田内志文のレビュー一覧
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もともとは別々の2冊だったものを1冊にまとめて文庫化したものだそう。推理文庫から出ているがミステリではなく、世にも奇妙的な小説。「妻」「兄妹」という言葉が示す通り、どちらも家族に関するお話。
降りかかる超常現象が家族という共同体およびそれを構成する個人個人が抱える問題をより鮮明にしていくが、問題を乗り越える最後のひと押しはとても素朴な気付きや対話であったりするのが印象的だった。
「妻が〜」の方は4月に日本で舞台化していたようで、どう表現されていたのか気になる。
「奇妙と〜」は、私も三人姉妹の末っ子なのだが、読んでいるとなんだか姉たちに会いたくなった。 -
Posted by ブクログ
もうすぐ死を迎えるブリスタル。
魔法と魔法に関わる人たちを世界に残すための最後の旅が始まる。
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前巻を読んでからかなり経っていたので、
最初は「どんなだったかな?」と思い出しながら読み始めたけれど、
あっという間に読み進めてしまった。
疾走感がある。
世界を救おうと奔走するブリスタルたちのジレンマや葛藤がよく描かれている。
そう、「ちょっと変わってるだけの人」は、私たちの世界にもたくさんいる。
きっと私もそう。
だからといって排除したり阻害するのではなく、
一つの個性として受け入れる世界であってほしい。
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続きが気になるところで後編へ。 -
Posted by ブクログ
1 精霊熊
2 罪食い熊
3 鎖につながれた熊
4 サーカスの熊
5 下水熊
6 市民熊
7 夜の熊
8 偉大なる熊
「先に読むことをお勧めする」というあとがきにある通り、8つの短編(真珠)が糸で繋がって首飾りになってるような。訳者は「中編小説」と評していたがまさにそんな感じ。それぞれに異なる手触りの幻想性、ユーモラスさ、底冷えする恐怖、人間のいつもの身勝手さ、登場人物全ての生き物としての物悲しさがある。並べるとグラデーションをより楽しめるし、最も気に入った章が他の印象も引き上げる。
1000年前に国内の熊を絶滅させたイギリス人だからこそ書くテーマ、読み込める空気なんだろか。
身なりのいい下卑っていうか、こういうのは海外小説の味っていうんですかね。
8編どれもいいけれど、潜水夫の熊を書いた「市民熊」がいいなぁ。
デイヴィッドロバーツの陰鬱キュートなイラストも、熊の目には猜疑心や諦めが、人間には愚かさが見事に描かれていて文章とマッチしてる。 -
Posted by ブクログ
短編集だけど順番に繋がってはいる。熊たちの漫画のような行動はさておき、一部ノンフィクションのような気もする。タイトルから連想されるようなおとぎ話というよりかは、どちらかと言えば神話めいている。「イギリスの熊神話」的な。ひょっとしたら世界中の神話も、こうやってフィクションとノンフィクションをミックスして出来ているのかな…
とりあえず今掴めているのはこれくらい。あとは読んできた内容・情景が蜃気楼のように今も脳内でゆらめいている。自分の頭において、ここまでレビューに困る作品は久々かもしれない。
現にイギリスには野生の熊が生息しておらず、本書では彼らがいなくなるまでの経緯を時代ごとに辿っている。語りのスタイルが(恐らく)著者の想像に史実を加えたものであるため、神話めいて見えるのはそのせいかもしれない。
灯りが発達していなかった時代に夜の悪魔として恐れられていた「精霊熊」、人間の格好で危険なパフォーマンスを強いられていた「サーカス熊」、ロンドンの下水で雨水などを川に流す労役につかされていた「下水熊」など、本書では8種のイギリス熊が登場する。
全体的な印象としてはみんな賢くて、獰猛で、静か。
知恵が回り、時には非情に手を下す。ラスト2章の「夜の熊」「偉大なる熊」においては、どこからともなく現れ人間にすら気配を感じさせない静けさをたたえていた。こうやって振り返ると、彼らはグレートブリテン島にしばし降り立っていた神の化身とすら思えてくる。
化身でいうと、人間のフリをして生きていた「市民熊」が自分にとっては強烈だった。
そのシチュエーションはさることながら、何でそうなったのかが読んでも分からず…。思わず訳者あとがきと解説に助けを求めてしまった。(ある程度助けになったので、他のお話でも混乱した際はここに駆け込むことをお勧めしたい)
「市民熊」は終始潜水服に身を包み、素顔を見せなかったという潜水士(あるいは潜水熊?)ヘンリー・ハクスリーと、人間の相棒ジム・ストゥーリーの物語。潜水士をしながら、いったい彼は何を見てどう感じていたのか…。挿絵を参考にしても、潜水ヘルメットをされていては何も伝わってこない。
人間のフリをしていたというのはあくまで推測みたいだが、熊が熊で在れなくなった原因から考えていく必要がありそうだ。
昨年日本国内でも、熊が住宅街で発見されたり住民を襲撃するといった事件が多発していた。熊と人間との共生を巡って、人間同士の意見が対立する様子もメディアでよく報じられていた。
動物園くらいでしか熊に会ったことがない自分には何も意見が出せず、読後の今もどうすれば良いのか分からずにいる。
ただ一つ。
本書を通して伝わってきたのは、天下の大英帝国でも共生に四苦八苦していたこと。
国中から熊がいなくなるとはどういうことなのか…。そう思いを巡らす読者の心に影を落としていくことだろう。 -
Posted by ブクログ
読み心地はとても奇妙でユニーク、けれどだんだんとほんのりと温かい気持ちにもさせてくれる、ファンタジーでありながら人間味にも切り込んだ、不思議な感覚の二作品でした。
「銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件」、はほんとにこのままのあらすじです。そこに理由はなく、ただそういう目にあった妻と夫、そして同じく事件で奇妙な目にあってしまった人々の顛末が淡々と描かれます。ありえない現実を受け入れていく過程には運命を受け入れるような重々しさがあるわけではなく、ただあくまで日常のひとつとして受入れていきます。そのなかで、夫婦のあいだの感情のゆらぎ、想いのやりとりがほの見えて、優しい気分になれました。洒落た挿絵もとても文章に合ってます。大人のための寓話、といった風情です。
もう一篇の「奇妙という名の五人兄妹」もまた、そういう苗字を背負った兄妹が、祖母の謎の言いつけに従って行動し、いがみあいつつも絆を取り戻していくという、やはりファンタジックな要素を持ちつつも人間の豊かな心情が描かれてもいる作品で味わい深いものでした。
ありえない嘘を前提にしつつも生き生きと動く人々がとても魅力的な二作品でした。面白かったです。