沢木耕太郎のレビュー一覧
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槍ヶ岳山行に持っていき、2泊目で読み終えたので、本書の内容に引き込まれたと言っていいと思う。
1994年から25年分のエッセイのえり抜きが本書で、『そう、その通り』と、うなずきながら読み進める。若いころから著者の作品が好きでよく読んでいたが、本書のエッセイの中に、『四十年ほど前、二十代の半ばだった私は、…』と深夜特急の旅に触れたエッセイがある。まさに、今の私と同年代の頃に書かれたエッセイだ。来し方は大きく違うが、共感するところが多くある。特に本書のタイトルになっている『キャラヴァンは進む』だ。
ある年長の作家に「本を処分するとしたらすでに読んでしまった本と、いつか読もうと思い買ったま -
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はて、どこまで本当なのか、それとも騙りなのか。
世話物を地で行く市井の描写。友情、朋輩、師弟の関係。さらには手に汗握る剣豪シーンなども交え、最後は政談物へと流れ込んでいく。
盛り上がってきたところで横道にそれて説明をはじめたり、どこか俯瞰した描写をしてみたり、沢木耕太郎の語り口はまさに講談そのものへの敬意に感じる。終わり方も講談的。
この小説は是非、現役の講釈師が連続読みの噺に仕立てて欲しい。
講釈師が講釈師を語り(「東玉と伯圓」のように)、さらにその中で講釈をする。
一気読みの快作。
それにしても文耕先生モテすぎでしょう、というところだけ気になったけど、こんなこともまぁ、あったとか、なかっ -
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☆☆☆ 2025年7月 ☆☆☆
西川一三。このような人物がいたことはまったく知らなかった。
第二次世界大戦中に密偵として中国奥地に進入し、チベットからヒマラヤを越えインドまで旅をした稀代の旅人の物語。
本書は沢木耕太郎が西川の取材のため東京から盛岡へ発つところの回想から始まる。いまから四半世紀前というから、おそらく1998年~2000年ごろ?と思われる。「年に364日働いている」という西川と酒を酌み交わしながらの取材を重ねたものの、インタビューを中断し、再開できないまま西川は亡くなってしまう…
それでも沢木耕太郎はこの人物のノンフィクションを書くことをあきらめず、遺族への取材や資料の綿密な読 -
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沢木耕太郎氏はノンフィクション作家ではありますが、エッセイも多く書いています。
なかでも本にまつわる、というよりその作品に寄せたあとがきを数多く残しています。
それらが一冊に収められているのが本書です。
もの凄い分量です。
よくまあ、これだけ多くの作品に対して自身の感想だけでなく、物語のキモとなる部分を抜き出して一つの「読みモノ」として作り上げることができるもの
だと感心というより、恐れ入ってしまいます。
書評とはこうあるべきか、と学ばせてもらえます。
あの「深夜特急」で多くの若者を旅に誘ったように、本の世界にも魅力的に導いてくれる一冊です。 -
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▪︎旅慣れた人の澱んだ感じ(責任のない放浪、金がなくて卑しくなって行く)
▪︎旅してもその国のことは知れない(暇な老人と子供としか触れ合わない)
▪︎語れない。行った場所の批評しかできないつまらなさ。
▪︎騙されたくないと必死になる自分が嫌になる(初心を忘れる)
▪︎虚無に耐えられなくなる。カトマンズ旅人の吹き溜まり。
→旅への憧れと現実。また、感じていた違和感への言語化にもなった。
▪︎臨機応変に次に行きたい街を選ぶ。
▪︎失敗だって当たり前にある。
▪︎交渉してもいい、気に入らなかったらやめていい、都度、判断していい。
→自身も旅行中だったので、沢木さんの失敗のレベルの高さに自分の失 -
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深夜特急を3巻まで読んで何故この本にはまっているのか考えてみたところ、理由は大きく分けて2つありそう。
1つ目は沢木さんの旅を追体験できること。計画性がありそうでない、彼の心と直感に従って旅をする経験に憧れるから。倹約精神と若さ故の無茶で乗り切る旅が好きだ。
2つ目は沢木さんの綴る言葉や表現が好きだから。枕詞に続く意外な言葉の組み合わせには、意表を突かれるような感覚に何度もなった。だから沢木さんの言葉たちを自分の中にインストールさせてもらっている。自分は ‘言葉は思考の体現’ だと思っているから、沢木さんの言葉というより以前に考えが好きなんだと思う。
対談で沢木さんのことを「上手く口ごもる -
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第二次世界大戦末期、中国の奥地からチベットやインドへ、ラマ教の巡礼僧に扮して密偵として8年に及ぶ旅をした西川一三の記録。
沢木耕太郎さんの取材と文章で、様子が目に浮かぶような、わかりやすく迫力のあるストーリーで驚きと興奮が止まりませんでした。
戦時中に敵国へという危険な状況、スマホもない、旅の装備もない、そんな中、
例えば西川さんの旅の一部、中国の西寧からチベットのラサまでは、日本で当てはめると、北海道の札幌から鹿児島の指宿までとのこと。
それも平均高度4500メートル。
それを徒歩で。
雪や雨のなか寝たり、凍るような河を泳いで渡ったり、酸素の薄い高山を歩き通したり、不可能と思えることばかり