司馬遼太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
著者が二人の友人、正岡子規の養子であった正岡忠三郎と、詩人のぬやまひろし(通称タカジ)の人生を手繰り寄せるように綴った作品。この二人の男が、ともかく変わった、味のある男で、こう言っては何だけども本当に存在していたのか?もしや全て司馬遼太郎の創作なのでは・・・とも思ってしまう程にアウトサイダー。というかいかにも司馬小説に出てきそうな人となりだった。それはつまり、「時代小説にひょいと出てきそうな人物」という意味で、要するに古風。というか武士のような男たちなのだということ。かな?まあ武士じゃなくて農民かもしれないが。そういえばどことなく儒教的でもあった。この二人の人生を辿りながら正岡子規や陸羯南の人
-
Posted by ブクログ
薩軍と政府軍の戦が本格化し、やがて終局へ向かっていく流れが記されている。
戦争とは、整然とした流れがあるのではなく、
大小様々な小競り合いが複雑に絡み合いながら、
戦局が定まっていくのだという事が読み取れる。
大まかな行軍ルートだけを決め、後は随時、
やみくもに目近の敵に向かっていくだけでは、いずれ弾薬・補給切れ、挟み撃ち等の不利な状況に自然と陥る。
大群を率いるには、大将だけでなく、優れた参謀が必要であるという事である。
薩軍にはそれがなかった事が敗因となる。
また、余談だが、普段縁のない鹿児島・熊本等の風土を知る事ができたのも大きい。
単なる、南国のその他多数の県と思っていたが、
歴史を知 -
Posted by ブクログ
西南戦争勃発〜前半戦までの様子が描かれている。
官軍の活発な補給活動・軍政と、
薩軍の勇猛さ、熊本協同隊の崇高な理想の対決である。
政府軍の装備・資源の豊富さ、山県等緻密な実務活動と、児玉等の天才的な策士
反政府軍側の作戦ミス、自己肥大化と、
負けるべくして、負けていく流れが、
当時の農村風景や生き残りの口述を元に描写されている。
戦争には、食料・弾薬様々な物がいり、
村々で徴収していく様に、巻き込まれる人々の悲惨さを見た。
だが、一部お祭り騒ぎにのっかるような、他人事のような気楽さも感じられた。
戦いは、前半、特に緒戦で決まる。
最初で負けると、士気がくじけ、
名誉挽回を図るあまり、無理をす -
Posted by ブクログ
西南戦争勃発前夜の話。
政府側と薩摩側の人物のエピソードが交互にあり、
作者は常に中立的視点から、この戦争の起こりを描こうとしている。
ただ、全体として、やや大久保擁護の文章であるが、
西郷についても、その器の大きさは認め、類まれない政治能力と人格的魅力を、
事細かに記している。
戦争のきっかけとなるキーワードは、西郷暗殺。
つまり、風説の力である。いつの時代も、大事を起こさせるのは、
世論であり、更にいえば真偽も定かではない噂話がきっかけになる。
それを意図的にしろ、偶発的なものにしろ、
それを利用し、自分のシナリオにしてしまえたものに、
最初から勝利が約束されているのである。
事実、西郷は -
Posted by ブクログ
熊本、神風連の乱に関する描写が主題。
一転して、反政府運動家側の活動内容が時系列で各団体の思想の相違点などを比較しながら、詳細に記述されている。
島津久光の読書ふり、春秋左氏伝、資治通鑑、史記、十八史略。国家の興亡の摂理がよくわかる。
長井雅楽の航海遠略、幕末における佐幕派の国策案としては歴史的な名論
西郷の人柄、親族の臨終直後でも、主治医に対して、丁重に落ち着いた礼を言った点で、
人に対して、常に丁重であったことをうかがわせるエピソード。
旧会津藩士永岡久茂、反政府指導者の中でも、優れた世界観と、人間としての魅力、力量を持っていた人物。目的意識も明快であった。
当時の警察の密偵調査の徹底振り -
Posted by ブクログ
大久保利通の外交術を主題として取り扱っている。
圧倒的に不利な立場で、征台の正当性を認めさせ、その兵費の賠償金を出させるという無理難題を呑ませるという離れ業をやってのける。戦争を掛け物にして、九割九部外交の果実だけを勝ち取る確信があったという。
西郷はあっさり諦め、大久保はひつこくくいさがる性質が比較される。
清国の実質的権力者である李鴻章を無視し、外交本部に直談判しにいくという出鼻のくじき方が爽快だ。
まともに行っても、うやむやにしてくるタイプには、相手の最終意思決定機関に飛び込み、
単刀直入に要件を切り出し、論点がずれないよう、また出た言葉について、一つ一つ言質をとり、つかんではなさない姿