沢木耕太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
子供の頃から斜に構えた人間だったので沢木耕太郎は意識高い人間が読むものだと読まず嫌いして避けて通っていたけれども本作は高校時代の友人が勧めていて、かつボクシングの話なので意を決して読んでみました。
結論としてはすごく面白くて夢中になって読みました。
カシアス内藤のことはうっすらと知っていて結末に向かっていくにしたがってドキドキよりも不穏な気持ちの方が大きくなるかなと思いながら読んでいたけれども、結末に至るまでの人物と心の描写がすごくて、ああこれは沢木耕太郎信者が多いわけだと納得してしてしまいました。
やはり好きなジャンルのノンフィクションはいいものだなーと思いつつ、こう言う好きなジャンル -
Posted by ブクログ
現実に起きたこの事件は知らなかったが、小説として書き起こされた当時の情景に息を呑む思いを感じる。17歳の少年が人を殺し冷静に取り調べを受け自決する。物語終盤の以下の言葉が少年テロリストのものに思えないが、そう思って読むと様々な感情が湧き起こってくる。
「私の人生観は大義に生きることです。人間必ずや死というものが訪れるものであります。その時、富や権力を信義に恥ずるような方法で得たよりも、たとえ富や権力を得なくても、自己の信念に基づいて生きてきた人生である方が、より有意義であると信じています。自分の信念に基づいて行った行動が、たとえ現在の社会で受け入れられないものでも、またいかに罰せられようとも、 -
Posted by ブクログ
会社員時代の出張で新幹線を利用していると、トランベールっていう冊子に連載されていたのを駅弁の紹介コーナーと並んで楽しみに読んでました(今も連載されてるのでしょうか?)。本の大きさといい重さといい手触り装丁が紙の本として旅のお供にぴったり。電子書籍も荷物にならなくていいけどこういう感じの本だと紙の方がいいなぁと思ってしまいます。一気に読むのでなく一編一編味わって少しづつ読むのが楽しかった。それにしても心にしみる文章です。完璧な予定を立てて滞りない旅行よりも思いがけないものとの遭遇の方が感動が上回るエピソードは実感します。コロナ後の自由になってきた世の中でまた用心しつつ、思いがけないものとの出会い
-
Posted by ブクログ
JR東日本の雑誌『トランベール』に連載していたエッセイから、著者自ら41編を選んで一冊にまとめたもの。当時、新幹線の車内で読んでいた人が羨ましくなる、素晴らしい内容でした。
例えば「絵馬の向こう側」では、日本人と海外から来た人の書く内容から、視点の違いにドキっとしたり、「旅の長者」では、旅に出て予期しないことに出くわす”旅運”についての記述など、たくさんの興味深いエッセイがありました。
なかでも、一番好きなのは「夜のベンチ」です。著者が、16歳の春に初めての一人旅である、東北一周の旅に出たきっかけが「終着駅」に書かれていますが、そのときに起きたあるエピソードについて書かれています。人ってい -
Posted by ブクログ
沢木耕太郎『旅のつばくろ』新潮文庫。
東北新幹線の車内誌『トランヴェール』に連載された国内旅のエッセイから41編を収録。
新型コロナウイルス感染禍が始まる前から『トランヴェール』に連載されたエッセイで、東北地方についても触れていたので、新幹線に乗車する度に楽しみにしていた。2020年1月、いよいよ新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい出すと新幹線を利用する機会も無くなり、このエッセイを読む機会も無くなってしまった。
先日、4年振りに新幹線に乗車すると『トランヴェール』の連載エッセイが柚月裕子に変わっていたのを初めて知った。
沢木耕太郎の初めての旅は16歳の時に周遊券を握り締めて回った -
Posted by ブクログ
上巻の最後、老齢の4人は才能を秘めた若者・黒木と出逢いました。下巻は、この黒木が4人からボクシング指導を仰ぐ場面から始まり、物語の展開スピードが増していきます。
「孤独」「陰」のイメージの上巻、下巻は「陽」の印象が強まり、ゆっくり流れていた4人の共同生活は、次第に活力がみなぎり、変化していきます。
自分たちの経験と技を黒木に伝えようと指導に注力していく様は、新たな目標をもった人間の潜在的なパワー、伝える熱意の凄みさえ感じます。
まるで、自分たちが果たせなかった夢を追い求めるように‥。
不動産屋の佳菜子は、陰ながら重要な役割を果たしていますが、彼女の過去等少々盛り過ぎ感が‥。
ボ -
Posted by ブクログ
新幹線の車内誌などに掲載されている「旅の
つばくろ」エッセイ集の続編です。
コロナ禍でのマイクロツーリズムを実践する
国内旅行の紀行文集です。
とは言っても、有名観光地を巡るのではなく
沢木氏の過去の経験から「心に引っかかった
地」をぶらり訪れる内容です。
それなのに、その「引っかかり」の理由も解
明されなかったり、そもそも最終目的地に辿
り着けなかったりと、割と「テキトー」なの
です。
しかしそれが「旅」なのだと著者は言います。
沢木耕太郎がそう言うと、非常に説得力があ
ります。
そう、旅は「テキトー」でいいのだと納得す
る一冊です。 -
Posted by ブクログ
主人公は、かつてボクシングで将来を嘱望されるも、不公平な判定負けを契機に渡米した広岡仁一。米国で再起を目指すも叶わず、ホテル経営で成功し40年が過ぎていました。病を抱えながら、ふと唐突に帰国するところから物語は始まります。
ここから広岡は、自分の目的も判らないまま、記憶を辿り過去をなぞり、導かれるように動きます。かつて試合をした後楽園ホール、ジム、更に四天王と呼ばれた仲間たちを訪ねて‥。
上巻は、このようにボクシング場面がほとんどなく、沢木さんが得意とする放浪の旅に近い旅情を誘う描写が多く、情景が目に浮かぶようです。
また、登場人物の描き分けが素晴らしく、それぞれ個性的で人間臭さが