沢木耕太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
密偵としてモンゴルからインドまで旅を続け、日本人ということを隠すため、ラマ教徒と偽る。
西川さんの行動力や努力は計り知れない。
未開の地で生きていくのに、現地の言葉を覚え、托鉢をして僅かな食糧を得て、殆んどが野宿。
ヒマラヤに近い地域の峠を何度も登り降りし、匪賊
の脅威にさらされながら集落に着くと、軒を借りながら次の地を目指す。
読んでいて、西川さんの8年に渡る経験を疑似体験
したような感覚だった。
人生には、生きながらえるための食糧と寝床さえ有ればあとは何も要らないといった人生観を養えたのは、あの体験があったからなのか。
この小説に出会わなければ、このような日本人がいたと分からないままだっ -
Posted by ブクログ
長い旅には人生と同じように、幼年期、少年期、青年期、壮年期があり、移ろい変わるのかもしれないという言葉にピンときた。私は一時期旅だけをして生きていきたいと思っていたことがあったが、何が目的なのか考えていくうちに、旅だけをする人生はつまらないと感じてしまった。でも、これは人生と旅を一緒に考えたからであって、歴史を勉強してから行ったり、どうしても経験してみたいことなど何か目的を持って行ったら素晴らしい経験になるのではないかと思う。作者の見てきた長旅をしている者たちは疲労で好奇心が摩耗し、外界に対し興味がなくなっている。そしていつ崩れるかわからない危うさと隣り合わせで旅の目的すらなくただシルクロード
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Posted by ブクログ
沢木耕太郎さんの、初の時代小説ということで
読んでみる。この分厚さ‥読めるだろうかと、
内心思ったが、読み始めると意外なほどにこの小説にすんなりと入り込め、一気に読み終えた。
獄門を申し渡された講釈師・馬場文耕は長い
日本の芸能史において、ただひとりだけ
芸によって死刑に処せられることになった芸人。
彼は今でいう、ジャーナリスト。
彼が書いていたものは、主として江戸に生きる
人々についての「町のうわさ」時には、
時の最高権力者である、九代将軍家重に
ついてさえ、過激な噂話を書いたらしい。
当時は御法度である、幕府が隠そうとする真実を、講談によって世間に広めることは今の報道機関と
同じ役割。 -
Posted by ブクログ
大学生の今、この冒険を読めてよかった。今はもうインドも発展して当時のような凄まじい風景が見られることは少ないだろうけど、これを経験できたらこの先何があっても大したことないと思えるだろう。今まで私が思っていた旅の仕方は、表面的にその国に触ることしかしていないことに気付かされた。その国の人と会話や交渉をしたり、日常の風景に溶け込むことでこそ異文化を感じられる。私は体が強い方じゃないから、作者のような旅をするとしたら、確実に1国につき1回は病院に行くことになりそうだが、20代のうちにこのような旅をしてみたい。大学を卒業したら何をしたいのか全く想像がつかない私にとって、良い刺激となった。
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Posted by ブクログ
私はタイとインドネシアにそれぞれ教育のボランティアで行ったことがあるが、その時の異国の生活が思い出された。観光客として世界遺産などの観光地を見て、美味しい名物を食べ、買い物して…という旅もたまにはいいが、現地の生活に溶け込むことでしか見えないものがあり、それが描かれていたのがとても良かった。あとお金の心配というのは長旅あるあるだから、いくらお金があっても足りなくて節約旅になっているのがなんともいい味を出していた。マカオの大小では、読んでいるこっちからしたら、「もうやめておきなよ」と思ってしまったが、落ちるとこまで落ちるという決心は潔くてこういう旅にも憧れた。
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Posted by ブクログ
江戸の中期に活躍した講釈師、馬場文耕の話。面白かったです。
この本を読んで、馬場文耕その人と、重なる時代に登場した田沼意次等の有名人物、そして、現在の日本橋や吉原の地理を知ることができました。講釈師、今では、講談師とよばれる職が当時に存在し、百姓、租税を巡る社会問題に由来して、従来の講釈師のスタイルから徐々に変容していく様が描かれています。
馬場文耕の実際のキャラクターは当然わからず、田沼意次においてはこれまで持ったイメージとかなり異なる人物でしたが、文中の言葉を引用すると、これこそ文耕のスタイルを踏襲した拵えものだと捉えられます。
義理や人情があちこちに現れて、時代劇の映画を見ているような面