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Posted by ブクログ
誰かが不幸と感じて死にたくなったり、誰かがこの世からいなくなったり、そうした事が起こりながらそれでも世界は進んでいる、ようなお話が6つ入っている短編集。
例えば、「あなたがいたことが私の人生だった~あなたが生きているだけで誇らしくて、~今思うとあなたを愛したことが私の人生の全部だった。~素晴らしい人に育ってくれてありがとう。」
という美しい母の最期の言葉を描写したかと思ったら
「歴史の重みに耐える石造りの連なる街では、人間だけが生身のものとして消えていく。日本では建物も人と共に風化して入れ替わっていくからわかりにくいのだが、歴史の重さの真っ只中に存在していると、人は儚いのは当たり前だということがわかる。自分が死ねば自分の宇宙は終わる。そこには何の余地もない」
であったり、
「この上ないふびんさを自明のこととして持つ人類と、その輝かしい幸せを乗せて、いつでもどこでも地球は回っているんだな」
というような達観した視点を往来していくような手法が気持ちいい。いいことも、悪いことも、どちらも人生だし、1人の世界にとっては大事件だけど、大きな世界では塵が舞うような小さいこと。突き放すような、慰めてくれているような文章が不思議。
エピソード内のフレーズとしては、「この街の思い出が良いものになって欲しいからと、私にご馳走してくれた」と言うところが個人的に衝撃だった。僕は知らない人に優しくしたいと思える感性がなかったけれど、こういうことを思える人間になりたいと思う。
p50「性的な対象として見ているというのとは、全然違うんだ。もっと根源的な気持ちなんだ。小さい時から夢見てたことみたいな。」
p62「父はそんな母をまるで誇らしい宝物を見るような目で見ていた」
これらは性愛と愛の違いを語ってるように見えた。純粋な愛とは、愛おしいと思うということはこういうことなんだよと教えてくれている気がする。
「だから想像したそんな死の瞬間、落ちていく最後に思い描いたふたりの顔が、本当に悲しんでいて心配している目が一瞬のうちに浮かんできたなら、私の中の愛情こそがちゃんと機能していることになる。幻影と幻想のあいだに、ほのかにあたたかい空間があって、人と人はそこでしか出会えないのだ。」
人の気持ちはわからない。けれど、愛されてると感じる自分の気持ちは自分で確かめられる。ということを言っているのかと思った。
素敵な文章なので引用まみれになってしまったけれど、嫌なこととか、立ち直れないようなことがあった時、そばに立って話を聞いてくれるような小説だと思った。
Posted by ブクログ
6つの短編集
どの物語も旅先という非日常の場所で
自分の心の痛みや喪失感に向き合う瞬間があって
その時に向いていた心の行く先が
過去から現在
現在から未来
そして 未来から現在
を行きつ戻りつしていくような印象を持ちました
別れた経験は忘れることはないし
新たな喪失と向き合う不安もたくさんあるけれど
思いのたどり着く先は
自分自身がいなくなってしまうその時
その事に気がついて
物語の主人公たちと同じように
今のこの時が奇跡に近い尊さだと悟った
これから
年を重ねていって
人を見送ることが増えて
痛みや喪失感は澱のように溜まり続けていくから
しんどくてやり過ごせなくなったら
私も旅に出かけてみよう
Posted by ブクログ
6作の短編集
ほとんどが身近な人の喪失を抱えている話だった。
自分の経験でも、抱えきれないほどの悲しみのなかにいるとき、何をみてもその人のことを思い出してしまい、どうしようもないことがある。
最後の章の言葉が印象的だった。
“どんなに他人と親しくなり、その人のことをわかったつもりになっても、結局その他人とは自分の中に生きているその人にすぎない。その人本人ではない。”
生きている間だって、大事な人は私の中にいる大事な人でありその人本人ではないのだから、
亡くなったって、私の前から急に消えたって、私の中にいる大事な人はいなくならない。ただ、その人はもう更新されない。
これから先の人生、また大きな悲しみに暮れたときは、この言葉を思い出すのだと思う。
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