あらすじ
たいせつなひとの死、癒えることのない喪失を抱えて、生きていく――。凍てつくヘルシンキの街で、歴史の重みをたたえた石畳のローマで、南国の緑濃く甘い風吹く台北で。今日もこうしてまわりつづける地球の上でめぐりゆく出会いと、ちいさな光に照らされた人生のよろこびにあたたかく包まれる全6編からなる短篇集。
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死と向き合う人の場面はやはりつらいものがあったけど、人生と向き合おうとすると、1番怖いものは死だった。だから日常で不安になることは、意外とそれほど大丈夫なんだよ、と自分に対して言いたくなった。読後1番に思ったこと。あと「情け嶋」が1番好き。
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吉本ばななさんの言葉たちは時に鋭くやわらかくどんなときに読んでも心の臓にじんわり沁み入る。表題の「ミトンとふびん」がこの短編集を代表しているのは人間がミトンのあたたかさを感じるには、同時にどうしようもなくふびんである自分を認めることにも繋がるからかなと全編を通して思った。今がふびんだからこそ希望があるんじゃないかと思えるような、哀しくて優しいひとたちの人生の一片を垣間見る体験だった。なんだか答え合わせみたいにぴったりと思考のピースを埋めるフレーズの連続で、この先も何度も読み返すことになるだろうと思った。ところで吉本ばななさんの描く素敵な男の子像がマジ完璧すぎて毎回ときめきが残るんですよね。今ここに実在して私のために言葉を尽くしてほしすぎ。
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読んでたら、心にジンとくる言葉がたくさんで、ふわっと軽くなったり、わかるわかるって刺さってみたり、、生きることに寄り添う本でした。
人生の深みや愛、何かを感じたい時に。
お気に入りの本になりました。
p.32
あなたは私の人生そのものだったの。…
…あなたが生きているだけで誇らしくて、あなたはほんとうにお気に入りの人に成長して、今思うとあなたを愛したことが私の人生の全部だった。あなたがいなかったら私は何も知らないで死んでいくところだった。それくらい毎日、毎日嬉しかった。
p.58
私は私を信頼できない人に渡してはいけない、母にこんなにだいじにされているのだから、大事にしてくれない人には触らせてはいけない。その代わりにもしも私のいちばんだいじにしているのと同じものをだいじにしている人を見つけたなら、その人の言うことは受け入れて大きくなっていこう。たとえ世界が違っても、男女の差で全然わからないことがあっても、浮気されても。ちゃんといやなものはいやといいながら、距離をだいじにとりながら、なにかが生まれるスペースを決してつめることはせず、他人と他人のままで生きていきたい。
p.68
恋人や夫を女友だちの代わりにしちゃう人は多い。
男は男といる方が楽しいし、彼女のようなものはただいるだけでいいのだ。好きだと言うことと、たまに会えるというだけで。自分がすごく好きと感じるときだけで。でももっと大きな責任感のようなものを自分の恋人には持っていて、それが男の愛の深みなのだ。
p.69
自分のほうが圧倒的に力が強くて今すぐに相手を壊してしまえるということがわかっているからこそ、それをしない自分というものの中にこそ、相手に対する圧倒的な愛情の存在を感じる。
p.242
どんなに他人と親しくなり、その人のことをわかったつもりになっても、結局その他人とは自分の中に生きているその人にすぎない。その人本人ではない。
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大切な誰かを失った時、すごく悲しくて苦しいけれど、
その人との想い出を胸に少しずつ進む勇気を感じました。
何気ない日常の中で、優しく包んで背中をさすって、
最後にぽんと押し出してくれるような温かいお話ばかりでした。
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なんということもない話。
大したことは起こらない。
登場人物それぞれにそれなりに傷はある。
しかし彼らはただ人生を眺めているだけ。
(あとがき抜粋)
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亡くなった人の影が、日常にちらつく。それでも生きて行く。悲しさだけではないものを思い出しながら。一人の時間、他者との時間の中で、生を感じて、それでも生きて行く。がんばる訳ではない。ただ、自然に身を任せて。
肩の力を抜いて、呼吸をゆっくりしながら読める心地の良い短編集だった。
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特別に物語として起伏をつけるわけでもなく普通の生活が普通に描かれている。それが自分にとってどうなるのかだとか、得た教訓はなんだとか、そういうものが無くても読んでよかったと思える本だった。
こういう普通な雰囲気を文章に漂わせる表現が上手な人だよね、よしもとばななって。
