沢木耕太郎のレビュー一覧

  • 寒橋(さむさばし) 山本周五郎名品館III

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    「山本周五郎名品館Ⅲ 寒橋」山本周五郎 (編:沢木耕太郎)

    山本周五郎の短編集。相変わらずのクオリティ。
    この一冊ではなんと言っても「人情裏長屋」と「かあちゃん」です。くさいと言われようがベタと言われようが、泣けちゃうものは泣けちゃうのです。
    このあたりは個人的な好みなのか都合なのか分かりませんが、加齢してなおのこと涙腺が緩くなったような気がして、「人情裏長屋」「かあちゃん」で泣けてくるというのが加齢した結果なら、それはそれで歳月というものも悪くないような。
    特に「人情裏長屋」は、つまりはチャップリンの「キッド」なんですが、よく出来ています。素晴らしい短編。
    「オールタイム全人類短編小説大会

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    2019年03月23日
  • おたふく 山本周五郎名品館I

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    「山本周五郎名品館Ⅰ おたふく」山本周五郎 (編・沢木耕太郎)

    「わざとらしい」とか「くさい」とか「センチメンタルすぎる」とか「できすぎ」とか「ダサい」とか「ベタ」とか。そういう批判を受けることは大いにあると思いますが、だから嫌われたり、食わず嫌いされたりすることもあると思いますが、そんなことよりも、そんな批判を超えて余りあるパワーとクオリティ。「小説界の中島みゆき」だと思います。



    10歳~15歳くらいにかけてか、山本周五郎さんの本をよく読んでいました。司馬遼太郎さんとか藤沢周平さんとかもその頃に大抵読んだのですが、周五郎さんは独特の美味しさがある本というか。
    「樅の木は残った」「さ

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    2019年03月23日
  • 一瞬の夏(下)

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    再起第一戦を勝利で飾り、続く第二戦にもKO勝ちをおさめた
    カシアス内藤。そして、次に狙うは東洋ミドル級チャンピオンで
    ある柳済斗との試合だ。

    それは、内藤が望んだ「オトシマエ」だった。「クレイになれな
    かった男」で敗れた相手ともう一度闘いたい。その思いが、
    内藤をトレーニングに駆り立てた。

    しかし、事は順調には運ばない。韓国のプロモーターとの
    交渉、契約に際しての駆け引き。ルポライターであるはず
    の著者は、いつの間にか内藤の為に、試合のマッチメイク
    に奔走する。

    度重なる試合の延期と、難航する契約。その中で、1年を
    かけて作り上げて来た内藤の肉体と生活に変化が現れ、
    同じ夢に向かって走っ

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    2017年08月19日
  • 一瞬の夏(上)

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    世界チャンピオンも狙えると言われたボクサー、カシアス内藤の
    選手生命の終焉を描いた「クレイになれなかった男」から5年。
    カシアス内藤がリングを去ってから4年半。ルポライターとしての
    仕事の上で事実誤認からミスを犯した著者は、しばらく日本を
    離れようとしていた。

    友人との酒の席での他愛ない話の中で、思いもかけない
    ニュースが飛び込んでくる。どうやらカシアス内藤がリングに
    復帰するようだ…と。

    夢が、再び前に進み始める。再起に掛ける元チャンピオン、
    日本のボクシング界を語る時に忘れてはいけない名トレー
    ナーであるエディ・タウンゼント、著者の友人である若き
    カメラマン、そして、著者である沢木氏。

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    2017年08月19日
  • 波の音が消えるまで―第3部 銀河編―(新潮文庫)

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    沢木耕太郎『波の音が消えるまで 第3部 銀河編』新潮文庫。

    あっという間に最終巻を迎えた。非常に面白いのだ。劉が亡くなり、李蘭も去り、独りマカオに残り、バカラの必勝法を追い求める航平の辿り着く場所は…

    航平は、かつてノースショアで敗れた大波に乗れるのか…いや、結末は既に見えている。一度、大波に敗れた人間に、流れに身を委ねることなど出来ないのだ。

    束の間の儚い夢と新たな希望。ギャンブルとサーフィンを対比しながら、描かれる人生。そして、見事な結末。久し振りに良い物語を読んだ。

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    2017年08月05日
  • 波の音が消えるまで―第2部 雷鳴編―(新潮文庫)

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    沢木耕太郎『波の音が消えるまで 第2部 雷鳴編』新潮文庫。

    マカオを舞台に伊津航平、劉、李蘭の3人を巡る物語は続く。バカラにはまり、バカラの必勝法を追い求める航平と謎の男・劉、背中に傷痕のある娼婦・李蘭の過去と現在が交錯する。

    面白い。読み進めば、読み進むほどに面白くなる。

    波に乗るのも、波に翻弄されるのも人生だが、なかなか波に身を委ねることは難しい…なすがままに…

    やはり、ギャンブル小説でもあり、サーフィン小説でもあるようだ。表向きにはギャンブルを描いているが、その裏ではサーフィンの真髄を描いているように思う。流れに身を委ねる…なかなか出来ないことだが、サーフィンの真髄、人生を楽しむ

