沢木耕太郎のレビュー一覧

  • 暦のしずく

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    宝暦8年、日本の芸能史において、ただ一人だけ芸によって死刑に処せられた講釈師・馬場文耕の生き様を小説にした著者初の長編時代劇。
    貧乏長屋に住み、筆耕もしながら太平記など軍記物の講釈をしていた文耕は、次第に武家物、色街の女や御店者が出てくる江戸市井の話で人気を博していく。
    さらに、お家騒動の実話や将軍・徳川家重の話までするようになり、大胆さを増していく。
    若い頃、一緒に道場通いをしていた田沼意次との再会、文耕と同じ長屋に住む謎の若い剣豪、貸本屋の娘で吉原に売られるお六、粋な御店衆などとの人情味あふれる交流が読ませどころだ。
    主な登場人物は、皆、文耕の欲のない人柄に惚れ込み、文耕を助けようとする。
    文耕は、剣の達人でありながら、剣を捨て、人の道を重んじるキャラ。
    最後には、命をかけて弱者を救おうとする。
    ストーリーは、庶民感覚に訴えるもので、スリルあふれる場面もあり、分かりやすい。加えて、文耕が語る数々の講釈話がそれぞれ面白い。
    一粒で、十も美味しい、そんな小説である。

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    2025年09月10日
  • 旅のつばくろ(新潮文庫) 電子オリジナル版

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    恥ずかしくも初めて沢木さんの著書を読んだ。
    エッセイを読んでこれ程心震える感覚はなかなか味わえないような気がする。

    国内旅行での体験や人との関わり。
    言葉一つ一つが刺さってくる。
    生きていく上で大切なことは、肌身で感じることなんだと思い知らされる。
    知った気になったりわかったつもりになりがちな現代人にこそ読んで欲しい。
    今しかない時を逃さないで、失敗出来る時にたくさん失敗しろとメッセージが込められている。

    その土地を味わうには自分の足で赴くことだ。

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    2025年09月08日
  • 深夜特急6―南ヨーロッパ・ロンドン―(新潮文庫)【増補新版】

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    ついにゴールのロンドンへ。長旅お疲れ様でした。最後は意外とあっけなく、予想外の展開で笑ってしまった。

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    2025年09月05日
  • キャラヴァンは進む―銀河を渡るⅠ―(新潮文庫)

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     槍ヶ岳山行に持っていき、2泊目で読み終えたので、本書の内容に引き込まれたと言っていいと思う。

     1994年から25年分のエッセイのえり抜きが本書で、『そう、その通り』と、うなずきながら読み進める。若いころから著者の作品が好きでよく読んでいたが、本書のエッセイの中に、『四十年ほど前、二十代の半ばだった私は、…』と深夜特急の旅に触れたエッセイがある。まさに、今の私と同年代の頃に書かれたエッセイだ。来し方は大きく違うが、共感するところが多くある。特に本書のタイトルになっている『キャラヴァンは進む』だ。

     ある年長の作家に「本を処分するとしたらすでに読んでしまった本と、いつか読もうと思い買ったままになっている本のどちらか」と、たずねられた時、若かった著者はすでに読んだ本を処分すると答えた。それに反し、年長の作家は「読んだことのない本は必要なくなってくる、そして実は大事なのは読んだことのある本なんだ」と言われたと。

     これはこたえた。衝撃を受けた。著者も、年齢を重ねた今はそれに同意すると書いているが、まさにその通りだと思う。私は今まで読んできた本で思考を膨らませている。本多勝一さんや丸山健二さん、片岡義男さんや大藪春彦さん、思考だけでなく、娯楽の方向性も読んだ本により発展させてきた。その他のエッセイも、私も60歳を過ぎた今だからこその理解があったように思う。

     やはり、僕は山登りをしていたあいだ、本書に引き込まれた日々を過ごしていたと思う。

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    2025年09月04日
  • キャラヴァンは進む―銀河を渡るⅠ―(新潮文庫)

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    沢木耕太郎の25年間のエッセイ集。深夜特急の旅、オリンピックの取材、作家との対談、ボクシングについてなど、どれも彼の世界の真ん中にあるものですね。25年にわたって、彼のシンプルで鋭い文体が全く変わっていないようにみえるのもまたすごいことだなと。

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    2025年09月04日
  • 深夜特急3―インド・ネパール―(新潮文庫)【増補新版】

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    ディープなインドがとても衝撃的
    ガンジス川は聖なる川で、身を清めたりするのは聞いたことがあったが、そのほとりで人身を焼いたり、沈めたりというのはとても信じられない
    澤木さん、発熱後どうなってしまうのか、続きが気になる

