半藤一利のレビュー一覧
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迎合艦隊司令長官 山本五十六の生涯をつづった一冊。著者である半藤一利氏が、同郷であることもさることながら、彼の生き様にほれ込み、畏敬を以て文章を連ねていることがよく分かる。盲目的に彼に傾倒しているわけではなく、『人間』としての一人の男の生涯を見ている。それ故、彼の人となりを称えているところもあれば、批判しているところもある。それによって生じた、本来であれば滞りなく邁進すべきであった攻略・作戦に大なり小なり影響もしている。
例え、後世の人々が、山本五十六を軍神として称えていたとしても、著者はあくまで『人間』としての山本五十六にほれ込み、そして知りたいと思ったのだろう。
山本五十六の人となりは、海軍に入って形成されたわけではない。彼の出身である、深い雪に閉ざされた新潟県で育まれる。日照時間が長くもなく、掻いても掻いても降り積もる雪。そんな環境だからこそ育まれた、忍耐強い精神と、いっちょ前の意気込み。
しかし、その意気込みだからこそ、彼は苦悩したのかもしれない。日露戦争による大国ロシアの勝利で、世間は勿論、軍部内も歯車が崩れてきた。その力を過信して、世界に渡り合えるような軍事力を研磨してこなかった。その最たる例が、戦艦大和であろう。海を制すれば戦争を制する、と言わんばかりの、世界最大級の戦艦。しかし、既に戦いは制空と火力の強さがものをいう。山本五十六は、それを熟知していた。そして、その物量の強さをこれ見よがしに物語っていたアメリカとの戦争を極力避けようとしていた。「国を守るためには何が必要なのか」を、彼は現実を熟知して行動に移そうとしていたのだ。そして、どんな相手であろうとも、戦いには礼儀を尽くそうとしていた。それ故、真珠湾攻撃の時の事前通告の手続きミスや、ミッドウェイ海戦の失敗は、彼をこの上なく落胆させたであろう。それが、その後の作戦にも如実に表れてる。それでも、彼はやるべきことがあれば、その力を尽くす限り戦う。
「国を守る」というのは、必ずしも戦うことではない。なるべく戦わないように軍事・外交の駆け引きを張り巡らせるのも、作戦の一つである。特に、物量で攻め込む相手であれば尚更だ。精神力だけで全てが賄えるわけではないからだ。勿論、精神力も、戦局を左右する一つではあるけれど、それを過信・期待してはいけない。山本五十六はこの時代になくてはならないリアリストである。しかしそれも、時勢の波に飲み込まれてしまったのだろう。運命の行先は、一人の人間の力だけでは、どうにもならない時がある。そして、今、冷静に過去を振り返ることが出来るからこそ、こうして、彼の功績を具に見ることが出来る。 -
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この戦争には明確な勝利点がない。広大な荒野にソ連軍と関東軍がそれぞれ国境線を主張する。はっきりいって国境線が5キロ10キロずれたとしても景色は変わらない。都市があるわけでも資源があるわけでもない。そんなところで、国境を犯したとして大本営の戦線不拡大の方針を無視して戦争を始める関東軍は無謀の一言に尽きる。とくに傲慢なのが参謀の辻正信だ。
『一挙に攻勢に出ればソ連兵は軟弱だからすぐに退却する』という相手を舐めきった認識のもと(陸軍の中では日露戦争以来のロシア兵に対する常識的な認識らしい)戦争をしたくてしょうがなく、挑発を繰り返した感じだ。おそらく辻の頭の中にはソ連軍との陣地争いに勝つことしたかなく、この局地戦がソ連との全面戦争に突入する極めて危険なことという認識が欠如している。辻の論理は簡単だ。『やられる前にやる。やられたからやり返す』
しかし、前線においてはある意味こういう威勢がいいだけの指揮官はいてもいいと思う。問題なのは大本営が、前線をコントロールできなかったことだ。それというのも大本営の内部でも意見の統一が出来ず、断固たる処分を下せなかったからだ。
関東軍も関東軍なら、大本営も大本営だ。責任は双方に課せられる。
それでも第一次のノモンハン事件では、関東軍は健闘する。ソ連軍戦車に対して火炎瓶で対抗する。無謀に思えるが、このころの戦車は火砲を打ちまくると車体が熱くなり、火炎瓶でも熱によって炎が広がり、操縦士のいる車体内部まで燃えたらしい。それによってかなりの戦車を無力化した。そして航空戦力でも日本軍の戦闘機や操縦士のほうが優秀だった。だから、まあ一進一退の攻防だったと言えなくもない。
でも第二次になると日本側の被害が次第に甚大になっていく。長くなるので省くが、ソ連軍の陣地はまさに鉄壁で、関東軍の装備では破ることはできない。
ソ連が深入りしなかったのはナチスドイツの動向が一番の気がかりだったためで、東西二方面で戦火を交えたくなかったことが大きい。
ただ従来言われてきたように『日本軍の惨敗』と言うのは当らない。ソ連の被害も甚大だった。
目的も明確な勝利点もなかったという点において、「惨敗」というより、「無駄死に」という言葉のほうが当ると思う。兵隊をただの駒と捉える非情な昭和陸軍の体質が表出した先鞭かもしれない。 -
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本書は、著名な歴史家4人による対談形式の本であるが、昭和史をわかりやすく概観できる良書であると思った。
昭和史は、侵略と戦争の時代と平和な戦後史にはっきり分かれると思うが、戦後世代にとって戦前の昭和史は、よく知らない別世界の出来事のように思えてしまうのが実感だろうと思う。
その戦前期の昭和史全体を鳥瞰するような本書は、興味深く読めた。