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    2017年08月07日
  • 波の音が消えるまで―第1部 風浪編―(新潮文庫)

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    沢木耕太郎『波の音が消えるまで 第1部 風浪編』新潮文庫。

    久し振りに読む沢木耕太郎だった。『凍』以来だろうか。20年以上前に読んだ『深夜特急』に衝撃を受け、貪るように沢木耕太郎の作品を読んでいた時代もあった。

    序章で主人公が亡くなった劉さんが残したノートに記された『波の音が消えるまで』という1行を目にした時、何故か涙が零れた…理由は解っている。

    面白い。非常に面白い。

    ハワイのノースショアの大波に敗れ、バリ島へと居を移し、マカオへと渡ったサーファー伊津航平を主人公にしたサーフィン&ギャンブル放浪小説。確かにギャンブル小説という色合いが濃いのだが、間違いなくサーフィン小説として

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    2017年08月04日
  • 危機の宰相

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    ネタバレ

    池田勇人元首相の評伝というよりは、所得倍増計画の誕生秘話。誕生に大きな役割を果たした池田元首相と二人のブレーンがルーザー<敗者>であったことや、多くの学者、官僚、政治家が否定的であったことなど、初めて知ったことばかり。非常に興味をそそられる内容でした。

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    2017年02月08日
  • 旅の窓

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    疲れた時にすっと心に隙間風のように入って来る言ノ葉たち、そしてさり気ない旅先の写真。他のこの方の書籍も手に取って読んでみたくなった、そんな一冊。
    但し諸事情にて幻冬舎の書籍は以後読まないと決めたので、他の出版社からリリースされている書籍に限りますが、この本は常にバッグに入れて持ち歩きたい一冊になりました。

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    2016年09月04日
  • 「愛」という言葉を口にできなかった二人のために

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    [口にできない、したくない]家族、恋人、夫婦、そして友情......。形は異なれど、「愛」という言葉を最後まで口にできなかった人々が描かれる映画の数々を評した作品。著者は、評者が最も好きな書き手の一人である沢木耕太郎。


    著者の個人的なエピソードなどが評文の冒頭に置かれ、その後に映画のあらすじが語られるのですが、この冒頭部分が簡潔ながらもとにかく秀逸。自然と、それでいてグイッと映画の世界の入口へと読者を誘ってくれること間違いなしです。


    本書で取り上げられた映画は、予め評することを決めて鑑賞したものではないようなのですが、どれも思わず見たくなってしまうから不思議。少し変わった角度から書かれ

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    2016年04月20日
  • テロルの決算

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    1960年10月、社会党の浅沼稲次郎氏が刺殺されたテロ事件を、関係者への詳細な取材をもとに再現したもの。
    犯人の山口二矢の生い立ちと、浅沼氏の生い立ち及び政治的思想の背景を綿密に調べ、殺された浅沼氏のそのときの状況と、殺した17歳の山口の焦燥などが詳しく語られ、非常に詳しくこの事件を再現している。
    浅沼氏が殺されたときの各関係者の状況描写は、まるで映画を見ているかのような書き方で、自分もその場にいたかのように錯覚してしまう。

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    2016年01月23日
  • 一瞬の夏(上)

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    才能があるのに努力しないボクサーが5年のブランクを経て再帰する物語。
    若干29才で年を取っていると言われてしまうボクシング界。
    人生経験や試合経験よりも、瞬発力、運動神経、目の良さ、そして絶対に勝つ気迫が重要な要素だ。
    若いときに自分の才能に気づき、それに溺れることないように努力させるには、本人の性格もあるが周りの協力者の力が非常に重要だ。
    沢木さんは一度見捨てたボクサーの再帰を知り、ふたたび力を貸すようになる。
    主人公が練習に打ち込めるよう環境を整えたり、試合をスケジュールするが、ボクシング界の背後には腹黒い人間や、欲深い人達が渦巻き、一筋縄ではいかない。

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    2015年12月14日
  • テロルの決算

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    著者がまだ若いときに出版されたもので、著者が真実に迫ろうとする、真摯でまじめな姿勢がうかがえる。

    まず、取材先の数が膨大である。
    自分のなかの疑問を少しでも解き明かすため、著者はあらゆる関係者の声を聞きたかったのだろう。そのころはまだ大作家ではなく、おそらく自分でアポをとり、自分で取材趣旨を説明し、自分で話を1件1件聞き、自分でルポにまとめていたのだろう。全体の完成度からみれば後の作品のほうが良いだろうが、著者が構成力を、取材を丁寧かつ時間をかけて積み上げることによってカバーし、結果として読者がよりよく真実を見極められる材料を提供している。

