吉本ばななのレビュー一覧
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大きな出来事で突然に景色がかわる瞬間、見る視点が変わるような、目線がかわるような。その瞬間、当たり前の日常のありがたさとか、普通の日々の尊さを否応無しに感じてしまう。 行き着くところに行ったからこそ見えることは沢山あると思う。
この物語では、突然友人の喬がHIVポジティブだったことがわかり、それを受け入れようとする人たちの旅を描いている。その旅の物語は深刻ではあるけど絶望的ではなくて何か希望を感じさせてくれる。エジプトという、昔から続く命や愛の神の力が今も感じられるような状況で描かれる物語で、真剣に読まないと見落としてしまいそうな何かがあるような気がして、とても丁寧に読んでしまう。静かに淡々と、相当深いところに訴えかけてくることが多い。時々、本当に心臓がドキッとしてしまうほど、人の心や気持ちが鋭く書かれている文章が全体にたくさんある。こういうことを書けるのがすごいな〜って思う、よしもとばななさん。普段、自分の心や人の心とたくさん向き合わないと気づけないようなことではないだろうか。
今できること、自分の生活や当たり前の日常はとても尊く、それをもっともっと大切にしようと心から思える作品だと思う。そして、ものすごく旅に出たくなる作品でもある -
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現実的な夢や、あり得ないことばかりが起こる夢。予知夢を見たり、他人と同じ夢を見たり。たくさんの“夢”にまつわるエッセイ。
友人達と、夢の話をするのは楽しい。私が聞いた中で、最も興味深かったのが“夢の中での自分の家”の話。現実の自分の家じゃないし、見た事もないのに、いつも夢の中の自分はその家に住んでいるんですって。
吉本ばななの宗教に対する考え方が好き。“宗教”と聞くと、オカルトや危ない集団というイメージが強いけど、だれもが一度は考える「なぜ生きるのか?」を真剣に探求する人達の、一つの結果が宗教なんだと思います。だから、哲学者や自己表現活動をする人々と共通する点が多いのでしょう。
それでも、確かにうさんくさい宗教人はいます。その判断は、おのおのの自己責任。自分の哲学を磨いていれば、本物と偽物の区別がつくのでしょう。(何が本物で何が偽物かも、人それぞれですが)
イラストを描いている原マスミさん。本編にも度々登場しています。ブルーが夢うつつの優しい時間を彷彿させます。別の色だと、どんな絵になるのかが気になる。 -
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ネタバレ裕志の、起こりもしていないのに、その先起こることを不安に思い続けてしまう気持ち、とてもわかるなとなった。読み進めていくうちに、彼が抱えていたものがすごすぎて、息が詰まった。それでも、彼女や、犬のオリーブが彼の存在を肯定して、暗い気持ちを光に導いてくれたのだと思う。
2回目のハネムーンでの、夕方のショッピングモールでの光景描写は感動した。メモをたくさん残すほど、今回も素敵な描写がたくさんあった。
釜揚げうどんの話も大好きだ。私も影響されて、夜中に食べる。熱くってほんとに美味しくって、啜るたびに生きている心地がした。そうやって、自分が食べたいものを食べて、自分が話せる時に誰かに話せることが出来て、体に風が通り抜けるような感覚になるのだと思った。 -
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ネタバレ【あらすじ】
自分の人生の王様として生きたら、時間はたっぷりある。
今日の分だけやるべきことがわかっていればそれでいい。
作家生活40年。
吉本ばなな珠玉の4編。
風邪を引いた叔父さんの代わりに軽井沢の別荘を整理しに行った塾講師の円。
そこで円は、叔母が生前残したメッセージを見つける。「束の間」
同じ女性と付き合っていた祐樹とエム。
彼女が去った後、二人は奇妙な順序で急速に接近しーー。「人にやさしく」
他2編
人生の岐路に訪れる小さな怪異と奇跡を描く。
切なくそして幸せな中編集。
『他人が絡んでいる将来の夢って、ほんとうの自分の夢ではない気がする。自分の行きたい道のどこかにその人が存在したらいいな、と思うくらいがいちばんいいような気がする。』
『彼にとって恋愛とは保っていた理性をどうしようもなく失ってしまうことで、彼の僕への想いはその対極にある。たとえ体調が悪くても親のようにふるまい、おいしいコーヒーを飲ませてくれようとする、それが彼の僕への愛だったから。』