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    2025年09月02日
  • 暦のしずく

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    はて、どこまで本当なのか、それとも騙りなのか。
    世話物を地で行く市井の描写。友情、朋輩、師弟の関係。さらには手に汗握る剣豪シーンなども交え、最後は政談物へと流れ込んでいく。
    盛り上がってきたところで横道にそれて説明をはじめたり、どこか俯瞰した描写をしてみたり、沢木耕太郎の語り口はまさに講談そのものへの敬意に感じる。終わり方も講談的。
    この小説は是非、現役の講釈師が連続読みの噺に仕立てて欲しい。
    講釈師が講釈師を語り(「東玉と伯圓」のように)、さらにその中で講釈をする。

    一気読みの快作。
    それにしても文耕先生モテすぎでしょう、というところだけ気になったけど、こんなこともまぁ、あったとか、なかったとか。

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    2025年08月11日
  • 深夜特急6―南ヨーロッパ・ロンドン―(新潮文庫)【増補新版】

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    ラストが思ったよりあっさりしてた。でも実体験を基にしてるのだから、案外こんなもんかなぁ
    この旅を実際に経験した沢木耕太郎にしか、このラストの感慨はわからないのかも知れない

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    2025年08月04日
  • 暦のしずく

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    ノンフィクション作家と言いながらも、このように大作の歴史小説を書かれるとは…。
    僅かな資料しか残っていない馬場文耕という講釈師を、これほど人間味溢れた血肉の付いた人物描写で読ませてくれた。
    文耕の講釈が封建時代の理不尽な事件に切り込んでいく困難さと、武士社会への気骨ある反駁に読み手の気持ちは同調していく。
    小説最後の件に僅かな安堵を覚えたのは、沢木耕太郎氏の温情だろうか…。
    読みでのある556ページだった。

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    2025年08月01日
  • 天路の旅人(上)(新潮文庫)

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    ☆☆☆ 2025年7月 ☆☆☆

    西川一三。このような人物がいたことはまったく知らなかった。
    第二次世界大戦中に密偵として中国奥地に進入し、チベットからヒマラヤを越えインドまで旅をした稀代の旅人の物語。
    本書は沢木耕太郎が西川の取材のため東京から盛岡へ発つところの回想から始まる。いまから四半世紀前というから、おそらく1998年~2000年ごろ?と思われる。「年に364日働いている」という西川と酒を酌み交わしながらの取材を重ねたものの、インタビューを中断し、再開できないまま西川は亡くなってしまう…
    それでも沢木耕太郎はこの人物のノンフィクションを書くことをあきらめず、遺族への取材や資料の綿密な読み込みの結果完成したのが本書だ。


    西川は山口県生まれ。少年時代から西域にあこがれを抱いていた。司馬遼太郎といい、井上靖といい、この時代の少年にとって西域は未知なるもの、冒険心をくすぐる象徴のようなものだったのだろう。
    西川は満鉄に就職し中国にわたるが、職を辞し興亜義塾という組織に入り、蒙古の言葉、文化を学び密偵として中国奥地へ旅立っていく。日本と交戦中である中華民国の物資調達ルートを探ること。数年におよぶ長い旅の始まりだ。


    ロブサン・サンボーと名乗り、ラマ教徒に扮して雄大だが残酷なゴビ砂漠を渡り西域へ。巡礼増の仲間やラクダとともに、アルガリ(動物の糞)を燃料としながら過酷な旅を乗り切っていく。道なき道を行き、星を見ながら方向を定める旅。
    前半部分ではバト少年の死の場面があまりにも悲しく忘れられない。
    旅の供として「売られた」バト少年。9歳ながらも過酷な旅に同行し、不満をもらさなかった強い少年。彼がおもちゃを与えられ初めて子供らしい喜びに浸り無邪気な笑顔を見せた数日後、病により旅立ってしまった。だからその笑顔は西川にとって忘れられないものとなった。遺体は砂漠に葬られ数日たてば、動物に啄まれ、乾燥により骨だけになってしまっていた…

    さらに旅を続ける西川。
    時に巡礼の旅人たちや行商人とともに。
    急流を泳ぎ切り対岸に渡ってしまったラクダを連れ戻し喝さいを浴びることも。
    そして1945年。
    西川はチベットにて日本の敗戦を知る。

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    2025年07月30日
  • 深夜特急2―マレー半島・シンガポール―(新潮文庫)【増補新版】

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    1990年代の東南アジアの旅の記録。
    2025年現在の日本人である私たちの多くも、ここに描かれる東南アジアを東南アジアとして抵抗なく認識できるが、それは東南アジアから当時から変わらないのか、それとも日本人にとっての東南アジアが当時から変わらないのか。その差は、経済的な指標を見比べるだけではなく、今の東南アジアを旅して流れる空気を直接感じなければわからない僅かな差なのかもしれない。

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    2025年07月22日
  • 天路の旅人(下)(新潮文庫)

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    戦前の修猷館の卒業生ならば、こんなパワフルな人がいても納得します。それでも、帰国してからの行動や、お互いの帰国にいたる経緯に対しての思いが対照的でした。帰国してからも飽きない!

