半藤一利のレビュー一覧
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この2人の作家はジャーナリスト出身で、15年戦争に至った日本の歴史を冷静に語る著述が多い。彼らが2013年に対談した記録は10年以上を経ているにもかかわらず、先見性のある指摘というか、今も変わらないというか。日本のジャーナリズムの劣化、それが知性の退嬰を招き、民主主義を危機に追いやっており、ファシズムが抬頭していると、昭和一桁年代の状況に似てきたと危機感を共有している。「自虐史観」から「居直り史観」への移行がそれを象徴している。
日本のジャーナリズムの幕末ごろから、現在に至るまでの流れを書いている中で、明治初期が最も政府に批判的な言論が主張され、日清・日露の頃から、政府の情宣紙のように戦争に賛 -
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1945年8月14日から15日にかけて発生した「宮城事件」(みやぎじけん)と呼ばれるクーデター未遂事件の話です。
昭和天皇がポツダム宣言を受諾すると言ってから、国民に伝えるまでにクーデター未遂が起こっていたことは知りませんでした。
ただ、「お国のために」と戦争を指揮してきた軍隊の上層部や日本が勝つと信じて疑わない人たちが、クーデターを起こそうとするのは割と自然な流れのような気もします。それが天皇の聖断としても、自分の正義を武力で貫こうとしている人は恐いと思いました
最終的にクーデターが失敗に終わり、昭和天皇による玉音放送が実現したことは、日本の歴史が大きく転換する決定的な瞬間となり、終戦記念日 -
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半藤一利の歴史を彩る文人武人の手紙をテーマにしたエッセイ集『手紙のなかの日本人』を読みました。
半藤一利の作品は、昨年読んだ『日本型リーダーはなぜ失敗するのか』以来ですね。
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歴史探偵の名著復刊!
夏目漱石、親鸞、織田信長、明智光秀、勝海舟と西郷隆盛、永井荷風、小林一茶、良寛、太閤秀吉、細川ガラシャ……歴史を彩る文人や武人、22人の手紙。
無心状であれ、恋文であれ、遺書であれ、それらは真率な感情が綴られ、思わず笑ってしまったり、あるいは襟を正したり。
「いろんな人たちと一杯やりながらの会話を楽しむつもり」で、歴史探偵・半藤さんが美しい日本の手紙を -
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『正論』の連載を新書にまとめたものだが、25年前には保守派の議論もまだしも穏当なものだったとの感に打たれる。ただ座談形式なので仕方がないのかもしれないが、結構重い話なのに(笑)がついていたりすると、どうにも違和感を拭えない。
ハル・ノートのくだりなどは四人の議論が錯綜し、戦後半世紀を経た評論家の座談会でさえこの調子であれば、中堅幕僚の突き上げを食らっていた当時の政府が完全に当事者能力を失っていたというのも想像に難くない。
半藤が「元首の天皇が大元帥に命令して2.26や大戦を収束させた」と繰り返している(他の参加者はあまり取り合わないのだが)のは、明治憲法の構造上、「大元帥としての天皇」の戦争責 -
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半藤一利さんの「戦争というもの」を読みました。
率直な感想としては、読みやすく加工されたヘビーな作品といった感じで、180ページほどで戦争の残酷さを生々しく記載した本でした。
暴走する軍部、徴兵され命を落とす国民。戦争はこれだけの命を費やすほど大切なものなのか。なんともやりきれない気持ちになります。
特に印象に残ったのは、日本が戦争に突入するまでの流れのところです。本でいうと序盤ですが、自業自得の面も大いにあるとはいえ、日本がいかに追い込まれ、戦争に入っていったのかがよくわかります。この国際社会で『孤立』するリスクが痛いほど理解できました。
今年は戦後80年。戦争を経験した人は -
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太平洋戦争開戦となった真珠湾攻撃の12月8日。その日にいたる1ヶ月ほど前からの日米の外交戦略の推移を描き出した作品。
アメリカとの戦争は無謀であるということは重々承知の上で、開戦に踏み切った軍部の思考には追い詰められてしまったのか、という思いがあるのですが、暗号解読されていたという事情を知ってしまうと、全てが手のひらの上の出来事だったのか、という勝ち目がない以上に勝てるはずもないという無力感が出てしまいます。
真珠湾攻撃に成功したことを知った市井の人々が残した記録が興味深い。
戦争に勝てるという高揚感や、よくぞ開戦に踏み切ったという賞賛が全てではなく、敗戦を予測して暗鬱な気持ちを叫ぶ人もい -
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敗戦記念日がまた近付いてきたこともあってか、ふと手に取った。お三方(特に加藤さんと半藤さん)の著作はこれまでにちょくちょく読んでいるので、おさらいという感じで読んだ。
当時の色々な人の色々な思惑と事実とを照合すると、「対米戦を回避する術はあった筈」とやっぱり思ってしまう。
リットン報告書やハル・ノートに対する、冷静さを欠いた威勢がいいだけの感情的な煽りは、発行部数を伸ばすのにはよかっただろうが、亡国ぎりぎりまで民族を追い込んだ、という面では、マスコミの罪はとてつもなく大きいと思う。
また、五・一五事件のあと、実行者の助命嘆願書が百万を超える数集まり、裁判でも実行者が自身の信じる主義主張を -
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2025/04/07「昭和史戦前篇」半藤一利
戦前をまとめるには最適の書だが、掘り下げは浅い。
1.日本国はガバナンス不在 天皇・元老体制が権限・責任を喪失
一番は昭和天皇の中途半端な政治姿勢
形式的には天皇が絶対的トップだが共和制運営へ逃げる
軍部の引き起こした数々の事件、特に重臣暗殺は大きな影
2.軍部の暴走 統帥権干犯といいつつ独走・暴走
軍人の視野は狭く、「己の業績と勲章狙い」がせいぜい
国家を論じられたのは、石原莞爾と永田鉄山 対中観は真逆
3.近衛文麿の施策は国家犯罪
問題の多い政策を立案しては、退任で敵前逃亡
己の栄達のみで国家を滅亡させた それも彼の確信
本書では彼の一貫した想 -