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宝暦八年、獄門を申し渡された講釈師・馬場文耕。長屋暮らしの文耕は、かつてなぜ刀を捨て、そして獄門に処されることになったのか? 謎に包まれた実在の人物、文耕の生涯を端正な文章と魅力的な登場人物で描き出す。沢木耕太郎、初にして堂々たる時代小説!
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Posted by ブクログ
一緒に歩いているような気になる。史実を丹念に追っていて、同時代の本を読んだ時に読み流して事件の真相を知った気になった。
沢木耕太郎氏による初の時代小説。 江戸の庶民生活、剣術、恋愛、巨悪による陰謀と盛り沢山ながら、やがて一本の線へと見事にまとまっていく。 冒頭に結末が語られ、そこへ至るストーリーであると何度も思い起こさせておいてまさかのどんでん返し。
江戸時代に唯一芸人でありながら獄門となった市井の一講釈師にスポットを当てて長編小説と仕立てたという一見地味な主人公の物語であるのに、いつものように引き込まれるような沢木耕太郎の書きっぷりに読後の満足感を味わっている。 松平右近将監、田沼意次という登場人物から、大河ドラマの石坂浩二と渡辺謙の顔を思い浮...続きを読むかべたのは私だけでは無かったのではと思う。 68という齢となりまだ仕事をさせてもらっているが、人生の最後に悔いなく生きたと思えるよう残された人生を大切にしたい。 また、静岡にいる間に田沼意次が治世した相良の地を訪ねてみたいという思いを改めて強くさせてくれた。
沢木耕太郎初の時代小説。 なぜ自分はこの人物を主人公に時代小説を書こうと思ったか、が初めに語られる。 「長い日本の芸能史において、ただひとりだけ芸によって死刑に処せられることになった芸人」講釈師、馬場文耕が主人公。
宝暦8年、日本の芸能史において、ただ一人だけ芸によって死刑に処せられた講釈師・馬場文耕の生き様を小説にした著者初の長編時代劇。 貧乏長屋に住み、筆耕もしながら太平記など軍記物の講釈をしていた文耕は、次第に武家物、色街の女や御店者が出てくる江戸市井の話で人気を博していく。 さらに、お家騒動の実話や将軍...続きを読む・徳川家重の話までするようになり、大胆さを増していく。 若い頃、一緒に道場通いをしていた田沼意次との再会、文耕と同じ長屋に住む謎の若い剣豪、貸本屋の娘で吉原に売られるお六、粋な御店衆などとの人情味あふれる交流が読ませどころだ。 主な登場人物は、皆、文耕の欲のない人柄に惚れ込み、文耕を助けようとする。 文耕は、剣の達人でありながら、剣を捨て、人の道を重んじるキャラ。 最後には、命をかけて弱者を救おうとする。 ストーリーは、庶民感覚に訴えるもので、スリルあふれる場面もあり、分かりやすい。加えて、文耕が語る数々の講釈話がそれぞれ面白い。 一粒で、十も美味しい、そんな小説である。
はて、どこまで本当なのか、それとも騙りなのか。 世話物を地で行く市井の描写。友情、朋輩、師弟の関係。さらには手に汗握る剣豪シーンなども交え、最後は政談物へと流れ込んでいく。 盛り上がってきたところで横道にそれて説明をはじめたり、どこか俯瞰した描写をしてみたり、沢木耕太郎の語り口はまさに講談そのものへ...続きを読むの敬意に感じる。終わり方も講談的。 この小説は是非、現役の講釈師が連続読みの噺に仕立てて欲しい。 講釈師が講釈師を語り(「東玉と伯圓」のように)、さらにその中で講釈をする。 一気読みの快作。 それにしても文耕先生モテすぎでしょう、というところだけ気になったけど、こんなこともまぁ、あったとか、なかったとか。
ノンフィクション作家と言いながらも、このように大作の歴史小説を書かれるとは…。 僅かな資料しか残っていない馬場文耕という講釈師を、これほど人間味溢れた血肉の付いた人物描写で読ませてくれた。 文耕の講釈が封建時代の理不尽な事件に切り込んでいく困難さと、武士社会への気骨ある反駁に読み手の気持ちは同調して...続きを読むいく。 小説最後の件に僅かな安堵を覚えたのは、沢木耕太郎氏の温情だろうか…。 読みでのある556ページだった。
ノンフィクションの名手による時代物。江戸中期の講釈師、馬場文耕。近世講談の祖とされる文耕の素性に関する資料は、関根只誠『只誠埃録』の記述のみで、あとは幕府による死罪の記録があるだけ。ほかに資料がないということを疑いたくなるノンフィクションライターの書き上げた556ページの大作。見てきたような嘘を吐く...続きを読む講談師を、その場で取材をしたかのような書き方で蘇らせたノンフィクションライターの見事な読み物。
馬場文耕、魅力的な主人公を、史実ノンフィクションを超えて、沢木耕太郎が創出。 お六、田鶴がいい。お芳も。 生きて、なにをしたのか?
文耕の人となりを序章の解説で知ってしまったので、悲劇的な成り行きを覚悟して読んだけれど、一捻りある結末に、こう来たかとニヤリとした。爽快だった。この小説自体が、事実と拵え物が絶妙に混ざった文耕が語る講釈の再現のようで、時代物の醍醐味を楽しんだ。
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