沢木耕太郎のレビュー一覧

  • テロルの決算

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    鮮烈なルポルタージュ
    『テロルの決算』

    1.概要
    沢木耕太郎氏の『テロルの決算』は、1960年の「浅沼稲次郎暗殺事件」という戦後史の暗部を抉り出した、魂を揺さぶるノンフィクションの金字塔です。

    単なる事件の記録ではなく、その裏に隠された一人の17歳の少年の孤独な思想と、彼を取り巻く時代の空気が、読者に重くのしかかります。

    2.事件の真相
    事件の発端は、社会党・浅沼委員長が中国訪問で語った「アメリカ帝国主義は、日中共同の敵」という強烈なスピーチでした。

    この言葉は当時の右翼勢力に激しい怒りの火をつけ、事件の引き金となります。

    これに触発された少年、山口二矢の思考が、本書の核心です。彼は

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    2025年10月17日
  • オリンピア1996 冠〈廃墟の光〉(新潮文庫)

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    古代オリンピックが消滅したようにこの近代オリンピックみ衰退の一途を辿っているのではないか。
    沢木氏の近代オリンピックに対する視点は批判的で。
    古代、勝者が得るものは栄誉とオリーブの冠だけだったオリンピックがあからさまな商業主義の生贄となってしまった。
    彼の非難は大会をそんなものにしてしまったサマランチ会長に限らずスポンサー、選手自身、それを許してしまっている世の中の人々にも向けられている。
    特にこの作品で取り上げられているアトランタ五輪に関しては近代オリンピックがアテネで始まって100年目という記念すべき大会であるにもかかわらず何故アテネでなくアトランタなのか。
    まさしく巨大スポンサーであるア

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    2025年10月05日
  • 深夜特急3―インド・ネパール―(新潮文庫)【増補新版】

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    ザダル・ストリート!
    ダシャシュワメード・ガート!
    懐かしい青春時代の地名に心が踊った。

    ガヤで野宿したくだりの描写が美しすぎて、私もまた、旅に出たいという思いが強烈に湧いてきた。

    いつかまたインドに戻りたい!

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    2025年09月29日
  • 深夜特急2―マレー半島・シンガポール―(新潮文庫)【増補新版】

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    独特のユーモアと、カラッとした湿度の低い気まぐれな冒険心、どこか自分に対しても突き放したところがある文体が妙に心地よくて面白く読めた。

    -欲望はなかった。しかし、奇妙な使命感が体を熱くした。(本文104p)

    -《われわれはツーリストを大いに歓迎する一一ただしヒッピーは除く》
    だが、残念なことに、ツーリストとおぼしき人物は、私を含めてすべてがヒッピー風だった。(本文121p)

    -旅に出て鈍感になっただけなのかもしれないが、それ以上に、またひとつ自由になれたという印象の方が強かった。(本文180p)

    怪しげな安宿、深夜到着の心もとない旅程、衛生的に不安が残る露店のジュースなど、リスクより冒

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    2025年09月27日
  • 深夜特急1―香港・マカオ―(新潮文庫)【増補新版】

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    多分20歳の時に読んで、いてもたってもいられなくなって香港行き航空券を取った思い出。いい一人旅やった。熱量ある文章は割と本当に人を動かすと思う。
    旅の適齢期は26歳らしい。気づいたら超えてた。

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    2025年09月27日
  • 天路の旅人(下)(新潮文庫)

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    読売文学賞を受賞した圧巻のノンフィクションでした。

    読み終わった今もじんわりと熱を帯びた余韻が残っています。
    西川氏と共に旅をしたような……
    でもそれも、雪の降り荒ぶ中、自転車を引いて歩き去る西川氏と共に霞んでいくような…

    そんな読後感を噛み締めています。

    要約じゃこの良さは味わえません。

    ぜひ多くの方に読んでほしいです。

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    2025年09月22日
  • 旅の窓

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    SNSを開くと、良くも悪くも“綺麗”な写真が、留めなく押し寄せてくる昨今。

