田内志文のレビュー一覧
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「自由というのは、二足す二は四だといえる自由だ。それが認められるなら、他の自由はすべておのずと付いてくる。」(本書より)
今こそ読まれるべき小説だと思います。
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凄い引力です。
読んでいるうちにいつの間にか『1984』の世界に降り立っています。
食堂で不味いジンを飲み、家に帰るとテレスクリーンに見張られるのです。
逃げ出すことや反逆は不可能です。なぜなら思想警察が全てお見通しなのですから。
どうすればいいのでしょうか?
狂った世界では狂うしかないのではないのでしょうか。
カンタンです。物語なので本から目を離せば、読み終わればこの世界からは脱出できるのです。
しかし…
はたして本 -
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ミック・ジャクソンとは「こうしてイギリスから熊がいなくなりました」で出会った。現代作家だが、作品の設定に時代感があり、1960年生まれということに意外さを感じた。
私の最近のもう1人のお気に入り、ジョン・コナリー同様、ものすごい才能なのに日本での知名度は低く、翻訳本も少ない。
”熊“がまさしくそうだが、この短編集でも、かなりの奇想天外な話が淡々と語られ、しかもほとんどが静かに終わる。
彼の代表的な作品の世界は、乾いていて寂しげだ。「ピアーズ姉妹」しかり「地下をゆく舟」しかり「蝶の修理屋」しかり。
しかし登場人物たちはそれを悲観するでもなく、頑なに静かで揺るぎない。
時折、心の中を隙間風が通 -
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途中の主人公が本を読むシーンで行き詰まり、しばらく離れていましたが、ついに読破。
とても面白く好きな話でした。その本のシーン以外は訳も綺麗で読みやすく、話のテーマに比べると難しい話ではありませんでした。
監視社会を描いた作品で、リアルには起こりえないと断言できないのがこの話の恐ろしいところ。私がこの世界に生まれていたらどうしようと考えました。やはり人民を操作しようとすると最初に狙われるのは教育であるんだなと実感。読書をやめてはいけないなと思ったのが素直な感想です。いつの時代も社会を作るのは教育であり、識字は希望であり、本は歴史であると感じました。もし私たちの持つ常識や習った歴史が政府の都合のい -
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「失われたものたちの本」の完全な続編。
(前作を読んでいないと全く理解不能)
ロンドンに住むセレスは一人で8歳の娘を育てている。ある日、娘が交通事故にあい昏睡状態になってしまう。医師の勧めで田舎のケア施設に移るが、その施設のそばに『失われたものたちの本』という物語を書いた作家の古い屋敷があって…。
主人公セレスの感じる孤独と絶望は痛々しいほど胸に迫ってきます。ただ、前作の主人公ディヴィッドが囚われた喪失感や嫉妬とはベクトルが違う感触がありました。ディヴィッドが少年だったのに対して、本作の主人公セレスは立派な大人として描かれています。前作が書かれてから17年が過ぎ、著者の思考の変遷がここに表 -
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勝手に想像していたよりとてもダークな世界だった。あらすじを見ても生易しい物語でないのはわかるが、それでも思っていたよりもずっとダークであった。
はじめの現実世界での主人公の立場や心情、物語の中で主人公が出会う登場人物達と経験。全てが重くて読み進めていくとどんどん気持ちが沈んでいった。
主人公は子供ということだが、子供であろうと大人であろうと、主人公の立場や経験は受け止められるのがとても難しいものだと思う。そのような状況だけでなく、そこに主人公の心情が細かく書かれていたのがなによりこの本の感銘を受けた部分だった。ただ状況を書き並べるだけならいくらでも出来るだろうが、心情がこれでもかと書き並べてら -
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もともとは別々の2冊だったものを1冊にまとめて文庫化したものだそう。推理文庫から出ているがミステリではなく、世にも奇妙的な小説。「妻」「兄妹」という言葉が示す通り、どちらも家族に関するお話。
降りかかる超常現象が家族という共同体およびそれを構成する個人個人が抱える問題をより鮮明にしていくが、問題を乗り越える最後のひと押しはとても素朴な気付きや対話であったりするのが印象的だった。
「妻が〜」の方は4月に日本で舞台化していたようで、どう表現されていたのか気になる。
「奇妙と〜」は、私も三人姉妹の末っ子なのだが、読んでいるとなんだか姉たちに会いたくなった。 -
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もうすぐ死を迎えるブリスタル。
魔法と魔法に関わる人たちを世界に残すための最後の旅が始まる。
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前巻を読んでからかなり経っていたので、
最初は「どんなだったかな?」と思い出しながら読み始めたけれど、
あっという間に読み進めてしまった。
疾走感がある。
世界を救おうと奔走するブリスタルたちのジレンマや葛藤がよく描かれている。
そう、「ちょっと変わってるだけの人」は、私たちの世界にもたくさんいる。
きっと私もそう。
だからといって排除したり阻害するのではなく、
一つの個性として受け入れる世界であってほしい。
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続きが気になるところで後編へ。 -
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ネタバレ予想していたよりダークなファンタジーだった。
宮崎駿監督の映画「君たちはどう生きるか」という作品は、本書を結構モチーフにしているというレビューを見かける。先にこの本を読んだが、いずれ映画も観たい。
有名な童話(白雪姫やヘンゼルとグレーテルなど)が色々と登場するのももちろん好みなのだが、主人公・デイヴィッドを助けてくれる謎の国の良い人たちが命懸けで救ってくれたり、おかしな世界ではあるが現実的な考え方をしていたり(それがむしろおかしさを感じるが)、キャラクターが魅力的だ。
ねじくれ男が執拗い狼を始末し、デイヴィッドは私だけのものだ、という場面はゾクッとした。
ねじくれ男の正体がほとんど明かされ