沢木耕太郎のレビュー一覧

  • 一瞬の夏(下)

    Posted by ブクログ

    子供の頃から斜に構えた人間だったので沢木耕太郎は意識高い人間が読むものだと読まず嫌いして避けて通っていたけれども本作は高校時代の友人が勧めていて、かつボクシングの話なので意を決して読んでみました。

    結論としてはすごく面白くて夢中になって読みました。

    カシアス内藤のことはうっすらと知っていて結末に向かっていくにしたがってドキドキよりも不穏な気持ちの方が大きくなるかなと思いながら読んでいたけれども、結末に至るまでの人物と心の描写がすごくて、ああこれは沢木耕太郎信者が多いわけだと納得してしてしまいました。

    やはり好きなジャンルのノンフィクションはいいものだなーと思いつつ、こう言う好きなジャンル

    0
    2024年05月19日
  • テロルの決算

    Posted by ブクログ

    現実に起きたこの事件は知らなかったが、小説として書き起こされた当時の情景に息を呑む思いを感じる。17歳の少年が人を殺し冷静に取り調べを受け自決する。物語終盤の以下の言葉が少年テロリストのものに思えないが、そう思って読むと様々な感情が湧き起こってくる。
    「私の人生観は大義に生きることです。人間必ずや死というものが訪れるものであります。その時、富や権力を信義に恥ずるような方法で得たよりも、たとえ富や権力を得なくても、自己の信念に基づいて生きてきた人生である方が、より有意義であると信じています。自分の信念に基づいて行った行動が、たとえ現在の社会で受け入れられないものでも、またいかに罰せられようとも、

    0
    2024年05月13日
  • 春に散る(下)

    Posted by ブクログ

    あとがきにこうあった。描きたかったのは、見事な「生き方」や鮮やかな「死に方」ではない。一瞬一瞬のいまが全ての「在り方」、現在をないがしろにしたり犠牲にしたりせず、いま在るこの瞬間を慈しむ「在り方」を描きたかったのだと。

    0
    2024年05月12日
  • 春に散る(上)

    Posted by ブクログ

    ボクシング小説だと聞いて読み始めたが「上」では、そんな場面などもほとんどなく、ボクシングを引退した後あまり芳しくない人生を送ってきた70歳手前のチャンピオンにもなれなかった元ボクサー四人が邂逅していく話だ。ほぼ同世代なので、その複雑な心情がしみじみと伝わってきてほろほろする。しかし、「上」の最期の最後に登場した半グレと一緒にいた若者が、この後の「下」巻を熱いものに変えていく。

    0
    2024年05月12日
  • 春に散る(下)

    Posted by ブクログ

    著者の沢木先生が理想の人生を描いた作品に思える

    登場人物が全員いとおしくかっこいい

    こんな年の取り方をしてみたいものだ

    0
    2024年04月16日
  • 春に散る(上)

    Posted by ブクログ

    チャンピオンをあきらめた男が
    日本に帰って チャンピオンを育てることをめざす物語

    同年代だからか 胸が熱くなる作品

    0
    2024年04月16日
  • 深夜特急5―トルコ・ギリシャ・地中海―(新潮文庫)【増補新版】

    Posted by ブクログ

     沢木耕太郎の旅行記はなぜこんなにも面白いのだろうか?それは彼が単なるヒッピー的なバックパッカーではなく、知性を備え、学ぶ力や応用する力を持った若者だからである。オーディブルで聴いたのだが、ハッとするような表現力にときどき読み返したくなった。オーディブルだとそのフレーズをメモろうとする間に流れてしまう。
     これも後から紙の本を買ってしまうかもしれない。

    0
    2024年03月12日
  • 飛び立つ季節―旅のつばくろ― 電子オリジナル版

    Posted by ブクログ

    会社員時代の出張で新幹線を利用していると、トランベールっていう冊子に連載されていたのを駅弁の紹介コーナーと並んで楽しみに読んでました(今も連載されてるのでしょうか?)。本の大きさといい重さといい手触り装丁が紙の本として旅のお供にぴったり。電子書籍も荷物にならなくていいけどこういう感じの本だと紙の方がいいなぁと思ってしまいます。一気に読むのでなく一編一編味わって少しづつ読むのが楽しかった。それにしても心にしみる文章です。完璧な予定を立てて滞りない旅行よりも思いがけないものとの遭遇の方が感動が上回るエピソードは実感します。コロナ後の自由になってきた世の中でまた用心しつつ、思いがけないものとの出会い