    そんな時代の中で、著者が切り取る一瞬は、世界の旅先の、ほんの些細な日常の一コマ。

    旅の醍醐味は、観光地の景観の美しさや、その土地の美味しい料理を堪能することだけでなく、

    そこに生きる人たちの息遣いを、感じることなのだろうと思わせてくれた。

    あぁ、旅に出たくなった。

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    2025年09月22日
  • いのちの記憶―銀河を渡るⅡ―(新潮文庫)

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    もともとは「銀河を渡る」というエッセイ集を、「キャラバンは進む」と「いのちの記憶」に分けて文庫化した作品。旅に関する内容が比較的多かった「キャラバンは進む」に比べ、「いのちの記憶」は対談をもとにしたものが多い。美空ひばり、高倉健といった人々との対談。特に高倉健とはこんなに深い交流があったのかと驚きました。

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    2025年09月16日
  • 深夜特急3―インド・ネパール―(新潮文庫)【増補新版】

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    もし『深夜特急』を一冊だけ読むとしたら、私はこの本を推します。
    インド・ネパール編。

    何もかもが違う。
    死生観によるものなのか、カースト制によるものなのか、あくせくと日々の生活に摩耗している自分にとって、インドの風景はまさに別世界だった。病院で患者と向き合い、命や死に接しているはずの自分が、なお日本の枠組みの中でしか物事を見ていなかったことに気づかされる。そこでは生と死がもっと身近で、同時に自然なものとして受け入れられていた。

    幸せとは何か、生きるとは何か。過去・現在・未来、そして価値観や空間を超えて、普遍的な問いを突きつけられる感覚があった。

    同じ人間でもここまで違う。
    それでも通じ合

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    2025年09月13日
  • 暦のしずく

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    宝暦8年、日本の芸能史において、ただ一人だけ芸によって死刑に処せられた講釈師・馬場文耕の生き様を小説にした著者初の長編時代劇。
    貧乏長屋に住み、筆耕もしながら太平記など軍記物の講釈をしていた文耕は、次第に武家物、色街の女や御店者が出てくる江戸市井の話で人気を博していく。
    さらに、お家騒動の実話や将軍・徳川家重の話までするようになり、大胆さを増していく。
    若い頃、一緒に道場通いをしていた田沼意次との再会、文耕と同じ長屋に住む謎の若い剣豪、貸本屋の娘で吉原に売られるお六、粋な御店衆などとの人情味あふれる交流が読ませどころだ。
    主な登場人物は、皆、文耕の欲のない人柄に惚れ込み、文耕を助けようとする。

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    2025年09月10日
  • 旅のつばくろ(新潮文庫) 電子オリジナル版

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    恥ずかしくも初めて沢木さんの著書を読んだ。
    エッセイを読んでこれ程心震える感覚はなかなか味わえないような気がする。

    国内旅行での体験や人との関わり。
    言葉一つ一つが刺さってくる。
    生きていく上で大切なことは、肌身で感じることなんだと思い知らされる。
    知った気になったりわかったつもりになりがちな現代人にこそ読んで欲しい。
    今しかない時を逃さないで、失敗出来る時にたくさん失敗しろとメッセージが込められている。

    その土地を味わうには自分の足で赴くことだ。

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    2025年09月08日
  • 深夜特急6―南ヨーロッパ・ロンドン―(新潮文庫)【増補新版】

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    ついにゴールのロンドンへ。長旅お疲れ様でした。最後は意外とあっけなく、予想外の展開で笑ってしまった。

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    2025年09月05日
  • キャラヴァンは進む―銀河を渡るⅠ―(新潮文庫)

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     槍ヶ岳山行に持っていき、2泊目で読み終えたので、本書の内容に引き込まれたと言っていいと思う。

     1994年から25年分のエッセイのえり抜きが本書で、『そう、その通り』と、うなずきながら読み進める。若いころから著者の作品が好きでよく読んでいたが、本書のエッセイの中に、『四十年ほど前、二十代の半ばだった私は、…』と深夜特急の旅に触れたエッセイがある。まさに、今の私と同年代の頃に書かれたエッセイだ。来し方は大きく違うが、共感するところが多くある。特に本書のタイトルになっている『キャラヴァンは進む』だ。

