田内志文のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
400ページを超える上下2段組…正直、読み始める前は途中で投げ出すかもと思っていたが杞憂に終わった。
本書は、悪魔に邂逅したと主張して失踪した牧師ギデオン・マックの手記と、その出版を考える編集者の覚書で構成される。滝壺に落ちて死んだと思われたギデオン牧師は、3日後に奇跡の生還を果たす。ところが生還した彼は、ライヘンバッハの滝から生還したかの名探偵よろしく、全くの別人になっていた。自分は悪魔と過ごしていたと語り始めたのである。
何とも不思議な小説で、全てギデオンの虚言なのか、妄想なのか、それとも何か真実が含まれているのか、特に結論が出るわけでもない。ただ淡々と彼の人生が語られるだけなのだが、面白 -
Posted by ブクログ
なさそうでいて、十分あり得る世界だなと思って怖くなった。何の前情報無しに読んだので初めは設定を理解することに苦労したけれど、後半ページをめくる手が止まらなくなった。
過去とは、歴史とは何なのだろうと考えさせられた。過去は物質として存在せず、私たちの認識の中にしかないし、私たちの認識を形作っているのは情報で、その情報が正しいか間違っているかを100%正確に判断することって不可能なのかも……
戦時中の日本だって、日本は戦争に勝っているという情報ばかり大きく報じられて、みんなそれを信じてお国のために死んでいったんだから、今この現代を生きている私たちも、何者か(国家なのか、権力者なのか)に洗脳され -
Posted by ブクログ
ネタバレ個人の一挙手一投足が国家に監視され、思考さえも抑圧された全体主義社会で、体制に疑問を持ち自由のために行動しようと踏み出した青年の顛末を描くSFディストピア小説。
結局すべては掌の上、という救いのない結末はさておき、なぜ莫大な労力をかけてこんな支配をしているのかが明かされる中盤は非常に論理的な哲学的ミステリだったし、「過去の記録を全て改竄し公用語から政治的意味を持つ単語自体を消してしまえば、個人の記憶や思考すらも操れる」という筋書きは真実味のあるホラーSFだった。新年1発目に読む本ではない気もしたが、超有名古典ながら現代でも通用するリアルさと恐ろしさを持つ作品だと感じた。 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ権利と腐敗を風刺した寓話小説。
このお話の中の豚(ナポレオン)は現実でいうヒトラーやスターリン、毛沢東といった独裁者にあたる。
豚や犬以外の動物は国民にあたり、権力者によって一種の洗脳のようにして独裁国家が作り上げられていく。
日々の暮らしの中で適材適所で、それぞれの人がその人に合った仕事をして国をつくることが求められるが我々国民が政治について無知というのはどれだけ怖いことなのかを理解するべきだと思う。
税金の上がる下がるばかりに目が向けられ、どこにどれだけ使われるかなどかに目を向けない。SNSの誤情報、人の言葉に左右されうわべだけで判断を下す。このような愚行をせず、批判的な姿勢でものごとを -
Posted by ブクログ
この小説は
情報統制され、行動や言語、考え方や欲望まで
全て管理され監視される様子が最後まで続き
ずっと息苦しかった
子供達がスパイになって両親を訴えたり
嘘が歴史になり真実になったり
不適切な表情 不適切な寝言で思想犯罪者
として罰せられたり
黒が黒だったことを忘れて黒が白だと
心から信じる能力が求められたり
恐ろしすぎます
今の自分の正しさが正しさでなくなり
正しくないことが正しくなる世界
そんな社会に身を置いたら本当に正しい事を
正しいと言うことができるだろうか
強大な権力に忖度して
自分の価値観を変えてしまうかもしれない
抗える自信がない
それでも 自分の脆 -
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Posted by ブクログ
ジキルとハイド…単語は聞いたことあっても、意味は知らんシリーズとして手に取った本。第一印象、本が薄い!その割に、濃い目なストーリーとメッセージで楽しめた。
前半部は、ミステリーやSF的に楽しめた。(あらすじでネタバレ的な記載もあり…)なんとなくからくりが想像できたものの登場人物たちが真実に迫っていくときのハラハラドキドキな展開に没頭できた。
後半部では、本書のテーマである「人にある善の一面、悪の一面とどう折り合いをつけて付き合っていくか?」という人間として生きる上での問いに向き合う。相反する善悪をそれぞれ切り離し、居場所を与え、悪はエスカレートして、悪に蝕まれて破滅していく様子が描かれる。…