    0
    2024年01月30日
  • 敗れざる者たち

    Posted by ブクログ

    年末年始を海外旅行で過ごすことにし、旅行の友に選びました。私も30年前、「深夜特急」に影響を受け、アジアへ一人旅にでた若者の一人ですが、今回久しぶりに手にした筆者の作品。
    私にとっても馴染みのない野球選手、ボクサー、ジョッキー、ランナーにも関わらず、45年を経ても胸に迫るものがありました。時代が変わっもの変わらないもの、もしかして失われつつある愚直さ。生き方を問いかけられるようでした。自らの旅と等価以上の興奮を与えてくれる作品でした。

    0
    2024年01月02日
  • テロルの決算

    Posted by ブクログ

    社会党委員長の浅沼稲次郎が渋谷公会堂で行われた立会演説会の演説の最中にテロリストの若者と交錯した場面はテレビ映像で何回か見たことがあった。
    この本は17際の少年がなぜ暗殺に及んだのか、また、その時現場にいた多くの人たちが何を見て何を感じたのか克明に描いている。
    当時の政治情勢含めて詳細に描かれた秀作だと思う。

    0
    2023年12月15日
  • 旅のつばくろ(新潮文庫) 電子オリジナル版

    Posted by ブクログ

    JR東日本の雑誌『トランベール』に連載していたエッセイから、著者自ら41編を選んで一冊にまとめたもの。当時、新幹線の車内で読んでいた人が羨ましくなる、素晴らしい内容でした。

    例えば「絵馬の向こう側」では、日本人と海外から来た人の書く内容から、視点の違いにドキっとしたり、「旅の長者」では、旅に出て予期しないことに出くわす”旅運”についての記述など、たくさんの興味深いエッセイがありました。

    なかでも、一番好きなのは「夜のベンチ」です。著者が、16歳の春に初めての一人旅である、東北一周の旅に出たきっかけが「終着駅」に書かれていますが、そのときに起きたあるエピソードについて書かれています。人ってい

    0
    2023年11月15日
  • テロルの決算

    Posted by ブクログ

     社会党政治家が右翼少年に刺殺された事件がテーマとなったノンフィクション作品。二人の過去を辿りながら、社会党政治家側の視点、右翼団体の視点、そして、テロ至るまでの経緯が丁寧に描かれている。
     戦争、安保闘争、学生運動、その時々の人々の考えが伝わってくる、とても学びの多い作品だった。それぞれの転換期にどちらに世の中が傾いたか。世代間の考え方の違いは、歴史の積み重ねであることを感じた

    0
    2023年11月13日
  • 旅のつばくろ(新潮文庫) 電子オリジナル版

    Posted by ブクログ

    沢木耕太郎『旅のつばくろ』新潮文庫。

    東北新幹線の車内誌『トランヴェール』に連載された国内旅のエッセイから41編を収録。

    新型コロナウイルス感染禍が始まる前から『トランヴェール』に連載されたエッセイで、東北地方についても触れていたので、新幹線に乗車する度に楽しみにしていた。2020年1月、いよいよ新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい出すと新幹線を利用する機会も無くなり、このエッセイを読む機会も無くなってしまった。

    先日、4年振りに新幹線に乗車すると『トランヴェール』の連載エッセイが柚月裕子に変わっていたのを初めて知った。


    沢木耕太郎の初めての旅は16歳の時に周遊券を握り締めて回った

    0
    2023年11月05日
  • 春に散る(下)

    Posted by ブクログ

    こういう晩年もいいな。
    未来のために現在をないがしろにしたり、犠牲にしたりする「生き方」「死に方」ではなくて、今この瞬間を慈しむ「在り方」という表現が刺さった。

