他の人も言及している通り、作中のような状況が現実でも起こっている
監視カメラの普及や、SNS上での言論統制(言葉狩り)
直接的な単語が規制されても、スラングで表現できてしまうので、ここまでは行っていないけど
それでも、作中の色々な事がこの時代になって顕在化しているのは恐ろしい事ではある
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ディストピア小説の最高傑作。圧倒的リーダビリティの新訳版!解説・内田樹
1984年、世界は〈オセアニア〉〈ユーラシア〉〈イースタシア〉という3つの国に分割統治されていた。オセアニアは、ビッグ・ブラザー率いる一党独裁制。市中に「ビッグ・ブラザーは見ている」と書かれたポスターが張られ、国民はテレスクリーンと呼ばれる装置で24時間監視されていた。党員のウィンストン・スミスは、この絶対的統治に疑念を抱き、体制の転覆をもくろむ〈ブラザー連合〉に興味を持ちはじめていた。一方、美しい党員ジュリアと親密になり、隠れ家でひそかに逢瀬を重ねるようになる。つかの間、自由と生きる喜びを噛みしめるふたり。しかし、そこには、冷酷で絶望的な罠がしかけられていたのだった――。
全体主義が支配する近未来社会の恐怖を描いた本作品が、1949年に発表されるや、当時の東西冷戦が進む世界情勢を反映し、西側諸国で爆発的な支持を得た。1998年「英語で書かれた20世紀の小説ベスト100」に、2002年には「史上最高の文学100」に選出され、その後も、思想・芸術など数多くの分野で多大な影響を与えつづけている。
解説・内田樹
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Posted by ブクログ
罪を被る熊、下水道の掃除をする熊、潜水夫の熊など、イギリスの社会で熊がどうしていなくなったのかをユーモラスに描く短編集。
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イギリスにはクマはいない。はるか昔に狩り尽くしたから。という事実を知っていて、それをどう表現するものなのか、という好奇心で読んだのだけど、本当に面白かった。熊を労働階級の人々に重ねて、その過酷な環境を描く社会風刺もすごく効いている。これらがユーモアを交えて描かれていて、とても面白く読めた。
特に作者が熊(社会的地位の低い人々)に対してシンパシーを持っていることがよく分かって、共感できるお話だった。訳者解説にはイギリスのクマの絶滅事情も書かれていて、社会定期背景と重ねながら読むととても味わい深い。他の著書も読んでみたくなった。 -
Posted by ブクログ
どの短編も奇妙で、ちょっとまぬけで
ちょっと残酷で、ちょっとワクワクして、
とにかくおもしろかった。
中でも蝶の修理屋さんの小道具を手に入れた少年の話しは、ワクワク感がすごかった。
蝶のコレクションを見ると、美しいのだけれど、
これほどの蝶を殺してミイラにしているかと、
思うと、なにか違うんじゃないかと思う気持ちは
よくわかるし、そう思ってもきた。
少年の努力と思いが報われた瞬間は、もうたまらなくスッキリとして、ほっこりとして、嬉しくなった。
それに火星人がきたと大騒ぎになる子供たちの話し。
これは楽しかった。常になにかに飢えて、冒険をしたくなるお年頃。つまらない日常が一瞬にして
ワクワクだらけの非日常になる。
それに対する大人たちの対応もすごかった。
ことに校長先生のアイデアは脱帽。
子供たちのワクワクをつぶさずに、本当に上手に収束させている。
こんな大人ばかりだったら、子供たちは、のびのびと素敵な成長を遂げることでしょう。
よい読書時間となりました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ1984
政治小説としての完成度もさることながら、感情や自然も鮮やかに描き出す表現力にも驚かされた
世界は革命を経て中産階級がブルジョワジーににるという構造を何度も繰り返し、独裁も民主主義も封建制も長続きはしないし、人の生には限りがある
なので、ビッグブラザーという不滅の概念を作り出して寿命から逃れ、人々の記憶を外部にも内部にも残せぬようにし、ニュースピークという思考を狭める言語を開発することによって革命を不可能にする
それでも科学技術は失わぬように、人々には二重思考という正しいことを知りながら次の瞬間には間違ったことを辛抱できるような思考法を身につける
世界は常にパネルと個人と家族によって監視されていて、型からはずれた言動をする人は皆’愛上省"におくられる超監視社会
こんなディストピアに生まれた主人公が、日記を購入してビッグブラザーを貶すという思想犯罪を犯すところから始まる
疑心暗鬼と恐怖と期待を感じながら、同胞と敵を探す
最初は敵だと思っていた党へ献身的な女ジュリアにある日「愛してる」とメッセージをもらった主人公
森の奥地で出会い、2人はセッ久とビッグブラザーに反抗的な会話をする
2人は密会を続け、ジュリアの献身でまともな食料品を、主人公の冒険で隠れ家を得た
ある日同胞ではないかと期待を抱いていた党中軸の人間が主人公に対してアクションを起こした