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よしもとばななっぽい読みやすい感じの恋愛短編集の小説やった。
子宮摘出したからもう子供産まれへんカップルとか、友達が交通事故で亡くなったあとに遺品を友達の彼氏に渡しに行く話とか、離婚してゲイの友達カップルと仲良く過ごしてる話とかちょっとしんみりした話が多かった。
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あとがきから
「そこにはどこから感じられるのかさえわからない魔法のかかった奇妙な深みがあり、いつかどこかで誰かの心を癒す。しかし読んだ人は癒されたことにさえあまり気づかない。あれ?読んだら少しだけ心が静かになった。生きやすくなった。息がしやすい。あの小説のせいかな?まさかね。そんな感じがいい。」
なんか本当にそんな気がする。
読んだ後から後から、「人生ってこんな感じだよね。」って、色々なことに納得がいくというか。
短編集で、章ごとに色んな場所への「旅行」もテーマになっていて、金沢、台北、ヘルシンキ、ローマ、香港、八丈島が登場するのだけれど、今1番行きたくなったのは八丈島!いつか行ってみたいな〜。
苦しいことや辛いことに対して、「苦しい、苦しい、辛い、辛い」って無限ループで考えない。その中でも自分にまだ残っている幸せの瞬間を感じ取る力を持つこと。そんな事を教えてくれている気がするなぁ。これは綺麗事なのか。口で言うのは簡単なのか。そうかもしれないけど、それができたらやっぱり理想だよね。
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春先になぜか吉本ばななに惹かれる時期があって、本屋さんにあったのをたまたま買った本。
実際に読み始めたのは5月下旬で、ライブの遠征にも連れていって読んだ。一緒に旅をしたらより楽しめるんじゃないかと思って。
就職活動真っ最中だったからか、八丈島への旅、手に職があっていいなぁと思ったことだけすごく覚えている。
あまりにも浅い感想しか今は出てこないので、しばらく眠らせておこうと思う。
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傷心旅行記の短編集のようでした。
隣人の死による悲しみを背負っている話が多かったので、非日常の旅行を通じて気持ちを切り替えるということかと思っていましたが、あらすじまで読んで、気持ちを切り替えるというよりかは、そういう人に寄り添うような話の方が適切かなと思いました。
ばななさんはキッチン以来でした。キッチンでも異様な設定ですが、登場人物が、私なんて、、、というネガティヴでも内省を繰り返して読者を主人公の立場に無理矢理引き寄せるでもなく、現実だったら苦しい設定でも、各キャラクターが軽やかで、そこが読んでいて心地よく感じていました。今回も亡くなった人に似ている人を妻に選ぶなど、設定は変わっていますが、キャラクターが軽やかでした。パンチのあるキャラもいますが物語として必要でそれがあるから全体のバランスが取れているようで。
筆者もそういう性格なのかなと思っていたら、あらすじを読んでとても繊細な印象をうけました。描きたかったような、よりさりげなく、より軽くを意識して描いているからキャラの印象が心地いいのだと思いました。短編の中にあった、メーターの真ん中のような人です。
最近のドラマでもありましたが、すぐに言葉に出るまでに時間がかかるだけでしっかり考えている人で、さらに大事な言葉だけを紡いでいる人なのかなと思いました。
タイトルの言葉選びも好きです。短歌も詠んで欲しいなぁ。
本書を読んで、健やかな時間の使い方というのがとても良いなぁと思ったので、自分もやってみたいと思います。
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ここではない場所、がもたらしてくれる癒しのようなもの。旅先で食べる食事のぬくもり、触れる人々のやさしさ。痛みや悲しみを抱えて向かう旅でさえ、いつも何かを受け取り、満たされ、すこし疲れて、でもまた次の目的地を探す。
高級スーパーで、週末の宴のためにわくわくとお買い物をする感覚を「単調な生活を楽しくする」と言語化してくれたのがなぜかすごく印象深い。
「人類が週末に向けて準備したいことはどの国でもみな同じだ」(「カロンテ」p.176)
「カロンテ」とは三途の川の守り人のこと。
仁木順平さんの装丁もとても美しい。朝と夜と、山と海と、四つの季節が絶妙に入り交じる色彩。
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人生が豊かになるハッとするような出来事だとか登場人物の勇敢な姿だとか生きるためのヒントになる言葉を見つけれるだとかそうゆうんじゃない。どこから感じられるのかさえわからない心の癒し・・・。これだからばななさんの小説がだいすきなのだ。ばななさんも「この本が出せたから、もう悔いはない。引退しても大丈夫だ。」といっていた!ほんとうはみんな常に死と隣り合わせにいて奇跡みたいな一日を当たり前な顔して生きている。歳を重ねること人と交わることが地球を愛することと同じようなあたたかさで嗚呼大切だと思えるこの気持ち。大事にしようと思った。