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    2025年07月21日
  • 天路の旅人(上)(新潮文庫)

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    チベットに対して特別な興味はない。派手なアクションもない。移動の過酷さは、伝わってくるが、めきつく騙されたり、目を背けるまでの厳しい場面もない。しかし、最後まで夢中にしたのは何でしょうか?とにかく身体が丈夫な主人公でした。ずっと栄養が気になってました。

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    2025年07月19日
  • 旅の窓

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    写真も、その横に添えられている筆者のとりとめのない思いもすごくマッチしてて好き!
    旅の静けさ、発見、楽しさなどが聞こえてくる
    あぁ、旅に行きたくなってきた

    異国の地へ旅した時に読みたい作品。

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    2025年07月14日
  • 深夜特急5―トルコ・ギリシャ・地中海―(新潮文庫)【増補新版】

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    ヨーロッパに近づく中で筆者も読者も物価の高さや街の雰囲気など、どこか日本と似通ったものを感じ、懐かしくなりつつも、旅の終わりを意識し始めるが、読んでて変わらず面白い

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    2025年07月10日
  • 深夜特急4―シルクロード―(新潮文庫)【増補新版】

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    旅先で読むととても良い。金を払うか時間を無駄にするか、どうでも良くなって街に埋没すること、他のヒッピーの生気のない目をみてハッとすること、ソ連が健在で、ポーランドから共産主義の若者がインドの物乞いを嫌悪する。インドの病はインドの薬でしか治らない。病と貧困と、

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    2025年07月06日
  • 天路の旅人(下)(新潮文庫)

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    第二次世界大戦末期、中国の奥地からチベットやインドへ、ラマ教の巡礼僧に扮して密偵として8年に及ぶ旅をした西川一三の記録。
    沢木耕太郎さんの取材と文章で、様子が目に浮かぶような、わかりやすく迫力のあるストーリーで驚きと興奮が止まりませんでした。

    戦時中に敵国へという危険な状況、スマホもない、旅の装備もない、そんな中、
    例えば西川さんの旅の一部、中国の西寧からチベットのラサまでは、日本で当てはめると、北海道の札幌から鹿児島の指宿までとのこと。
    それも平均高度4500メートル。
    それを徒歩で。
    雪や雨のなか寝たり、凍るような河を泳いで渡ったり、酸素の薄い高山を歩き通したり、不可能と思えることばかり。
    人間の生命力の強さなのか、それとも西川さんの持つ運と生命力なのか。
    体力だけでなく、今のように語学学習手段があふれていな
    中、英語、モンゴル語、チベット語をマスター、それに加えてヒンディー語、ウルドゥー語などの読み書きもできるように。
    信じられないような旅でした。

    「国家という後ろ盾がなくとも、ひとりの人間として存在していける」
    長く厳しい旅をしながら、西川さんの得た感想が壮大で、圧倒されます。

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    2025年06月19日
  • 心の窓

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    沢木耕太郎さんのフォトエッセイ
    「旅の窓」の続編
    どの写真もその風景に溶け込んだ人々が
    何気なく写っている
    これらを見ると
    どんな国であれどんな環境であれ
    人は変わらず
    生きている
    ことがよくわかる
    心が落ち着いたり、せつなくなったり、
    楽しくなったり
    見るものにいろんな感情を与えてくれる

    今もなお争っている国のトップの方々に
    このフォトエッセイを送りたい
    きっと何か感じてくれるはず
    人類はみな同じなのだから
    傷つけて良いはずがないのだから

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    2025年06月15日
  • 天路の旅人(下)(新潮文庫)

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    「国家なき民族の末路は現世の地獄だななどという感想を抱いたことを思い出した。しかし、いま、自分がその国家を失おうとしている。戦争に敗れ、連合国軍の占領下にある日本は国家としての存続が危うくなっている。もはや日本という国家の庇護を受けることはできない。どうしたらいいか。」西川一三が敗戦を確信したときの記述部分。私は、ここを読んだとき、ある老紳士から諭されたことを思い出した。「海外でパスポートを無くしたとき、自分が何者であるのか証明するのは至難の業。国家が自分の存在を証明してくれている。」と。当時の私は外国への憧れが強かった。そしてなんとなく日本を軽視していたと思う。所属している国家のことを真剣に考えないことは、自分の存在すら証明できないことに繋がる。自分の国を大切にしないことは、他の国の人から見れば、自分を大切にしていないに等しく写るのではないか。国家に所属していることについて考えさせられたあの日を思い出した。

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    2025年06月09日
  • 天路の旅人(上)(新潮文庫)

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    西川一三の旅。山口の地福出身。帰国後、盛岡で暮らした理由はたまたまとあったが、腑に落ちなかった。「困難を突破しようと苦労しているときが旅における最も楽しい時間なのかもしれない。困難のさなかにあるときは、ただひたすらそれを克服するために努力すればいいだけだから、むしろ不安は少ない。」恐れていては一歩も踏み出せなくなり、踏み出して努力すれば、いずれゴールに辿り着くことができる。旅に失敗はつきもの。旅をすることは前向きになることなのかもしれないと想う。

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    2025年06月09日