パネルも無く、高級食品のある部屋で反抗勢力のリーダーが描いた本を受け取る約束を締結し、組織に入り忠誠を誓った
その本をジュリアに読み上げてから少しして、部屋に声が聞こえてきた
思想統制はされておらず自由に生きていると思っていたプロレタリアートの家主が、思想警察だったのだ
ここからは拷問の日々が始まる
オブライエン(同胞)も正統派だった
彼の忠誠心の強かった同僚も愛情省に送られる
殴られ、断食させられ、電流を流され、暗闇に放り込まれ、不潔を極めた場所で拷問を続けられる
「自白は本能だ」というようにジュリアとも留意を得ていた主人公は、それをオブライエンに見抜かれる
心身共にボロボロにされても、主人公は「現実と過去は自分の外部に存在すること(党は過去を失わせ現在のみを信じ込ませる)」を主張し続ける
オブライエンは教師のように主人公を電気ショックで痛めつけたりモルヒネを使ったりして、思想統制をする
苦しみが通常になるため、痛みを止めてくれるオブライエンは救世主かのようにもみえる
しばらく耐えていた主人公は、一時的なロボトミー手術のようなものを受けたことと、自身の変わり果てた醜い容姿を見たこととで心が折れてしまい服従した
独房で徐々に健康が戻っていく微々たる安心を感じながら、思想を党に寄せるために書き物をしていたとき、ふと、ジュリアへの愛を叫んでしまう
党はもちろん見逃さない
囚人の一番怖がるものを与える"101号"で、主人公はネズミに肉体を食わせる と脅され
ジュリアを罵倒して生贄に差し出した
主人公が唯一残していた愛情への忠誠も消え去り、主人公は釈放された
心身共に変わり果てて死んだように生きていた主人公は、戦果の報告で心底喜び、ジュリアに出会っても失望し
全ての過程を経て、愛情省でビッグブラザーを愛しながら幸福に死んでいった
これほど、"人間の自由意志には限界がある"ということを痛烈に描いた作品がほかにあるだろうか
言語と思想、痛みと思想、絶望と思想、希望と思想、記憶と思想
全てお膳立てしてしまえば人間は画一的に望まれた結果になる
理性とは充足した条件に残されているだけのもので、極限状態の人間は人間ではない
動物農場を読んだときのような、絶望感をまた小説で感じてしまった
オーウェルの本は、心情や自然の描写が豊かで、設定もよく凝っていて、小説としての精度が高いからこそ感情移入が容易くなる
その末の政治的絶望だから機械的だったり冒険的な文体のsf小説よりよく響く
ジュリアと主人公はお互いを人格として愛していたのでは無く、自分の全てを管理抑圧し、不自由にしてくる党への反抗心のよすがとしていたのだと思う
つまり主人公は拷問されて取り返しのつかない醜い容姿にされようとも、自由意志を捨ててはいなかったんだ
このシーンで僕は一番鳥肌が立った
また、プロレの洗濯女の歌を聴くシーンや、ワインへの失望、コーヒーへの期待、昼下がりの微睡、夢の世界の幻想的なジュリア
主人公が抑圧された状態にあるからこそ、僕たちが普段素通りする日々の小さな感動に大きく反応していて、コーヒーが飲みたくなったし僕も日常に対する感度を高めたくなった
また忘れた頃に読む
スルメでもあるしエンタメとして楽しくもある素晴らしい小説! -
Posted by ブクログ
2026年4月現在に読むジョージ・オーウェルの『動物農場』こわすぎ
なんで今のことが書いてあるんだよ~~~…とめしょめしょしながら読んでいた。もう有名作品すぎるけれども、本編はもちろんだけれど、巻末に収録されていたオーウェルの序文がかなりよかった
当時の社会情勢(ソヴィエトなど)のことを批判しているが、2026年現在にもバチバチにハマっている。
正義や平等に関心を持たない動物たちがなんの抵抗もしないまま従順を受け入れることで、指導者が暴走してそのコミュニティごと破滅へ向かっていく。リアルタイムで起こっていることすぎて、読んでいてみぞおちあたりが重くなった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ真夜中の精霊であり、罪を食い、犬と闘い、サーカスで働き、下水処理をする熊たちの奇妙な味の8つの寓話。
イギリスでは乱獲により熊は絶滅し、さらに「熊いじめ」というブラッド・スポーツが19世紀まで行われていた、そのイギリスの作家による仄暗くユーモアたっぷりの不思議な物語たち。
ミック・ジャクソンは容赦ない。描かれるクマは悲しみを誘うけれどちっとも可愛くないし人間も泥臭くずるがしこく浅ましい。そんな熊と人間がまるで心を通わせたかと思ったときにちゃんと現実を教えてくれる。特に74頁。
こういう話を読むと「この本に出合えて良かったなぁ」と強く思います。
イギリスと言えばプーさんやパディントンの国と思っていたので熊いじめに驚きましたが、「クマのプーさん」は1926年、「パディントン」は1958年と比較的新しいキャラクターなんですね。
ミック・ジャクソンは自分にも容赦ない。
「まず第一に、ただでさえ薄い本だというのに長めの章をひとつ飛ばしてしまうとなると、この本がパンフレットに毛が生えた程度のしみったれたものになってしまうこと。」(P45)
物語にこういう語りを入れてくるの、好きです。