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大切な人の死など、癒えることのない気持ちを抱えながら生きていく人の短編集。どんなに泣いても、もうこの世の終わりだと思うほどの悲しみに呑まれても、それでも生きていけちゃうから人間って強いな、と思った。
あとがきの、吉本ばななさんが言葉が良い。
「なんということもない話。
たいしたことは起こらない。
登場人物それぞれに、それなりに傷はある。
しかし彼らはただ人生を眺めているだけ。」
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吉本ばななさん、子供目線の本が多くて苦手モードだったけど、地元が出てくると知り、読んだらすごく大人の一瞬の気持ちが重なっていくお話だった。ゆったりゆったり癒されていく。いいこともずるいことも全部あって人生。
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しんとした静けさの中に頭や心に唐突に悲しくて寂しくて切ない感情が駆け巡ってきて、それでも今を生きている登場人物たちの人生をとても尊く思いました
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この本は身近な人の死を経験した人の旅や体験が主題となって書かれている作品だった。
自分はまだ身近な人の死を経験した数が少なく当たり前のように明日が来て同じ人と話すことが出来ると思っているからこそいつか来る別れは恐ろしく何気ない日々は儚いものだと思った。
また自分の若さゆえ完全には共感したり心に響いたりはしなかったため歳を重ねくり返し読めるように手元に置いておきたいそんな1冊だった。
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何気ない短い話が6つ。もう忘れてしまってる「キッチン」はもっと瑞々しかった気がする。でもそれは悪いことではなく、落ち着いた「大人の物語」と言える。当時人物達は心に傷を負いそれでも生きていくという力まない感じなのが心地よい。
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第58回谷崎潤一郎賞受賞作
悲しみが小さな幸せに変わるまでを描く6つの短編集。
共通するのは旅をしていること、そして登場人物がそれぞれに喪失感をかかえています。
しんみりする物語だったけれど、誰もが経験しうる喪失感を、やり過ごすことなく悲しみをしのぐ様子がよく伝わってきました。非日常の旅の体験が救われる気持ちにもなって、読み終えて悲しみは希望に変わりました。
吉本ばななさんの文章は心に刺さります。
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よしもとばなな。何故か文書がみずみずしい。どの作品も。死が出てくる。ゲイの男性も。旅行記のような、少し自由でいろんな人が出てくる。ドラマにはできない。
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私はまだ大切な人を失ったことがないから全体的にはあまり共感しなかったけど、この言葉が好きだった。
『体も心もぽかんとしていた。まるで海岸の砂にぺたりと座って目の前の海を見ているような気持ちだった。次に大きな波が来たら立ち上がろう、あ、来ちゃった、じゃあその次・・・。そういいながやいつの間にか何時間もすぎてしまう、そんな感じ』26ページ
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何か(主に誰か)を失い傷を負った女性たちが旅に出るなどして小さな幸せを見つける物語。6編の短編が収録されていて、表題作の「ミトンとふびん」と「珊瑚のリング」が良かった。
自分も同じような状況にあれば大きな救いになったかもしれないが、幸いにも今はそうではないこと、ところどころ登場人物の台詞回しが気になったり、あだ名が気になったりと、違和感を感じる作品もあったことでトータルでは星3つ。
あとがきは良かったものの、文庫版あとがきで作者のマイナスの感情が語られているのが作品に合わない印象を受け読後感が良くなかったのもマイナス。
でもいつか救いを求めたい時が来たらまた手に取り好きな短編を読むこともあるかもしれない。
Posted by ブクログ
相変わらずだった。
男も女も子供も年寄りも
誰も彼もが美しくてモテモテで
恋人ふたりだけの清らかな世界に
けっ!と嘆きつつ
このぼんやりとあたたかく
春の陽だまりにまどろむような感じは
まさに吉本ばななだなー
と久しぶりに読んで思った。唯一無二。
そして、やっぱり死人が多い。
台北の賑わいやヘルシンキの凍える空気
八丈島の海風なんかをまざまざと感じ
ちょっと旅に出たくなったりした。
Posted by ブクログ
お土産を選ぶ
その行動だって当たり前なんかじゃなくて、待っている人がいてくれることがどれだけ幸せなのか噛み締めたい
吉本ばななさんの文章、独特で面白かった