     ある年長の作家に「本を処分するとしたらすでに読んでしまった本と、いつか読もうと思い買ったま

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    2025年09月04日
  • キャラヴァンは進む―銀河を渡るⅠ―(新潮文庫)

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    沢木耕太郎の25年間のエッセイ集。深夜特急の旅、オリンピックの取材、作家との対談、ボクシングについてなど、どれも彼の世界の真ん中にあるものですね。25年にわたって、彼のシンプルで鋭い文体が全く変わっていないようにみえるのもまたすごいことだなと。

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    2025年09月04日
  • 深夜特急3―インド・ネパール―(新潮文庫)【増補新版】

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    ディープなインドがとても衝撃的
    ガンジス川は聖なる川で、身を清めたりするのは聞いたことがあったが、そのほとりで人身を焼いたり、沈めたりというのはとても信じられない
    澤木さん、発熱後どうなってしまうのか、続きが気になる

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    2025年09月02日
  • 暦のしずく

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    はて、どこまで本当なのか、それとも騙りなのか。
    世話物を地で行く市井の描写。友情、朋輩、師弟の関係。さらには手に汗握る剣豪シーンなども交え、最後は政談物へと流れ込んでいく。
    盛り上がってきたところで横道にそれて説明をはじめたり、どこか俯瞰した描写をしてみたり、沢木耕太郎の語り口はまさに講談そのものへの敬意に感じる。終わり方も講談的。
    この小説は是非、現役の講釈師が連続読みの噺に仕立てて欲しい。
    講釈師が講釈師を語り(「東玉と伯圓」のように)、さらにその中で講釈をする。

    一気読みの快作。
    それにしても文耕先生モテすぎでしょう、というところだけ気になったけど、こんなこともまぁ、あったとか、なかっ

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    2025年08月11日
  • 深夜特急6―南ヨーロッパ・ロンドン―(新潮文庫)【増補新版】

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    ラストが思ったよりあっさりしてた。でも実体験を基にしてるのだから、案外こんなもんかなぁ
    この旅を実際に経験した沢木耕太郎にしか、このラストの感慨はわからないのかも知れない

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    2025年08月04日
  • 暦のしずく

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    ノンフィクション作家と言いながらも、このように大作の歴史小説を書かれるとは…。
    僅かな資料しか残っていない馬場文耕という講釈師を、これほど人間味溢れた血肉の付いた人物描写で読ませてくれた。
    文耕の講釈が封建時代の理不尽な事件に切り込んでいく困難さと、武士社会への気骨ある反駁に読み手の気持ちは同調していく。
    小説最後の件に僅かな安堵を覚えたのは、沢木耕太郎氏の温情だろうか…。
    読みでのある556ページだった。

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    2025年08月01日
  • 天路の旅人(上)(新潮文庫)

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    ☆☆☆ 2025年7月 ☆☆☆

    西川一三。このような人物がいたことはまったく知らなかった。
    第二次世界大戦中に密偵として中国奥地に進入し、チベットからヒマラヤを越えインドまで旅をした稀代の旅人の物語。
    本書は沢木耕太郎が西川の取材のため東京から盛岡へ発つところの回想から始まる。いまから四半世紀前というから、おそらく1998年~2000年ごろ?と思われる。「年に364日働いている」という西川と酒を酌み交わしながらの取材を重ねたものの、インタビューを中断し、再開できないまま西川は亡くなってしまう…
    それでも沢木耕太郎はこの人物のノンフィクションを書くことをあきらめず、遺族への取材や資料の綿密な読

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    2025年07月30日
  • 深夜特急2―マレー半島・シンガポール―(新潮文庫)【増補新版】

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    1990年代の東南アジアの旅の記録。
    2025年現在の日本人である私たちの多くも、ここに描かれる東南アジアを東南アジアとして抵抗なく認識できるが、それは東南アジアから当時から変わらないのか、それとも日本人にとっての東南アジアが当時から変わらないのか。その差は、経済的な指標を見比べるだけではなく、今の東南アジアを旅して流れる空気を直接感じなければわからない僅かな差なのかもしれない。

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    2025年07月22日