    0
    2023年11月03日
  • 将監(しょうげん)さまの細みち 山本周五郎名品館IV

    Posted by ブクログ

    沢木耕太郎氏が選んだ山本周五郎作品を含む。中でも「深川安楽亭」は宮部みゆき氏のエッセイ「平成お徒歩日記」でも紹介されていた味わい深い作品。悲しみを抱きながら月夜に独り酒を飲む男の描写が印象的で、この部分を何遍も読み返した。

    0
    2023年11月03日
  • 作家との遭遇(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    いつもながら、沢木さんはズルい。
    この本を読むだけでも
    人それぞれ何かしらと並行しているのに
    読んだ後にはこの本にある著者の
    何某かの本を探す運命に駆られる

    沢木耕太郎に出会い
    深夜特急を次世代に渡してなお 自身がこれほどまで沢木耕太郎に翻弄されるとは
    毒な良薬
    この意味が理解できたら
    貴方も立派な沢木耕太郎中毒

    広がる世界を遡るもよし
    この後に馳せるもよし

    0
    2023年10月23日
  • 春に散る(下)

    Posted by ブクログ

     上巻の最後、老齢の4人は才能を秘めた若者・黒木と出逢いました。下巻は、この黒木が4人からボクシング指導を仰ぐ場面から始まり、物語の展開スピードが増していきます。

     「孤独」「陰」のイメージの上巻、下巻は「陽」の印象が強まり、ゆっくり流れていた4人の共同生活は、次第に活力がみなぎり、変化していきます。
     自分たちの経験と技を黒木に伝えようと指導に注力していく様は、新たな目標をもった人間の潜在的なパワー、伝える熱意の凄みさえ感じます。
     まるで、自分たちが果たせなかった夢を追い求めるように‥。

     不動産屋の佳菜子は、陰ながら重要な役割を果たしていますが、彼女の過去等少々盛り過ぎ感が‥。
     ボ

    0
    2023年10月07日
  • 飛び立つ季節―旅のつばくろ― 電子オリジナル版

    Posted by ブクログ

    新幹線の車内誌などに掲載されている「旅の
    つばくろ」エッセイ集の続編です。

    コロナ禍でのマイクロツーリズムを実践する
    国内旅行の紀行文集です。

    とは言っても、有名観光地を巡るのではなく
    沢木氏の過去の経験から「心に引っかかった
    地」をぶらり訪れる内容です。

    それなのに、その「引っかかり」の理由も解
    明されなかったり、そもそも最終目的地に辿
    り着けなかったりと、割と「テキトー」なの
    です。

    しかしそれが「旅」なのだと著者は言います。

    沢木耕太郎がそう言うと、非常に説得力があ
    ります。

    そう、旅は「テキトー」でいいのだと納得す
    る一冊です。

    0
    2023年10月05日
  • 春に散る(上)

    Posted by ブクログ

     主人公は、かつてボクシングで将来を嘱望されるも、不公平な判定負けを契機に渡米した広岡仁一。米国で再起を目指すも叶わず、ホテル経営で成功し40年が過ぎていました。病を抱えながら、ふと唐突に帰国するところから物語は始まります。

     ここから広岡は、自分の目的も判らないまま、記憶を辿り過去をなぞり、導かれるように動きます。かつて試合をした後楽園ホール、ジム、更に四天王と呼ばれた仲間たちを訪ねて‥。

     上巻は、このようにボクシング場面がほとんどなく、沢木さんが得意とする放浪の旅に近い旅情を誘う描写が多く、情景が目に浮かぶようです。
     また、登場人物の描き分けが素晴らしく、それぞれ個性的で人間臭さが

    0
    2023年10月05日
  • テロルの決算

    Posted by ブクログ

    もともとノンフィクションは好きだが、文章が上手く、緻密で広い関係者からのヒアリングに基づきストーリーが作られた秀作。戦後に個人主義が進み、今は人間関係が薄い時代になっているが、まだまだ人間の濃さが残っていたのを感じる。

    0
    2023年09月23日