吉本ばななのレビュー一覧
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ネタバレ惜しい本を、読み飛ばしていた。
が、単行本が出た2015年は、まだ読書生活を復活させてなかった頃だった。
しかも、2011年の新刊『三十光年の星たち』を読んで、宮本輝ともちょっと距離を置こうとしていた時期にも重なる。その『三十光年の~』のレビューの冒頭には、こう記してある。
「宮本輝も齢をとったな、と思わせる一冊だった。佐伯という老人を通して今の若者世代に説教したいことをちりばめたような何とも後味の悪い印象。」
その少し前の作品あたりから、金持ちな老人が出てきて話を引っ張りまわすような感じがあり、うすうすと感じていた説教臭さ、関西の親戚の叔父貴がいかにも言いそうな、蘊蓄や御宣託が -
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あとがきに、ライターの人と「幸せ」に対する意見の相違があり、原稿を大幅に改稿した旨が書かれていた。
「いつか自分が本当に書きたかったことが書きたい」ともあったので、おそらく100%本意で書かれた本ではないのだろうけど、私はこの本の随所に頷いたし、参考になった。
エッセイのような実用書のような1冊で、内容はタイトル通りなのだけど、自分なりの「幸せ」を見つけていくために自分が持っているセンサーに敏感に、そして正直であろう、というようなことが、語り口調で書かれていて、とにかくするする読めた。
今年はじめに同じく吉本ばななさんの「『違うこと』をしないこと」というエッセイを読んで、私は今まで『違うこと -
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アルゼンチンの澄み切った空気と、それと相反する重い雰囲気。
南米には行ったことがないけれど、その濃密さが読んでいるとグッと迫ってくる。
各写真も挿絵もすごく良い。
作者の吉本ばなな先生が、出版社の人たちと旅しながら肌で感じた南米。ばなな先生の生きることを柔らかく受け止め肯定していく、あの目線でさえも眩むほど、南米の自然の眩しさと壮大さがそこにはあったんだなと。
そして思ったのは、誰でも寂しさを持って生きていってること。南米の人々の、破壊され尽くした過酷な運命もまた寂しさに溢れてるんだなということ。
人の心の寂しさという影。全てを覆い尽くすジャングルの緑とそこに落ちていく夕陽や、落ちる滝の轟音。 -
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傷心旅行記の短編集のようでした。
隣人の死による悲しみを背負っている話が多かったので、非日常の旅行を通じて気持ちを切り替えるということかと思っていましたが、あらすじまで読んで、気持ちを切り替えるというよりかは、そういう人に寄り添うような話の方が適切かなと思いました。
ばななさんはキッチン以来でした。キッチンでも異様な設定ですが、登場人物が、私なんて、、、というネガティヴでも内省を繰り返して読者を主人公の立場に無理矢理引き寄せるでもなく、現実だったら苦しい設定でも、各キャラクターが軽やかで、そこが読んでいて心地よく感じていました。今回も亡くなった人に似ている人を妻に選ぶなど、設定は変わっていま -
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「恋してる相手と食べるごはんは、家族と食べるご飯とは対極にあって、いつも少し緊張している。」って書き出しにうんうんと共感しながら読み始め。さらっと読めた。
お父さんと市場に行っていた話や息子が小さかった頃の話は著者のエッセイでもよく息子書かれてるけど、スーピータンさんの挿絵もあり、ぐっと濃くなってるように感じる。
台湾で出版された本だけど、台湾の人はどんなふうに受け取るんだろうな〜。
刺さったのはこの文章。
「いつでも一緒にいてくれるだれかがほしかった。大人になったらそんな人はいないとわかっていたし、自分の人生は生きるも死ぬも結局は自分だけだから、自分でしっかり歩いて味わっていかなくてはい -
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ここではない場所、がもたらしてくれる癒しのようなもの。旅先で食べる食事のぬくもり、触れる人々のやさしさ。痛みや悲しみを抱えて向かう旅でさえ、いつも何かを受け取り、満たされ、すこし疲れて、でもまた次の目的地を探す。
高級スーパーで、週末の宴のためにわくわくとお買い物をする感覚を「単調な生活を楽しくする」と言語化してくれたのがなぜかすごく印象深い。
「人類が週末に向けて準備したいことはどの国でもみな同じだ」(「カロンテ」p.176)
「カロンテ」とは三途の川の守り人のこと。
仁木順平さんの装丁もとても美しい。朝と夜と、山と海と、四つの季節が絶妙に入り交じる色彩。 -
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眠れない夜、本が読めない夜、もう何もできない、でもまだ布団には入りたくないという夜、この本だけは読める。ひとつひとつの話が短いからというのもあるだろうけど、辛かったときに吉本ばななさんの本がたくさん寄り添ってくれたから、今も吉本ばななさんの文章を読むと救われるような気持ちがするんだろう。
私にも誰かを救うことはできるだろうか。
【読んだ目的・理由】1、2も読んだから
【入手経路】買った
【詳細評価】☆4.3
【一番好きな表現】こ〜んなにたくさんの人がいるんだから、それぞれの個性や方法で担当する人数がうまく決まっていて、その人たちに与えるために愛を持って才能を発揮していれば、ちゃんと生きていけ