吉本ばななのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
6作の短編集
ほとんどが身近な人の喪失を抱えている話だった。
自分の経験でも、抱えきれないほどの悲しみのなかにいるとき、何をみてもその人のことを思い出してしまい、どうしようもないことがある。
最後の章の言葉が印象的だった。
“どんなに他人と親しくなり、その人のことをわかったつもりになっても、結局その他人とは自分の中に生きているその人にすぎない。その人本人ではない。”
生きている間だって、大事な人は私の中にいる大事な人でありその人本人ではないのだから、
亡くなったって、私の前から急に消えたって、私の中にいる大事な人はいなくならない。ただ、その人はもう更新されない。
これから先の人生、また大きな悲しみに暮れたときは、この言葉を思い出すのだと思う。 -
Posted by ブクログ
「怖い」ではなく、理屈では説明できないような日常の中に起こることのあるちょっと不思議な物語がたくさん詰め込まれています。
あとがきで吉本ばななさんが2年間ずっと怖い話を読み、YouTubeを観て整合性がとれるようにがんばったと書いてありました。一つ一つ読んでいて気味の悪さを感じるものはあるものの、後味が悪いものはなくスッと入ってくるような感じでした。
数ある話の中で「光」だけは話の毛色が違っていて、物語の書き出しも「この話だけは少しトーンが違う。それは、実話だから。」で始まっています。何が優しさなのか、何が正しいのか、正論は時々人を傷つけることいろいろ考えさせられます。
ちょっと不思議な話の中では「最良の事故物件」が好きでした。「縁の方が大切で、縁だけが僕だけのものだから」これに気づかせてくれる前の住人がでてくるなら怖くないかも? -
Posted by ブクログ
初吉本ばななさん!女性作家好きとしてずーっと読みたいと思っていたのです。
嫋やかで優しくて、なんだか朗読したくなるような文章でした。
だけどその心地良さの中に、抜きん出た周囲の人や物事、気持ちに対する観察眼が詰まっていて、なんていうかもっと周り見て過ごそうとしみじみ感じました。
『確かにつぐみは、いやな女の子だった』
書き口からつぐみは亡くなったものとばかり思っていましたが、気丈に生き抜いてくれていたんですね。
ひと夏の出来事が、まりあの思い出の中でひと際輝いている一幕だったんだと思えました。
つぐみには、まりあより長生きして、「お前が先に逝くなよ」って憎まれ口叩きながら泣いて欲しい〜(妄想と願望)
それにしてもつぐみの口の悪さが想像の斜め上すぎて笑
意地悪な女口調かと思いきや、余裕で田舎のヤンキーばりの口の悪さでした笑
つぐみに限らずセリフは昔の口調ですが、地の文は現代に近くて、それがいいバランス感で心地よかったです。
時代背景も相まって、浮気相手側で幸せな家庭を築く母親と娘(まりあ)もなかなか珍しいなぁと思いました。
●とくに朗読したい文書たち ──────
『母は決してつよい人ではないが、無意識につよさを心がけているようなところがあった』
『海とは不思議なもので、2人で海に向かっていると黙っていても、しゃべっても、なぜかどっちでもかまわなくなってしまう』
『都会では人はいったい何に向かって「平衡」をおもうのだろう』
『私はふいにつぐみにピントが合ってしまったような、妙に切ない気持ちになった』
『しかし、そのときどんなに楽しいつもりでいても、後からおもいでを振り返ってみると、その夜の闇や電柱やゴミ箱のかげばかりがじんと暗くよみがえってくることがある。今思うと、その夜は本当にそうだった』
『人生は演技だ、と私は思った』
『ひとりの人間はあらゆる段階の心を、あらゆる良きものや汚いものの混沌を抱えて、じぶんひとりでその重みを支えて生きてゆくのだ。まわりにいる好きな人達になるべく親切にしたいと願いながら、ひとりで。』
『いつでも実のないことをぐにゃぐにゃ考えているだろう。気弱なくせにお高くとまっている〜〜〜』
『処女の情にほだされてうっかり結婚しちまった女殺のような気分』
『君は気骨があるから、ずっとここにいても、世界中を旅している奴よりたくさんのものを見ることができるよ』
『それは秋も冬もそうだったのに、振りかえるといつも夏だったような気がする』
『ものごとがおさまるべきところでその効力を発揮していることは、こうして見ているととても神聖で良いことに思えた』
『いろいろな種類の別れに満ちたこの世の中を、ひとつも忘れたくないと思った』
『誰に言うともなくつぶやいたその言葉は、それでもこのところ私が漠然と考えていたことをきちんと紡いでいたので、私は「うん」と言った』
『私は10年もの間、いろいろなものがひとつにあみこまれた大きなベールのようなものに守られていた。だれもがそこから出てみないとそのぬくもりには絶対に気がつかない。2度と戻れなくなってからでないと、自分がその中にいることすらわからないくらいに、ちょうどいい温度のベール。それは海であり、町全体であり、山本さん御一家であり、母であり、遠くに住む父であった。そんなすべてがあの頃は私をそっと包んでいた。私はいつでも楽しいし幸せだけれど、ときおりあの頃がたまらなく、悲しいくらいになつかしくなることがある。そんな時いつも、いちばんによみがえってくるのは、浜で犬と遊ぶつぐみと、にこにと自転車を引いて夜道を歩く陽子ちゃんの場面だった。』
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Posted by ブクログ
ネタバレあとがきが心にしみました。
以下、抜粋し引用します。
ーーーー(ここから)
・・・でも、心の中に灯った小さな不思議と希望は決して消えないように書いています。どうかその光があなたと共にありますように。
・・・
私が不思議を書くのであれば「日常を生きている中で確かだったはずの世界に裂け目を見た。そしてそれは結果として、長い目で見たら人生に少しだけ光を与えることになった」というものであってほしいと思いました。
ーーーー(ここまで)
ほんのりした光は自分の中だけに、あるいはわかりあえる人とだけ共有する大切なもの。そういうもの、生きていくと、ちょっとずつ溜まっていくのかもしれないな。すーっと忘れちゃうものもあるけど。