宮城谷昌光のレビュー一覧
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ネタバレ2021年3月刊。筆者の本を読むのは 『侠骨記』(どんな内容だったか、全く覚えていない)を17年前に読んで以来、2冊目。中国史に材を取った小説などで著名な筆者による、『三国志』世界へのいざない本。
私の『三国志』初体験は、吉川英治版だ。書籍に関しては、他に横山光輝版の最初の数冊を読んだ程度。あとは『三国志』全編を描いた中国製テレビドラマ、有名エピソードを映像化した映画を数作鑑賞……以上が、私の『三国志』体験だ。エンタメの基礎になっている作品だし、また再挑戦したいと思いつつ、長大な物語なので、二の足を踏みながら、早幾年。
そんな時、本書の発刊を知り、取り寄せた。全6章からなり、当時の時代背 -
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田横。
秦末の人。戦国時代の斉王の一族。楚と漢が天下を争った時期に斉の支配者となった。
田横の人柄は
「漢王と自分は共に王であったのに、彼に仕えるというのは大変恥ずかしい。またいくら天子の命令があるとはいえ、煮殺した相手の弟と肩を並べるというのは恥じ入らずにはいられない。私はそれに耐えられないだろう。そもそも漢王が自分を招くのは、私の顔を一度見ておこうということに過ぎない。いま自分の首を斬っても、ここからなら洛陽まで容貌がわからなくなるほど腐敗することはないだろうから、私の顔を見せるには十分だろう」
からもわかる通り、義の人だったのかもしれない。
項羽、劉邦の楚漢戦争の切り口を大胆にかえ -
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ネタバレいよいよ呉漢が劉秀に仕えて活躍し出す下巻。
いきなり軍事の最高位である大司馬に抜擢されるところは驚きと共にワクワク感があった。
これからどんなすごい活躍をしていくのだろう?
そんな期待だ。
その期待はある程度満たされる。のだけど、期待したとおり、とは行かなかったかな。
作中でも呉漢自身が自分のことを語っているけれど彼は決して軍事的天才ではなかったのだろう。
この辺がいわゆる歴史的事実のままならなさでもあるのだけど、それだけに作者が彼を取り上げた面白さを感じる。
作中、呉漢とその師的立場にある祗登とのやり取りがいつも印象深くて清風が吹くような気持ちにさせられて、この長大な物語の確かな魅力の一つ -
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ネタバレ後漢の光武帝の武将の一人、呉漢を主人公にした物語。
こう言う自分が全く知らない人の事績を巡る歴史物語は次にどうなるのだろう? と言う面白さがあって好きだな。
この巻では呉漢が平民から次第に県の役人などに出世し、ついに劉秀のちの洪武帝に仕えるところまでを描いているのだけど、劉秀に仕えたのは意外と遅かったのだなと言う印象だ。
膨大な登場人物が出てくるのだけど、それぞれの役どころが明確なので、あれ? この人、誰だっけと言うことは少ない。さすがは手練れの作者だなと思った。
ただし、名前の読みは苦労するけど^^
さて、下巻は天下統一への戦いが描かれるのだろう。
作者は戦の駆け引きや描写も手練れなの -
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下巻では、子産の父の子国が陰謀に巻き込まれて殺害され、それを収めて家を継ぐ。
位も世代交代とともに執政まで上がり、子展・子皮といった宰相に仕えて軍事・外交・政治で成果を上げ、晋と楚に挟まれて右顧左眄していた鄭の政治に中興をもたらす。
政治姿勢は、礼を重んじ、豊富な有職故実の知識を保ちつつ、前例に流されずに、状況に応じて適切な辞を繰り出す言葉の天才でもあり、孔子が尊敬する二人のうちの一人(もう一人は周公旦)であった。現代風に言えば、人を動かす言葉の達人、ナラティブの達人であったということか。また、子展の死後に、子皮から全権を任されて、農地・兵制改革に従事し、貴族でなく国・公室に一定の力が蓄え -
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藺にいた呂不韋が秦国・白起将軍の侵攻により捕虜にされ、秦国宰相の魏冄の領地である穣邑に連行されてしまう。その道中で荀子と出会い、彼に師事することにより人としての器を大きくしていく。
穣邑から逃れた後も当代きっての人相士である唐挙との出会いや晩年の薛公・孟嘗君との出会いがさらに呂不韋を大きくしていきます。
(印象的だった文章)
・そこに在るものを安定と考えて、そこに乗ろうとする者がいる。ところが、そこに在るものは過去のものだと考え、未来の安定を求め、乗っているものが不安定であるとおもう者がいる。(中略)そういう未来像を描ける頭脳を生かすのが真の経営者であろう。 -
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キングダム60巻で表舞台から姿を消した呂不韋について、書かれた本が文庫本化されることを知り、興味を持ちました。
戦国時代末期に韓の陽翟にある商人の次男として生まれた呂不韋が秦の宰相となるまでにどんな生き様を見せてくれるのか二巻以降が楽しみになる内容でした。
特に、「完璧」の語源ともなった趙の藺相如と秦の昭襄王の和氏の璧(と15城)をめぐる駆け引きは、戦国時代の外交に如何に胆気が必要であったかを教えてくれました。
(印象に残った文章)
・与えられることになれた者は、その物の価値がわからず、真の保有を知りませんから、けっきょく豊かさに達しないのです。
・信用という目にはみえぬものを蓄え、それを -
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下巻は重耳の流浪の物語。詭諸の死後に驪姫や奚斉が重臣たちに呆気なく滅ぼされるも、後継に推すのを重耳か夷吾かで国論が揉める。重耳は乱となるのを避けて狄に留まる。晋公の地位には、秦公が躊躇いながらも支持した夷吾がつ 就く。しかし、夷吾は秦に恩を仇で返し、国内でも悪性を敷き、重耳に刺客を送る。
重耳は、刺客に追われる形で、諸国を放浪し、衛で冷たい仕打ちにあうなどしたが、最後は、春秋五覇の筆頭である斉の桓公の厚遇を得て、斉の要職に留まり、桓公から息子を託されて、帰国の意思を徐々に失っていく。
それを部下達の機転で、桓公の死に乗じて斉を脱出。衛、曹、宋、鄭などを回った後に、将来のライバルとなる楚の成 -
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中巻では、称が周の宮廷工作を整え翼を滅ぼして晋を盤石にし、子の詭諸に引き継ぐが驪戎攻めで捉えた驪姫にゾッコンとなり、驪姫が翼の公子である優施に半ば操られながら自らの子である奚斉をたいしたにしようと画策して、申生、重耳、夷吾の三兄弟との内ゲバが始まる。
申生は、孝を体現したような性格で亡命を勧められても断固拒否し、父の意図であればということで最終的には自決する。重耳は良臣を固めつつも、母の実家である白狄に亡命、夷吾は、秦の衛星国である粱に亡命し再起を図る。
孝の申生、徳の重耳、才の夷吾と三人三様の生き様が際立って面白い。また、周の宮廷政治や、周の卿士である鄭や虢の役割、唇亡歯寒を地で行って詭