    さらに、山口二矢の関係者と、浅沼稲次郎の関係者と

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    2015年11月10日
  • 一瞬の夏(上)

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    [丁半の定め刻]圧倒的な才能を有しながらも、ボクシングに本気になれず、その世界から惨めな敗北とともに脚を洗ったカシアス内藤。そんな彼が4年ぶりに復活するという話を耳にした著者は、引退前の彼に取り憑かれたときのように、またジムへと訪れ、彼の再起をその眼で見たいと願うのであるが......。男たちの一世一代の賭けを追ったノンフィクション。著者は、私がもっとも好きなライターの1人である沢木耕太郎。


    人生で一度は震えの起こるような勝負をしてみたいと思ったことがある方なら、本書を読んで間違いなく震えが走るはず。ボクシングに「かたをつける」ためにリングに上がるカシアス内藤、その内藤に形容し難い夢を見る

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    2014年11月10日
  • オリンピア ナチスの森で

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    [巫女の誘うベルリン、1936]ヒトラー率いるナチスの下で開催された1936年のベルリン・オリンピック。その記録映像で世界的な名監督として祭り上げられ、戦後はその作品の故にナチスに加担したとして世の中から疎まれ続けた「巫女」、レニ・リーフェンシュタール。五輪の映像として史上最高とされている彼女の『オリンピア』を縦糸に、その大会にまつわる数々のエピソードを記した作品です。著者は、日本のノンフィクションといえばこの人、沢木耕太郎。


    やはり沢木氏、人生の「峰」と「谷」を切り取るのが抜群に上手い。本作においても、レニ・リーフェンシュタールの、ベルリン・オリンピックに参加した日本選手たちの、さらには

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    2013年08月17日
  • 一瞬の夏(上)

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    沢木耕太郎は、人物を題材をゆっくりと選ぶ作家だ。
    主人公である『カシアス内藤』に少しづつ自分を重ねてゆき、覚悟を決めて同行していく。
    自分とうまく折り合いが付けられず、
    何か「やりきれなさ」を抱えたまま終盤を迎える。

    著者の作品を読んでいると、せつなさが込み上げてくる。独自の視点で何処か天邪鬼で、必ずしも読者の期待に応えなくて。

    若い頃の著者は、いつも答えのないものと格闘していた。
    それがもしかしたら「青春」なのかもしれない。

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    2013年03月05日
  • オリンピア ナチスの森で

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    1936年に行われたベルリンオリンピックの映画と日本人選手の活躍を描いたノンフィクション。
    オリンピック映画を撮影したレニ・リーフェンシュタールへのインタビューと映画を基に、日本人の活躍と当時のオリンピック熱を描く。
    オリンピックになると、日本中が大騒ぎになっていたのは今も昔も同じだったようです。日の丸を背負って、ベルリン大会に出場した選手には大きな期待が掛けられ、栄光を掴み取った選手もいれば、力及ばず敗退した選手もいました。勝った選手、負けた選手それぞれの生い立ちから、出場までの経緯、競技の内容、オリンピックのエピソードやその後の人生など、緻密に取材されていて大変面白かった。
    レニ・リーフェ

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    2012年11月23日
  • 危機の宰相

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    日本近代史に詳しくないので知らないことだらけでした。
    高度経済成長の始まりにいた池田内閣の話。
    人として政治家として応援したくなる人物たちですが、今もこういうマジメな政治家がいるんだろうか。

    経済学や経済学者がどんな働きをしているかも、少しわかってきた。

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    2012年10月23日
  • テロルの決算

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    1960年10月12日。東京の日比谷公会堂では自民党・社会党・民社党の
    3党首による立会演説会が行われていた。

    民社党委員長の西尾末広の演説が終わり、社会党委員長の浅沼稲次郎
    が壇上に立つ。

    会場の右翼からは凄まじい怒号とヤジが飛ぶ。警戒する警備陣の
    隙をつくように、ひとりの少年が壇上に駆け上がった。その手には
    鈍く光る刃物が握られていた。

    演説中の浅沼委員長に体当たりするように、手にした刃物で刺殺した
    犯人は山口二矢。当時17歳。

    60年代安保の国会突入の際に亡くなった樺美智子が学生運動の象徴に
    祭り上げられたように、二矢はこの暗殺事件を起こしたことで右翼の
    なかで英雄として祀られる

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    2017年08月17日
  • 危機の宰相

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    高度経済成長とは何だったのか・・・
    所得倍増とは何だったのか・・・

    この閉塞感漂ういま、日本が輝いていたと思われる時代が、
    いったいどういったものなのかを知りたかった。

    それにあたり、本書を読んでみたのだが、
    やはり、60年代というのは、輝いていたのだと思った。

    もちろん、テーマは政治であるが、
    いかんせん、下村治の異色ぶりに感嘆させられる。
    キーワードは大蔵省だ。関係している人たちの出自が大蔵省。

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    2012年04月29日