しかし、「昭和天皇の英明」という視点だけはどうだろうかと思った。本土決戦を叫ぶ陸軍を退けて「聖断」を下した事実を取り上げた評価なのだが、「英明」な君主だったら敗戦のような事態にはならないだろうと思われる。
しかし、本書は左右のイデオロギーに加担しない冷静な歴史認識の良書として高く評価できると思った。 -
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太平洋戦争の戦況を決めたのは指揮官たちの闘志である。この本を読んでこの単純な原理に気付いた。重要な局面では闘志の強い方が勝ち、戦闘の目的をあいまいに捉えていた方は負けている。
開戦冒頭では米軍には準備が出来てなかったし、事前に作戦を練ってきた日本軍の闘志の方が高かった。しかしミッドウェー海戦を境にそれは逆転する。十分に情報収集を行った上で、空母三隻で空母八隻を迎え撃ったミニッツと、「敵艦見ユ」の報から迎撃まで一時間半もモタモタした南雲司令部。これも南雲個人に責めを帰すのは酷というもので、南雲艦隊の戦略目的はミッドウェー占領か敵空母撃滅か、明示できなかった連合艦隊司令部に責任があり、山本の戦略発想を理解できなかった大本営・軍令部にも責任がある。戦後敗北の理由とされた爆装転換の不運も、結局は戦略目的のあいまいさに起因しているのだから。
ガダルカナルをめぐる南太平洋海戦でも闘志が戦局を決める。海上戦では総じて日本軍が優位だったにも関わらず、米軍は戦略目的であるガダルカナル飛行場の死守を達成した。海戦の勝利に満足した日本軍の現場指揮官と、手持ちの艦隊をすり潰してでも飛行場を守り抜いたハルゼイ。戦後海軍関係者は海戦での勝利を強調し海軍の優秀さを誇示したけれども、本当はガダルカナル撤収作戦の成功の方を、強調すべきだったのではないか。
作戦参謀三和中佐は言う。現時の長官、司令官、参謀長に名将少なし。大局明察の能ややありとする人は我意に強く、協調ありかと思えば無為または無責任。これらの人は不惑壮年の時に順境にあり、多くは酒間にて壮言を事として、反省することなかりし人ならむか、と。
組織に官僚化はつきものだが、官僚化した軍隊では戦えない。山本の指揮する連合艦隊も、現場には優秀で勇敢な士官も多かったのだろうが、司令官クラスまでトータルで見れば官僚化した人材を抱えながらの戦いだったのだろう。この問題は、現代の我々にも通じている。 -
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「それから」とは江戸城無血開城。維新後も旧幕臣のため、陰に日に働いた海舟の後半生を描いた評伝です。
裏で働きかけるといっても、海舟のそれは黒幕というような後ろ暗いイメージではないような。「たくさんの人と日頃から仲良くするのがお仕事」という、まさしく私の憧れるところのフィクサー。
福沢諭吉等には後々批判もされたようなんですけど、そういえば私の知ってるあるいは尊敬している人たちはみんな海舟派だなあ。
ところで作者の半藤一利って方、私は「昭和史」を書いた人としか知らなくて、すごくすごく偉い人だと思っていたんですけど(いや、もちろんとても偉い作家さんなんですけど)この本を読んだ感じでは、海舟を贔屓に引き倒しな、お調子者のおじさんでした(笑)
時間がとれなくてなかなか読み終われなかったけれども楽しい本でした。 -
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ネタバレ[ 内容 ]
「対米戦争の目的は何だったのか」、「陸軍エリートはどこで問違えた」等、戦後六十余年、「あの戦争」に改めて向き合った六人の論客が、参戦から敗戦までの疑問を徹底的に掘り下げる。
「文藝春秋」読者賞受賞。
[ 目次 ]
第1部 座談会・あの戦争になぜ負けたのか(対米戦争の目的は何だったのか;ヒトラーとの同盟は昭和史の謎;開明派・海軍が持つ致命的欠点;陸軍エリートはどこで間違えた ほか)
第2部 あの戦争に思うこと(空しかった首脳会議;八月九日の最高戦争指導会議;私の太平洋戦争観;果たされなかった死者との約束 ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
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[ 内容 ]
国を鎖していた小さな国が、急速な近代化をなしとげ、しまいには世界の“一等国”を自任するまでになった。
しかし東亜の風雲はおさまらず、軍部は独走し、複雑な国際情勢の中で、ついに未曾有の大戦争に突入していく―。
昭和日本はどこで誤ったのか?
戦争以外の進路はなかったのか?
ワシントン体制から満州事変、二・二六事件、盧溝橋事件を経て、太平洋戦争、敗戦に至る過程を、昭和史研究の第一人者たちが、片寄った史観にとらわれることなく、徹底的に討論検証する。
[ 目次 ]
ワシントン体制(大正10年)―反英のスタート
張作霖爆殺事件(昭和3年)―陰謀の発端と発言せざる天皇
満州事変から満州国へ(昭和6年)―泣く子も黙る関東軍
国際連盟からの脱退(昭和8年)―新聞の果たした役割
二・二六事件(昭和11年)―皇道派と統制派
盧溝橋事件から南京事件へ(昭和12年)―陰謀・虐殺の事実は?
東亜新秩序声明(昭和13年)―自主外交の突き当たったもの
ノモンハン事件(昭和14年)―北進から南進へ
日独伊3国同盟(昭和15年)―4国同盟への夢想
4つの御前会議(昭和16年)―戦争への道のり〔ほか〕
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