吉本ばななのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレご本人も書かれていらっしゃるとおり、あの遠野物語とは別物であり、日常の裂け目を見たような、すこしふしぎな感じのお話たちの本です。たぶん、読む人によって好きな話が違うのではないかと思います。わたしは「わらしどうし」「最良の事故物件」「思い出の妙」と、最後の方に収められている話が好きでした。感性の変化や縁の描き方がすき。そういった意味では「炎」も良かったけど、リアルにあったらこわい…。「思い出の妙」もありそうな感じだからちょっと不気味かも…笑 でも、読後に嫌な気持ちは残らない。
天井や壁のシミ、木目など、小さい頃はいろんなことを見つけて、気にしていたものです。あれは子ども独特の感性で、あの頃特有 -
Posted by ブクログ
ヨシモトオノ=吉本版遠野物語という意味らしいが、ばななさんによると、現代版遠野物語というような大層なものではなくて、藤子・F・不二雄の「SF・すこしふしぎ」みたいなものらしい。
山中で道案内してくれた男の子、友だちの空間移転引き出し、亡くなった従姉妹のノート、死んだはずの海外の元カノからのメール、ホントは死んでいるボク、自死した知り合いの女子のこと、水子からの警告、失踪した彼のお下がりベッドの夢見、夢見で許された話、現代のわらし童子、母親の死産だった兄を庭に埋めたという話、安下宿に出てくる優しい幽霊、旅の宿の天井に浮かぶ顔の思い出‥‥。
まぁ、そうだよね。
少し不思議な譚(はなし)なら
多 -
Posted by ブクログ
何か大きな出来事が起こるわけではない。でも全く何もないわけではない。そんな人生のなかの一瞬の時間を切り取った短編集。
物語の何が印象に残ったというよりは、この本自体が私の体をふんわり包んでくれた。パワースポットのような本。
頭の片隅に入れておいて、必要なの時に取り出したい文章たち
p101
私はそのスーパーで、とりあえずの安い手袋を選ぶのを突然にやめた。関連は全くわからなかった。しかしその話を聞いたとき、私は明日街に出て、長く使える手袋をちゃんと買おうとふいに思ったのだ。そういう直感はなによりもだいじだと私は思っている。理由は決して今はわからないけれど、大切なことだと思った。
そういうこと -
Posted by ブクログ
『TUGUMI』を読んで最初に浮かんだのは、「どこかにこういう子、いたような気がする」という不思議な懐かしさでした。
つぐみのように、まっすぐで、偽りがなくて、ちゃんと自分自身と対話しながら生きている人は、時に周りを振り回すように見えて、実は誰よりも強いのかもしれません。
つぐみの言動の背景には、余命を宣告されて育ったという事情があり、だからこそ普通の人よりも“生き方”について考える時間が多かったのだろうと感じました。周囲の接し方や甘やかしも影響しているけれど、それ以上に彼女自身の思考の深さや人としての輪郭がはっきりしていて、読んでいて目が離せませんでした。
『成瀬は天下を取りに行く』の成