『いつも自分が犬を助けてると思ってるけれど、実は逆なのだ。犬は結果を考えていない分、人はその無垢さに永遠にてない。』
『ふつうのことがいちばんすばらしいことなのだ。人生はそれだけでいい。
朝起きて、飲みものを飲んで、洗濯をする。干したら乾く。お腹が減ったら食べる。消化して出す。なんていうまぶしさだろう。』
『それに美鈴さんは不幸じゃないよ。
だって、和美ちゃんのこと思いやる力があるんだもん。それはいつか誰かに愛されたことがある証拠だよ。』
【個人的な感想】
現実と空想が上手く混ざり合っている世界観。
人生の素晴らしさ、ただ生きているということのまぶしさを教えてくれるような作品だった。
出てくる登場人物が全員魅力的で、またいつか読み直したいと思った。 -
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2026/09/20
なんて素敵な本。行ったことのない現地の情景や食べ物の味や匂いが、こちらまで伝わってくる。まるで自分もそこにいるような気分になった。きっとそれは、登場人物たちが淡々と生きているからだろうな。決してドラマチックなことは起きないけれど、ちゃんと生きていて、ちゃんと未熟だったり、ちゃんと傷ついていたりしている。
また、そんな登場人物たちの姿を見て、少し救われる部分もあり、気づいたら心が凪いでいた。
三十代の二人の話の中で、「私たちはどこまでも行けるとは思っているけど、気づいたら根を張っていて、もう動けなくなってしまうかもしれない年齢になっている」みたいな部分が、現在の自分とリンクしていて刺さった。最後の情け鳩も良かったな。 -
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ネタバレ生き抜くための暮らしの知恵が詰まった話。というこの本のまとめにスッと腑が落ちる。ばななさん特有の?少しだけ現実離れした能力ありの話だが、読んでると不思議とそういうのもあるよなと思えてくる。私たちの言う、ビビビッときた「直感」というのもを、ここまで深掘って表現されているからこそ、何かの能力と結びつけるだけであって、それは私たちの世界にありふれているんだなと思った。私がずっと憧れている、家族以外の信頼した続きのある関わり。みんなで餃子を包むシーンではなんだか涙が出そうになった。そういうのでいいんだよな。日常のささいなことで安心して保っているのだということ、なんだかおまじないのようにじんわりと守ってくれそう。負を溜めやすい私は、料理やら猫を撫でることやら読書なんかで、それを少しずつ吐き出していけてるんだ、そうやって生活できてたじゃないかと感じた。そうしていけば暮らしていけるよねと。
あとがきをじっくり読んでいったら、ふるさとでの日々を思い出した。田舎ならではの、人と人とのつながり。綺麗事ばかりではないけども、人間たちの力でまわっていたんだと、思い返すと感じた。母が離婚して母の地元に戻ったまだ小さな私は、親戚のおばさんがとても気にかけてくれてよく預かってくれた。ご飯やお菓子を食べさせてくれたり、母はさせてくれない料理までちょっとさせてもらったこともあった。そんな、信頼と安心のあるあたたかさ。そんなことを思い出させてくれる本。手元に置いておきたい本だと思った。今の生活にもそんな関わりがあったらいいのにな。 -
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自分の感度を上げること。そのために、自分の捉え方を微調整していくことが、安定につながり、自分らしくあれる。幸せとは大それたことではなく、日常の良いことが、小さく積み上がることだと感じた。
ささやかな違和感をスルーせず、よくないと感じるものからは、適切な距離感を取る。諦めることも距離感。それは、物理的だったり、言葉だったり、いろいろな方法があるはず。距離感を適切にとって、自分も相手も心地よくいられるために、できることが増えるのが大人になることかもしれない。
不安定なこの時代、簡単に手にできそうな幸せのハックがころがっている。ハックにハックされる自分。欲望を追求した先には、欲望しかない。
私たちが喜んだり、怒ったり、悲しんだりしてることは、ただ事象として起きているだけで、色をつけているのは自分。色を塗り重ねるほど、本来の姿が見えない。盲目になる。やさしく丁寧に色づけをして、死ぬまで持っていたい、彩りあるものにしよう。