田内志文のレビュー一覧
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母親の死、父親の再婚と義理弟の誕生、戦争…とあらゆることに傷つけられてきた主人公デイヴィット。義母と義理弟への憎しみを胸に抱きつつ庭を彷徨っていると、岩の割れ面から異世界へ閉じ込められてしまった。デイヴィットは帰れるのか?
題名が素敵で気になってたけど、ダークな世界観だとも聞いてたので、読むのを躊躇してた。今回旅行するにあたって本をいくつか購入することになり、夫と同時読みしようという流れになって読み始め。
めっちゃ面白かった。ダークであることに間違いはないんだけど、童話チックな語り口なので、そこまで生々しくないし、デイヴィットがどう窮地を切り抜けるかが気になりすぎてページをめくる手を押さえ -
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Posted by ブクログ
1年越しで読み終えた・・・
最初辛かったなぁ〜、なんて暗くて陰鬱で希望のない世界なんだって
でも2章でそれを打ち破るべく行動し始める主人公にグイグイ引き込まれ
どんどんやってやれ!!って思って俄然読むペースが上がったと思ったら・・・
そこから一転・・・どん底に落とされてどよーんって感じ
最後は、あぁぁ〜、って扉閉ざされて終了な感じで、後味悪い感じ・・・
でもこれがディストピア小説ってやつだね!!って納得
それにしてもこれが日本で言うトコロの戦後間もなくの頃に書かれたとはとても思えない、今の世界にめちゃめちゃマッチしていて・・・恐ろしくなった
でも、飼われるのが幸せ・・・ってのも気持ちわかるな -
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「自由というのは、二足す二は四だといえる自由だ。それが認められるなら、他の自由はすべておのずと付いてくる。」(本書より)
今こそ読まれるべき小説だと思います。
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凄い引力です。
読んでいるうちにいつの間にか『1984』の世界に降り立っています。
食堂で不味いジンを飲み、家に帰るとテレスクリーンに見張られるのです。
逃げ出すことや反逆は不可能です。なぜなら思想警察が全てお見通しなのですから。
どうすればいいのでしょうか?
狂った世界では狂うしかないのではないのでしょうか。
カンタンです。物語なので本から目を離せば、読み終わればこの世界からは脱出できるのです。
しかし…
はたして本 -
Posted by ブクログ
ミック・ジャクソンとは「こうしてイギリスから熊がいなくなりました」で出会った。現代作家だが、作品の設定に時代感があり、1960年生まれということに意外さを感じた。
私の最近のもう1人のお気に入り、ジョン・コナリー同様、ものすごい才能なのに日本での知名度は低く、翻訳本も少ない。
”熊“がまさしくそうだが、この短編集でも、かなりの奇想天外な話が淡々と語られ、しかもほとんどが静かに終わる。
彼の代表的な作品の世界は、乾いていて寂しげだ。「ピアーズ姉妹」しかり「地下をゆく舟」しかり「蝶の修理屋」しかり。
しかし登場人物たちはそれを悲観するでもなく、頑なに静かで揺るぎない。
時折、心の中を隙間風が通 -
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Posted by ブクログ
途中の主人公が本を読むシーンで行き詰まり、しばらく離れていましたが、ついに読破。
とても面白く好きな話でした。その本のシーン以外は訳も綺麗で読みやすく、話のテーマに比べると難しい話ではありませんでした。
監視社会を描いた作品で、リアルには起こりえないと断言できないのがこの話の恐ろしいところ。私がこの世界に生まれていたらどうしようと考えました。やはり人民を操作しようとすると最初に狙われるのは教育であるんだなと実感。読書をやめてはいけないなと思ったのが素直な感想です。いつの時代も社会を作るのは教育であり、識字は希望であり、本は歴史であると感じました。もし私たちの持つ常識や習った歴史が政府の都合のい -
Posted by ブクログ
「失われたものたちの本」の完全な続編。
(前作を読んでいないと全く理解不能)
ロンドンに住むセレスは一人で8歳の娘を育てている。ある日、娘が交通事故にあい昏睡状態になってしまう。医師の勧めで田舎のケア施設に移るが、その施設のそばに『失われたものたちの本』という物語を書いた作家の古い屋敷があって…。
主人公セレスの感じる孤独と絶望は痛々しいほど胸に迫ってきます。ただ、前作の主人公ディヴィッドが囚われた喪失感や嫉妬とはベクトルが違う感触がありました。ディヴィッドが少年だったのに対して、本作の主人公セレスは立派な大人として描かれています。前作が書かれてから17年が過ぎ、著者の思考の変遷がここに表 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ内容が衝撃的なので、時間が経過してもずっと記憶に残るであろう一冊。
“殉死”させない徹底的な拷問によって、未来への希望すらも潰す。暗い気持ちになりました。
主人公ウィンストンが、“最後の人間”なのは、最後まで本物の人間性を捨てられなかったから。
思考と心が壊れていく経過がリアルで、読みながら自分も何が正しいのかわからなくなった。
言語による認知の方法などは、科学的な視点に基づいていると思うので、言葉を統制することによって、思想や思考を統制するのは可能だと思う。この話のように極端ではなくても、現実的に至る所に存在している気がして、悪用されたら恐怖だと思った。 -
Posted by ブクログ
勝手に想像していたよりとてもダークな世界だった。あらすじを見ても生易しい物語でないのはわかるが、それでも思っていたよりもずっとダークであった。
はじめの現実世界での主人公の立場や心情、物語の中で主人公が出会う登場人物達と経験。全てが重くて読み進めていくとどんどん気持ちが沈んでいった。
主人公は子供ということだが、子供であろうと大人であろうと、主人公の立場や経験は受け止められるのがとても難しいものだと思う。そのような状況だけでなく、そこに主人公の心情が細かく書かれていたのがなによりこの本の感銘を受けた部分だった。ただ状況を書き並べるだけならいくらでも出来るだろうが、心情がこれでもかと書き並べてら -