Posted by ブクログ
2020年11月24日
つぐみは、病弱でわがままな美少女。口がものすごく悪くて乱暴。だけど人間的にとても魅力があって、いとおしく思える。自分の命が他人よりも短いことを知っているからか、とても刹那的な生き方をしている。そういう部分さえもいとおしく感じられる。毎日を、本気で生きているように見えるから。
そんなつぐみをいつも傍で...続きを読む見ていた、主人公のまりあは、誰よりもつぐみのことを理解している。乱暴な振る舞いをするつぐみから何度も被害を受け、文句を言いつつも、つぐみのことが本当に好きだということが伝わってくる。
まりあだけじゃなくて、登場人物全員がつぐみを愛してる。それだけ、魅力的な少女なのだと思う。
読み進めていくうちに、郷愁のような想いが湧き上がるように生まれてくる。この感覚はきっと、数年前に読んだときより大人になった今の方が強いと思う。
甘酸っぱく、切なくて、きらきらした青春の時間。
私は海辺で暮らしたことはないのに、まるで暮らしたことがあるような気がしてくるほどです。そこに私の思い出も息づいているかのような、不思議な錯覚。
その時間をもう取り戻せないことも分かっているから、切なくなるのかも知れない。だけどこの小説を開けば必ず思い出せるから、そういう意味で宝物のような一冊です。
とても瑞々しい小説なのだけど、命の儚さを感じられたり、独特な重さもある。その重さが、ただ青いだけの青春小説とは違うものにしているのだと思います。
ひとつひとつのエピソードがとても素敵で、心に残る。
やっぱり幼い頃強烈に惹かれた作品って自分の原点で、それはいつまで経ってもきっと変わらないのだと思います。江國香織さんの『きらきらひかる』と並び、本当に大好きな作品です。